データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8北海道洞爺湖サミット首脳宣言(第34回北海道洞爺湖主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] 北海道洞爺湖町
[年月日] 2008年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

世界経済

世界の経済成長

1.我々は、我々の経済の長期的強靭性及び将来の世界の経済成長に関し、引き続き肯定的である。我々の経済成長は緩やかになったものの、新興市場国は依然力強く成長している。しかしながら、世界経済は現在、不確実性に直面しており、下方リスクは依然存在している。とりわけ、我々は、世界の安定成長に深刻な試練を提起し、最も脆弱な人々に深刻な影響を与え、世界のインフレ圧力を高める一次産品、特に原油及び食料の価格上昇に強い懸念を表明する。我々は、我々の経済及び世界経済の安定と成長を確保するため、個別にあるいは共同して、引き続き適切な行動をとる決意である。

 過去数ヶ月、金融市場の状況はいくぶん改善した。しかしながら、深刻な緊張は依然存在している。4月の金融安定化フォーラム(FSF)による勧告の実施が順調に進捗しているものの、我々は民間部門の関係者、国内監督機関及び国際機関に対して、金融システムの強靭性を強化するため、すべてのFSFの勧告を早急に実施することを求める。我々は、大阪でのG8財務大臣会合の声明において示されたように、FSF報告書の勧告実施が重要であることを強調する。

2.我々は世界経済を巡る諸問題が相互に連関していることに留意する。我々は、自国並びに新興市場国及び産油国における健全なマクロ経済政策及び構造改革を通じて、世界の不均衡の円滑な調整を促進することに引き続きコミットする。多額かつ増加する経常収支黒字を有するいくつかの新興市場国の実効為替レートが、必要な調整が進むように変動することが重要である。我々は、我々のパートナー国との継続的な協議を促進する。

3.グローバリゼーションは、政治的民主主義、経済的自由及び説明責任を果たす制度という共通の価値に支えられ、世界の経済成長及び強固で繁栄する経済の重要な推進力である。グローバリゼーション及び開放的な市場は、我々の社会、新興市場国及び開発途上国に大きな機会を提供する。我々はこれらの機会を我々の市民の利益及び世界の成長のために活用することに強くコミットしている。同時に、我々は、すべての者にグローバリゼーションの恩恵をもたらすために、様々な政治的、経済的及び社会的な試練に取り組んでいく。

4.我々は、国際機関、特に世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)及び経済協力開発機構(OECD)が協力を強化し、一貫性を高めることを呼びかける。

貿易及び投資

5.我々は、国際的な貿易及び投資に対するあらゆる形態の保護主義的な圧力に抵抗する。野心的でバランスのとれた包括的なWTOドーハ・ラウンドが成功裡に妥結することは、経済成長及び開発に決定的に重要である。交渉が決定的に重要な段階にあることにかんがみ、我々は、喫緊の課題として交渉妥結に向け取り組む決意を改めて表明し、すべてのWTO加盟国に対し、農業及び非農産品市場アクセス(NAMA)のモダリティを確立し、サービス分野において積極的かつ目に見える成果を達成すべく、実質的な貢献を行うよう呼びかける。我々は7月21日から始まる閣僚会合の招集を歓迎する。我々はまた、同じ機会に行われるサービス貿易に関するシグナリング会議を開催することを支持する。

 我々は、全体的なバランスを確保するため、一括受諾の下にあるすべての分野において、進捗をはかり、有意義な成果を実現する必要性を強調する。

6.開放的な貿易及び投資政策は、経済を強化する。すべての国は、外国投資を歓迎し、外国投資に対する無差別待遇を保証し、資本及び投資の収益を移転する自由を保証する体制を発展、維持及び促進する方策をとるべきである。いかなる外国投資の規制も、主に国家安全保障上の懸念に焦点を当てた非常に限定されたものであるべきであり、かつ、透明性及び予見可能性、比例性、説明責任の諸原則に従ったものであるべきである。さらに、我々は、公正かつ衡平な待遇、収用の場合の迅速、適当かつ実効的な補償、紛争を解決するための国際仲裁へのアクセスを含む国際約束における投資保護の高い基準の重要性に留意する。我々は、投資に関連する二国間協定における内国民待遇及び最恵国待遇等の高い自由化の基準に対しても同様にコミットしている。

