データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第26回国連総会における愛知首席代表一般討論演説

[場所] 
[年月日] 1971年9月27日
[出典] 外交青書16号,424−433頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 議長

 私は日本代表団の名において,閣下が第26回総会議長に就任されたことに対し,衷心よりお祝い申し上げます。アジアにおける卓越した政治家であり,この地域における緊張緩和と平和の招来のため日夜努力をつづけている閣下の適切な指導の下に,今次総会が実り多きものとなることを確信いたします。

 私は多年にわたり閣下と親密な間柄にあり,閣下の業績・能力にはつねに敬服しているのでありますが,とくに昨年のジャカルタ会議において発揮された閣下の手腕は,私にとり忘れ難い思い出であります。

 この機会に,私はエドゥアルト・ハンブロ前総会議長に対し深甚な敬意を表するものであります。国連創設25周年記念総会における閣下の指導力にわれわれは深く印象づけられたのであります。

 私はつぎに,ウ・タン事務総長に対して敬意を表するとともに,世界平和実現のための国際連合の崇高な努力に対する閣下の献身に深甚な感謝の念を表したいと思います。

 ここで私は,今次総会において新たに国際連合に加盟したバハレン,ブータン,カタル3カ国の代表団に対し心からの祝辞を申し述べたいと思います。

 バハレン,カタルというペルシア湾岸の二つの新興独立国とわが国との友好関係は,外交チャネルを通じ,また経済使節団の訪問等によつて維持増進されております。また私は,ブータン王国首席代表ワルチュク殿下が,従来からわが国と親交を深めておられることを想起したいと思います。

 〔序説−平和への戦いとわが国の立場〕

 議長

 第2次大戦の終結以来つづけられて来た世界人類の平和への戦いは,今日大きな転機にさしかかつております。

 欧州においては,既にここ数年来東西間の対話を通じて緊張緩和への基礎固めがつづけられて来たのでありますが,先般米英仏ソ4カ国がベルリン問題について基本的合意に達したことは,単に中欧のみならず広く全世界の緊張緩和を促進する契機として,われわれの心から歓迎するところであります。

 他方,第2次大戦後四半世紀の間引きつづいて各地で戦火に苦しみ,東西間の熾烈な対決の舞台となつて来たアジアにおいても緊張緩和への希望の灯が見えはじめております。

 昨年8月15日の朴韓国大統領の呼びかけから1年を経て,南北朝鮮間に対話の端緒が開かれております。また,米中首脳間の対話が近く本格的に開始される運びとなつたことは,極東,ひいては全アジア,全世界の緊張緩和と協調への新たな展望を開くものと考えられます。

 一進一退をくりかえし,われわれの期待を裏切り続けているとはいいながら, 中東およびヴィエトナムに関する和平への努力が,当事者間で依然継続していることにわれわれは注目するものであり,真の勇気と互譲の精神をもつて一日も早く公正な平和解決が得られることを衷心から希望するものであります。

 多年にわたり戦火に苦しみ,祖国の分裂を嘆き,あるいは戦争にまき込まれる恐怖に悩まされて来たアジアの諸国民が,緊張緩和に期待するところはきわめて大なるものがあります。

 アジアの一国たるわが国としても,このような平和への戦いに平和国家としての立場から寄与を行なつていく所存であります。

 第2次大戦の惨禍を経験したわが国民は,二度と再びかかる不幸をくり返してはならないということを肝に銘じており,平和主義に基礎をおくわが憲法はかかる決意の下に制定されたものであります。昨秋わが佐藤総理大臣は,この演壇において,自由を守り,平和に徹し,全世界の平和と繁栄をはかつていこうというわが国外交政策の基本方針をあらためて宣明いたしました。就中わが国としては,開発途上国に対する開発協力について出来る限りの協力を行ない,世界のすべての人々の共存共栄を通じて,わが国の平和と安全の確保をはかる所存であり,この点も昨秋この場で佐藤総理大臣がはつきりと申し述べたところであります。日本国民は,世界の軍事大国とくに核兵器国が,世界平和維持に果たすべき重大な責務にかんがみ,軍縮および各国間の相互理解の推進に格段の努力を行なうことを強く希望しているのであります。

