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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8ムスコカ・サミット首脳宣言:回復と新たな始まり(第36回ムスコカ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] ムスコカ、カナダ
[年月日] 2010年6月26日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々G8首脳は、ムスコカで2010年6月25-26日に会合を開催した。我々の年一回のサミットは、世界が過去幾世代の中で最大の経済危機からの脆弱な回復を始める中で開催された。

2.G8は、焦点、コミットメント及び透明性を通じて、また、国際社会の他の関係するメンバーと連携して主要な世界的な課題に効果的に対処しなくてはならず、また、対処できるという共有されたビジョンにより結束している。G8は、現代の課題に対処するため信頼性のあるアプローチを設計する能力を実証してきた。G8は30年以上にわたり、その集団的意思が持続可能な変化と進展のための強力な触媒となり得ることを示してきた。2010年にムスコカで、我々は、開発、国際の平和と安全及び環境保護における主要な課題に対処するための効果的議題に焦点を当てている。

3.今次経済危機は、統合された世界経済、開発努力及び集団的安全保障に既に内在していた脆弱性を顕在化させ、悪化させた。G20の取組を通じて、世界経済及び国際金融システムの持続可能な回復に向けて進展が得られた。開発については、10年間の我々の政策コミットメント及び我々のパートナーとの共同の努力が、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けて大きな進展をもたらしたが、先進国及び途上国双方は、より多くのことを行う必要がある。同時に、今次危機は、2015年目標の達成に向けた前進を一部危うくしてきた。新たな相互のコミットメントが必要である。我々はまた、気候変動を含む安全保障上の脆弱性に対処するため、大量破壊兵器の拡散、テロリズム及び組織犯罪その他国家が直面している多くの課題が、引き続き公共政策の最重要部分であることを確保しなくてはならない。我々G8は、リーダーシップを発揮し、責務を果たす決意である。

4.さらに、2008年の北海道洞爺湖サミットから始まり、我々は、G8がそのコミットメントの実施に関し、透明にかつ一貫して報告を行うことにコミットしていることを実証することの重要性を認識してきた。2009年にラクイラ・サミットにおいて、我々は、高級実務者に対し、結果に焦点を当てて、開発及び開発関連のコミットメントの実施に関し報告することを課した。我々は、「ムスコカ説明責任報告書:開発関連のコミットメントに対する行動と結果の評価」を歓迎し、その結果と提言のフォローアップを確保する。同報告書は、多くの分野において重要な進展があったことを示しているが、より多くのことを行う必要がある。我々は、我々のコミットメントを実施する上で進ちょく状況に関する定期的な報告の重要性を強調し、この点に関し、2011年の説明責任報告書の焦点を保健と食料安全保障に置く。

5.回復が確実になる中で、我々は、生まれつつある希望と楽観主義を、人々の幸福の向上及び効果的な評価により大きな注意を払いつつ、より安全、公平、包括的かつ持続可能な社会を世界的に構築することにつなげなければならないという重要な岐路にある。

開発

6.相互責任に基づく開発への支援、及び途上国、特にアフリカの途上国との力強いパートナーシップは、引き続きG8のアプローチの礎石である。我々は、持続可能な成果を目指す開発への包括的なアプローチを追求する。我々は、政府開発援助(ODA)及び援助効果の強化を含む、我々のコミットメントを再確認する。我々は、途上国政府に対し、社会的・経済的発展及び良きガバナンスについて負う第一義的責任を、市民のために果たすことを求める。最も脆弱な国家においてMDGs目標に向けた進展が最も遅れていることから、我々は、平和、安全及び持続可能な開発の基礎を構築するよう、かかる国家を支援することに特別な重点を置く。

7.国際社会は現在、ミレニアム開発目標(MDGs){前15文字太字}の採択から2015年の目標期日までの間の3分の2の地点にある。MDGsを達成するため、人間の安全保障向上のための個人及びコミュニティの保護及び能力強化により焦点を当てながら、取組が、真に地球規模で、すべての政府のみならず、民間セクター、財団、非政府組織、市民社会及び国際機関の行動を含む包括的な「国全体」アプローチを包含したものである必要がある。この点に関し、我々は国連事務総長報告書「約束を守る」(”KeepingthePromise”){前28文字太字}及びMDGs達成に関するUNDPの国際的な評価を歓迎する。G8は、同評価で示された優先事項を支持し、国内の戦略、政策及び施策、並びに国のオーナーシップによって進展を推進しなければならないという見解を再確認する。我々は、すべての開発パートナーに対し、2010年9月のMDGsに関する国連首脳会合において、これらの目標に向けた進展を加速するための共同の決意を強化するよう求め、行動志向の成果を求める。その結果として、すべての公的及び民間の資金源が効率的に動員され、民間及び金融セクターの開発並びに投資と資源の流れを可能にする条件が作られるべきである。

8.MDGs目標5(妊産婦の健康の改善{前9文字太字})に向けた進展は容認できないほど遅れている。最近のデータは妊産婦の死亡率が減少していることを示しているが、毎年何十万人もの女性が、妊娠及び出産に関係する原因により命を落とし、又は負傷している。その多くが、強化された保健システム及び自発的な家族計画を含む性と生殖に関する保健ケアとサービスへのより良いアクセスがあれば防止することが可能であった。MDGs目標4(乳幼児死亡率の削減{前9文字太字})の進展もまた非常に遅れている。毎年900万人近くの子供が、5歳の誕生日を迎える前に死亡している。我々は、こうした死亡を深く憂慮し、喫緊の集団的行動の必要性を強調する。我々は、緊急の人道上の及び開発上の懸念事項として、妊産婦、新生児及び乳幼児の死亡数を大幅に削減するための強い支援を再確認する。女性と子供の健康に影響を与えるすべての要因に関して行動が必要である。これは、男女不平等への対処、女性と子供の権利の確保、及び女性と女子の教育の向上を含む。