7.開放的で競争的な資本市場は、経済成長を促進させることができる。我々は、同等な証券規制枠組の相互承認に関する進行中の議論を含め、国境を越えた資本市場のサービスを促進するような様々な手法を通じた金融監督当局の行動を奨励する。

8.ソブリン・ウェルス・ファンド(SWFs)は、世界経済においてますます重要な参加者であり、我々は幾つかのSWFsによる透明性の向上に向けた最近のコミットメントを歓迎する。我々は、SWFs及びその受入れ国それぞれのベスト・プラクティスを特定するIMF及びOECDの作業を奨励し、この文脈において、OECD閣僚理事会におけるSWFsと受入れ国の政策に関するOECD閣僚宣言を歓迎する。

9.我々は、ハイリゲンダムにおけるコミットメントを再確認し、すべての国の企業による関連する国際的な文書、基準、及び原則の自発的な遵守の奨励を含め、企業の社会的責任(CSR)を促進する。我々は、社会的に責任のある投資を行うための民間ビジネスの努力を認識し、賞賛する。我々は良いコーポレート・ガバナンスの実行を奨励する。

10.我々は、4月に開催されたG8ビジネス・サミットの共同声明を歓迎し、我々が直面する様々な試練に取り組む上で、経済界、消費者団体、労働者及び労働組合を含むすべての利害関係者との協力を強化する決意である。

エネルギー安全保障

11.我々は サンクトペテルブルクの世界のエネルギー安全保障の原則及びその行動計画の実施に対する我々のコミットメントを再確認し、他国に対して、これらの原則を受け入れることを呼びかける。したがって、我々は、国際エネルギー機関(IEA)の助力を得て、これらの原則を遵守する我々の努力を評価する報告書をとりまとめるとともに、これに対するIEAによる概観報告を歓迎する。我々は、2009年のサミットのために、我々の報告書を更新することにコミットする。

12.我々は、世界経済にリスクをもたらしている原油価格の急激な上昇に強い懸念を有する。すべての者の利益のため、根底にある原因に取り組むための協調した努力が必要である。供給面では、短期的には生産量及び精製能力が増強されるべきである。中期的には、上流及び下流に亘る投資を拡大するためにも、共同の努力が必要である。産油国は、増加する世界の需要を満たすために必要な生産能力の増強に資する透明性があり、安定的な投資環境を保証すべきである。需要面では、エネルギーの多様化を追求するとともに、エネルギー効率を向上するための更なる努力が重要である。

世界のエネルギー安全保障の強化においてエネルギー生産国及び消費国が共通の利益及び責任を有することを再確認する中で、我々は対話とパートナーシップを更に強化する。この点において、我々は、先日開催されたジッダ・エネルギー会合のフォローアップとして、本年後半にロンドンで開催予定の会合に期待する。また、我々は、IEA加盟国ではない主要国が、適切な場合には、IEAのプログラムへの積極的な参加等を通じ、IEAとの対話を深めることを奨励する。

13.エネルギー安全保障を強化するため、我々は、エネルギー効率と新技術に焦点を当てたエネルギー・フォーラムを開催することを提案する。これもまた、生産国と消費国との間の対話に貢献し得る。