 平和主義に基づくわが国のこのような外交政策は,国際連合の追求する目的と軌を一にしており,従つて国際連合はわが国民の全幅の支持を得ているのであります。

 最近一部において,わが国の軍国主義の復活を主張する声がありますが,これ程根拠のない誤解はないということは右に述べたところによつても明らかなのであります。

 私は,平和への戦いが一つの転機を迎えた今日,平和維持のための国際連合の機構と機能を一段と強化すべき時期が来たことを強調したいと思います。わが国としては,すべての加盟国と協力して国際連合の強化に努力していく方針であり,また国際連合の諸活動に対する貢献を一層拡大していきたい考えであります。

 〔1 国連の強化〕

 議長

 昨年国際連合は創設25周年を迎えたのでありますが,これを契機として国際連合強化への機運が盛上りを見せました。わが政府も,昨年この場で私が行なつた一般討論演説において,国際連合の機構と機能の強化のためいくつかの具体的示唆を行なつたのであります。1970年代の第1年目にあたる本年は,このような機運を実施に移していくべき年であると考えます。ここで私は,とくに安全保障理事会の常任理事国に対し,これら諸国の国際連合の目的追求に関する責任の重大さにかんがみ,国際連合の機構と機能の強化・改革に後向きの態度をとらないよう強く要請しておきたいと思います。

 (イ 国連憲章再検討)

 議長

 第1に,私は,国際連合の強化にあたつて国連憲章自身の再検討の可能性を排除してはならないと考えます。憲章再検討問題に関するわが国の立場は,既に昨年の私の一般討論演説で明らかにしておりますので,ここでは立ち入つた議論は行ないません。ただ,右の再検討が(1)安全保障理事会の機構と機能(2)国連平和維持活動(3)経済社会開発に関する機構と機能(4)時代遅れとなつた諸規定の改廃の4点が中心となるべきだとの考え方を述べたことだけは再確認しておきたいと思います。憲章再検討問題は,来総会でとり上げられるべく合意されておりますが,われわれは,国際連合強化の諸方策を検討するにあたり,つねに憲章の根本に立ち返つて論議研究を進める必要があると考えます。

 (ロ 国連平和維持活動)

 議長

 国際の平和と安全の維持のため,国際連合が最も貢献してきたのは平和維持活動の分野であると考えられます。従つて,国際連合の強化を図る場合まず着手すべきは国連平和維持活動の強化であります。昨年の総会で採択された国際安全保障強化に関する宣言においても,国連平和維持活動の強化はその主要な柱の一つとして謳われております。私は,国連平和維持活動に関する諸問題について実効的な審議を総会の適当な場で行なつていくことが今後の課題であると考えます。

 (ハ 国際司法裁判所)

 議長

 ナミビア問題に関する最近の国際司法裁判所の勧告的意見は,国際関係における法と正義の確立のために裁判所が果たすべき役割の重要性をあらためて明らかにしたものと思います。われわれは,今総会で再びとり上げられる国際司法裁判所の役割再検討問題に関し,裁判所強化のために積極的に取り組んでいくべきであると考えるのであります。

 〔2 現下の国際重要問題〕

 議長

 次に私は,現下の国際関係において懸案となつているいくつかの問題について,わが国の立場を申し述べたいと思います。

 (イ 中国代表権)

 議長

 国際連合における中国代表権問題は,1950年以来総会で審議されて来たのでありますが,最近の国際情勢の発展にかんがみ,この問題は今次総会の最も重要な課題の一つとなつたのであります。

 顧みれば昨年以来,第25回国連総会においていわゆるアルバニア決議案に対する賛成が反対を上回つたこと,中華人民共和国政府を承認し,これと外交関係を開く国が相次いだこと,また本年7月にはニクソン大統領の訪中が発表されたこと等,中国問題をめぐる国際情勢は大きく動いており,中華人民共和国は今や長い間の孤立から脱し,国際社会にその重要な一員として参加しようとしております。

