データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウクライナ支援に関するG7声明

[場所] エルマウ
[年月日] 2022年6月27日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

前文:我々、G7首脳は、ウクライナとの連帯を堅持し、自国の主権及び領土一体性の勇気ある防衛と、平和的で繁栄した民主的な未来のための戦いにおいて、ウクライナ政府及び国民を支援するという我々の揺るぎないコミットメントを再確認する。我々は、ウクライナ及びモルドバに欧州連合加盟候補国の地位を付与した欧州理事会の決定を歓迎する。我々は、財政的、人道的、軍事的及び外交的支援を引き続き提供し、必要な限りウクライナと共にある。その際、我々は、ロシアの侵略の国際的影響、特に最も脆弱な人々に対するものに取り組むことを通じて、グローバルな責任及び連帯を示すことにコミットする。

ロシアの戦争への非難:我々は、ロシアによる、また、ベラルーシに支援された、ウクライナに対する残酷で、いわれのない、不当で、不法な侵略戦争に、引き続き驚愕し、これを引き続き非難する。我々は、力によって国境を再画定しようとするロシアの継続的な試みを非難し、認めない。この破壊的な戦争は、欧州のみにとどまらず、広く劇的な影響を生み出した。これは、露骨な国際法違反であり、特に国連憲章の重大な違反である。これは、世界の平和、繁栄及び安全保障を支えるルールに基づく国際システムを深刻に損なうものである。我々は、さらに、ウクライナの民主的に選出された者を正当性のない者に置き換えようとするロシアの試みを非難する。我々は、ロシアが、このロシアの選択により始められた戦争を終わらせ、直ちにかつ無条件で全ての敵対行為を停止し、ウクライナの国際的に認められた国境内の全土から軍隊と軍事装備を撤退させるようにという我々の要求を改めて表明する。我々は、ロシアによる核に関するレトリック及びシグナリングの不当な使用への我々の非難を改めて表明する。ロシアは、化学兵器、生物兵器又は核兵器の使用を禁止するものを含む国際的なコミットメントを遵守しなければならない。我々は、ロシアに対して責任ある行動と自制を求め、そのような兵器のいかなる使用も受け入れられず、深刻な結果を被ることを改めて表明する。この関連で、我々は、核搭載可能なミサイルをベラルーシに移転する可能性があるとするロシアの発表に対し、深刻な懸念を表明する。

戦争を終わらせるためのウクライナの取組への支援:我々は、ウクライナがその主権及び領土一体性を堅持し、自国を防衛し、自らの未来を選択できるよう支援することにコミットしている。外部の圧力や影響を受けることなく、将来の和平について決定するのはウクライナ自身である。我々は、軍事及び防衛装備に対するウクライナの緊急の要求を満たすための取組を引き続き調整する。我々はまた、ウクライナの軍備増強のために資材、訓練並びに兵站、インテリジェンス及び経済支援を提供するため引き続き調整する。

ウクライナの安全保障及び強じん性へのコミットメント:実行可能な戦後の和平のため、我々は、ウクライナが自国を守り、自由で民主的な未来を確保し、将来のロシアによる侵略を抑止することを支援するため、持続的な安全保障のコミットメントについて、関係国及び機関の間でウクライナと取り決めを交わす用意がある。我々は、インテリジェンス及び情報の共有、情報セキュリティ並びに海上安全保障における協力を拡大することにより、ウクライナの強じん性を更に強化する用意がある。我々は、サイバー事案からウクライナのネットワークを守ることへの支援を継続し、エネルギー安全保障、核物質及び原子力施設の安全及び核セキュリティ、環境及び水利用問題の分野における我々の協力を拡大する。我々は、自由なメディアのための支援並びに偽情報及び民主的プロセスへの干渉への対抗を通じたものを含め、ウクライナの民主的制度並びにその共通の民主的価値及び原則に対する脅威に抵抗することにおいて、ウクライナを引き続き支援する。