14.透明性の向上はより良く機能するエネルギー市場、ひいてはより良い需給バランスにつながる。したがって、我々は、原油についての市場データの収集及び適時の報告について改善を行い、原油市場の動向と見通しに関する共通の分析を発展させることが必要である。したがって、我々は、エネルギー生産国と消費国の間の、石油在庫を含む情報共有のための努力に対する重要な貢献である石油データ共同イニシアティブ(JODI)を引き続き強く支持する。我々は、JODIが情報の質、完全性、適時性において更なる前進を実現するための国際エネルギーフォーラム(IEF)を含むJODIのパートナー機関の努力を支持する。我々は、歪曲されない形の価格シグナルを発出し、いかなる政治的圧力も受けないエネルギー市場の重要性を強調する。我々は、G8財務大臣会合がIMF及びIEAに対して、最近の原油及び一次産品価格の高騰の背景にある実需・金融両面の要因、それらの価格の変動、及び世界経済への影響についての更なる分析を共同で行うように要請したことを歓迎する。我々はまた、商品先物市場の透明性の向上のための各国の関連当局の努力を歓迎し、関連当局の間の更なる協力を奨励する。

天然資源

15.採取分野での透明性、説明責任、良い統治の向上及び持続可能な経済成長を促進するために、及び武力紛争及び紛争後の状況の天然資源の側面に取り組むために、我々は

(a)採取産業透明性イニシアティブ(EITI)のようなイニシアティブを引き続き支持し、その完全な実施を呼びかけ、候補国に対して時宜に即して認証プロセスを完了させることを呼びかける。我々は、新興市場国及びその企業がこのイニシアティブを支持することを奨励する。

(b)天然資源の豊富な国によって自発的に採択されるための国際的な基準及び規範を発展させるための国際金融機関の努力を支持すること、及び、適切な場合には、技術支援を通じて、天然資源が豊富な国による財政の透明性及び立法に基づく監視を含む資源管理の改善を促進する

(c)紛争及び紛争後の状況の天然資源の側面に、一層効果的に対応するための国際的な努力を支持し、OECD開発援助委員会(DAC)、国連事務総長及び世界銀行によるこの問題についての追加的な分析を歓迎する。

16.我々は、最も効率的な資源配分のメカニズムとしての開放的な天然資源市場の重要性を確認する。我々は、貿易のパートナーに、WTOルールを厳格に遵守し、この分野における措置の透明性及び予見可能性を向上させることを呼びかける。

知的財産権の保護

17.知的財産権の効果的な促進及び保護は、創造的な製品、技術及び経済の発展にとって極めて重要である。我々は、既存の模倣品及び海賊版対策のイニシアティブを、特に、我々の関係当局の間における情報交換の体制の促進や世界税関機構における非拘束的な基準である税関における統一的な知的財産権の執行に係る基準(SECURE)の作成によって、推進する。我々は、新たな国際的な法的枠組である模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)を制定するための交渉の加速化を奨励し、本年末までに交渉を完了させることを追求する。我々は、模倣品及び海賊版にかかる新たな技法と闘うための手段を発展させるために、我々の国の間で、実践的な協力を促進し、ベスト・プラクティスを普及させる。我々は、政府によるソフトウェアの使用は関連する国際約束を完全に遵守する形で行うとの我々のコミットメントを再確認し、他国が我々のコミットメントに倣うことを呼びかける。

18.効率的かつ良く機能する知的財産制度は、すべての発展段階にある諸国に利益をもたらすものであることを確信し、我々は、

(a)実体特許法条約に関する議論の加速化をはじめとする世界の特許制度の調和及び国際的な特許にかかる協調の拡大の重要性について再確認し、

(b)G8の技術協力のパイロット・プランの進展や、追加的なパイロット・プラン及び当該諸国における公衆周知活動のための共同アウトリーチ計画の立ち上げを歓迎する。

腐敗

19.我々は、すべての国による国連腐敗防止条約(UNCAC)の批准とレビュー・メカニズムの構築を含むUNCACの効果的な実施の確保によって、バリ会合の強固かつ一貫したフォローアップを求める。我々は、これまでのコミットメントを再確認し、腐敗行為の罪を犯した公務員に対し、国内法を通じて、安全な逃避先を与えないための努力を倍加し、世界銀行及び国連薬物犯罪事務所(UNODC)によって促進される奪われた財産の回復(StAR)イニシアティブのような関連国際機関のイニシアティブを支持することを含め、財産の回復に関する国際的な協力を強化する。我々はまた、UNCACを実施するため自ら努力しているパートナー国に対する技術支援の重要性を認識する。