9.G8のメンバーは妊産婦、新生児及び乳幼児の健康(MNCH)のための国際開発支援に、既に年間41億米ドル貢献している。本日、我々G8首脳は、国際的に妊産婦と子供の健康の促進に従事する他の政府、幾つかの基金及び団体*1*と共に、途上国における妊産婦、新生児及び乳幼児の死亡数を大幅に削減することになるMDGs4及び5に向けた進展を加速するための包括的かつ統合的アプローチであるムスコカ・イニシアティブを承認し、立ち上げる。ムスコカ・イニシアティブ{前13文字太字}の範囲は、別添Iに示される。我々の集合的な取組は、継続ケア、すなわち、妊娠前、妊娠期、出産期、幼年期、早期の幼児期にわたって鍵となる施策の実施を可能にするため、途上国における国家主導の国家保健システムの強化を支援する。

10.このために、G8は、今後5年間の拠出のために*2*、本日現在50億ドルの追加的資金を動員することを約束する。G8からの支援は触媒である。我々は、二国間及び多国間ドナー、途上国及び他の利害関係者によるMDGs目標4及び5の進展を加速するために、より集合的な努力を生み出すことを目的として、コミットメントを行う。我々はしたがって、他の政府や基金によるムスコカ・イニシアティブに参加する決定を歓迎する。それぞれの予算プロセスに従いつつ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン及びスイス政府、並びにビル&メリンダ・ゲーツ財団及び国連財団は、同期間に23億ドルの追加的資金を拠出することを、現在、又は最近コミットした。

*1* G8の他に、ムスコカ・イニシアティブを承認したのは以下のとおり。オーストラリア、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、韓国、スペイン、スウェーデン及びスイス政府、ビル&メリンダ・ゲーツ財団、ヒューレット財団、マッカル・マックベイン財団、パッカード財団、ロックフェラー財団、及び国連財団、並びに保健部門における国際組織の8のグループ(世界保健機関、グローバル・ファンド、国連児童基金、世界ワクチン予防接種連合、世界銀行、国連人口基金、国連エイズ合同計画、ビル&メリンダ・ゲーツ財団)、米国における22大学の公衆衛生学部長及びカナダにおける微量栄養素イニシアティブ。

*2* この数字はG8の大半による5年間のコミットメントを含むが、最初の2年間のコミットメントは米国により、2010年から2011年を対象として構成される、米国大統領の6年間のグローバル・ヘルス・イニシアティブは、家族計画を含む妊産婦の健康及び子供の健康に対する米国の計画作成に重点を置く。英国は、2011年より先の計画を決定していないが、妊産婦、新生児及び乳幼児の生命を2倍救うために、2011年から2015年の期間にわたって努力を増進させることを予定している。EUは2011年から2013年までに既に実施している母子の健康のための支援を増加させることを目標とし、MNCHは2013年の新たな財政枠組みにおいて対処される。

11.我々は、2010年から2015年の間で、それぞれの予算プロセスに従いつつ、ムスコカ・イニシアティブが100億ドルをはるかに超える額を動員することを全面的に期待する。

12.ムスコカ・イニシアティブに向けた本日のコミットメントの結果、世界保健機構及び世界銀行の試算によれば、これは途上国が、(i)乳幼児の死亡を130万人防ぎ、(ii)妊産婦の死亡を6万4000人防ぎ、及び(iii)追加的に1200万組の男女が家族計画の近代的方法にアクセスすることを支援する。2010年から2015年までの間に、累積的にこれらの結果が達成される。我々は、2011年に保健と食料安全に焦点を当てる我々の説明責任報告書を通じ、コミットメントの実施に関する進ちょくを追跡する。相互説明責任の原則に沿って、我々はこれらの共同のコミットメントが、途上国に対し、何百万もの女性、新生児、幼い子供の生命を守ることにつながる、妊産婦と子供の健康に関する自身の努力の強化を奨励することを期待する。

13.コミットしている者による広範な有志連合を設立することは可能である。我々ムスコカ・イニシアティブのパートナーは、本日の立ち上げが、母子保健向上のための共同行動計画{前16文字太字}の発展に向けた国連主導のプロセスに追加的モメンタムを与えること、また、2010年9月のMDGsに関する国連首脳会合に向けた鍵となる貢献となることを信じる。目標が相互に関連する性質のものであることから、我々は、我々のコミットメントが他のMDGsにも良い影響を与えることを期待する。

14.我々はまた、保健医療従事者の訓練並びにアフリカ及びその他の地域における、より力強い保健イノベーション・ネットワークの構築に努力の焦点を当てる。

15.我々は、HIV/エイズの予防、治療、ケアとサポートに関するユニバーサル・アクセスに可能な限り近づくというコミットメントを再確認する。我々は、2010年10月に開催される、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金){前24文字太字}の第三次増資会合を成功させることにより、この目的を達成するための国主導の努力を支援する。我々は、他の政府及び民間セクターのドナーに対し、世界基金に資金援助を提供することを奨励する。我々は、保健システムの強化というより幅広い文脈の中で、HIVと、性と生殖に関する保健と権利のサービスとの統合を促進することにコミットする。また、G8ドナーによるポリオ根絶のための支援は引き続き不動であり、ポリオのない世界に引き続きコミットしている。我々は、負担の大きな、顧みられない熱帯病(NTDs)の抑制又は撲滅を引き続き支援する。

