データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G20トロント・サミット宣言(仮訳)

[場所] トロント
[年月日] 2010年6月27日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

前文

1.トロントにおいて、我々は、我々の国際経済協力に関する第一のフォーラムという新たな役割として最初のG20サミットを開催した。

2.世界経済危機への対処における我々の成果に基づき、我々は、成長及び質の高い雇用の完全な回復を確保し、金融システムを改革及び強化し、強固で持続可能かつ均衡ある世界の成長を実現するために我々がとるべき次の措置に合意した。

3.今日までの我々の努力は良い成果を挙げた。前例のない世界的に調和された財政及び金融刺激策は、民間の需要と貸付けの回復を助ける上で主要な役割を果たしている。

 我々は、我々の金融システムの安定性及び強度を向上させる強力な措置をとっている。国際金融機関のための大幅な資金の増加は、最も脆弱な人々への危機の影響を安定化して対処することを助けている。現在行われているガバナンスとマネジメントに関する改革は、完了されなくてはならず、またこれらの機関の有効性及び適切性を強化することとなろう。我々は保護主義に対抗するとの強固なコミットメントを成功裏に維持してきた。

4.ただし、深刻な挑戦はまだ残っている。成長は戻りつつあるものの、回復は一様でなく脆弱であり、多くの国で失業は依然容認できない水準にあり、危機の社会的な影響はいまだ広く実感されている。回復を強化することが鍵である。回復を持続するために、我々は、強固な民間の需要のための状況を創出することに取り組みつつ、既存の刺激策の実施を継続する必要がある。同時に、最近の出来事は、財政の持続可能性確保の重要性、並びに我々の各国が、財政の持続可能性を実現するために各国の状況に即して差別化された、信頼に足る、適切な段階を設けた、及び成長に配慮した計画を策定する必要性を強調している。深刻な財政課題を抱える国々は、健全化のペースを加速する必要がある。これは、世界的な成長が引き続き持続可能な道程を進むことを確保することを助けるために、世界的な需要をリバランスする努力と結合されるべきである。我々の金融機関の透明性を増大させ、バランスシートを強化し、実体経済におけるものを含む、信用の利用可能性及び急成長を支援するため、金融の修復及び改革に関する一層の進ちょくもまた必要である。我々は、我々の市民のニーズにこたえる、より良く規制されたより強じんな金融システムを構築するための新たな措置をとった。また、国際金融機関の改革を完了させる差し迫った必要性がある。

5.雇用の増強を達成すること及び市民の、特に最も脆弱な人々の社会的保護の重要性を認識し、我々は2010年4月に会合した雇用労働大臣会合の勧告及びILOとOECD共同による訓練戦略を歓迎する。

6.我々は、我々が行ったコミットメントに責任を負うことを決意し、我々の大臣及び実務者に、合意した期限内にこれらを完全に実施するため、すべての必要な措置をとるよう指示した。

強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み

7.G20の最も優先的な課題は、回復を保護し、強化すること、及び強固で持続可能かつ均衡ある成長のための基礎を築き、我々の金融システムをリスクに対して強化することである。我々は、したがって、多くのG20諸国による、需要を拡大し、成長をリバランスさせ、我々の財政を強化し、我々の金融システムをより強固でより透明なものにするためにとられた行動及びコミットメントを歓迎する。これらの方策は、我々の集合的幸福に対する多大な貢献を示すとともに、これまでの行動の上に立脚するものである。我々は、経済成長を強化し、強固で持続的な回復を促進するために、引き続き協力し、適切な行動をとる。

8.我々がピッツバーグで立ち上げた、強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組みは、政策措置の集合的な整合性を評価し、政策枠組みを強化することによって、我々の共通目的を達成するための方法である。

9.我々は、相互評価プロセスの第一段階を完了し、より良い結果を得ることができると結論づけた。IMFと世界銀行によると、我々がより野心的な改革の道を選べば、中期的には以下が見込まれている。

●世界の生産量が4兆米ドル近く押し上がる。

●数千万の追加的雇用が創出される。

●更に多くの人々が貧困から救い出される。

●世界的な不均衡が大幅に縮小する。

持続的な世界経済の成長増進は、最貧国の人々を含む、万人の生活を改善するために、我々がとり得る最も重要な措置である。

10.我々は、回復の持続、雇用の創出、及びより強固で、より持続可能で、より均衡のとれた成長の達成のために協調行動をとることにコミットしている。これらは、各国の状況に即して差別化される。本日我々は以下に合意した。

●先進国において、財政刺激策を遂行し、今後実施される「成長に配慮した」財政健全化計画を伝達し、それを将来に向けて実施すること。健全な財政は、回復を維持し、新しいショックに対応する柔軟性を提供し、人口の高齢化という課題に対応する能力を確保し、並びに将来の世代に財政赤字及び債務を残すことを回避するために必要不可欠である。調整の経路は、民間需要の回復を持続させるため、注意深く水準調整されなければならない。幾つかの主要国が同時に財政調整を行うことは、回復に悪影響を及ぼすリスクがある。必要な国で健全化が行われないことが、信認を損ない、成長を阻害するリスクがある。このバランスを反映し、先進国は、2013年までに少なくとも赤字を半減させ、2016年までに政府債務の対GDP比を安定化又は低下させる財政計画にコミットした。日本の状況を認識し、我々は、成長戦略とともに最近発表された日本政府の財政健全化計画を歓迎する。深刻な財政課題がある国は、健全化のペースを加速する必要がある。財政健全化計画は、信頼に足る、明確に説明され、国の状況に即して差別化され、経済成長を促進する措置に焦点を当てる。

●幾つかの新興国において、社会セーフティ・ネットを強化し、コーポレート・ガバナンス改革、金融市場の発展、インフラ支出及び為替レートの柔軟性の向上を強化する。

●我々の成長見通しを増加及び持続させるために、G20メンバー全体において構造改革を追求する。

●世界的な需要のリバランスを更に推進する。

金融政策は、物価の安定を達成するために適切なものであり続け、それにより回復に貢献する。

11.先進赤字国は、開かれた市場を維持し、輸出競争力を強化する一方、国内貯蓄を拡大するための行動をとるべきである。

12.黒字国は、その外需への依存を低下させ、国内の成長の源により焦点を当てるための改革を実施する。

13.我々は、開発の格差を縮小するとともに、我々の政策行動が低所得国に与える影響を考慮しなければならないことにコミットしている。我々は、官民双方からの開発資金を奨励する新しいアプローチを通じることも含め、開発資金を引き続き支援する。

14.我々は、これらの措置が国レベルで実施される必要があり、個別の国の状況に即して設計される必要があることを認識する。この過程を円滑にするために、我々は、各国主導の協力的な相互評価の第二段階が国及び欧州地域のレベルで実施されること、並びに必要があれば、強固で持続可能かつ均衡ある成長の達成に向けて我々が採用する追加的措置を特定することに合意した。

金融セクター改革

15.我々は、我々の経済のニーズに寄与し、モラルハザードを抑制し、システミックなリスクの積み上がりを抑制し、強固で安定した経済成長を支援する、より強じんな金融システムを構築している。我々は、健全性監督の強化、リスク管理の改善、透明性の促進、及び国際協力を強化することによって、世界的な金融システムを強化してきた。これまでに多くのことが達成された。我々は、欧州安定化メカニズム及び同ファシリティの完全な実施、欧州の銀行において現在実施されているストレス・テストの結果を公表するとのEUの決定、並びに最近の米国の金融改革法案を歓迎する。

16.しかし、成すべきことは更にある。したがって、我々は、ワシントン、ロンドン及びピッツバーグ・サミットにおいてなされた金融セクター改革に向けたコミットメントを、合意された又は前倒しされた期間で達成するために協働することを誓約する。新しい基準への移行は、先進国及び新興国における改革の累積的なマクロ経済への影響を勘案する。我々は、我々のすべての決定が完全に実施されることを確保するために、国際的な評価及びピア・レビューにコミットしている。