我々はまた、厳格かつ常設的なピア・レビュー・メカニズムの実施を通じた効果的な監視を継続することのコミットメントをもって、OECD外国公務員贈賄防止条約の執行を強化するとともに、新興国の同条約への加入を求める。我々は、G8において約束してきた腐敗対策に関するコミットメントについての各G8メンバーの取組を詳述する強化されたアカウンタビリティ報告書を支持し、毎年、同報告を更新していくことに合意した。

金融システムの濫用

20.我々は、税に関する透明性及び効果的な情報交換にかかるOECD基準を完全には実施していないすべての国に対し、遅滞なく、これを実施するよう求めるとともに、OECDに対し、租税回避に関する取組を強化し、2010年に報告することを奨励する。

ハイリゲンダム・プロセス

21.我々は、相互信頼及び相互理解を強化し、投資、イノベーション、エネルギー効率及び開発に焦点を当てた真のパートナーシップを発展させるための、G8メンバーと主要な新興市場国の間の平等で論点主導型の政治対話であるハイリゲンダム・プロセスの進捗を歓迎する。我々は、7月9日にブラジル、中国、インド、メキシコ及び南アフリカの指導者と、中間報告に反映されたこれらの問題について議論することを期待する。このプロセスに対するコミットメントを改めて表明し、2009年のG8サミットにおいて、本対話についての包括的な最終報告を受け取ることを期待する。我々は、OECDがこの対話のために組織的及び技術的な支援を提供することを評価する。

環境・気候動変{ママ}

気候変動

22.我々は、最も包括的な科学評価を提供する気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次評価報告書の重要性を再確認するとともに、我々の気候保護努力を導くべきである科学に基づくアプローチが継続することを奨励する。我々は、気候変動との闘いにおいて力強い指導力を発揮するとのコミットメントを再確認し、この観点から、バリにおいて採択された決定を、2009年までに国連気候変動枠組条約(UNFCCC)プロセスにおいて世界的な合意に達するための基礎として歓迎する。我々は同プロセスの成功裡の妥結にコミットしている。すべての主要経済国による約束又は行動の強化が気候変動への取組のために不可欠である。そのため、我々は、主要経済国首脳会合によるUNFCCCに対する積極的な貢献を支持する。

23.我々は、気候変動の最も深刻な結果を避けることにコミットするとともに、条約第2条の究極的な目的に整合的に、かつ経済成長及びエネルギー安全保障と両立すべき時間的枠組の中で、世界全体の温室効果ガスの濃度を安定化させる決意である。この目的の達成は、全ての主要経済国により、適切な時間的枠組の中で、世界全体の排出の増加を遅くし、止め、反転させ、また低炭素社会に移行するとの共通の決意を通してのみ可能となるであろう。我々は、2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成する目標というビジョンを、UNFCCCのすべての締約国と共有し、かつ、この目標をUNFCCCの下での交渉において、これら諸国と共に検討し、採択することを求める。その際、我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力という原則に沿って、世界全体での対応、特に全ての主要経済国の貢献によってのみこの課題に対応できることを認識する。このような長期目標に向けた実質的な進展は、とりわけ、短期的には、既存技術の展開の加速を必要とし、中長期的には、我々の持続可能な経済発展とエネルギー安全保障という目的を満たせる方法での低炭素技術の開発と展開に依っている。その点、我々は革新的な技術と慣行の開発と展開を促進する適切な措置をとることの重要性と緊急性を強調する。

