データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ファクト・シート:エネルギー及び気候変動に関するG8の行動

[場所] キャンプデイビッド
[年月日] 2012年5月19日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 キャンプデービッド・サミットにおいて,G8首脳は,環境に安全で持続可能で,確実かつ受容可能な価格のエネルギー源の発展及びこれに対する普遍的なアクセスは,世界の経済成長にとって及び気候変動問題に対処する世界の取組全般にとって不可欠であることを認識した。このため,G8首脳は,G8が共に取るべき幾つかの行動を特定した。

包括的なエネルギー戦略の追求―安全に{前18文字太字}

・それぞれの国の異なるニーズ及び異なるアプローチを認識しつつ,エネルギー需要を満たすため,幅広いエネルギー源を同時に追求することの価値を認識する。上記の全てのエネルギー源から適切な構成比を追求する上で,我々は,それぞれのエネルギー源は異なる固有のリスクを有し,安全で,効率的に,かつ環境に対して持続可能な形で開発されなければならないことを認識する。

・G20地球海洋環境保護(GMEP)イニシアティブを支持し,全ての関心国や利害関係者が利用可能な,将来の事故の未然防止に資する努力における海洋油田及びガス田の探査及び開発に関するベスト・プラクティスの交換のための「ベスト・プラクティス共有メカニズム」(GMEPメカニズム)を策定する。

・環境に安全で持続可能な生産に向けた戦略に関して情報を共有する我々の努力へのインプットとして,天然ガス開発のための潜在的なベスト・プラクティスに関する国際エネルギー機関(IEA)による作業のレビューを実施することを歓迎し,同意する。

・国際原子力機関(IAEA)の重要な作業,特に原子力安全に関する行動計画の十分な実施,並びに政府,原子力産業及びIAEAの間の強化された協力を認識する。全ての締約国に対し,利用可能な最も効率的かつ実用的な手段により国際的な法的枠組みの有効性を向上させ,かつ,強化するため,来る原子力安全条約特別会合を最大限に活用することを奨励する。来る2012年12月の原子力安全に関する福島閣僚会議の重要性に留意する。

変化しつつある燃料構成比及びインフラへの対応{前22文字太字}

・IEAに対して,他の国際機関と協調して,変化しつつあるエネルギー・ミックスによって生じる世界的なエネルギー需給とインフラ需要に関して想定され得る将来のシナリオについて,既存の作業のレビューを実施し,統合報告書を取りまとめることを要請する。

・環境課題に特に留意しつつ,世界のエネルギー関連インフラの近代化に必要な民間投資のための,保証,政治リスク保険及びその他の形式の支援といった,国際開発金融機関や開発融資機関によるものも含むエネルギー関連インフラ整備に対する革新的で市場に基づく融資手法を歓迎する。

・貿易に対する障壁の除去及びエネルギー分野における好ましい投資環境の整備を含む,経済安全保障を強化し,価格の変動を減少させる手段として,全ての種類のエネルギー源に関して自由貿易を促進する。

・消費国と産出国に対し,対話とガス・データシステムの開発を通じて,ガス市場の透明性を更に高めるよう奨励するとともに,国際エネルギー・フォーラム(IEF)に対し,速やかに本格的なガス分野における共同機関データ・イニシアティブ(JODI-Gas)を立ち上げるよう要請する。

・開かれかつ透明で,コンセンサスを基本とする標準化促進のためのプロセスを支持する。これにより,相互運用性が促進され,系統技術のための国際市場が創出され,貿易が奨励され,効率性が改善される。

再生可能エネルギーの持続可能な普及の促進{前20文字太字}

・「21世紀電力パートナーシップ」の下での「官民リーダーシップ・フォーラム」の立ち上げを含む,クリーン・エネルギー大臣会合でのイニシアティブを通じて,電力系統管理運営システムを改良するための協力を支持する。

・IEAに対し,国際再生可能エネルギー機関(IRENA)及び他の国際組織と協力し, G8各国における再生可能エネルギー開発と普及政策に関する次の事項を含む最近の分析を取りまとめるよう委任する。