17.改革アジェンダは、4つの柱の上に築かれる。

18.第一の柱は、強固な規制枠組みである。我々は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)による、銀行資本と流動性要件の新たな国際基準に向けた進ちょくを評価するとともに、その作業を歓迎及び支持する。我々の銀行システムの強じん性の水準を大幅に引き上げる改革に関して、著しい進展が達成された。新たな改革が完全に実施される時に、資本の量は大幅に増加し、資本の質は大きく改善される。このことは、例外的な政府支援を受けなくても、今次金融危機に比肩する規模のストレスに金融機関が耐え得ることを可能にする。我々は、新しい資本の枠組みについてソウル・サミットの際に合意に達することを支持する。我々は、すべてのメンバーが新しい基準を採用するとともに、持続的な回復に整合的で、市場の混乱を押さえるような時間的枠組みにより、かつ金融安定理事会(FSB)及びBCBSのマクロ経済への影響度調査に基づく移行期間を経て、 2012年末までを目標に、これらの基準を段階的に実施することで合意した。段階的実施の枠組みは、各国の異なる出発点や状況を反映し、新基準との間の当初の差異が各国が新たな国際基準に収れんするに従って、時間をかけて縮小するように設定されるものとする。

19.我々は、ヘッジファンド、信用格付会社、及び店頭デリバティブの透明性や規制監督を国際的に整合的かつ無差別な方法で改善する、強力な措置の実施を加速することによって、金融市場のインフラを強化することに合意した。我々は、単一の質の高い国際的な会計基準の実現及び健全な報酬のためのFSB基準の実施が重要であることを改めて強調した。

20.第二の柱は、実効的な監督である。我々は、新たな、より強固なルールを、より実効的な監督によって補完しなくてはならないことに合意した。我々は、FSBに対して、IMFと協議し、特に監督当局の権限、能力及び資源、並びに早期の介入を含め、積極的にリスクを特定し対処するために採用されるべき特定の権能に関して、監督を強化する勧告を、2010年10月に財務大臣及び中央銀行総裁に報告するよう指示した。

21.第三の柱は破たん処理及びシステミックな機関に対する対処である。我々は、危機時にすべての種類の金融機関を、納税者が最終的に負担することなく再編又は破たん処理する権能と手法を我々が備えるシステムを設計し、実施することにコミットしており、その実施の指針となる原則を採択した。我々は、FSBに対し、ソウル・サミットまでに、システム上重要な金融機関に関する問題に効果的に対処し、また破たん処理を行うための具体的な政策提言を検討し、策定するよう要請した。モラルハザードのリスクを減少させるため、実効的な破たん処理手法、強固な健全性や監督要件、核となる金融市場のインフラを含めた政策枠組みを持つ必要がある。我々は、金融システムの修復又は破たん処理の資金を提供するため及び金融システムからのリスクを減少させるための政府の介入が行われる場合には、関連する負担に対し金融セクターが公平かつ実質的な貢献を行うべきであることに合意した。我々は、この目的のため幅広い政策手法があることを認識した。金融機関への賦課金を追求している国々もあれば、異なるアプローチを追求している国々もある。

22.第四の柱は、透明性のある国際的な評価及びピア・レビューである。我々は、IMF及び世界銀行の金融セクター評価(FSAP)に対する我々のコミットメントを強固にするとともに、FSBを通じて実施されている強固で透明性のあるピア・レビューを支援することを誓約した。我々は、タックス・ヘイブン、資金洗浄及びテロ資金供与との闘い、並びに健全性基準の遵守に関し、包括的、整合的かつ透明性のある評価に基づき、非協力的な国・地域に対処している。

国際金融機関と開発

23.国際金融機関(IFIs)は、金融経済危機に対するグローバルな対応の中心にあり、IMFによる7500億ドルや国際開発金融機関(MDBs)による2350億ドルなど極めて重要な資金を動員した。これは、我々の世界的な協力の基盤として、これらの機関の価値を強調している。

24.将来、IFIsを我々にとってより一層強力なパートナーとするため、我々は、その正当性、信頼性及び有効性を強化することにコミットする。

25.このために、我々は、国際開発金融機関に関するピッツバーグ・サミットのコミットメントを達成した。これは、貸出し能力のおおむね倍増を可能にする3500億ドルのMDBs増資を含む。この新たな資本は、これらの機関をより透明で、説明責任を果たし、有効な機関とし、また貧困層の生活の向上、成長の支援、並びに気候変動及び食料安全保障に当てた焦点を強化するために、現在行われている重要な改革を伴うものである。

16.我々は、国際開発金融機関の譲許的融資ファシリティ、特に今年増資を行う、国際開発協会(IDA)及びアフリカ開発基金の適切な資本を確保するとのコミットメントを達成する。

27.我々は、途上国・体制移行国に投票権を4.59%増加させる、2008年以来世界銀行の出資国が合意したボイス改革を支持した。

28.我々は、2008年のクォータ及びボイス改革、並びに新規借入取極(NAB)の拡大の承認を確保するとの我々の決意を強調する。

29.我々は、ピッツバーグでなされたコミットメントと整合的に、IMFがソウル・サミットまでにクォータ改革を完了し、並行してその他のガバナンス改革を実施するために、なお必要とされる多くの作業の加速を求めた。

30.本日、我々は、すべてのIFIsの長及び上級リーダーに対する開かれた、透明で、能力本位の選任プロセスに関する我々のこれまでのコミットメントに立脚する。我々は、選任プロセスを、より広い改革の文脈において、ソウル・サミットに至るまでの間に強化する。

31.我々は、財務大臣及び中央銀行総裁に対し、ソウル・サミットにおける我々の検討のために、グローバル・フィナンシャル・セーフティ・ネット強化のための政策の選択肢を用意するよう指示することに合意した。我々の目標は、より安定し、強じんな国際金融システムを構築することである。

32.ハイチの人々と共に結束し、ハイチのIFIに対する債務の全額帳消しの実施を含む、緊急に必要とされている復興支援の提供を行う。我々は、ハイチ復興開発基金の設立を歓迎する。

33.我々は、中小企業(SME)金融チャレンジを立ち上げ、MDBsの力強い支援を通じたものを含む、優秀提案の実施のための資金を動員することにコミットする。我々は、革新的な金融包摂のための一連の原則を作成した。

34.我々は、ピッツバーグでの食料安全保障に関するコミットメントとして、農業及び食料安全保障のためのグローバル・パートナーシップの実施を更に進めるための重要な措置である、世界農業食料安全保障プログラムの立ち上げを歓迎し、更なる貢献を奨励する。農業における革新のために民間部門を利用するため、革新的で結果に基づいたメカニズムを検討することにコミットする。我々は、ラクイラ・イニシアティブの完全な実施及びその原則の適用を求める。

保護主義との闘いと貿易と投資の促進

35.世界経済危機はここ70年以上の間で最も急激な貿易の落ち込みをもたらしたが、G20諸国は貿易と投資が提供する機会に市場を開いておくことを選択した。それは正しい選択であった。

36.したがって、我々は、投資又は物品・サービスの貿易に対して障壁を高めることはせず、また、新たな障壁も設けず、新たな輸出規制を課さず、若しくは輸出を刺激するために世界貿易機関(WTO)非整合的な措置をとらないとのコミットメントを更に3年間、2013年末まで更新し、そのような措置がとられる場合には是正していくことにコミットする。我々は、財政政策及び金融セクター支援のための対策を含む、我々の国内政策措置による、貿易及び投資に対する、いかなる負の影響も最小化する。我々は、WTO、OECD及び国連貿易開発会議(UNCTAD)に対し、それぞれの権限の範囲内で引き続き状況を監視し、四半期ごとにこれらのコミットメントへの遵守について公表することを求める。

37.開かれた市場は、成長と雇用創出を支え、強固で持続可能かつ均衡ある成長のためのG20の枠組みの下での目標達成に、極めて重要な役割を果たす。我々は、雇用創出が貿易自由化への政治的支持を動員する中心であることに合意し、OECD、ILO、世界銀行及びWTOに対し、ソウル・サミットにおいて、貿易自由化が雇用や成長に与える利益について報告するよう求める。

