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◇ No.65 2016/1/8
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佐橋 亮『共存の模索 アメリカと「二つの中国」の冷戦史』を語る
本書を通じて,今まさに注目が集まっている米中台関係の基本構造の
解明につなげようとした。帯にあるように,「超大国アメリカの葛藤」
こそがテーマだ。
本書は冷戦華やかなりし頃の1948年から,米中接近そして国交正常化
に至る78年までの激動の30年を一貫した枠組みで説明しようとした。
対置されるのは,キッシンジャーやブレジンスキーによる,大国政治こそ
重要で自分たちが対中接近でそれを成し遂げた,台湾問題は重要でなかった
との誇らしげな回想である。
しかし,アメリカは台湾海峡危機や核開発,ベトナム戦争に際して
中国との不要な衝突を避け,中ソ対立に目配せし,政策転換を公に訴える
などリスクを避ける賢明な道を探ろうとしていた。それがタイトルの
「共存の模索」だ。台湾の国府は軍事行動や財政に干渉され,行動を
抑制されていた。
アメリカは他方で,台湾の国府との関係が自らの信頼性に係わること
を理解していた。それは米中接近後も変わらない。ニクソンは世間に
隠して密約を多く与えた。カーター政権の国交正常化は政治スケジュール
を重視した拙速な交渉姿勢と,鄧小平の誤解によって成立した。それは
台湾関係法によって揺り戻され,中国に大きな不信も残し,現在の
台湾問題,米中不信の源流を作り出している。
史料は全米を行脚し集めた。最も感動したのは,国交正常化交渉に直に
携わった二名が密かに50時間にわたって録音したテープの存在に気づき,
遺族から特別にアクセスを許されたことだった。筆写で持ち帰ったノートは
今でも宝物だ。
勁草書房 2015年12月刊
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b213094.html