 中華人民共和国政府が,永続的な世界平和樹立のため世界のすべての国と協力していくことはきわめて望ましいことであり,かかる意味合いにおいて,われわれは中華人民共和国政府の国連参加は意義あるものと考え,これを歓迎するものであります。

 しかしながら,他方台湾には1,300万余の人口を有する中華民国政府が厳存することもまた事実であり,国際連合における中国代表権問題の検討にあたつてあえてこれを無視することは,極東における緊張緩和を実現するどころか,かえつてこの地域における国際均衡をくずし,緊張を激化することを惧れるものであります。

 わが政府は,このような観点に立つて,中華民国政府の国連代表権の剥奪をもたらすごときいかなる提案も憲章第18条にもとづく重要問題であることを決定することを求める決議案および中華人民共和国政府の代表権を確認し,安全保障理事会の常任理事国として議席を占めることを勧告するとともに,中華民国政府が引続き代表権を有することを確認する決議案を共同提案国として提出いたしました。

 わが政府は,中国は一つであるとの立場をとつており,この問題が今後当事者間の平和的な話し合いによつて解決されることを衷心より希望するものであります。

 私は,右の二つの決議案は中国問題に関する相対立する立場のいずれをも傷つけるものでなく,かつ中国をめぐる国際関係の現実を反映した経過的措置として妥当なものであると確信しております。私は,これら二つの決議案が大多数の加盟国の支持を得て採択されることを衷心より希望するものであります。

 (ロ インドシナ)

 議長

 インドシナに和平がもたらされるためには,解決させねばならぬ幾多の困難な問題が依然存在しております。しかしながら,われわれは,最近にいたつてインドシナをめぐる国際環境,パリ和平会談等の推移が,和平への気運の高まりを示唆していることに注目するのであります。私は,当事国,関係国がこの和平への動きを大事に守り育てていくことを衷心より希望いたします。インドシナをはじめ東南アジアが今日最も必要とするものは戦火による破壊ではなく,平和のための建設であり,平和の維持であることは申すまでもありません。アジアに位置し,アジアの情勢の推移に深甚な関心を有するわが国としては,インドシナに一日も早く平和がもたらされるよう他のアジア諸国とともに出来るだけの協力を行なう所存であり,和平が実現した暁にはその維持のため,積極的に協力する所存であります。また,わが国は,政治・社会体制の差異を超えてインドシナ地域の復興と建設のために積極的に協力し,応分の寄与を行なう用意があることを,ここにあらためて明らかにしておきたいと思います。この点に関し,私はウ・タン事務総長がその年次報告序説において国際連合がインドシナの復興開発援助に貢献すべき旨述べられたことを歓迎するものであります。

 (ハ 中東問題)

 議長

 中東紛争については,その解決の曙光が見えて既に久しいのでありますが,平和への歩みがあまりにも遅いのは遺憾であります。問題解決の遅延は,複雑きわまるこの問題の諸局面の一層の深刻化と,新たな問題の発生をもたらすのみであり,いずれの利益にもならないことが認識されるべきであります。私は,全当事国および四大国が,右の点に十分留意して,安保理決議242に従い,中東問題の公正かつ永続的な解決のために新たな勇気を奮い起すことを慫慂したいと思います。わが国としても,アジアの一国としてまた安全保障理事国の一員としてこの問題の平和的解決に応分の寄与を行なう所存であります。

 (ニ 難民問題)

 議長

 パレスチナやインドシナにおいて,また東パキスタン問題に関連して数百万に上る無辜の人々が家や土地を失い,故郷を遠く離れて困窮した生活を送つており,その惨状は目をおおうばかりであります。これら難民を発生させた紛争や事態の解決を急ぐべきは勿論でありますが,国際連合をはじめ国際社会の先ずなすべき責務は,この無辜の人々の惨状と苦痛を少しでも和らげるべく最大限の努力をはらうことでありましよう。難民救済のための努力は,また,尖鋭化した国際紛争によつて惹起された複雑な諸問題の政治的解決の促進する側面もあると考えられます。すでに20年以上の歴史をもつパレスチナ難民の悲劇を,世界各地でくり返してはなりません。