38.我々は、したがって、WTOドーハ開発ラウンドを、そのマンデートと整合的に及びこれまでの進展を基礎として、できるだけ早期にバランスのとれた野心的な妥結に導くことについての支持を改めて表明する。我々は、それぞれの交渉代表に対し、あらゆる交渉の場を使ってこの目的を追求し、その進ちょくについてソウルでの次回会合において報告を行うよう求め、同会合において我々は交渉状況と今後の進め方について議論する。

39.我々は、「貿易のための援助」のモメンタムを維持することにコミットする。我々は、世界銀行や国際開発金融機関を含む国際機関が能力を強化し、世界貿易を押し上げる貿易円滑化の取組を進めるよう求める。

他の論点と今後の課題

40.我々は、腐敗は、市場の公正性を脅かし、公平な競争を弱体化させ、資源の配分をゆがめ、公衆の信頼を損ない、法の支配を弱めるものであることに合意する。我々は、すべてのG20メンバーによる国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准と完全な実施を求め、他の国々も同様に行動することを奨励する。我々はUNCACの規定に従ってレビューを完全に実施する。腐敗に対処するためのピッツバーグ以降の進展に基づき、我々は、韓国での首脳による検討のため、G20が、強力かつ効果的な贈賄防止規則の採用及び執行、官民セクターにおける腐敗との闘い、腐敗した個人による世界金融システムへのアクセス防止、査証拒否、犯罪人引渡し及び資産回復における協力、並びに腐敗に対して立ち上がる内部通報者の保護を含むがこれに限定されない鍵となる分野において、引き続き腐敗防止の国際的な取組に実際的かつ価値のある貢献を行い、模範を示す方法について包括的な勧告を行うための、専門家による作業部会の設置に合意する。

41.我々は、グリーンな回復及び持続可能な世界的な成長に対する我々のコミットメントを改めて表明する。我々のうち、コペンハーゲン合意に賛同した者は、合意及びその実施への支持を再確認し、他にも同合意に賛同するよう求める。我々は目的規定及び共通であるが差異のある責任とそれぞれの能力を含む原則に基づき、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下での交渉に従事することにコミットし、カンクン会議の包括的なプロセスを通じて成功裏の結果を確保することを決意している。我々は2010年11月29日から12月10日まで、カンクンにおいて、国連気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)を主催するメキシコに感謝し、交渉を促進するための努力に謝意を表する。我々はとりわけ革新的資金について国連事務総長の気候変動資金に関するハイレベル諮問グループの結果に期待している。

42.我々は、IEA、OPEC、OECD及び世界銀行からのエネルギー補助金に関する報告書に謝意をもって留意する。我々は、脆弱なグループと彼らの開発ニーズを考慮に入れつつ、無駄な消費を助長する非効率な化石燃料補助金の中期的な合理化と段階的廃止のため、各国の状況に基づいて実施戦略及び予定表を策定した、財務及びエネルギー大臣の作業を歓迎する。我々はまた、国ごとの戦略の継続的かつ完全な実施を奨励し、次回のサミットにおいてこのコミットメントに向けた進ちょくを引き続きレビューする。

43.メキシコ湾における最近の石油流出を受け、我々は海洋環境保護、沖合の採掘及び開発並びに運輸に関する事故の予防、及びその結果への対処につき、ベスト・プラクティスを共有する必要性を認識する。

44.我々は2010年が開発課題にとって重要な年であることを認識する。2010年9月のミレニアム開発目標(MDGs)国連首脳会合は、世界的開発アジェンダ及び世界的なパートナーシップを再確認し、 2015年までにMDGsを達成するための万人のための行動について合意し、最貧国を支援するための我々それぞれのコミットメントを再確認するための極めて重要な機会となる。

45.この点について、後発開発途上国を世界経済システムにおける積極的な参加者かつ受益者とするよう、後発開発途上国と取り組むことが重要である。したがって、我々は2011年6月に第4回国連後発開発途上国会議を開催するとのトルコの決定に感謝する。

46.我々は、グローバル・パルス・イニシアティブの中間報告を歓迎し、更新を期待する。

47.開発の格差を是正し、貧困を削減することは、強固で持続可能かつ均衡ある成長の達成、及び万人のためのより強固で強じんな世界経済の確保という、我々のより広範な目標に不可欠である。この点に関し、我々は、作業部会を設置し、経済の成長と強じん性を促進するための措置にG20が焦点を当てていることと整合的に、ソウル・サミットで採択される開発アジェンダ及び複数年行動計画を策定するよう任務を課すことに合意する。

48.我々は、次回は、2010年11月11日〜12日に、韓国ソウルにおいて会合する。我々は2011年11月議長国フランスの下で、2012年に議長国メキシコの下で会合する。

49.我々は、成功したトロント・サミットを開催したカナダに感謝する。

別添Ⅰ:強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み

1.ワシントン、ロンドン及びピッツバーグのG20サミットで合意した例外的かつ高度に調和された政策措置の結果として、世界経済は予想されていたよりも速く回復している。過去2年間の我々の断固たる、前例のない行動は、景気の下降を抑え、回復を促進してきた。

2.しかし、リスクは残っている。失業率は多くのG20諸国で容認できないほど高いままである。G20メンバー間で、先進国の中でも、先進国と新興国の間でも、回復は一様でない。これは、継続的な経済拡大に対するリスクをもたらす。更なる政策措置がなければ、世界的な経常収支不均衡が再び拡大するリスクがある。我々の金融セクターの修復及び改革項目の進ちょくには相当の進展があったが、依然金融市場は脆弱であり、与信の流れは抑制されている。幾つかの国々における巨額の財政赤字と上昇する債務の水準に対する懸念はまた、不確実性及び金融市場の変動の要因となっている。

3.G20の最も優先的な課題は、我々の金融システムをリスクに対して強化することを含め、回復を確保し、強化すること、及び強固で持続可能かつ均衡ある成長のための基礎を築くことである。我々は、したがって、多くのG20諸国によってとられた行動及びコミットメントを歓迎する。最近の措置の中で、我々は特に、欧州金融安定化メカニズム及び同ファシリティの完全な実施、欧州の銀行において現在実施されているストレス・テストの結果を公表するとのEUの決定、並びに多くのG20の国々における、財政健全化計画及び目標に関する最近の発表を歓迎する。これらは、我々の集合的幸福に対する多大な貢献を示すとともに、我々のこれまでの行動の上に立脚する。我々は、経済成長を強化し、強固で持続的な回復を促進するために引き続き協力し、適切な行動をとる。

4.我々がピッツバーグで立ち上げた、強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組みは、我々の共通目標を達成するための手段である。G20メンバーは、世界経済全体の健全性を確保するため、国際社会に責任を有する。我々は我々の共通目標を達成するために、我々の政策行動の集合的な整合性を評価し、政策枠組みを強化することにコミットした。我々の集合的な政策行動を通じて、我々は、成長が持続可能で、より均衡がとれ、世界のあらゆる国・地域に共有され、及び我々の開発目標と整合的であることを確保する。

5.我々は、我々の相互評価プロセスの第一段階を完了した。ピッツバーグで我々が要請したように、G20財務大臣・中央銀行総裁は、IMF、世界銀行、OECD、ILO、及びその他の国際機関の支援を受けて、我々の個々の政策枠組みの集合的な整合性と政策シナリオ案の下での世界経済の見通しを評価した。

6.評価によれば、調整された政策対応がなければ、世界の生産量は恐らく危機前のトレンドを下回ったままとなり得、大多数の国で失業率は危機前よりも高い水準にとどまり、幾つかの先進国の財政赤字及び債務は容認できないほど高い水準に達し、並びに危機の間縮小した世界的な経常収支不均衡は再び拡大する。さらに、この見通しは、大きな下方リスクにさらされている。

7.我々は、より良い結果を得ることができると結論づけた。IMFと世界銀行は、我々がより野心的な改革の経路を選べば、中期的には我々は以下のことを成し得ると見込んでいる。