16.食料安全保障は、引き続き喫緊の国際的な開発課題であり、気候変動、国際的な食料需要の増加、農業セクターにおける過去の過小投資、及び最も脆弱な人々に強力な打撃を与える過度の価格変動によって状況は悪化している。2009年にラクイラにおいて、我々は、他の国や機関と共に、食料安全保障を強化するため以下の基本的な原則を採択した。すなわち、包括的なアプローチの利用、国家主導の計画への投資、戦略的調整の強化、多国間機関の利点の活用、及び持続的かつ説明可能なコミットメントの実施である。我々は、これらの原則に基づきラクイラ食料安全保障イニシアティブ(AFSI)を立ち上げ、適切な緊急食糧援助を確保する強いコミットメントを維持しつつ、持続可能な農業開発のために今後3年間で220億米ドルの資金を最終的に動員した。このイニシアティブは広範な合意の達成を助け、食料安全保障委員会の改革と、農業及び食料安全保障に関するグローバル・パートナーシップの前進における進展を可能にした。2010年4月30日現在、我々は65億米ドルを拠出、配分し、2012年までに国のコミットメントの全額を拠出、配分することに引き続きコミットしている。我々は、国家主導のイニシアティブへの焦点を維持しつつ、国家的、地域的及び国際的に調整されたアプローチを確保するために積極的に取り組んでいる。我々は、世界銀行において主催されている8億8000万ドルのコミットメントを有する国際農業・食料安全保障プログラム及びアフリカ農業基金のような他の相互に補完的なイニシアティブ、又はメカニズムの発足を歓迎する。我々は集合的コミットメントが達成されることを確保するための説明責任の中核的重要性を強調する。我々は、飢餓や貧困と闘うための研究が、特に持続可能な農業生産性を向上させることによって果たす重要な貢献を強調し、継続中の国際的な研究ネットワークの改革に対する支持を改めて表明する。栄養不足の減少は、我々の食料安全保障イニシアティブの主たる成果であり、妊産婦と子供の健康の向上に貢献する。

17.国境を越えた投資と開発との間の重要な関係、及び政府開発援助のみでは世界食料安全保障の達成には十分でないという事実を反映し、我々は、途上国における、責任ある持続可能な方法による国際的な投資を強化することの重要性を強調する。この文脈で、我々は、世界銀行、地域開発銀行、FAO、UNCTAD及びIFADによって行われている、農業セクターへの投資に関する原則を策定するための継続した努力を支持する。

18.G8は、鉱物及び木材を含む天然資源の不法開発及び取引を引き続き憂慮している。これらの活動は、紛争の激化に主要な役割を果たしている。我々は、これらの不法活動を防止、削減、根絶するための地域的メカニズム及び機関の努力を支援する。我々は、ダイヤモンド原石の貿易を管理しすべての参加者によるその基準への遵守を確保するキンバリー・プロセスを支援する。コンゴ民主共和国(DRC)東部からの天然資源の不法開発及び取引は、DRCの人々に甚大な苦痛をもたらしている不安定と暴力の直接的な原因となってきた。我々は、DRCに対し、紛争を終結させるためにより多くのことを行い、早急に法の支配を拡大するよう求める。我々は、民間部門及び国際社会による、コンゴ当局と共に取り組み、供給チェーンが紛争物資の取引を支援しないことを確保するためにしかるべき努力を強化する最近のイニシアティブを歓迎する。我々はまた、DRCを含む採取産業透明性イニシアティブ(EITI)候補国に対し、採取セクターにおけるガバナンス及び説明責任を強化するためのメカニズムとしてEITI実施プロセスを完了するよう促す。DRCのEITI報告にコルタン及びカシテライトを最近含めたことは、正しい方向に向けた措置である。さらに、我々は、天然資源をめぐる紛争機会を削減するための重要な貢献として、国際的なNGOや現地の市民社会による継続中の研究及び支援活動を歓迎する。

アフリカ

19.G8首脳は、ムスコカにおいて、アルジェリア、エジプト、エチオピア(NEPAD運営委員会議長国)、マラウイ(アフリカ連合議長国)、ナイジェリア、セネガル及び南アフリカの首脳と会談を行った。G8首脳は、アフリカが開発プロセスにおいて有するオーナーシップの増大を歓迎し、アフリカの首脳と共に、世界経済及び金融危機の発生直前にアフリカにおいて達成された高い経済成長率に留意した。首脳は、より安定的、民主的、かつ繁栄したアフリカを構築し、経済的、社会的開発を前進させ、法の支配を促進するためのアフリカ主導の努力を支持し、G8とアフリカのパートナーの間の継続した連携に対する共通のコミットメントを再確認した。

20.G8とアフリカの首脳は、MDGs目標の達成は共有された責任であり、更なる前進のために相互の説明責任に基づく戦略が必要不可欠であることを認識する。G8とアフリカの首脳は、幾つかの分野では大幅な進展が得られたが、アフリカにおけるMDGs目標の達成のためには、すべてのセクターで、更なる努力が必要であることに留意した。この点につき、アフリカの首脳は、妊産婦、新生児及び子供の健康に関するムスコカ・イニシアティブへの支持を表明した。首脳は、妊産婦及び子供の健康の、開発及びアフリカのMDGs目標達成のための能力に対する中心的な重要性、並びにそれに伴う緊急の行動の必要性に留意し、アフリカにおける各国のコミットメントの実施において進展を加速する方法を模索することを約束した。アフリカのパートナーはまた、特にアフリカにおける平和維持訓練センターを通じ、紛争の予防と管理のために、組織的能力を含めアフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)の強化を助けるためのG8の継続した努力を歓迎した。G8首脳は、ラクイラ食料安全保障イニシアティブに対するアフリカの首脳の重要な貢献を認識した。

環境の持続可能性及びグリーンな回復

21.環境問題の中で、気候変動は引き続き第一の優先事項である。ラクイラにおいて合意したとおり、我々は、産業化以前の水準からの世界全体の気温の上昇が摂氏2°Cを超えないようにすべきとの科学的見解を認識する。この目標の達成には、世界全体の排出量の大幅な削減が必要である。この世界的な課題は、世界全体の取組によってのみ対処可能であることから、我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%削減を達成するという目標をすべての国と共有するとの我々の意図を改めて表明する。その際、我々は、このことが世界全体の排出量を可能な限り早くピークアウトさせ、その後減少させる必要があることを含意していることを認識する。我々はこの目的のために協力する。この努力の一部として、我々は、先進国全体で温室効果ガスの排出を、1990年又はより最近の複数の年と比して2050年までに80%又はそれ以上削減するとの目標を支持する。この野心的な長期目標に沿って、我々は、基準年が異なり得ること、努力が比較可能である必要があることを考慮に入れ、先進国全体及び各国別の中期における力強い削減を行う。同様に、主要新興経済国は、特定の年までに、対策をとらないシナリオから大幅に排出量を削減するため、数量化可能な行動をとる必要がある。