 最近におけるわが国の難民救済・災害復旧等に対する援助は,総額1,200万ドルに及んでおります。わが国としては,今後もこのような人道的援助の増額と迅速な支出のために格段の努力をつづけていく所存であり,またユネスコ(UNESCO)やUNRWA,UNHCR等が行なつている難民に対する職業訓練,教育面での援助は難民問題の抜本的解決につながるものとしてこれに対する協力体制を強化していく考えであります。わが国は,こうした分野における努力を通じても,国際の平和と安全に関連のある諸問題の解決に応分の貢献を行なつていきたいと考えております。

 (ホ 南部アフリカ問題)

 議長

 国際の平和と安全にかかわりのある諸問題について考慮する際忘れてはならないのは,南部アフリカにおいて人種差別,不法な少数支配,植民地支配がかねてからの国際社会の呼びかけ,非難にもかかわらずいまだに存続しているという事実であります。わが国としてもこれをきわめて遺憾としており,関係国が国際社会の呼びかけに応えて速かに植民地を解放し,少数支配を解消し,人種差別を撤廃することを強く要請するものであります。

 わが国は,今後とも平和的手段による問題の永続的解決への国際社会,なかんずくアフリカ諸国の努力に対しできるだけの協力を惜しまない所存であります。

 (ヘ 軍縮問題)

 議長 

 世界における平和の維持,推進にあたつて,軍備の規制と縮小は必須の条件であります。とりわけ,その使用が人類に及ぼす惨禍を考えた場合,核軍縮の早期実現が緊要であると考えられます。私は,さしあたり米ソ両国による戦略兵器制限交渉の推進,地下核実験の禁止等の具体的核軍縮措置実現のための核兵器国の責任の重大性を強調しておきたいと思います。また,わが国としては,フランス共和国政府および中華人民共和国政府が,世界の軍縮討議の場に積極的に参加し,また既存の軍縮関係諸条約に参加することを希望するものであります。

 (ト 国際経済問題)

 議長

 先般の米国政府による新経済政策の発表,および,その後の事態の展開は,第2次大戦後25年間にわたつて世界経済の発展を支えて来た貿易,通貨体制が大きな転機に直面していることを如実に示したものと考えられます。同時に,この新たな,かつ,極めて流動的な情勢に米国をはじめ世界各国が如何に対処し,如何なる新たな秩序とルールを打ちたてるかは,人類の福祉と平和に大きな影響を持つものであると考えます。世界各国が自国の利益にのみとらわれ,広く世界的な視野に立つてこの試練に対処することを怠るならば,世界経済の不幸なブロック化,世界的規模の景気沈滞といつた事態さえ危惧されるのであります。

 わが国としては,かかる認識のもとに,世界経済の新たな秩序造りのため,各国と密接に協議しつつ,出来る限りの努力を続けたい所存であります。

 〔3 経済社会開発問題〕

 (イ UNDDII)

 議長

 第2次国連開発の10年(UNDDII)は,本年1月1日より発足の運びとなり,いよいよ開発戦略の実施段階に入りました。ここでわれわれは,現下の国際経済情勢にかんがみ,開発戦略の目的達成の前途は必ずしも安易なものでないことに留意すべきだと思います。自由にしてかつ拡大する世界貿易経済体制を維持しながら,先進国,開発途上国双方の開発への協力を推進していくというのが,UNDDIIの戦略の基本理念であります。国際社会は,この際あらためてこの理念を確認し,その実現に向つて一層協力体制を強化していくことが肝要でありましよう。

 わが国は,1975年までに開発途上国への資金の流れの総額を国民総生産の1パーセントに達せしめるよう努力するとの方針を昨年確立いたしました。昨年におけるわが国の開発途上国に対する資金の流れは18億ドルを越え,その国民総生産比率も0.93パーセントとなるに至つたのであります。

 わが国としては,今後とも政府開発援助の拡大,援助条件の緩和を含め,援助の量的および質的改善に積極的に努力していく所存であります。

 また,わが国はすでに本年8月から開発途上国に対する特恵関税供与を実施しております。わが国としては,今後ともUNDDIIの目的に沿つた国際貿易面での寄与をおしまぬ所存であります。