●世界の生産量を最大4兆米ドル押し上げる。

●概算で5200万人の雇用を創出する。

●最大で9000万人の人々を貧困から救い出す。及び、

●世界的な経常収支不均衡を大幅に縮小する。

 我々が調和された方法で行動すれば、すべての地域が、現在及び将来においてより豊かになる。さらに、持続的な世界経済の成長を増進することは、最貧国の人々を含む、万人の生活を改善するために、我々がとり得る最も重要な措置である。

8.我々は、回復の持続、雇用の創出、及びより強固で、より持続可能で、より均衡のとれた成長の達成のために協調行動をとることにコミットしている。これらは、各国の状況に即して差別化される。本日我々は以下に合意した。

●先進国において、財政刺激策を遂行し、「成長に配慮した」財政健全化計画を説明し、それを将来に向けて実施すること。

●幾つかの新興国において、社会セーフティ・ネットを強化し、コーポレート・ガバナンス改革、金融市場の発展、インフラに対する支出を強化し、為替レートの柔軟性を拡大すること。

●我々の成長見通しを増加及び持続させるために、G20メンバー全体において構造改革を追求すること。及び、

●世界的な需要のリバランスを更に進展すること。

金融政策は、物価の安定を達成するために適切なものであり続け、それにより回復に貢献する。

9.我々は、先進国において、財政刺激策を遂行し、今後実施される「成長に配慮した」財政健全化計画を説明することに合意した。健全な財政は、回復を維持し、新たなショックに対応する柔軟性を提供し、人口の高齢化という課題に対応する能力を確保し、並びに将来の世代に赤字及び債務という遺産を残すことを回避するために必要不可欠である。調整経路は、民間需要の回復を持続させるため、注意深く水準調整されなければならない。幾つかの主要国が同時に財政調整を行うことが、回復に悪影響を及ぼすリスクがある。また、必要な国で健全化が行われないことは、信認を損ない、成長を阻害するリスクがある。このバランスを反映し、先進国は、 2013年までに赤字を少なくとも半減させ、2016年までに政府債務の対GDP比を安定化又は低下させる財政計画にコミットした。日本の状況を認識し、我々は、成長戦略とともに最近発表された日本政府の財政健全化計画を歓迎する。深刻な財政課題がある国は、財政健全化のペースを加速する必要がある。財政健全化計画は、信頼に足る、明確に説明されるもので、国の状況に即して差別化され、経済成長を促進する措置に焦点を当てる。

10.我々は、先進国によるこれらの財政健全化計画の指針となる一連の原則に合意した。

財政健全化計画は信頼に足るものである。かかる計画は、経済成長及び各国の財政状況に関する慎重な仮定に基づくものであり、財政の持続可能性を確保するとの目標への道程を達成するための具体的な方策を特定するものである。予算枠組みと制度の強化は、健全化戦略の信頼性を支えることを助け得る。

今こそ我々の中期的財政計画を説明すべき時である。我々は、財政を持続可能なものとするための明確で信頼に足る計画を作り上げる。財政刺激策を引き揚げ、赤字及び債務を減少させるスピードとタイミングは、各国の状況及び世界経済のニーズに即して差別化される。しかし、健全化は2011年には先進国において開始すべきであり、現在重大な財政課題に直面している国々はより早く開始すべきであることは明らかである。

財政健全化は経済成長を促進する措置に焦点を当てる。我々は、資源が最も必要とされる箇所に資源を配分しつつ、我々の介入に伴う全体の費用を削減することを助けるため、より効率的に財政資金を使用する方法を模索する。加えて、我々は、長期的な成長を促進する構造改革に焦点を当てる。

11.先進赤字国は、開かれた市場を維持し、輸出競争力を強化しつつ、国内貯蓄を拡大するための行動をとるべきである。

12.黒字国は、その外需への依存を減少させ、国内の成長の源により焦点を当てるための改革を実施する。これは、外部からのショックに対する彼らの強じん性を強化し、より安定的な成長を促進することを助ける。これを行うために、先進黒字国は内需の増加を支援する構造改革に焦点を当てる。新興黒字国は国の状況に即して次の改革を実施する。

●予防的動機に基づく貯蓄を減少させ、民間支出を刺激することを助けるために、(公的医療保険及び年金制度のような)社会セーフティ・ネット、コーポレート・ガバナンス及び金融市場の発展を強化すること。

●生産能力を増強し、供給面のボトルネックを削減することを助けるためにインフラ支出を増加させること。及び、

●根底にある経済のファンダメンタルズを反映するために為替レートの柔軟性を向上させること。為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得る。根底にある経済のファンダメンタルズを反映し市場で形成される為替レートは、世界経済の安定に資する。

13.すべてのG20メンバーにおいて、我々は、構造改革が経済成長及び世界の厚生に多大な影響を与え得ることを認識する。我々は、最も脆弱な人々に特に注意を払いつつ、我々の経済の潜在成長を向上させる措置を実施する。改革は、賃金が生産性とともに上昇すれば、広範な需要の拡大を支援し得る。より市場競争及び経済成長を支援する政策と、国の状況と整合的な社会セーフティ・ネットを保持する政策との間の適切な均衡をとることが重要となる。これらの措置全体はまた、需要を引き出すことを助ける。これらの措置は以下を含む。

●先進国、特に危機の間生産能力を幾分喪失したと見込まれる国における製品、サービス及び労働市場の改革。労働市場改革は、より的を絞った失業給付及びより効率的な積極的労働市場政策(職業再訓練、求職活動及び能力開発プログラム、並びに労働移動の向上等)を含み得る。それはまた、雇用を支える、賃金交渉制度のための適切な条件の導入を含み得る。製品及びサービス市場改革は、サービスセクターにおける競争の強化、ネットワーク産業、実務サービス及び流通セクターにおける競争障壁の削減、技術革新の奨励、並びに外国との競争に対する障壁の更なる削減を含み得る。

●新興市場国における労働移動に対する制限の削減、外国からの投資機会の向上、及び製品市場規制の簡素化。

●新たな保護主義的措置の回避。

●貿易の流れを通じ世界的な成長を加速させるためのドーハ・ラウンドの妥結。開かれた貿易は万人に多大な利益をもたらし、世界的なリバランスを促進し得る。

●金融の修復及び改革を加速させるための行動。先進国における金融セクターの規制と監督の弱さが、最近の危機を招いた。我々は、G20の金融改革アジェンダを実施し、実体経済のニーズにこたえる、より強固な金融システムを確保する。危機の中心ではないが、幾つかの新興国の金融セクターは、高い経済成長率及び開発を促進し、維持するために必要な深度・幅のあるサービスを提供できるように、更に発展する必要がある。先進国における金融改革が、新興・途上国への資金の流れに及ぼすどのような悪影響も考慮することが重要である。また、開かれた資本市場を確保し、金融保護主義を回避するためにも警戒が必要である。

14.我々は、2010年4月に会合を行った労働及び雇用大臣による、世界経済危機の雇用への影響に関する勧告を歓迎する。我々は、強固な雇用増加の達成及び最も脆弱な人々に対する社会的保護の提供へのコミットメントを再確認する。効果的な雇用政策は、質の高い雇用を回復の中心に置くべきである。我々は、OECDと協力した国際労働機関(ILO)による、現在及び将来の職に必要とされる技能を労働者に身につけさせる訓練戦略に関する取組に対して、謝意を表する。

15.我々は、開発の格差を縮小するとともに、我々の政策行動が低所得国に与える影響を考慮しなければならないことにコミットしている。我々は、官民双方からの開発資金を奨励する新しいアプローチを通じることも含め、開発資金を引き続き支援する。危機は、世界のあらゆる地域における貧困国の開発軌道に長期的に持続する影響を与える。これらの影響の中でも、途上国は官民双方からの資金確保において、より多くの課題に直面するだろう。我々の多くが、事前購入制度、中小企業(SME)チャレンジ及び金融包摂に関する最近の進展等の資金の革新的アプローチを実施することを通じて、この資金不足への対処を助けるための措置を既にとっている。低所得国は、より強固で、より均衡のとれた世界経済の成長に貢献する可能性を有しており、投資先の市場としてみなされるべきである。

16.これらの措置は国レベルで実施される必要があり、個別国の状況に即して調整される。我々は幾つかのG20メンバーにより発表された、我々の共通目標の達成に向けた追加的な措置を歓迎する。

