猪口孝『Trust with Asian Characteristics: Interpersonal and Institutional』を語る
本書はアジア・ヨーロッパ世論調査というそれぞれ九カ国で「民主主義」に焦点を当てたものとアジア・バロメーターという世界で唯一の「生活の質」に焦点を当てたアジア全域にわたる大規模な世論調査のデータをもとに、信頼についての質問を分析したものである。いくつかの特徴がある。１）政治学者と医師の連携、２）大規模世論調査データの使用、３）信頼と民主主義といういま、その意味が問われている主題の分析である。どちらも８割方、文部科学省の科学研究費のお世話になっている。信頼にはいくつかの重要な機能がある。１）法や秩序や制度に信頼が高いと、社会は安定し、継続されやすい。２）お互いに信頼が高いと、近所共同体での共同行動が実効的になされやすい。３）仲間や取引先の間で信頼が高いと起業に当たっても困難を乗り越えやすい。本書はSpringer社の「信頼――インターディスィプリナリー・パスペクティブズ」という学術書シリーズの第一巻。編集長は猪口である。
Takashi Inoguchi and Yasuharu Tokuda, eds., /Trust with Asian Characteristics: Interpersonal and Institutional/, Dordrecht: Springer, January 2017.
http://www.springer.com/jp/book/9789811023040