 (ロ 第3回UNCTAD)

 議長

 ここで私は,明年4月チリのサンチァゴにおいて開かれる第3回国連貿易開発会議(UNCTAD)について一言申し述べたいと思います。私は,この会議は豊かな世界の建設に向つての協調的努力の実現性と実効性を試す場として,きわめて重要な意義を有すると考えるものであります。UNDDIIの成功のためには,貧困と低開発の状況から脱却しようとする諸国の自助努力と,これに対する先進諸国の真摯な協力とが相呼応する必要があります。

 私は,第3回UNCTADに参加する全ての国がUNDDIIの目標達成のため如何にすれば実りのある成果を得ることが出来るかの問題について,あらかじめ真剣に,かつ創意をもつて具体的貢献策を検討しておく必要があると信ずるものであります。

 わが国としても,いかなる貢献をなし得るかについて積極的に検討していきたいと考えております。

 (ハ ECOSOCの強化拡大)

 議長

 経済社会開発における国際連合をはじめとする国際機関の重要性はますます大きくなつて来ております。この分野において国際連合が国際協力の推進に関するその責務を有効に果たしていくためには,経済社会理事会を経済社会開発に関する諸般の活動を調整し,これに総括的な指針を与える機構とすることが不可欠であることは,昨年わが国が一般討論演説で指摘したとおりであります。その意味において,わが国は第51回経済社会理事会(ECOSOC)において採択された同理事会の強化および拡大に関する決議を歓迎するものであり,これが早急に実現することを希望するものであります。

 〔4 人間環境問題〕

 議長

 最後に私は,人間環境の問題にふれたいと思います。

 国際連合創設にあたり,われわれは戦争の惨禍から将来の世代を救う責務を有することを確認いたしました。ところが,今日われわれは,人間環境の破壊という,過去の世代が全く予期しなかつた惨禍から将来の世代を救う新たな責務に直面するに至つたのであります。地球は閉ざされた循環系であり,その汚染や破壊が一定の限度を越えた場合には,人類の破滅を招来する惧れすらあるのであります。今日,世界は工業化,農業の近代化,自然の改造等を通じて飢餓と貧困を追放し,豊かな社会を実現すべく努力しているのでありますが,かかる努力と併行して,良好な人間環境保全のための国際的努力が行なわれる必要があります。

 人間環境保全に関する国際協力のあらゆる態様が真剣に,かつ早急に追求されるべきであり,この意味において1972年の人間環境国連会議には大きな期待がかけられるのであります。

 狭い国土に大きな人口をかかえ,高度に工業化の進んだわが国にとつて,人間環境の問題は今やきわめて切実な問題となつております。

 これら諸問題の解決は喫緊の急務であり,わが政府は夙にその対策を講じてまいりました。わが政府は,1970年に環境保全に関する最も進んだ規定を含む画期的な立法を行ない,個々の環境問題対処にあたつての体制を強化いたしました。さらに,わが国は公害対策の効果的な調整を行なうべく行政機構を強化し,1970年7月内閣に公害対策本部を設置いたしましたが,さらにこれを強化拡大して,本年7月環境庁を設けたのであります。わが国としては,昨年10月の国連演説で佐藤総理大臣が明らかにしたとおり,国際連合等の場における国際協力についても積極的な貢献を行なつていく所存であります。たとえばわが国は,1969年に政府間海事協議機関(IMCO)で採択された海洋油濁防止条約改正条約を他の諸国にさきがけて批准しているのであります。

 〔結語〕

 議長

 国際連合は,国際関係のあらゆる分野における全世界的協調の場としてすでに定着しており,とくに近年においては人間環境をはじめ宇宙・海洋など,科学技術の発達にともない新たに国際場裡に登場して来た諸問題と積極的にとり組みつつあることは慶賀すべきであります。これらの問題について国際連合が今後とも多くの具体的成果を生み出すことが期待されます。

 私は,全世界がかかる国際連合の重要性にあらためて思いを致し,国際連合創設の初心にかえつてその強化のために努力していくことこそが,世界平和達成の方途であることを確信するものであります。