データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ファクト・シート:移行期にあるアラブ諸国とのドーヴィル・パートナーシップに関するG8の行動

[場所] キャンプデイビッド
[年月日] 2012年5月19日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 中東及び北アフリカにおいて歴史的出来事が起き始めてから一年が経過したが,これらの地域における人々の,自由,人権,民主主義,雇用機会,能力強化及び尊厳に対する願望は衰えていない。キャンプデービッド・サミットにおいて,G8首脳は,移行期にある多くの諸国において,安定化,雇用創出,参加・ガバナンス及び統合という主要優先四分野において達成された重要な進展を認識し,同分野における支援を継続することにコミットした。

安定化{前3文字太字}

 移行期にある諸国からの,改革の追求に必要な経済的安定化の促進支援に対する要請に応え,G8メンバーは次の行動を取る。

 強固で健全かつ持続可能な経済成長に資する経済環境を促進するため,必要に応じて国際通貨基金(IMF)や二国間援助を通じた国外からの資金調達を支援することにより,同地域の移行期にある諸国が自国の経済を安定化させ,当該国主体の計画を遂行することを支援する。

 融資,贈与,財政支援及び技術援助の組合せを通じて成長及び機会を促進する各国主体の改革計画のために,世界銀行,アフリカ開発銀行,欧州投資銀行及び他の国際金融機関を通じた直接援助を奨励し,二国間援助を供与する。

 移行期にある諸国が成長及び雇用を刺激し,国際資本市場へのアクセスを取り戻すことを助けるため,既存の手段があれば二国間で,また多国間機関と協調しつつ,信用強化を供与する新たな「資本市場アクセス・イニシアティブ」を立ち上げる。

雇用創出{前4文字太字}

 移行期にある諸国が,雇用創出を促進し,自国経済から全ての市民が恩恵を受けることを可能にするための支援を要請していることに応え,G8各国は次の措置を支持する。

 この地域における投資のための「特別基金」を始動するため,欧州復興開発銀行(EBRD)の設立協定改正を完了させる取組を主導する。これにより,EBRDは,本年は13億ドルまでの投資を,また,設立条約改正の完全な批准をもって,今後3年間は40億ドルまでの投資を行うことが可能となる。この投資は,中小企業(SMEs)への融資や緊急に必要とされている雇用創出を含む広範な民間セクター開発を支援しつつ,経済変革にコミットしている諸国に移行経済に関するEBRDの専門的知見をもたらすこととなる。

 各国が,経済開発にとって極めて重要な機関を強化し,各国主体の改革実施の助けとなる,贈与,技術援助の供与のための他の二国間・多国間イニシアティブを補完し,ベスト・プラクティスの交換を目的とした新たな「移行基金」を設立する。G8の貢献国は,地域のパートナー国,世界銀行,イスラム開発銀行などの地域機関から250万ドルの当初拠出の基金を設立する。

 新しい学校,交流,研修プログラムを通じて更なる職業教育を支援することにより,若く,勤勉で,決意ある男女の新しい世代に対して,競争的な経済の中で良い職を得るために必要な技術を提供する。

 政策,法律及び規制環境を強化し,金融へのアクセスを改善し,中小企業(SMEs)がより多くの人々を雇用し,より生産性・競争力を高めるために地域・国際市場における機会を活用できるように企業スキルを構築する二国間・多国間援助を通じ,当該地域において数百万の人々を雇用し企業家精神を活用できる活気ある中小企業セクターの潜在力を引き出すための支援を提供する。

参加・ガバナンス{前8文字太字}

 移行期にある諸国が透明性,説明責任及び良きガバナンスを促進する改革について支援を要請していることに応え,G8メンバーは次の行動を取る。

 海外に保管された腐敗による収益の特定・回復のための協力及び能力構築措置を円滑にする「財産回復行動計画」を通じて,奪われた財産の回復を促進する。G8及び本パートナーシップの他のメンバーは,世界銀行グループ及び国連薬物犯罪事務所による奪われた財産の回復(StAR)イニシアティブと連携しつつ,2012年9月に財産回復に関するアラブ・フォーラムを開催する。

 オープン・ガバメント・パートナーシップ(OGP)への加盟に向けて進展が得られている各移行国を支援する。ヨルダンは2012年にOGPに加盟し,2013年に国家行動計画を立ち上げる。チュニジアは2012年にOGPに加盟予定であり,リビア,モロッコ及びエジプトについては,適格性に向けた取組を今夏から開始する予定である。

