ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

乾隆帝伝

後藤末雄 (著), 新居洋子 校注 (著)

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◇ No.79 2016/9/16    
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新居洋子『乾隆帝伝』を語る

 本書は後藤末雄『乾隆帝伝』(1942)の復刻版です。同じ著者による「円明園の研究」(1959)
を併録の上、新居が校注と解題を付けました。じつは『乾隆帝伝』はもともと、ほとんど注
の無い書物です。乾隆帝や在華イエズス会士をはじめとする登場人物の会話や振る舞い、心
理が生き生きと描写される一方で、おそらくはその語りの味わいを壊さないようにという
配慮から、史料的根拠などは全く開示されていないため、この書がもつ学術的価値はあまり
正当に評価されてこなかったのです。そこで今回の校注では、本書と関連するヨーロッパ
側・中国側史料や、最近の研究成果を示しながら、本書が十分学術的な批判検討に耐え得る
著作であることを明らかにしようと努めました。読者の方々には、まず本文の味わいを存分
に楽しんでいただいた上で、学術的背景にまで関心を持たれた方には、さらに校注へと読み
進んでいただけたら幸いです。

後藤末雄著・新居洋子校注
国書刊行会、2016年8月
http://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336058478/