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◇ No.49 (2015/5/8)
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猪口孝『中国の中間層と民主主義』を語る
著者はアイダホ大学の教授で中国政治で教鞭をとっている。実証的政治学の訓練をしっかりと受けている
新進気鋭の教授である。中国政治の未来を考える時によく出てくる仮説は次のようなものである。ひとり
あたりの所得水準が高まると中産階級が生まれる。中産階級は貴族階級でも貧困階級でもなく、特権政治
でもなく、急進政治でもなく、民主主義を選好していくというシナリオを描く。
最近ではソーシャル・メディアの発達などで、強く抑制されながらも一定の言論の自由さがみられることも
民主化を進める一要因になっているとも時に議論される。著者は真っ向から反対で、中産層は所得水準の
上昇をしっかりと享受し、中国政治を民主化へと進めようという中間層は非常に少ないと全国規模のしっかり
とした世論調査の分析から結論する。中国政治の将来を考える時の必読書。
ジー・チェン著、野田牧人訳『中国の中間層と民主主義』
猪口孝・猪口邦子編シリーズ「世界認識の最前線」 NTT出版 2015年1月
http://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002332