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◇ No.81 2016/10/14
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小河久志『「正しい」イスラームをめぐるダイナミズム――タイ南部ムスリム村落の宗教民族誌』を語る
本書は、筆者が2004年10月から約2年間にわたりタイ南部のムスリム村落で行った長期
フィールドワークの成果をまとめた民族誌です。フィールドワーク中は、様々な困難（調査村に
インド洋津波が襲来、風土病に罹って長期入院など）に直面する一方、村人をはじめ多くの人たち
の優しさに助けられました。本書を手に取ると、それらが鮮明に思い出されます。
それはさておき、本書は、人口1,000人ほどの小さな村の事例を通して、中東を「中心」と
見なすイスラーム世界理解を相対化すること、自然災害が持つ多面性と長期性を明らかにする
ことを試みました。イスラーム復興や自然災害といった世間の耳目を集める現象について理解を
深めたい方にぜひ読んで欲しい一冊です。
大阪大学出版会、2016年2月
http://www.osaka-up.or.jp/books/ISBN978-4-87259-520-8.html