22.我々は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の下で継続されている交渉を強く支持する。我々は、コペンハーゲン合意と、同合意のUNFCCC交渉に対する重要な貢献への我々の支持を改めて表明する。我々は、まだ同合意に賛同していない国に対し、同合意に賛同し、緩和のコミットメントや行動を掲げるよう要請する。我々はまた、世界全体の気温の上昇が摂氏2°Cを超えないようにすべきとの科学的見解を認識し、透明性と信頼を推進するための測定、報告及び検証に関連する規定を含め、同合意のすべての規定の完全かつ効果的な実施を求める。この文脈で、我々は、最も脆弱な途上国の最も喫緊のニーズへの対応を助けるとともに、途上国が長期的な低排出開発のための基礎を築くことを助けるため、各々の早期の資金支援を実施に移している。我々は、2010年11月29日から12月10日の国連気候変動枠組条約第16回締約国会議の議長国であるメキシコと、積極的かつ建設的に協力するとのコミットメントを表明する。我々は、長期の官民の資金の特定に関する国連事務総長のハイレベル諮問グループ、及びREDD+に関するパリ・オスロ・プロセスを含め、関連のイニシアティブを支援する。我々は、包括的、野心的、公平な、実効的かつ拘束力のある、すべての主要経済国による温室効果ガス削減のための責任を含む、すべての国に関係する2012年後の合意を求める。

23.気候変動との闘いに引き続きコミットしつつ、我々は、経済が気候に対して強じんであることを確保することの重要性について議論した。我々は、世界的、地域的、国及び国以下のレベルにおける影響、並びにインフラストラクチャーや技術的なイノベーションを通じたものを含め、適応のための選択肢を特定するために、更なる研究が必要であることに合意した。我々は特に、最も貧困な及び最も脆弱な国の状況を認識する。我々は、2011年のロシアにおける気候変動適応会議等を通じて、各国の経験及び適応のための計画を共有する。

24.気候変動に対処しエネルギー安全保障を向上させるため、我々は、グリーンな成長及び向上した資源効率に特徴付けられる低炭素かつ気候に強じんな経済を構築することにコミットしている。我々は、特に雇用創出に関する、低炭素及び再生可能エネルギーへの移行によって与えられる機会を認識する。我々は、IEAに対し、低炭素エネルギー技術の開発と普及を加速するため、国際低炭素エネルギー技術プラットフォームに関する取組を発展させることを奨励する。環境物品・サービスの貿易の関税や非関税障壁の撤廃又は削減は、よりクリーンな低炭素エネルギー技術及び関連サービスの世界的な普及を促進するために不可欠である。炭素回収・貯留(CCS)は低炭素排出社会への移行において重要な役割を果たし得る。我々は、2010年までに世界的に20のCCS大規模実証計画を開始し、途上国と協力して、2020年までにCCSの広範な展開を達成するという洞爺湖におけるコミットメントに関する進展を歓迎する。我々のうち幾つかは、CCS実証計画を加速し、2015年までにその完全な実施を達成するという目標を設定することにコミットする。我々はまた、原子力安全、核セキュリティ及び核不拡散のための保障措置が原子力の平和的利用の前提条件であることへの国際的コミットメントを認識しつつ、原子力エネルギーが気候変動とエネルギー安全保障上の懸念への取組において果たすことのできる役割を認識する。我々は、持続可能な開発、気候変動の緩和、及びエネルギー安全保障に対するバイオ・エネルギーの潜在力を認識する。我々は、国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)による取組を歓迎するとともに、任意の持続可能性基準及び指標、並びに能力構築活動の早期の採択を促進することにコミットする。

25.2010年は国連の国際生物多様性年であり、我々は、国際社会が世界的な生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという2010年目標を達成する見込みがないことを残念に思う。生物学的に多様で回復力のある生態系が、人間の幸福、持続可能な開発及び貧困の撲滅に不可欠であることから、我々は、現在の損失速度が深刻な脅威であることを認識する。我々は、本年10月に生物多様性条約第10回締約国会議を開催する日本に対する支援を強調し、特に野心的かつ達成可能な2010年後の生物多様性の枠組みを採択する重要性を強調する。我々は、この分野で科学と政策の接点を強化する必要性を認識するとともに、この点につき、我々は、生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)の設立を歓迎する。

貿易・投資

26.世界経済危機からの回復を維持する手段として、G8は、自由で開かれた市場に対する長年にわたるコミットメントを確認する。WTO加盟国であるG8の構成メンバーは、これまでの進展の上にWTOドーハ開発アジェンダを成功裏に妥結するとのコミットメントを新たにする。我々は、今次ラウンドの立ち上げ以降の世界経済の変化を認識しつつ、ギブ・アンド・テイクの精神で、あらゆる交渉形態を用いて、交渉を促進するために必要なより高い野心のレベルを達成するという目標をもって、交渉に従事することを交渉担当者に指示する。我々は、引き続き保護主義の圧力に対抗し、各国による障壁の削減並びに二国間及び地域的な交渉を通じ、WTOの下での貿易・投資の自由化を促進していく。

国際の平和及び安全

27.我々G8首脳は、世界の平和と安全に対する深刻な脅威について引き続き深く懸念している。我々すべては、大量破壊兵器の拡散、テロリズム、国際組織犯罪(薬物の不正取引を含む)、海賊、並びに政治及び民族紛争の脅威により影響を受けている。繁栄、開発及び安全は密接不可分に関係しており、そのため、自国及び世界の国々の経済的な幸福と安全は相互に依存している。我々は、自由、民主主義、人権の尊重及び法の支配の原則に基づく平和な世界の未来図を共有しており、これを基礎として、相互にそして他の関係国と連携しながら、我々すべてに影響を及ぼす安全保障上の課題に引き続き取り組む用意がある。

