データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 気候クラブに関するG7声明

[場所] エルマウ
[年月日] 2022年6月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

我々は、摂氏1.5度の道筋と遅くとも2050年までに気候中立への移行が必要であることを認識し、現在のところ、世界全体の気候に関する野心も実施も、温室効果ガスの排出削減によりパリ協定の目標を達成するには十分でないことに懸念をもって留意する。我々は、特に産業部門に焦点を当てて気候行動を加速させ、野心を高め、それによって国際ルールを遵守しながら排出集約財のカーボンリーケージのリスクに対処することによって、パリ協定の効果的な実施を支援するため、気候クラブを設立することを目指す。

気候クラブは3つの柱で構成されることとなる。

(1)政策及び成果を我々の野心に整合させ、排出量の算定及び報告メカニズムを強化し、国際レベルでカーボンリーケージに対抗することにより、気候中立に向けた道筋において、参加国の排出集約度を低減させるための野心的で透明性のある気候緩和政策を推進すること。この点に関し、メンバーは、ベスト・プラクティスを共有し、明示的な炭素価格付け、その他の炭素緩和策及び炭素集約度などを通じた排出量削減の我々の野心と整合的に、我々の緩和政策の有効性及び経済的影響を比較する評価手法に関する共通理解に向けて取り組むであろう。

(2)産業脱炭素化アジェンダ、水素行動協定及びグリーンな産業製品の市場拡大を考慮することを通じたものを含め、脱炭素化を加速するため産業を共同で変革すること。

(3)気候行動を奨励及び促進し、気候協力による社会経済的便益を引き出すとともに、公正なエネルギー移行を促進するため、パートナーシップと協力を通じて国際的な野心を強化すること。これらを補完するものとして、「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」は、開発途上国それぞれの気候野心の水準に応じた、財政・技術能力支援及び技術移転開発・展開を通じたものを含め、エネルギー・産業部門の脱炭素化のための開発途上国に対する支援及び援助を、透明性をもって活用する潜在性がある。

気候クラブは、高い野心を持つ政府間フォーラムとして、包摂的な性格のもので、パリ協定とその決定事項、特にグラスゴー気候合意の完全な実施を約束し、そして、この目的のために自国の行動を加速することを約束した国に開かれるであろう。我々は、主要排出国を含む関係国、G20メンバー、その他の途上国、新興国に対し、この問題について我々との議論及び協議に一層取り組むよう呼びかける。

我々は、ドイツがG7議長国である間、複数のG7閣僚トラックにわたり、進展があったことを歓迎する。我々は、野心的な気候政策を世界中で促進するために、共に、また、G7以外のパートナーと協働していく。我々は、その目標を支持し、国際ルールと整合的な、開放的、協調的かつ国際的な気候クラブを2022年末までに設立するために、パートナーと連携していく。

我々は、関心を有する野心的なパートナーにリーチアウトしつつ、包括的なタームズ・オブ・レファレンス(ToR)を策定し、2022年末までの設立に向けた次の段階の承認を得るため首脳に報告させるために、それぞれ関係閣僚を指名する。我々は、OECD、IMF、世界銀行、IEA及びWTOに対し、各機関の関連する専門知識に沿って、このプロセスを支援するよう求める。この点に関し、我々は、OECDの「炭素緩和アプローチに関する包摂的フォーラム(IFCMA)」を歓迎し、気候クラブに対するその貢献を期待する。