ASNET -東京大学 日本・アジアに関する教育研究ネットワーク--

自著を語る

台湾を知るための60章 (エリア・スタディーズ147)

赤松 美和子 (著, 編集), 若松 大祐 (著, 編集)

◆◇———————————————————–
◇ No.80 2016/9/30    
—————————————————————-
若松大祐『台湾を知るための60章(エリアスタディーズ147)』を語る

 本書は赤松美和子と若松大祐が編集した台湾に関する概説書であり、入門書です。60章+14コラムから
成ります。そもそも地域研究(エリアスタディーズ)とは、研究者が自らの関心に基づいて地域を特定
して切り取り、様々な手法を駆使してその地域の独自性を徹底的に調べるという学問です。「台湾らしさ
とは何か」を問い続けながら、本書の議論は歴史に始まって政治、経済、社会、文化、対外関係、人物に
及びます。

 本書の特徴は三つあり、第一は久々の共同研究だということです。総勢29名の執筆者たちは多くが
日本で活躍する日本人あるいは台湾人の研究者で、平均年齢は恐らく40代前半でしょう。多数の研究者が
総力あげて台湾に関する入門書を編んだのは、日本語ではもう20年ほど前のことでした。つまり、
研究者はいざ知らず、一般の人々に向けては、李登輝が総統だったころで情報が止まっていたわけです。
そこで、本書はまず20年の空白を埋めました。すると日本で台湾研究者たちが久々に概説書を共同して
編んだとあり、反響も大きく、刊行後すぐに増刷が決まりました。昨今の日本における台湾への関心
の高さとこれまでの空白に、改めて驚くばかりです。

 第二に、本書は台湾と中華民国との絡まりを現代史の前提に位置づけて、美麗島(フォルモサ)を議論し
ようと試みています。つまり、台湾という脈絡ばかりに注目しがちだった従来の態度を見直したわけです。

 第三に、「おまけ」が付いています。巻末の執筆者一覧には、29名のそれぞれ推薦する台湾の美食と名勝を
載せました。本編だけでなく、「私だけが知る台湾」という執筆者たちの矜持と編者の遊び心も、どうぞ
お楽しみあれ。

 本書がすべてを書き尽せたわけではありません。たくさんの「台湾を知るための第61章」が今この瞬間も
待ち構えています。

赤松美和子・若松大祐編
明石書店、2016年8月
http://www.akashi.co.jp/book/b243643.html