人道支援:ロシアのウクライナに対する侵略戦争と、一般市民及び民生インフラに対する無差別攻撃は、計り知れない人的被害と人命の喪失をもたらしている。その結果、我々は今日、欧州において第二次世界大戦後最大の一般市民の避難を目にしている。G7として我々は、2022年にこれまで28億米ドル以上の人道支援を提供し、プレッジしている。我々は、ロシアの戦争の影響を受けた人々に対して、特に女性及び子どもの権利を守るため、実質的かつ継続中の人道支援を引き続き提供するという我々の共通のコミットメントを強調する。

国内避難民及び難民への支援:我々は、退去を強制された人々及び難民を保護及び支援し、受入国に支援を提供するとの我々の決意を再確認する。我々は、戦闘地域から逃れた難民を受け入れることによりウクライナを支援する全ての国の連帯及び努力を称賛する。我々は、短期及び中期的な援助の提供を通じて我々の支援を強化するとともに、ウクライナ及び他の受入国の双方における避難した及び被害を受けた人々のための様々な支援サービスへのアクセスを強化する。この目的のため、我々は、モルドバ支援プラットフォームを承認する。我々は、入国手続及びビザの要件を更に効率化することによるものを含め、避難民に安全な通行を提供すること、そして、女性及び子どもが不均衡に多い難民の間で高まっている人身取引のリスクを防ぎ、対応する取組を強化することを追求する。我々は、ウクライナからの難民の我々の労働市場への統合を更に促進し、彼らの労働権を保護及び確保し、必要な限り適切な社会保護及び教育へのアクセスを提供することを目指す。

国際人道法の遵守:私たちはロシアに対し、国際人道法の下での義務を遵守するよう求める。我々は、ロシアに対し、安全、迅速かつ妨害されない人道アクセスを即時に提供し、安全な移動を確保し、包囲された都市に人道支援が届き市民が自らが選択する目的地へ安全に到達することを可能にすることを求める。さらに、我々は、しばしば力によって本人の同意なくロシアに連行されたウクライナ国民の安全な帰還をロシアが即時に認めるよう要求する。我々はまた、ウクライナで活動する中立かつ公平な人道的団体及びその援助要員の保護を確保する必要性を強調する。ロシア及びその代理勢力は、ジュネーヴ諸条約の下で戦争捕虜に与えられる権利及び保護を含む国際人道法を尊重しなければならない。我々は、ウクライナ軍の構成員への死刑判決の適用に帰結する偽りの「裁判」を非難する。

戦争犯罪に対する責任追及:戦争犯罪及びその他の残虐行為の不処罰は認められない。我々は、ウクライナにおける民間人及び非戦闘員に対する継続中の攻撃、重要インフラ、学校や幼稚園、医療従事者や施設に対する組織的な標的化、さらに紛争に関連した性及びジェンダーに基づく暴力を最も強い言葉で非難する。我々は、ウクライナの文化的遺跡が意図的に狙われていることを更に非難し、ロシア軍によるウクライナの遺産の破壊、ロシアによって違法に占領された地域におけるウクライナの言語及びメディアの抑圧を、ウクライナの歴史と文化的アイデンティティを一掃しようとする試みとみなす。我々は、国際刑事裁判所の検察官、国連人権理事会(UNHRC)が委任した独立国際調査委員会及び欧州安全保障協力機構(OSCE)のモスクワ・メカニズムの下での専門家ミッションの作業並びにウクライナ検事総長室による国内捜査によるものを含め、戦争犯罪及びその他の残虐行為犯罪の捜査のための進行中の作業を歓迎し支持する。我々は、ウクライナで行われている全ての捜査の間の協力を強化する努力を歓迎し、ウクライナ及び関連機関との我々の警察及び司法協力を強化する。我々は、国内法と整合的な場合に、普遍的管轄権の原則に沿った国家捜査及び管轄権の取組を歓迎する。戦争犯罪及びその他の残虐行為犯罪の直接の加害者並びにその任務に責任を負う役職者及び軍事指導者は、国際法に従い、責任が問われねばならない。