17.このプロセスを促進するために、我々の各国主導の協力的な相互評価の第二段階は、国及び欧州のレベルで実施される。各G20メンバーは、より強固で、より持続可能で、かつより均衡のとれた成長を確保するために、本日我々が合意した政策を実施するためにとっている措置を特定する。我々は、我々の財務大臣及び中央銀行総裁に対し、これらの措置を精査し、次回の我々の会合で報告することを求める。我々は、必要に応じ、IMF、世界銀行、OECD、ILO及び他の国際機関の専門知識を引き続き活用する。これらの措置は、ソウル・サミットで発表される我々の包括的な行動計画の基礎を形成する。強固で持続可能かつより均衡のとれた成長を追求するに当たり、我々は経済発展の社会的及び環境的側面を勘案するための測定方法への取組を引き続き奨励する。

18.我々が既にとってきた重要な政策措置とともに、本日我々が行う政策コミットメントにより、強固で持続可能かつ均衡ある成長という我々の目標を達成することが可能となり、その便益がG20内及び世界中で実感される。

別添II:金融セクター改革

1.金融危機によって、大きなコストが生じた。この危機の再発は許されない。最近の金融市場の変動は、金融の修復及び改革の完了のために協働するという我々の決意を強固にした。我々は、我々の経済のニーズに寄与し、モラルハザードを抑制し、システミックなリスクの積み上がりを抑制し、強固で持続可能な経済成長を世界的に支援する、より強じんな金融システムを構築する必要がある。

2.我々は、健全性監督の強化、リスク管理の改善、透明性の促進及び国際協力の継続的な強化により、世界的な金融システムの強化に向けて、共同で、大きく進ちょくした。我々は、米国における強力な金融規制改革法案を歓迎する。

3.しかし、成すべきことは更にある。金融セクターの更なる修復は、持続可能な世界経済の回復の達成に極めて重要である。世界的な金融システムを強化し、持続的な経済成長の促進に必要な信用を回復するため、銀行のバランスシートと市場の健全性の回復や透明性の強化、金融機関のコーポレート・ガバナンスとリスク管理の改善に向けて、更なる取組が求められる。我々は、欧州の銀行システムの強じん性や透明性に関して市場に安心感を与えるために、欧州の銀行に対して現在実施されているストレス・テストの結果を公開するとのEUの首脳達による決定を歓迎する。

4.我々は、金融セクターの改革に向けた、ロンドン及びピッツバーグ・サミットにおけるコミットメントを、合意された又は前倒しされた期間で達成するため、協働することを誓約する。移行期間については、先進国や新興国における改革の累積的なマクロ経済への影響を勘案する。

資本及び流動性

5.我々は、金融セクター改革のアジェンダの中核は、資本・流動性の強度を改善し、過度なレバレッジを抑制することにかかっていることに合意した。我々は、資本の質、量及び国際的な整合性を向上させ、流動性基準を強化し、過度なレバレッジとリスク・テイクを抑制し、並びに景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)を抑制することに合意した。

6.我々は、銀行の資本及び流動性のための新しい国際的枠組みに向けた、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)の作業の進ちょくを評価するとともに、その作業を歓迎し、及び支持する。銀行システムの強じん性の水準を大幅に引き上げる改革に関して、著しい進ちょくがあった。

●新たな改革が完全に実施された時に、資本の量は大幅に増加する。

●資本の質は大きく改善され、銀行の損失吸収力は強化される。

7.我々は、以下によって所要資本を引き上げることになる新しい資本の枠組みについて、ソウル・サミットの際に合意に達することを支持する。

●銀行が、例外的な政府支援を受けなくても、最低限、最近の金融危機と同程度のストレスに対し業務継続ベースで十分な損失吸収力を有する資本によって耐えられるよう、控除後の普通株式を、Tier1資本の中で、リスクアセットに対して増加する割合で保有する新規制を定めること。

●国際的に整合性がとれた適切な経過期間の後、普通株式等、あるいは株式会社形態でない場合はそれと同等の資本に対して一般的に適用される、国際的に整合性がとれ、透明かつ保守的自己資本控除の仕組みに移行すること。

8.すべての主要な金融センターがバーゼルIIを2011年までに採用するとのピッツバーグ・サミットにおける我々の合意を踏まえ、我々は、すべてのメンバーが新しい基準を採用するとともに、持続的な回復と整合的で、市場の混乱を抑えるような時間的枠組みにより、金融安定理事会(FSB)及びBCBSが行うマクロ経済影響評価に基づく移行期間を経て、2012年末までを目標に、これらの基準を段階的に実施することで合意した。

9.段階的実施の枠組みは、各国の異なる出発点や状況を反映し、新基準との間の当初の差異が各国が新たな国際基準に収れんするに従って、時間をかけて縮小するように設定されるものとする。公的セクターから注入された既存の資本については、移行期間中は現行の取扱いが認められる。

10.我々は、適切な検討と水準調整に基づいた適切な移行期間の後、第一の柱の下での取扱いへの移行を視野に入れつつ、バーゼルIIのリスクに基づく枠組みの補完的指標としてレバレッジ比率を導入することへの支持を改めて表明する。比較可能性を確保するため、レバレッジ比率の詳細は、会計上の差異を完全に調整した上で、国際的に調和のとれたものとする。

11.我々は、BCBSによって現在実施されている、新たなバーゼル基準の潜在的な影響を測定する影響度調査の重要性を認識し、新たな資本・流動性の基準が、質が高く、適切に水準調整されていることを確保する。BCBS‐FSBのマクロ経済への影響度調査は、新たな基準の段階的実施期間を調整する。

12.我々は、改訂されたトレーディング勘定ルールのすべての項目について、統一的な実施日を2011年12月31日までとするBCBSの合意を歓迎する。

13.我々は、市場の規律を強化し、民間部門が投資の損失を完全に負担する金融システムの実現を助ける、コンティンジェント・キャピタルの役割を検討するBCBSの作業を支持する。コンティンジェント・キャピタルの検討は、2010年の改革パッケージの一部に含められるべきである。

14.我々は、FSB及びBCBSに対して、ソウル・サミットまでに改革措置全体のパッケージの進ちょくを報告するよう要請した。我々は、金融セクターには強固な経済をけん引する極めて重要な役割があると認識する。我々は、強じんで、安定し、継続的な信用供与を確保する金融システムの設計にコミットする。

よりきめ細かい監督

15.我々は、新しくより強固なルールはより実効的な監督によって補完されねばならないと合意した。我々は、バーゼル委員会の実効的な銀行監督のためのコアとなる諸原則にコミットし、FSBに対して、国際通貨基金(IMF)と協議し、特に早期の介入を含む、リスクを事前に特定し対処するために採用されるべき監督当局の権限や能力及び特定の権能に関する監督強化の勧告を、2010年10月に財務大臣及び中央銀行総裁に報告するよう指示した。

金融機関の破たん処理

16.我々は、金融システムにおけるモラルハザードを抑制するとの我々のコミットメントを実施している。我々は、危機時にすべての種類の金融機関を、納税者が最終的に負担することなく、再編又は破たん処理する権能と手法を我々が備えるシステムを設計し、実施することにコミットする。これらの権能は業務継続時の資本・流動性の再編、及び清算時の再編及び段階的整理を促進すべきである。我々は、金融の安定性を保つ方法で、我々の国内の破たん処理の権能と手法を支持し、及び実施することにコミットし、並びに2010年3月にBCBSにより発出された、国境を越えて業務を行う銀行の破たん処理に関する10の鍵となる勧告を実施することにコミットした。この点に関し、我々は、関連する各国当局が協力し、国境を越えた破たん処理について協調する能力を付与するため、必要に応じて、各国の破たん処理及び倒産手続、並びに法律の変更を支持する。