28.我々は、核兵器の拡散によって現在及び将来の世代の安全にもたらされる重大な脅威を看過することはできない。したがって、我々は、核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議の成果を歓迎し、同会議においてコンセンサスにより提言された行動の実行を追求する。我々は、すべての国に同じ行動をとるよう求める。我々は、NPTの目標に従って、すべての者にとってより安全な世界を追求し、核兵器のない世界のための状況をつくることをコミットする。この点において、我々は特に、ロシア連邦と米国の間で署名された新たな戦略兵器削減条約を歓迎する。我々は、すべての者にとって国際的な安定と更なる安全を促進するため、この目標を達成すべく具体的な軍縮努力を追求し、他のすべての国々、特に核保有国に対し、こうした努力に参加するよう求める。

29.我々は、すべての国に対し、保障措置義務を含む核兵器不拡散条約上の不拡散義務の不遵守に対処するため、断固とした行動をとり、支持するよう求める。我々は、国際原子力機関との間で、包括的保障措置の締結、及び原子力エネルギーの平和的利用の検証のための新たな普遍的な基準となる追加議定書の締結を、それらの未締結国に対して求める。我々は、核兵器不拡散条約上の義務に従い、特に途上国のために、原子力エネルギーの平和的利用のための設備、資材、並びに科学的及び技術的情報の交換を支援する。我々は、不拡散に関するラクイラ声明パラグラフ8に見られる我々のコミットメントを改めて表明する。2011年のチェルノブイリ事故25周年に近づく中で、我々は、チェルノブイリの安全及び安定化プロジェクトの最終段階を完了させるために必要な措置をとる。また、我々は、すべての者に対し、新たな民生原子力施設を開発する際に、最も高いレベルの原子力安全、核セキュリティ及び保障措置を追求するよう要請する。

30.我々は、大量破壊兵器及び関連する技術並びに物質の獲得を模索する非国家主体、特にテロリストからの脅威という新たな時代に直面している。これを防ぐことに失敗した場合、その結果は厳しいものとなり得る。我々は、ワシントン核セキュリティ・サミットにおいて行った約束の実施を含め、共通の安全に向けて共に取り組むことへの約束、特にすべての脆弱な核物質の管理を4年以内に確保するために共に取り組むことを再確認する。

31.この点に関し、我々は2002年のカナナスキス・サミットにおいて発表された「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」を通じた具体的な業績と重要な成果を歓迎し、ロシアにおける優先事業の完了に引き続きコミットする。我々は引き続き直面する世界的な脅威を認識し、我々すべてはパートナーとしてそれらの脅威に対し、この先数年間引き続き取り組むための共同の努力を行うことの重要性を認める。そのために、我々は専門家に対し、2012年以降の計画と資金に関する選択肢を策定するための出発点として、グローバル・パートナーシップのこれまでの結果について、核及び放射線源のセキュリティ、生物セキュリティ、科学者の雇用、及び国連安保理決議1540の実施促進、並びにこのイニシアティブへの他国による潜在的な新規加盟の可能性に焦点を当てて、2012年以降の計画及び資金調達の選択肢を策定するよう求める。

32.国連安保理決議1929の採択は、イランの核問題に対する国際社会の懸念を反映しており、我々は、すべての国に対し、それを完全に実施するよう求める。民生用原子力計画に関するイランの権利を認めている一方で、我々は、この権利が、イランを含むすべての国が遵守しなくてはならない国際的な義務を伴うことに留意する。我々は、イランの核開発に関する透明性の継続的な欠如、及び累次の国連安保理決議及び国際原子力機関理事会に違反し、20%近くまでの濃縮を含むウラン濃縮を継続し拡大するというイランが表明した意図を深く懸念している。我々は、イランに対し、国連安保理及び国際原子力機関の要求に留意し、イランの核計画の平和的性格に対する国際的な信頼を回復するために関連諸決議を誠実に履行するよう求める。我々の目標は、イランの指導者達に対し彼らがその核活動に関する透明性のある対話に参加し、イランが国際的な義務を満たさなければならないことを説得することである。我々は、この点に関して、中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国、米国及びEU上級代表による、現在進行している努力を強く支持し、我々は、交渉を通じてすべての未解決の問題を解決するという彼らのコミットメントを歓迎する。我々はまた、この点に関し、テヘラン研究用原子炉の特定の問題に関するブラジルとトルコによる最近の外交努力を含む、すべての外交努力を歓迎し称賛する。

33.2009年のラクイラ・サミットにおいて表明された懸念を想起し、我々はイラン政府に対し、同政府が当事国である国際条約に示されているとおり、法の支配と表現の自由を含む基本的人権を尊重するよう求める。

34.我々は、韓国海軍艦艇「天安」の沈没を引き起こし、その結果として46名の命が悲劇的に失われた3月26日の攻撃を遺憾に思う。このような事件は、地域及び地域を越える平和と安全にとっての挑戦である。我々は、犠牲者及びその家族並びに韓国国民及び政府に対し、深い同情と哀悼の意を表明し、国連憲章及びすべての国際法の関連規定に沿って、この攻撃に責任ある者に対し適切な措置がとられるよう求める。韓国が主導し、外国の専門家が参加した軍民合同調査団は、天安の沈没は北朝鮮に責任があるとの結論を出した。我々はこの文脈で、天安の沈没につながったこの攻撃を非難する。我々は、北朝鮮が攻撃を行わないこと、また、韓国に対する敵対行為を控えるよう要請する。我々は、「天安」事件の説明責任を求めるための韓国の努力を支持する。我々は、地域の平和と安全を追求するために、すべての国際的な当事者と緊密に協力することに引き続きコミットしている。

35.我々は、国際社会に対し、北朝鮮に関連するすべての既存の国連安保理決議の包括的な実施を確保するよう求める。同時に、我々は、北朝鮮により行われた核実験及びミサイル活動が地域及びその域外の緊張を更に増大させていること、並びに国際の平和及び安全に対する明白な脅威が引き続き存在することに対する最も重大な懸念を表明する。我々は、かかる脅威に関する包括的な解決の実現及び、2005年の六者会合に関する共同声明の実施に向けた努力に対する支持を再確認する。国連安保理決議の完全かつ透明な実施の重要性を想起し、我々は、北朝鮮に対し、安保理決議1718及び1874に従い、国際原子力機関との保障措置協定に厳密に従って行動し、完全で検証可能かつ不可逆的な方法ですべての核兵器及び既存の核及び弾道ミサイル計画並びに拡散活動を放棄するよう求める。北朝鮮は、核兵器不拡散条約上の核兵器国の地位を有しておらず、また有することはできない。我々はまた、北朝鮮が拉致問題を含む人道上の問題に対する国際社会の懸念に直ちに取り組むよう要請する。

