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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚レベル会合議長声明

[場所] 東京
[年月日] 2001年12月4日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 アフリカ開発会議(TICAD)閣僚レベル会合は、52のアフリカ諸国及び27の開発パートナー諸国並びに国際機関・地域機関より閣僚、首席代表その他ハイレベルの出席者を得て、2001年12月3日及び4日、東京に於いて、開催された。この会議は、重要な開発課題について効果的なパートナーシップを構築する目的で、TICADプロセスによって進められてきたハイレベルの討議の場の一つとの位置付けで開催されたものである。小泉純一郎日本国総理大臣が、冒頭挨拶を行い、アルファ・オウマル・コナレ・マリ共和国大統領が基調演説を行った。これらの演説は会議の方向性を示し、また、関連議題について活発かつ友好的な意見交換に繋がった。

 会議は、TICADプロセスがこれまで何を達成したか、また、「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)から何を期待するかについて、閣僚レベルの議論のため貴重な機会を提供した。特に、次の分野が強調された。

(1)平和と良い統治の促進を通じた開発の基盤の強化

(2)人的資源開発、教育及び保健に焦点を置いた人への投資

(3)経済成長を通じた貧困削減

 これらに加えて、南南協力、特にアジア・アフリカ協力及びアフリカ諸国間協力、地域協力及び情報通信技術(ICT)が、アフリカの開発促進のために重要なアプローチとして認識された。同会議は、民間セクター及び市民社会との対話のための有益な機会を提供し、また、民間セクターは、来るべき数十年にわたるアフリカの持続可能な開発のため、一つの重要な推進力となり得るとの一般的な認識が存在した。

 10月30日、31日に閣僚レベル会合準備会合を主催したセネガル政府に対し感謝の意が表明され、また、ダカールに於いて採択された議長サマリー報告書は今次閣僚レベル会合の議論のベースとなる文書として承認された。

 TICADプロセスは、アフリカの開発問題を国際社会の課題の中で中心的なものに据える上で大きな貢献をしてきたと評価された。93年のTICAD Iの際に採択された「21世紀に向けたアフリカ開発に関する東京宣言」、また、98年TICAD IIの際に採択された「東京行動計画」の妥当性が、引き続き増大していることが確認された。全ての関係者が、「東京行動計画」に盛り込まれた目標を達成するため一層努力を行う必要性が強調された。会議の全参加者は、TICAD関連の計画、案件についての関係各国、各機関によるモニタリングを強化する重要性について意見の一致があった。

 オーナーシップ及びグローバルなパートナーシップという基本原則を実現するため、効果的な指導力及び説明責任についての確固たるコミットメントとしてアフリカの指導者が開始した「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)を歓迎した。NEPADの精神及び目標はTICADにより提唱されたものと軌を一にするものである。会議は、NEPADとTICADの相互協力関係にテーク・ノートし、TICADプロセスの強化を通じてNEPADを支援する必要性を認識した。地域機関は、NEPAD及びTICADの両方の実施プロセスにおいてますます重要となっている。

 本会議は、国際テロが世界全体にとって現実の脅威となりつつあることに言及した。他方で、アフリカ開発は国際社会の課題における最重要課題の一つとして維持されるべきであることが強調された。開発資金に関する支援会議、G8カナナスキス・サミットを含む重要な会合の前に、NEPADについての共通の理解を増進するためTICAD閣僚レベル会合が時宜を得て開催されたことが評価された。

 アフリカの問題の解決なくして国際社会の真の平和と繁栄はあり得ない。この関連で、アフリカの参加なくして真のグローバライゼーションはない点に留意しつつ、アフリカがグローバル経済に全面的に参加することの重要性について改めて言及された。また、債務負担軽減のため既存の枠組み内で行われている努力、ドーハ閣僚宣言によって動き始めた多国間貿易交渉、エイズ・結核・マラリア基金の創設の重要性が強調された。特に海外直接投資をはじめとする、国際社会からアフリカへの資金フローの促進の必要性が強調された。

 日本政府は他の共催者の支持を得て、2003年の後半にTICAD IIIを開催する旨発表した。

 参加者は、閣僚レベル会合を成功裏に開催したこと、また、TICADプロセスにおいて指導的役割を果たしていることに対し、日本政府への深い謝意を表明した。また、参加者は、TICADプロセスを前進させるため、他の共催者が行っている貴重な貢献を評価した。最後に、参加者は、日本滞在中に示された日本国民の厚いもてなしに対し謝意を表明した。