17.我々は、破たん処理制度が、以下をもたらすべきことに合意する。

●モラルハザードを抑制し納税者を守るための損失の適切な配分

●保険でカバーされた預金者に対する間断のないサービスを含む、中核的な金融サービスの継続

●市場における破たん処理制度の信頼性

●伝播の最小化

●秩序立った破たん処理に関する事前計画や契約関係の移転

●国境を越えて業務を行う金融機関の破たんの場合の国内及び国・地域間における実効的な協力と情報交換

システム上重要な金融機関への対処

18.我々は、システム上重要な金融機関におけるモラルハザードのリスクの抑制に関するFSBの中間報告を歓迎した。我々は、これらのリスクに対処するためには、更なる取組がなされなければならないと認識した。そのような金融機関に対する健全性規制は、それらの破たんコストに応じたものでなければならない。我々は、ソウル・サミットまでに、システム上重要な金融機関に関連する問題に効果的に対処し、同機関を破たん処理するための具体的な政策勧告を検討し、策定するよう、FSBに対して要請した。これは、コンティンジェント・キャピタル、ベイルイン・オプション(債権者による寄与)、追加的健全性規制、構造の制限、無担保債権者のヘアカットの手法を含む、市場の規律を促進する金融商品及びメカニズムの検討とともに、よりきめ細かい監督を含むべきである。

19.我々は、FSBによって特定された、主な複雑な金融機関の監督カレッジ及び危機管理グループの発展に関し、多大な進展がみられたことを歓迎した。

20.我々は、2010年末までに、国境を越えて業務を行う主な金融機関の再建及び迅速な破たん処理に関する合意された各社別の計画を策定するため、引き続き協働することに合意した。我々は、さらに、金融機関の破たん処理手続において、国・地域間で協力することを確保するため、作業を続けることにコミットした。

金融セクターの責任

21.我々は、金融システムの修復又は破たん処理の資金を提供するための政府の介入が行われた場合には、関連するあらゆる負担に対し金融セクターが公平かつ実質的な貢献をすべきことに合意した。

22.そのために、我々は、様々な政策手法があることを認識した。金融機関への賦課金を追求する国もあれば、異なった手法を追求する国もある。様々な政策手法は、以下の原則に従うことに合意した。

●納税者を保護する

●金融システムからのリスクを抑制する

●与信の流れを好況時及び不況時に保護する

●個々の国の状況及び選択肢を勘案する

●公平な競争条件の促進を助ける

23.我々は、この分野におけるIMFの作業に感謝した。

金融市場のインフラ及び規制の範囲

24.我々は、システミックなリスクを抑制し、市場の効率性、透明性、公正性を改善するため、金融市場のインフラを強化する必要があることに合意した。規制潜脱行為を最小化し、公平な競争条件を促進し、適切性、健全性及び透明性に関する原則の広範な適用を進める世界的な行動が重要である。

25.我々は、店頭デリバティブの規制及び監督の実施を加速するために、協調して取り組み、また、透明性を向上し標準化を促進することを誓約した。我々は、遅くとも2012年末までに、標準化されたすべての店頭デリバティブ契約について、適当な場合には、取引所又は電子取引基盤を通じて取引し、また、中央清算機関(CCPs)を通じて決済するという我々のコミットメントを再確認する。店頭デリバティブ契約は、取引情報蓄積機関(TR)に報告されるべきである。我々は、国際基準に則した中央清算機関や取引情報蓄積機関の設立に向けて取り組むとともに、あらゆる関連情報への各国規制当局・監督当局によるアクセスを確保する。さらに、我々は、証券金融や店頭デリバティブ取引におけるヘアカット設定や証拠金の慣行に関し、景気循環増幅効果(プロシクリカリティ)を抑制し金融市場の強じん性を向上させる政策措置を追求することに合意した。我々は、この分野において多くの作業が行われたことを認識した。我々は、これらの措置を実施するための更なる進ちょくを引き続き支援する。

26.我々は、ヘッジファンド、信用格付会社、店頭デリバティブの透明性及び監督を改善する強力な措置の実施を、国際的に整合的で無差別な方法で加速することにコミットした。また、我々は、商品市場の機能及び透明性を改善することにコミットした。我々は、信用格付会社に対して、透明性を向上し、質を改善し、そして利益相反を避けることを求めるとともに、各国監督当局に対し、信用格付会社に対する監督を実施する際に、引き続きそれらの事項に焦点を当てるよう求める。

27.我々は、規則や規制において外部格付への依存を抑制することにコミットした。我々は、BCBSにおいて進行中の、資本規制の枠組みにおいて外部格付を利用することによって生じる負のインセンティブに対処するための作業や、FSBにおいて進行中の、当局及び金融機関による外部格付への依存を抑制する一般原則を策定するための作業を認識した。我々は、2010年10月に財務大臣及び中央銀行総裁に報告するよう、それらに対して要請した。

28.我々は、規制当局・監督当局者間の情報交換を促す証券監督者国際機構(IOSCO)の重要な作業、並びにヘッジファンドの監督について、関連する規制及びシステミック・リスクへの対処を目的としたIOSCOの原則を認識した。

29.我々は、FSBに対し、これらの分野におけるこれまでのG20のコミットメントの各国及び地域による実施をレビューし、世界的な政策の一体化を促し、更なる作業が必要であれば、2010年10月に財務大臣及び中央銀行総裁に対し、評価及び報告を行うよう求めた。

会計基準

30.我々は、単一の質の高い改善された世界的な会計基準の実現が重要であることを改めて強調した。我々は、国際会計基準審議会及び米国財務会計基準審議会が2011年末までに収れんに向けたプロジェクトを完了するための努力を増すことを促した。

31.我々は、国際会計基準審議会が、新興市場国へのアウトリーチを含め、独立した会計基準設定プロセスの枠内において、利害関係者の関与を更に改善することを奨励した。

評価とピア・レビュー

32.我々は、IMF及び世界銀行の金融セクター評価プログラム(FSAP)及びFSBのピア・レビュー・プロセスを通じた、我々の金融システムに対する強固で透明性のある独立した国際的な評価及びピア・レビューを支援することを誓約した。我々の金融システムの相互依存性及び一体性といった性質は、我々すべてが我々のコミットメントを実践するよう求めている。幾つかの国における弱い金融システムは国際的な金融システムの安定性に脅威を与える。金融セクターを万人のためにより安全なものとするに当たって、国際的な評価とピア・レビューは基本となるものである。

33.我々は、国際的な金融セクターの監督及び規制政策や基準の具体化、様々な基準設定主体間の協調、並びにテーマ別及び国別のピア・レビューの実施、及びセクター及び国・地域における一貫した実施を通じて公平な競争条件を促進することによる改革アジェンダに対する説明責任の確保における、FSBの主要な役割を再確認した。そのために、我々は、FSBに対して、増大する需要に見合うよう能力を強化する方策を探ることを奨励する。

34.我々は、金融システムの世界的な性質を反映するために、G20のメンバーを超えてアウトリーチ活動を拡大し、公式化するよう、FSBに対して要請した。我々はIMF及び世界銀行を含む他の重要な組織と共に、FSBの顕著な役割を認識した。他の国際基準設定主体や監督当局とともに、これらの組織は、我々の金融システムの健全性と安定性において、中心的な役割を果たす。

35.我々は、金融及び規制政策の国境を越えた一貫した実施を促し、想定された結果を達成する上での実効性を評価する手段として、FSBによるテーマ別ピア・レビューを完全に支持する。我々は、健全な報酬に関するFSBの基準の実施に関する進ちょくを示したFSBの報酬に関する第一回テーマ別ピア・レビュー報告書を歓迎したが、完全な実施にはほど遠い。我々は、年末までに、すべての国や金融機関がFSBの原則と基準を完全に実施するよう奨励する。我々は、FSBに対し、この分野における継続的なモニタリング及び2011年の第二四半期に2回目の包括的なピア・レビューを実施するよう求める。また、我々は、FSBのリスク開示に関するテーマ別レビューの結果に期待する。

36.我々は、FSBの国別レビュー・プログラムの有意義な進展を認識した。これらのレビューは、IMFや世界銀行の金融セクター評価プログラムを補完する重要なものであり、課題への対処に向けたピア・ラーニングや対話のためのフォーラムを提供する。3つのレビューが、今年、完了する。