ロシアの政治的抑圧から逃れる反体制派のための安全な逃避先:我々は、ウクライナに対するロシアの残酷な侵略戦争が、ロシア国内において、特に独立ジャーナリスト、人権活動家、反対勢力の人々及び一般市民に対し、これまで以上に強力な内的抑圧を伴っている事実を懸念している。我々は、我々の国内の法及び要件に整合的な形で、ロシアの体制によって迫害されているロシア人に対する保護を利用可能にする。

食料安全保障の強化:紛争の結果、世界の食料安全保障に対する脅威が高まっていることに、ロシアは多大な責任を負う。ロシアによる爆撃、封鎖及び略奪により示されるウクライナへのいわれのない攻撃は、ウクライナの農産物の輸出を著しく妨げ、その生産能力を阻害し、価格高騰につながり、何百万もの人々、特に女性及び子どものような最も脆弱な人々に対する世界的な食料不安を高めている。我々はロシアに対し、農業及び輸送インフラへの攻撃を無条件に停止し、黒海におけるウクライナの港からの農産物の輸送の自由な通航を可能にすることを緊急に求める。我々は、結束し、ウクライナの穀物、石油及びその他農産物の生産及び輸出を強力に支援することを決意し、また我々は、世界の食料安全保障を促進し、生じつつある世界的な食料危機の原因に対処する協調的なイニシアティブを促進する。

制裁:我々は、ロシアの侵略戦争に対する我々の前例のない協調した制裁措置へのコミットメントを引き続き堅持する。その効果は、時間とともに増大することになる。我々は、プーチン大統領の体制及びベラルーシのその支援者たちに対する国際的な経済的・政治的圧力を維持・強化し、ロシアからウクライナに対する侵略戦争を継続する経済的手段を奪うことにコミットしており、必要である限りにおいて、協調した制裁の対象を特定した行使を継続し、全ての段階で一致して行動する。我々の制裁の行使は、ロシアがあまりにも甚だしく侵害しているルールに基づく国際秩序を守るためのものである。この目的のため、我々は、ロシアに対する責任ある制裁を通じたウクライナ支援に関する附属文書を承認する。

 我々は、ロシアに対する我々の経済的措置を更に強化するため、各国の法的権限及び手続と整合的な形で、今後数日から数週間のうちに、次の措置をとることに共同でコミットする。我々は、ロシアを世界市場への参加から孤立させ、制裁回避を取り締まるための新たな方法を引き続き模索する。我々は、金から得るものを含むロシアの収入を減少させることを決意する。我々はまた、回避やバックフィル活動を引き続き標的にする。我々は、我々の声明のエネルギーの節に明記されたように、ロシアのエネルギーへの依存を更に減らすための適切な措置をとることで、ロシアの輸出収入を更に減少させる。我々は、引き続き、ロシアからの輸入品に対する関税措置を調整し、適用可能な場合には、その収入をウクライナへの支援に用いるための、各国の法律に沿ったあり得べき道筋を探求する。我々は、我々の経済により生産された主要な産業投入物、サービス及び技術、特にロシアの軍需産業基盤及び技術部門を支えるものへのロシアのアクセスを更に制限するため、対象を特定した制裁を調整し、拡大する。最後に、我々は、戦争犯罪に責任を有する者、ウクライナで正当性のない権限を行使する者、及び、ウクライナの穀物を略奪し輸出することで世界の食料不安を高め、又はその他の方法で戦争から正当性なく利益を得る取組へのロシアの関与の背後にいる者に対し、対象を特定した制裁を科すことにより、ロシアのウクライナへの戦争のコストを増加させる。