 ○研究・開発のための政府の財政支援に関する経験と革新的取組(「エネルギー技術革新」に関する報告書から抜粋)

 ○技術間の市場競争に合致した形で再生可能エネルギーの普及を促進するための規制・一定割合導入義務化基準,固定価格買取制度及びその他の補助金を含む政策の効果

・再生可能エネルギーの促進とスマートグリッド・ソリューションに関するIEAの広範囲に及ぶ最近の作業を利用しつつ,再生可能エネルギー源を電力系統に統合するためのベスト・プラクティスを特定するため,IEAに対し,既存の規制モデルやグリッド管理システムに関する最近の評価を取りまとめるよう要請する。これらの開発は,全ての再生可能エネルギーが競争的環境において自由に開発されることを可能にするような,電力部門の持続可能かつ長期的な近代化,技術的進展及び経済成長を目的とすべきである。

・最新のバイオエネルギーの生産及び利用のために一連の持続性指標を完成させ,また,西アフリカでの地域フォーラムを通じて能力構築活動を開始したことに関し,国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)を称賛する。GBEPに対し,持続可能な開発のための最新のバイオエネルギーを促進する能力構築活動を継続するよう促す。

石油・ガスの供給途絶への準備強化{前16文字太字}

・IEAに対し,他の国際機関と協調して,いかに国際エネルギー市場における変化が石油及びガスの供給途絶に対する準備に影響を与えているかにつき分析するよう要請する。レビューは次の事項を含む。

 ○エネルギー供給途絶による経済的影響を軽減するための,例えば原油と石油製品の比率等の戦略的備蓄の適切なレベルと構成比。

 ○新興消費国による備蓄強化の可能性,また新興消費国との政策協調の可能性を含む,供給途絶に対する他の産消国との共同対応の調整。

設備・機器の効率性を含むエネルギー効率の促進{前22文字太字}

・全ての政府に対し,次の事項の実施を奨励することにより,設備・機器の効率性向上の世界的なペースを加速する。

 ○「超効率機器の普及」(SEAD)イニシアティブを含む,クリーン・エネルギー大臣会合の下で現在行われている努力を基礎とする。

 ○SEADを通じたものを含め,製造者が製品のテストを一度行った上で世界的に販売することを容認するための,設備及びその他の消費財のエネルギー効率に関する比較可能で透明性のある試験手続の承認に向けた取組を進める。この努力は,非関税障壁を低減させ,エネルギー効率政策における国際比較性を改善するために,既存の標準化機関が行っている作業を基に行われる。

・産業,政府及び他の建物におけるエネルギー管理システムの利用奨励のため,クリーン・エネルギー大臣会合「エネルギー効率向上に関する国際パートナーシップ(GSEP)」を通じたものを含め,協働し,関連するベスト・プラクティスを共有することに同意する。

短期寿命気候汚染物質の減少を含む,気候変動への対処{前24文字太字}

・緩和努力を増加させるとの精神の下,我々は,集団として,2012年2月16日に立ち上げられた「短期寿命気候汚染物質削減の気候と大気浄化のコアリション」に参加することに同意する。この新たなイニシアティブは,二酸化炭素排出に係る取組を補完することにより気候変動に対応する上での我々の集団的な野心を引き上げる。主に,メタン,ブラックカーボン及びHFCなどの短期的な汚染物質削減に向けた戦略を進めることにより,我々はエネルギー安全保障とともに,地球温暖化の抑制,健康の増進及び農業生産性の向上に寄与することができる。

・短期的な気候汚染の減少を世界銀行の活動に統合するための方策に関する報告書を準備するよう世界銀行に対し委任するとともに,成果に応じて支払うメカニズムを通じたものを含む,メタンを減少させるプロジェクトに対し融資する新たなアプローチを評価するため,関心国から専門家を招集するよう求める。

 2012年のG8議長国の役割として,米国は,G8のパートナーと共に,2012年中に,これらの行動についてフォローアップするためのメカニズムを開発するため協働する予定である。