その他の国際基準及び非協力的な国・地域

37.我々は、包括的、統一的、透明な評価に基づき、非協力的な国・地域に対処するため、また、国際金融機関(IFIs)による支援とともに、技術的支援を提供することを含め、基準遵守を奨励するための措置及びメカニズムを検討することに合意した。

38.我々は、税目的の透明性及び情報交換についてのグローバル・フォーラムの作業を完全に支持し、相互審査プロセスの進ちょくとすべての関係国に開かれた情報交換のための多国間の仕組みの開発を歓迎した。我々の2009年4月のロンドンでの会合以降、署名された税情報の協定数は500近く増加した。我々は、グローバル・フォーラムに対し、有効な情報交換を達成するために必要な法的枠組みへの対処において各国が行った進ちょくについて、2011年11月までに首脳に報告するよう奨励する。我々はまた、失われた財産の回収プログラム(StAR)における進ちょくを歓迎し、腐敗による収益の回収に向けた進ちょくを監視する努力を支持する。我々はタックス・ヘイブンに対する対抗措置を使用する用意をする。

39.我々は、資金洗浄やテロ資金供与に対する闘い、戦略上の欠陥を有する国・地域の公表リストの定期的な更新についての金融活動作業部会(FATF)及びFATF型の地域機関の作業を完全に支持する。我々はまた、FATFに対し、資金洗浄及びテロ資金対策(AML/CFT)に関する国際基準の世界的な遵守を、引き続き監視し強化することを奨励する。

40.我々は、すべての国・地域における健全性に関する情報交換と国際協力の基準の遵守に関するFSBの評価プロセスの実施を歓迎した。

別添III:国際金融機関の正当性、信頼性及び有効性の向上及び最も脆弱な人々のニーズに対する支援

1.世界的な経済・金融危機は、多国間行動を調整するための手段としての国際金融機関(IFIs)の価値を示した。これらの機関は、危機に対応するために前線に立ち、9850億ドルの極めて重要な資金を動員した。加えて、国際社会及び国際金融機関は、2500億ドルを超える貿易金融を動員した。

2.危機は、また、更なる改革を実施する重要性を示した。我々の協力の鍵となる基盤として、我々は、国際金融機関が、世界的な金融と経済の安定の維持に当たって我々を助け、すべての加盟国の成長と開発を支援できる機関であることを確保するため、国際金融機関の正当性、信頼性、及び有効性を強化することにコミットしている。

3.国際金融機関の正当性及び有効性を強化するため、我々はロンドン及びピッツバーグにおいて、すべての国際金融機関の長及び上級リーダーに対する新しく開かれた、透明で、能力本位の選任プロセスを支援することにコミットした。我々は、より広い改革の文脈において、ソウル・サミットに至るまでの間にこれらのプロセスを強化する。

国際開発金融機関の資金

4.世界的な金融危機が発生して以来、国際開発金融機関は世界的な対応で重要な役割を果たしており、国際開発金融機関は、2350億ドルの貸付けを供与し、我々のロンドンでのコミットメントを超えることで、世界的な対応で重要な役割を果たしてきた。その半分以上は世界銀行グループによるものである。民間セクターからの資金が消失していたときにおいて、この貸出しは世界的な安定に対して決定的に重要であった。今やかつてないほど、国際開発金融機関は多くの国にとって不可欠な開発パートナーである。

5.我々は、アジア開発銀行(AsDB)、アフリカ開発銀行(AfDB)、米州開発銀行(IADB)、及び欧州復興開発銀行(EBRD)、並びに特に国際復興開発銀行(IBRD)及び国際金融公社(IFC)などの世界銀行グループを含む主要な国際開発金融機関の増資を通じ、国際開発金融機関が適切な資金を有することを確保するとのコミットメントを達成した。これらの機関の主要な出資国として、我々は他の加盟国と協働し、その資本基盤を85%、すなわち約3500億ドル増加させるために協働した。全体として、これらの機関の途上国への総貸出額は年370億ドルから年710億ドルに増加する。これは、これらの機関が増大する需要に短中期的に対応し、また、加盟国を支援するための十分な資金源を保有することを可能にする。我々は、これらの合意を可能な限り早急に実施する努力を支援する。

{表は省略}

6.我々は、ミレニアム開発目標で最も遅れをとる地域であるアフリカにおける喫緊の開発ニーズを認識する。このため、アフリカ開発銀行は、この地域の長期的な成長と開発を支援する能力を強化するために、資本を200%増加させ、対応する年間の貸出量を3倍の水準に拡大できるよう大幅に増資される。

7.国際金融公社(IFC)が、継続的な成長に必要な資金を確保するため、我々は、ボイス改革に関連した、先般合意された選択増資を補完する、出資国向けの長期ハイブリッド債及び収益の留保を検討する。

8.低所得国を支援するため、より譲許的条件での借入れのニーズを考慮し、我々は、国際開発金融機関の譲許的融資ファシリティ、特に今年増資を行う、国際開発協会(IDA)及びアフリカ開発基金の野心的な増資を確保するとのコミットメントを達成する。我々は、多くのG20メンバーが、これらの機関にドナーとして参加するための重要な措置をとっていることを歓迎する。我々はより公正で幅広い負担の分担を支持することを改めて表明した。

国際開発金融機関改革

9.我々はまた、これらの増資は、国際開発金融機関をより有効、効率的かつ説明責任を全うする組織にするために進行中の重要な機構改革が伴うことを確保するとのコミットメントを達成した。これには以下が含まれる。

●可能な場合には、国際開発金融機関の純益から、各機関の低所得国向け融資ファシリティに資金を移転し、低所得国及び辺境の地域における投資活動を増加させ、最貧国への更なる支援を財務上健全な形で行うとのコミットメント。これは、新規資本が低所得国及び中所得国に利益となることを確保する。

●より高い透明性、より強固な説明責任、改善された組織のガバナンス、より深い各国のオーナーシップ、更なる分権化及び適当な場合におけるカントリーシステムの活用、強化された調達ガイドライン、成果及び財政貢献を管理し追跡するための新しい手法、知識管理の強化、適切な多様性を有する適切な人材の確保、より良い環境・社会的セーフガードの実施、健全なリスク管理、融資金利を費用とリンクさせることによる財務の持続可能性確保、行政費用の継続的な削減及びその透明性の向上へのコミットメントに関する個別の行動。

●持続可能で包括的な発展の極めて重要な要素として、より多くの民間部門業務及び投資を通じ、民間部門の発展をより深く支援すること。

●気候変動や食料安全保障等の国境を越えた問題に対する世界的な解決方法の提供において、その中核的な開発マンデート及びより大きな役割を果たすことへの改めてのコミットメント。

10.これらの改革のコミットメントにより、我々は単により規模が大きいだけでなく、貧困層の生活の向上、成長の支援、安全の促進及び気候変動や食料安全保障などの世界的な課題への対処により戦略的に焦点を当てた、より良い国際開発金融機関(MDBs)の構築を行っている。これらの改革の実施は既に始まっており、我々はこの作業が完了し、必要な場合には更なる改革が行われることを引き続き確保する。

世界銀行グループのボイス改革

11.我々は、ピッツバーグ・サミットでの合意に沿った途上国・体制移行国の投票権を3.13%増加させる世界銀行のボイス改革の合意を歓迎した。改革の第一段階において合意された1.46%の増加と併せれば、これは合計4.59%の途上国・体制移行国への移転をもたらし、途上国・体制移行国全体の投票権は47.19%となる。我々は、各国の経済的ウェイトの変化や世界銀行の開発使命を主に反映するダイナミックな計算式への到達により、極めて小さな貧困国を保護しつつ、衡平な投票権へ徐々に移行し続けることにコミットした。我々はまた、合計6.07%の移転をもたらし、DTCの投票権を39.48%とする、IFCでのボイス改革を承認した。

