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自著を語る

中国共産党による「人民代表会議」制度の創成と政治過程: 権力と正統性をめぐって

杜崎 群傑 (著)

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◇ No.69 2016/3/4
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杜崎群傑『中国共産党による「人民代表会議」制度の創成と政治過程─権力と正統性をめぐって』を語る

本書はそれまで中国全土を統治した経験がないにも関わらず、「革命」によって「政権交代」を
果たした中国共産党が、政権を担うに当たって、議会を通してどのように統治の自信を深めよう
としていったのか、そこに至るまでの中国共産党の苦悩を描き出そうとしたものです。

このため本書は、1940年代末の中国における「立法‐司法‐行政」のうち、特に中国共産党によって
正統性調達と権力掌握に利用されてきた立法権=人民代表会議に着目し、一次資料による歴史学的
アプローチと政治学理論の双方を用い、さらに国際的要因も含めて検討することにより、1940年代末の
三権分立と党の関係、これによって導き出される政治体制の実相と共産党による正統性調達と権力掌握の
過程を検討したものです。その上で 本書は、当時の共産党の権力の強靭性・脆弱性、議会における
権威主義体制確立のための具体的手段を実証的かつ多角的に検証しました。

これは、現代中国にまで根強く残り民主化を著しく制約している政治体制の淵源を実証的に検証した
ものに他なりません。本書を通して、現在強靭な体制を築いているように見える中国共産党も、紆余曲折
を経ながら当時の政治体制を完成させたこと、同時に当時彼らの権力には脆弱な側面もあったことが
読み取れると思います。

御茶の水書房 2015年12月
http://www.ochanomizushobo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=978-4-275-02029-1