36.7月のカブール会議は、アフガニスタン政府が、腐敗対策、薬物の不法製造及び取引への対策、人権の改善、基礎サービスと統治の提供の改善、正規の司法システムの強化のための具体的進展、及びアフガニスタン国家治安部隊が5年以内に治安について増大する責任を担うための能力強化を含む2010年1月のロンドン会議コミュニケにおけるコミットメントの実施において、詳細な計画を提示し、また目に見える進展を図る重要な機会となる。このため、我々は、4月に国際治安支援部隊派遣国によって採択された治安権限移譲戦略、及び現在進められているアフガニスタン主導の和解と再統合プロセスの確立のための努力を完全に支持する。この点に関し、6月の和平ジルガは重要な一里塚であった。より信頼でき、包含的かつ透明な9月の議会選挙に向けたアフガニスタンによる明確な措置はアフガニスタンの成熟しつつある民主主義を進める上で重要な一歩となる。我々は、この移行と発展のプロセスにおけるアフガニスタンに対する支援へのコミットメントを再確認する。

37.我々は、暴力的な過激派を根絶するための、特にアフガニスタンとの国境地域におけるパキスタンの現行の努力を歓迎し、奨励する。我々は、暴力的な過激主義に対抗するための幅広い地域的アプローチの必要性を強調する。パキスタンが、政治的、経済的及び社会的な改革に対処するにあたり、国際社会による支援を得ることは不可欠である。我々は、パキスタン及びインド政府によって二国間関係の前進のために取られた最近の動きを歓迎し、奨励するとともに、地域のすべての国に対し、地域の平和と安定のために積極的に協同するよう要請する。

38.我々は、G8アフガニスタン・パキスタン国境地域繁栄イニシアティブの下で、二つの鍵となる事業、すなわち、ペシャワール・ジャララバード高速道路、及びペシャワール・ジャララバード鉄道接続のための実現可能性調査において、多国間ドナーと協調して、進展が得られていることを歓迎する。我々は、アフガニスタン及びパキスタン政府の努力によって実現されるこれらの事業やその他の事業が、アフガニスタンとパキスタンの人々に目に見える利益をもたらし、かつ地域の安定強化に資することを確信している。

39.我々は、パレスチナとイスラエルとの間の間接交渉の開始を歓迎し、両者に対し、相互に及び他の近隣諸国と平和的かつ安全に併存する、独立し、隣接しかつ存続可能なパレスチナ国家の建設を目的として、直接交渉に資する状況を創出するよう要請する。我々は、5月31日のガザ沖の事件における暴力的な人命の損失及び負傷を深く遺憾に思う。イスラエル政府が、これらの事件の調査のために、国際的な参加を含む独立の調査委員会を設立する決定を行ったことを、6月1日の国連安保理における議長声明に沿って同委員会がこの悲劇的事件に関連するすべての事実を明らかにすることを期待しつつ、歓迎する。我々は、すべての関係者に対し、国連安保理決議1860を実施し、ガザへ、またガザからの人道・復興物資の流れを確保するために協働するよう要請する。現状は持続可能でなく、変更されなくてはならない。我々は、イスラエル政府によるガザに対する新たな政策の発表を、前向きな進展として、歓迎する。我々は、人道・商用物資、市民による復興及びインフラ、及び合法的な経済活動というガザの人々のニーズに、並びに引き続き保障されなければならないイスラエルの正当な安全上の懸念に対処するために、この政策の完全かつ効果的な実施を求める。我々は、パレスチナの機構強化及び存続可能なパレスチナ経済の発展を引き続き支援するとともに、和平合意が達成された際には、西岸とガザにおける経済、治安、政治的開発のための更なる支援を提供する用意がある。我々はまた、イスラエル・シリア間及びイスラエル・レバノン間の関係の進展を求め、中東における包括的で、正当な、持続的な和平合意への強固なコミットメントを改めて表明する。我々は、拉致されたイスラエル兵のジラード・シャリートの即時解放を要請する。

40.我々は、ミャンマー政府に対し、自由で公平な選挙を可能にするために必要な措置をとることを要請する。このためには、完全かつ包含的な民主的参加が不可欠である。我々は、同政府に対し、アウン・サン・スーチー女史を含むすべての政治犯を遅滞なく釈放し、民主的野党勢力及び少数民族グループのメンバーとの間で、国家的和解に向けた前進となる実質的な対話を行うよう要請する。我々はまた、多数の死傷者を出したキルギス共和国における最近の民族的緊張を深く懸念しており、すべての当事者に対し抑制を示すよう訴える。我々は、現在非常に重要な時期に入っているスーダンにおいて、ダルフールにおける紛争を早急に解決し、包括的和平合意の完全な履行を追求するよう当事者に要請する。すべてのスーダンの関係者、地域及びそれを超えた関心国は、スーダン南部及びアビエの将来的地位に関する住民投票の結果にかかわらず、平和と安定を維持するよう最大限の行動をとらなくてはならない。自然災害の後に市民に対して治安と基礎的サービスを提供するために国が直面する課題を認識し、我々は、ハイチを支援するコミットメントを再確認し、そうした災害に対する国際的な対応の迅速性、有効性及び調整を向上させるため既存の国際協調メカニズムの強化に取り組むとともに、引き続き国連の防災グローバル・プラットフォームを支援する。この目的のため、我々が取り得る更なる措置を検討するための専門家グループ会合を開催する。