ハイチの債務免除

12.我々は、1月の地震によりもたらされた惨事からの回復に向けて努力しているハイチの人々と共に結束している。我々は、世界銀行、米州開発銀行、国連により設立されたハイチ復興開発基金を通じた支援を含め、この難局において他のドナーと共に支援の提供を行う。ハイチの回復に向けた努力を、その過去の債務よりも復興の行動計画に焦点を当てさせるため、我々の財務大臣は、4月、必要な場合には関連するコストの分担を含め、すべての国際金融機関に対するハイチの債務の全額帳消しを支援することに合意した。我々は、債務帳消しの枠組みがIMF、世界銀行、国際農業開発基金において合意され、米州開発銀行においてまもなく合意されることを歓迎する。我々は可能な限り早期に、関連コストを、公平な割合で貢献をする。我々はソウル・サミットにおいて進ちょくについて報告する。

IMF改革

13.我々はIMFのマンデート遂行の成功を確保するため、IMFの正当性、信頼性、有効性の強化にコミットしている。危機発生以降、G20及び国際社会により、IMF加盟国の危機対応のための資金ニーズを支援するための7500億ドルの資金動員を含む、重要な措置がとられてきた。IMFは後に新規借入取極(NAB)の5000億ドルの拡充に組み込まれる、当面の二国間融資と債券購入契約を通じて2500億ドルを新規に調達した。IMFはまた、全加盟国の外貨準備を補強するための特別引出権(SDR)の2500億ドルの新規一般配分を実施した。新たな早期警戒機能及びフレキシブル・クレジット・ラインの創設といった新たな予防制度を含む、サーベイランスと融資に関する重要な改革とともに、これらの措置がIMFの危機対応能力を大幅に増強させた。しかしながら、IMFを十分に改革するために完了すべき重要な作業が依然として残っている。

14.我々は、ピッツバーグでなされたコミットメントと整合的に、IMFがソウル・サミットまでにクォータ改革を完了し、並行してその他のガバナンス改革を実施するために、なお必要とされる多くの作業の加速を求めた。IMFのガバナンスの現代化は、IMFの信頼性、正当性及び有効性を改善する我々の努力の中核的な要素である。IMFは引き続きクォータを基礎とする機関であるべきであり、クォータ配分は、ダイナミックな新興国・途上国の力強い成長にかんがみ、相当程度変化している世界経済における加盟国の相対的地位を反映すべきと認識する。そのために、我々は、現在のクォータ計算式を用いて、過大代表国から過小代表国への少なくとも5%の、ダイナミックな新興国・途上国へのクォータ・シェア移転にコミットしている。また、我々は、IMFにおける最貧国の投票権の保護にコミットしている。この過程の一部として、出資比率変更を容易にするIMFクォータ増額の規模、理事会の規模と構成、理事会の実効性の向上方法、IMFの戦略的な監督へのIMF総務の関与を含む他の多くの重要な問題が議論される必要があることに合意する。スタッフの多様性は増大されるべきである。

15.我々は、IMFが世界経済においてその重要な役割を果たすことができるよう、必要な資金を有していることを確保するとの我々の決意を強調した。G20メンバーの大半は、2008年のIMFクォータ及びボイス改革を批准し、ロンドンでなされた重要なコミットメントを遂行している。いまだ批准していない国は、ソウル・サミットまでに批准することにコミットする。この措置は、途上国のボイス及び参画の向上により、IMFの正当性を高めるだけでなく、IMFに新たなクォータ資金として300億ドルを提供する。我々は、すべてのIMF加盟国に対し今年中に合意を批准するよう求める。

16.多くのG20メンバーは、最近合意された、拡大されたNABの改革に既に公式に同意した。これは、危機に陥った国々へのIMF融資のために5000億ドル以上を確保し、IMFのクォータ資金にとっての多額の備えを提供する。他のG20のNAB参加国は、次回のG20財務大臣・中央銀行総裁会議までに同意プロセスを完了する。我々はすべての既存及び新規のNAB参加国に同様のことを行うよう求める。

17.G20メンバーは、IMFの新しい歳入モデルと整合的な、IMFの合意された金の売却による収益、並びに内部資金及びその他の資金の活用を通じて、最貧国に対するIMFの譲許的資金を60億ドル拡充することを確保することにコミットした。我々はそれを実施している。幾つかのG20メンバーは貧困削減・成長トラスト(PRGT)に対する追加的な融資原資及び利子補給金の貢献によってこのコミットメントを支援しており、他の幾つかの国々は今後数ヶ月以内に貢献することを計画している。

18.我々は、資本フローの変動、金融の脆弱性に対処し、危機の伝播を予防するための国家的、地域的、国際的努力の必要性を認識する。我々は財務大臣及び中央銀行総裁に対し、ソウル・サミットにおける我々の検討のため、健全なインセンティブに基づき、グローバル・フィナンシャル・セーフティ・ネット強化のための政策の選択肢を用意するよう指示する。我々はまた、これらの努力と整合的に、IMFに対し、適切な場合には更なる改革を視野に入れつつ、融資制度の見直しを迅速に進めることを求める。並行して、それがいかなる場所にも存在しようとも、システミック・リスク及び脆弱性に焦点を当てるため、IMFサーベイランスは強化されるべきである。我々の目標は、より安定した強じんな国際金融システムを構築することである。

最も脆弱な人々のニーズに対する支援

19.我々は、危機の間、最貧国への支援において重要な進展を成し遂げたところであり、最も脆弱な人々を支援するための措置をとることを継続しなければならず、世界的成長を回復するための我々の努力から最貧国も恩恵を得ることを確保しなければならない。我々は、この緊急性を認識し、2015年までにミレニアム開発目標(MDGs)を達成することにコミットし、このために、政府開発援助の活用を含む我々の努力を強化する。

20.我々は、貧困層の金融サービスへのアクセスを改善し、途上国の中小企業(SMEs)が利用可能な資金を増加させるとの我々のコミットメントにおいて具体的な進展を図った。

21.適切に資金供給を受けた中小企業は、特に新興国において、雇用創出及び経済成長にとり死活的に重要である。我々は、中小企業に融資をもたらす最も有望な官民連携モデルの発見を目的とした中小企業(SME)金融チャレンジを立ち上げた。我々は、MDBsの力強い支援を含んだ優秀提案の実施に必要な財源の動員を表明した。我々は、民間部門と連携したチャレンジからの提案を含む、大規模に実現可能で持続可能なSME金融提案のためのMDBsの力強い支援を歓迎する。我々は、SME金融チャレンジの優秀提案を発表すること及びソウル・サミットにおいて拡大し成功したSME金融モデルの推薦を受けることを期待している。

22.我々は、革新的な金融包摂のための一連の原則を作成した。これは貧困層の金融サービスへのアクセスを改善するための具体的で現実的な行動計画の基礎を形成する。この行動計画はソウル・サミットにおいて公表される。

23.ピッツバーグ・サミットにおいて、我々は低所得国における長期的な食料安全保障を改善するための、持続的な資金供給及び的を絞った投資の重要性を認識した。我々は、農業生産性を改善し、地方での収入を増加させ、持続可能な農業システムを構築するための低所得国に対する予測可能な融資を提供する、世界農業食料安全保障プログラム(GAFSP)の立上げを歓迎する。我々は特に、この基金が、バングラデシュ、ルワンダ、ハイチ、トーゴ、及びシエラレオネに対する2億2400万ドルに上る贈与の開始を承認したことを歓迎する。我々はまた、貧困国の中小規模の農業ビジネス及び農家を支援するための民間部門の投資を増加させる、GAFSPの民間部門枠の発展を支援する。我々は、既に得た支援を歓迎するとともに、GAFSPの官民双方の枠への追加的なドナーによる貢献を奨励する。

24.増大する需要と高まる環境負荷の中で、とりわけアフリカにおいて、農業生産性のギャップを埋めるため、地域の及び南南協力を通じてのものを含め、研究及び開発を加速する緊急性が依然存在する。民間部門は、現場で具体的な結果を提供する革新的な解決法の作成及び展開において極めて重要である。我々は、食料安全保障における形勢を一変させる革新及び貧困国における農業開発を達成するに際して、民間部門の創造力及び資金を利用するため、事前購入制度等の革新的で結果に基づいたメカニズムの可能性を検討することにコミットする。我々はソウル・サミットにおいて進ちょくについて報告する。