 我々がロシア及びその侵略に加担した者に厳しいコストを課す中でも、我々は引き続き、世界経済を支援し、波及効果、特に人道及びその他の基本的ニーズ並びに脆弱な人々に関するものを軽減することに資する行動を取る。我々は、更なる措置をとる際、食料を標的とせず、農産物の自由な流通を認め、第三国、特に低中所得国に対する潜在的な悪影響及び波及を最小化するためにあらゆる努力を行うことを引き続き確保する。我々は、これらの措置を完全に実施・執行し、制裁回避及びバックフィルに対する警戒を怠らないというコミットメントにおいて結束している。我々は、2022年3月2日及び同月24日の国連総会決議を想起し、世界中の全ての国々に対し、国連憲章の原則を守るために我々と共に立ち上がり、同様の行動を取ることで我々に加わるよう求める。

財政・経済支援:本日時点で、我々は、ウクライナの資金不足を解消し、ウクライナ国民への基本的サービスの提供の確保を継続することを支援するため、2022年にこれまでに最大295億米ドルの予算支援を、供与する用意があるか、又は、プレッジし、提供してきた。全体として、この支援は緊急に必要であり、2014年から2021年までに提供された600億米ドルを超える経済支援に上乗せされるものである。我々は、ウクライナに対する更なる実質的資金提供に関し国際金融機関(IFIs)全体において進行中の作業、特に、世界銀行によるウクライナのためのマルチドナー融資の手段及び国際通貨基金によるウクライナのためのマルチドナー管理勘定の創設を含む世界銀行及び国際通貨基金からの金融支援を歓迎し、支持する。我々は、欧州復興開発銀行(EBRD)及び国際金融公社(IFC)を通じたウクライナの国有企業及び民間部門への総額35億米ドルの追加的に計画されている支援を期待する。我々は、特にガス、電力及び運輸会社に対するEBRDの融資を保証するため、重要インフラに対する特定の支援を提供することを通じたものを含め、EBRDを支援する。我々は、全ての支援において、ウクライナに対する我々の財政的なコミットメントの拠出を加速させることについて緊急に取り組んでいる。さらに、我々は、ウクライナの輸出潜在力を最大化する上でウクライナを支援することにコミットする。我々は、財務大臣に対し、引き続き、ウクライナの資金ニーズを評価し、対処するためにIFIs及びウクライナと協力するよう指示する。我々は、G7貿易大臣に対し、例えばウクライナの輸出品に対する関税を停止するといったことを含め、貿易を通じてウクライナの復興努力を支援する具体的な提案を議論するよう指示する。

復興:我々は、ウクライナの基本的な社会・公共インフラ、都市、産業及び農業設備を含むインフラの壊滅的な破壊、並びに、重要インフラの即時再建の緊急の必要性を認識する。我々は、強力な民主的制度、法の支配及び腐敗対策措置を強化する、持続可能で強じんで、包摂的かつグリーンな経済復興を支えるに当たり、二国間及び多国間のパートナー及び機関との緊密な協調の下、ウクライナが策定し実施する国際復興計画を支援する用意がある。この目的のため、我々は、包括的な復興計画において進展を遂げるためのハイレベル国際専門家会議をウクライナとともに開催するという議長国のイニシアティブを歓迎する。我々は、世界銀行グループのウクライナ向け支援パッケージ、EBRDの強じん性パッケージ、並びに、欧州連合及びその加盟国によるウクライナ復興プラットフォーム及び連帯基金の検討に係る進行中の作業を支持する。コミュニティ、女性の権利団体を含む市民社会組織及び民間部門は、ウクライナの未来を計画する上で積極的に参加すべきである。復旧・復興計画は、社会の全ての構成員、特に戦争の影響を最も受けた人々が等しく利益を受けることを確保することにより、地域の強じん性と社会的結束を構築するべきである。我々は、ウクライナの復興を支援することに強くコミットしており、我々それぞれの取組を強化する。我々はまた、我々の国内法に整合的なロシアの凍結資産の活用を含め、ウクライナの人道ニーズ、早期の復旧及び復興を支援するためのその他の実行可能な選択肢を探求する。我々は、全てのパートナーに対し、我々の取組に参加し、ウクライナが自国の未来を再建するのを支援するために我々と共に関与することを求める。