41.紛争、犯罪、海賊及びテロリズムは、国際的な安定、安全及び繁栄を引き続き脅かしている。我々G8は、パートナー国・地域がかかる脆弱性に対処するために、必要な安全保障にかかる文民の能力を構築し続けられるよう支援することにコミットしている。テロリズム、拡散、薬物の不正取引、不正資金の移動及び国際組織犯罪といった安全保障上の脆弱性に対処するため、G8首脳及びアフリカのパートナーは、コロンビア及びハイチの大統領並びにジャマイカの首相の参加も得た。したがって、我々は、大臣に対し、アフリカ及び南北アメリカ大陸及び他の国々からの関心を有するパートナーと共同で協議を行い、これらの安全上の脆弱性への対処となる追加的措置を検討するよう指示した。前述の目的のため、我々は、法の支配及び治安機関を支援するための文民専門家の国際的な利用可能性、海上安全保障に重要な役割を果たす沿岸国及び地域機関の能力、並びに国際平和活動を強化することにコミットする。現在も進行中の我々の取組の対象は別添IIで詳しく述べられている。

42.我々は、イエメン、ソマリア及びサヘル一帯におけるテロリスト集団の存在の拡大と、彼らによる継続した脅威を引き続き憂慮している。さらに、我々は、テロリスト、他の犯罪者及び反乱者の間の関係拡大の脅威、並びに中南米、カリブ、西アフリカ及びアジア一帯における薬物密輸組織間の関係拡大を懸念している。G8諸国間及び国際社会にわたる広範で協調的な行動は、攻撃を準備し実行するテロリストの能力、及び国際組織犯罪集団が活動する能力を弱体化させてきた。しかしながら、我々は、治安機関及び統治機関を強化し、そうした国境を越えた脅威を助長する腐敗との闘いに継続して注意し、また、脆弱国家に潜在する政治的、社会的及び経済的要因に取り組むことなどにより、犯罪及びテロリズム(暴力及び勧誘につながる、暴力的な過激主義及び過激化を含む)に対処するためにより多くのことを行う必要性を認識している。我々は、そうした行動が、我々の安全を下支えする民主主義、法の支配、及び人権の尊重といった原則に基づかなくてはならないことを強調する。我々はまた、サイバー犯罪からの脅威の拡大にも懸念している。我々は、テロリスト及び犯罪者ネットワークを弱体化させるための共同の取組を深化させ、この目的のために堅固な行動計画を採択した。我々は、テロ対策に関する別途の声明において我々の見解を示した。

43.首脳は2011年にフランスで次回サミット主催するとのフランスの申し出を歓迎した。(了)

別添I:G8ムスコカ・イニシアティブ

妊産婦、新生児及び乳幼児の健康*1*(仮訳)

1.原則:このイニシアティブは長期持続的な成果のための一連の中核的原則に基づく。

●結果の持続可能性の確保。

●実績があり、費用対効果が高く、証拠に基づく施策。

●進展している国への支援を継続しつつ、最大のニーズを有する国に焦点。

●現地の支持を受けた国家主導の国家保健政策及び計画を支援。

●よりよい調整と調和を通じた、開発の取組に関する一貫性の向上。

●説明責任の向上。

●モニタリング、報告及び評価の強化。

2.範囲:このイニシアティブは、ミレニアム開発目標(MDGs)4及び5、並びに目標1(栄養)及び6(HIV/エイズ、マラリア)の要素に関連する。このイニシアティブは、妊産婦及び乳幼児の死亡による大きな負担を抱え、かつ家族計画に関して満たされないニーズに直面している途上国において、保健システムの強化に関する大幅な進展を達成することに焦点を当てている。妊産婦及び乳幼児の健康を改善することは、継続ケア、すなわち、妊娠前、妊娠期、出産期、幼年期、早期の幼児期にわたって、コミュニティレベルでの包括的で効果が高く、かつ統合された施策を必要とする。

3.このイニシアティブは例えば以下の要素を含む。すなわち、産前ケア、助産師による立会い出産、出産後のケア、自発的な家族計画を含む性と生殖に関する保健ケアとサービス、保健教育、感染症を含む病気の治療と予防、HIVの母子感染の防止、予防接種、基本的栄養及び安全な飲料水と衛生の分野における関連の取組である。

4.情報:保健システム強化のための取組はまた、改善された保健情報システム、特に、人口動態統計の登録、定期的な世帯調査の実施、及び実施をモニターし評価するための応用研究を含まなければならない。より多く、より良い方法で、研究を実施・評価することにより、より迅

速かつ効率的に成果を実現するための選択肢を特定することにつながる。

*1*ムスコカ・イニシアティブは、国連、世界保健機関(WHO)、妊産婦・乳幼児の健康のためのパートナーシップ、OECD、G8科学学会、「2015年へのカウントダウン」を含む専門団体と協議して作成された。我々はまた、アフリカ連合と協議し、及びG8を通じてアフリカ個人代表(APR)ネットワークとも協議した。

5.イノベーション:イノベーションをより良く統合し、共有することは、より迅速に実施におけるボトルネックを克服し、成果を加速化させることを助け得る。既存のイノベーションは、携帯電話の今までにないような利用、人口動態統計の改善のための市民の登録手法、及び不足している保健従事者のより良い利用のためのタスク・シフティングを含む。

6.有効性:開発努力の一貫性、調整及び調和の改善並びに現行のメカニズム及びアプローチの効率の向上を通じ、開発におけるすべての投資の影響を最大化することは極めて重要である。我々はまた、WHOと緊密に調整された、世界銀行、世界基金及び世界予防接種イニシアティブ(GAVI)による、保健システム強化のための共同のプラットフォームを設立するための努力を支援する。

7.メカニズム:我々は新たな基金メカニズムを創設するものではない。各ドナーは、多国間機関、市民社会のパートナー及び途上国のパートナーへの直接的な二国間援助を含め、自らが最も効果的と考えるメカニズムを自由に選択することができる。

