ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

イスラーム復興とジェンダー―現代エジプト社会を生きる女性たち

嶺崎 寛子 (著)

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◇ No.61 2015/11/6
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嶺崎寛子『イスラーム復興とジェンダー
      ――現代エジプト社会を生きる女性たち』を語る

主体的なムスリムであり、かつ女性であるとは、当事者にとってどういう
ことなのか。それが本書を貫く問いである。

答えを求めて、著者は2000年代のエジプトで4年10ヵ月にわたる現地調査を
行い、女性説教師が主催する女性のためのイスラーム勉強会に参加したり、
ウラマー(イスラーム法学者)に寄せられた1319本の電話相談を聞いたり
した。

独自性の高い資料を用いてムスリム女性の宗教実践を描いた本書には、
当事者の多様な声と生が記録されている。望み通りのファトワー(ウラマー
が出す法的見解。法的拘束力はない)を得るべく、女性たちは手を変え品を
変え、繰り返しウラマーに質問する。対するウラマーは「差異は恵みである」
と解釈の多様性を言祝ぐ。質問と回答という営為は多様なファトワーを生み、
またそれによって法解釈の幅と懐が広がることで、イスラームの諸規範を
ずらし/書きかえる契機ともなっていた。

本書から、イスラームを生きる、あるいはイスラームと生きることの、
ムスリム女性にとっての意味の一端を読み取っていただけたなら、
著者としては望外の喜びである。

昭和堂 2015年2月
http://wan.or.jp/book/?p=8466
http://www.showado-kyoto.jp/book/b186556.html