 エジプト,リビア,モロッコ,ヨルダン及びチュニジアによる,参加型かつ透明な履行レビューを含む国連腐敗防止条約へのコミットメントを歓迎する。G8以外の全てのパートナーシップ諸国が,アラブ腐敗防止・一体性ネットワーク及び国連開発計画アラブ諸国腐敗防止イニシアティブに参加し,関与するための準備を支援する。

 移行期にある諸国に対して,強固で,安定しており,透明性が高く,アクセス可能な金融セクターの発展に資する技術援助を提供すべく,官民セクター出身のボランティア専門家から成る金融セクター諮問部隊を設立する。G8は,研修プログラム及び技術援助の実施を通じ,移行期にある諸国の公的職員に対して研修を提供する。

 移行期にある諸国において制度面での能力を構築し,知識共有を促進し,説明責任及び良きガバナンスの慣行を強化すべく,当該諸国の立法府議員,裁判官,地域及び地方自治体の指導者及び労働組合とG8諸国のカウンターパートとを一組とするパートナーシップ交流プログラムを立ち上げる。

統合{前2文字太字}

 移行期にある諸国が,自国の経済をG8との間や各国相互間で拡大した貿易と投資に開放することに関心を有していることに応え,G8諸国は次の行動を取る。

 市場アクセスを拡大し,貿易障壁を引き下げ,移行期にある諸国とG8諸国との間で拡大した貿易を促進するため,二国間・域内貿易イニシアティブを立ち上げる。これらのイニシアティブには,米国の「中東・北アフリカ貿易投資パートナーシップ」(MENA TIP),現在実施中の欧州連合と南地中海地方との貿易・投資パートナーシップ,特に,可能であれば本年後半に立ち上げられる予定の「深く包括的な自由貿易協定」(DCFTAs),カナダによる交渉完了しているヨルダンとのFTA及び交渉中のモロッコとのFTA,ロシア・アラブ協力フォーラム及び二国間政府間委員会,日本と適切なパートナーシップ諸国との間の投資協定及び日・アラブ経済フォーラムが含まれる。

 貿易円滑化を支援するため,必要に応じて,国際・地域金融機関との間でイニシアティブを発展させる。

 エジプト,ヨルダン,リビア,モロッコ及びチュニジアに焦点を当てた投資を含む,インフラのためのアラブ融資ファシリティの立ち上げを支持し,また,当該地域における連結性を向上させるため,情報技術及び「ハード」及び「ソフト」の双方のインフラへの投資の重要性を確認する。

 「中東・北アフリカ-経済協力開発機構」(MENA-OECD) 投資プログラムにおける取組に基づき,全てのパートナーシップ諸国によって支持された,国際投資の開放性に関する声明を歓迎し,共通の投資原則に基づく投資枠組みや合意の更なる強化を奨励する。

 公共調達における開放性,透明性及び無差別性を実施するルールを通じて経費節約及び説明責任の向上につながる世界貿易機関(WTO)政府調達協定への加入に関するヨルダンのイニシアティブを奨励する。

 国際投資及び国際企業に関するOECD宣言に従おうとするヨルダンとチュニジアの取組を奨励し,他のパートナーシップ諸国による採択を支持する。

 移行期にある諸国にとって極めて重要なセクターとのより緊密な通商関係を促進する。G8は,当該地域における情報通信技術,再生可能エネルギー,農業・食料,インフラ,運輸及び観光に焦点を当てた投資家会合を,パートナーシップ諸国と共催する。

 競争を活発にし,投資制度の強化につながるパートナーシップ諸国における構造改革を支援するために,技術援助を供与する。

追加的背景{前5文字太字}

 移行期にあるアラブ諸国とのドーヴィル・パートナーシップは,「自由で民主的かつ寛容な社会」への移行に関与するアラブ世界の国々を支援するために,2011年にドーヴィルにおいてG8が立ち上げた国際的取組である。パートナーシップは,カナダ,エジプト,欧州連合,フランス,ドイツ,イタリア,日本,ヨルダン,リビア,クウェート,モロッコ,カタール,ロシア,サウジアラビア,チュニジア,トルコ,アラブ首長国連邦,英国及び米国を含む。

 また,同パートナーシップは,エジプト,ヨルダン,リビア,モロッコ及びチュニジアにおける改革への支援にコミットしている国際金融機関(IFI)を含む。アフリカ開発銀行は,IFIプラットフォームの輪番制をとっている議長であり,同プラットフォームは,アフリカ開発銀行,アラブ経済社会開発基金,アラブ通貨基金,欧州投資銀行,欧州復興開発銀行,国際金融公社,国際通貨基金,イスラム開発銀行,石油輸出国機構(OPEC)国際開発基金及び世界銀行を含む。この他,アラブ連盟,経済協力開発機構,国連機関等の幾つかの機関がドーヴィル・パートナーシップを支援してきている。