8.国際的目標:

a)2010年から2015年までの間、2001年に設定されたMDGs4及び5に関する以下の目標を達成するため、G8は、国際社会の多数のパートナーと共に以下に向けて協力する。

i)1990年から2015年の間の乳幼児の死亡率を3分の2減らす。

ii)同じく1990年から2015年の間の妊産婦の死亡率を4分の3減らす。

iii)2015年までに、生殖に関する保健へのユニバーサル・アクセスを達成する。

b)これらの全体の達成には、先進国、新興国、途上国、財団、国際機関、非政府機関、民間セクター及び他の主体を含む、多大な、持続した、世界的努力が必要である。

9.指標:我々は、WHOが、途上国における進展を評価するための一連の中核的指標を特定するため、関係するパートナーと協働していることを歓迎する。これらの努力は、途上国に関する報告の負担を軽減するために指標の調和を図ることを目的とすべきである。ドナーとして、我々は、これらの共に合意した指標の枠内で取り組む。我々はまた、国の報告能力及び保健情報システムを支援する。

10.方法と説明責任:透明性と説明責任の重要性を認識し、我々は、2011年に保健と食料安全保障に焦点を当てる我々の説明責任報告書を通じ、コミットメントの実施に関する進ちょくを追咳する。我々はまた我々のベースラインとコミットメントを決定するために用いた方法を公開した。

別添II:文民による安全保障システムの強化(仮訳)

我々と我々のパートナーのこれまでの取組に基づき、G8は、各々の優先事項及びプログラムに従って、文民による安全保障システムを強化するための相互に関係する3つのイニシアティブにコミットする。これらのイニシアティブは、紛争に関係する不安定性の度合いを軽減し、武力紛争状況における文民を保護し、テロに対抗し、海賊及び国境を越える犯罪と闘い、成長、投資、民主的な開発を可能にする環境の構築を助けることを目的とする。

I.安定化、平和構築及び法の支配のための文民の強化

 紛争後及び危機後の状況への対応には、文民専門家の早期かつ継続的な関与が必要である。文民専門家は、現地の機関と十分に協力しつつ、知識や技術の移転、助言や訓練を通じて、安全、統治及び法の支配のために必要な能力の構築を支援する。彼らは、再建、復興及び永続的な安定と安全の確保を助けるため、必要な場合には軍隊と共に働く。こうした必要性にもかかわらず、即応可能かつ訓練された文民専門家は慢性的に不足し、また、派遣の規模や複雑さを効果的に管理するための国、地域及び国際的な調整メカニズムはほとんどない。このことは、紛争、犯罪、テロリズムや不正取引といった、我々すべてに影響する脆弱性に対し、国家や地域が対応することを助けるための手段を制限している。

G8メンバーは、他の国際的なパートナーと共に、途上国及び新興ドナーから文民専門家を採用し、名簿管理(ロスター化)を行い、派遣し、維持し、及び再統合するための能力の構築を助ける。G8メンバーはまた、国際的な関与のために幅広い分野にわたって、G8諸国からの追加的な専門家を特定し、訓練し、派遣することを支援する。このコミットメントは、国家機関の強化と法の支配の進展のために展開可能な文民を増加させる。{前1文太字}

このコミットメントは、国連を含む我々の鍵となるパートナーによって表明されたニーズに対応するものである。2009年の「紛争直後期における平和構築に関する国連事務総長報告書」は、文民の派遣における国際的な能力の強化を要請している。G8はこの要請にこたえる。

II.海上安全保障の能力

実効的な統治がない海岸線がある場合、かかる海岸線は、犯罪者、密売人、海賊やテロリストへの逃避先を提供している。9万近い船舶が海上を往来する中、増大する海賊問題並びに数十億ドル相当の薬物及びその他の進行中の密輸の問題が、国際的な安定と安全を脅かしている。我々は、ソマリア沖海賊と戦うとのコミットメントを再確認し、発生海域が周辺海域に拡大していることを懸念する。

継続中の国際的な取組に貢献することによって、G8は、海上安全保障において重要な役割を果たす沿岸国や地域機関への支援を継続する。これは、海上の管理、哨戒飛行、沿岸警備、漁業に関する取締り、海上に関する情報の共有と統合、並びに立法、司法、訴追及び矯正の支援といった分野における能力の強化を含む。その目標は、海洋領域での識別と主権の保護における国家及び地域機関の運用上の実効性・即応性を向上させることである。これらの努力は、国連安保理決議1918(2010年)が要請するとおり、海岸線の安全確保の向上と海賊の訴追を助ける。さらに、これらの努力は、中南米、カリブ及びアフリカの多くの国家の安定と統治を妨げる、犯罪及びテロのネットワークの連関の増大に対処することを助ける。{前1段落太字}

我々のコミットメントは、国際的なパートナーの取組を補完、支援し、国際的な協力の強化を追求する。

III.国際的な警察の平和活動

2004年のG8シーアイランド・サミット以来、G8メンバーと他の国際的なパートナーは、国際平和活動のための軍事要員及び警察要員の質及び供給可能性の改善に貢献してきた。需要の増大にかんがみ、引き続き大きな需給ギャップが存在している。国連は、公共の秩序と安全のための強力かつ機動的な支援を提供するにあたり、ますます警察部隊(FPU)に依存している。FPUは、集団で展開し、高リスク環境で活動できる要員による、団結した自律的なチームである。需要を満たすための部隊は十分に利用可能でなく、また、派遣されたFPUの中には十分な能力を有してい

ないものもある。

G8メンバーは、国連やAUによる平和活動の任務に従事する新たなFPUを含め、助言、訓練及び、適当な場合には装備を提供することにコミットする。この観点から、G8諸国はまた、途上国や新興ドナーを含む他のドナーや警察要員貢献国と協力する。我々は、新たなFPUが適切な装備と物資を所持し、国連の標準に従って十分に訓練され、派遣準備を行うことを確保するよう取り組む。これは、アフリカ、アジア及び南北アメリカにおける地域の訓練センターの能力の構築、及び国連によるFPUのための原則、戦術、任務及び手続の開発と普及のための継続した支援を伴うものである。このコミットメントは、継続中又は新たな活動のための優先的なニーズに早期に対応することを確保するため、国連及びAUと緊密に連携して実施される。{前1段落太字}