24.共有のビジョンに向けて進展を図ること、及び世界全体の長期目標は、それらを達成するための中期目標と国家計画が必要である。これらの計画は、緩和と適応への多様な対処方法を反映したものであろう。セクター別アプローチは、各国の排出削減目標を達成する上で、とりわけ有益な手法である。我々は、この問題を明日、他の主要経済国の首脳と議論し、さらに、向こう何か月間にわたり、主要経済国間で、またUNFCCCの交渉において議論を続けることを期待している。我々は、共通に有しているが差異のある責任及び各国の能力の原則に沿って、先進主要経済国が行うことと途上主要経済国が行うことは異なることを認識する。この点、我々は自らの指導的役割を認識し、我々各国が、各国の事情の違いを考慮に入れ、すべての先進国間における比較可能な努力を反映しつつ、排出量の絶対的削減を達成するため、また可能な場合には、まず可能な限り早く排出量の増加を停止するために、野心的な中期の国別総量目標を実施する。我々はまた、技術、資金及びキャパシティ・ビルディングにより、途上主要経済国の緩和の計画を支援することもできる。同時に、実効的かつ野心的な2013年以降の世界的な気候に関する枠組を確保するためには、2009年末までに交渉される国際合意において拘束される形で、すべての主要経済国が意味ある緩和の行動をコミットすることが必要である。

25.セクター別アプローチは、経済成長と両立する形で、既存及び新しい技術の普及を通じ、エネルギー効率を向上させるとともに、温室効果ガス排出量を削減するための、有用な手法となり得る。我々は、IEAに対して、経済界のイニシアティブも得つつ、データ収集の改善を通じ自発的なセクター別指標に関する作業を強化するよう要請する。

我々は、2013年以降の合意された結果に向けたUNFCCCの下での個別のプロセスに留意しつつ、国際民間航空機関(ICAO)と国際海事機関(IMO)において、国際航空及び海運セクターにおける温室効果ガス排出の抑制又は削減について、迅速に議論することの重要性を強調する。

26.我々は、エネルギー効率に関する、中期的な、展望としての目標を設定することの重要性を認識する。我々は、国別行動計画に加え国別目標及び目的において、エネルギー効率に関するIEAの25の勧告を最大限実施する。

我々は、エネルギー効率を向上させる健全な慣行の採用を加速させる我々の共同の努力を強化し、調整するハイレベルのフォーラムとして「エネルギー効率に関する協力のための国際パートナーシップ」(IPEEC)を設立するという最近の決定を、歓迎する。IPEECの組織に関する条件は、本年末までに決定される。

我々は、すべての関心国がこれらの努力に加わることを呼びかける。

27.我々は、気候変動への取組及びエネルギー安全保障の強化のための重要性にかんがみ、適切なモニタリングを伴う国別目標の設定及び行動計画の策定により、クリーン・エネルギーを推進する。我々は、相当程度かつ増大する経済的及び雇用機会がこの分野に存在すると信じる。

 我々は、気候変動問題に取り組み、長期的に化石燃料への我々の依存度を減らす上での、再生可能エネルギーの重要な役割を認識する。

 我々は、持続可能なバイオ燃料の生産と使用の重要性を強調する。同様のことは、バイオマスの燃料、熱、電力へのより広範な利用についても当てはまるべきである。我々は、国際バイオエネルギー・パートナーシップ(GBEP)の作業を支持するとともに、バイオ燃料の生産と使用について科学に基づく基準と指標を策定するために、GBEPが他の利害関係者と共に、取り組むことを呼びかける。我々は、第二世代のバイオ燃料技術の研究開発の継続にコミットしている。

28.我々は、気候変動とエネルギー安全保障上の懸念に取り組むための手段として、原子力計画への関心を示す国が増大していることを目の当たりにしている。これらの国々は、原子力を、化石燃料への依存を減らし、したがって温室効果ガスの排出量を減少させる不可欠の手段と見なしている。我々は、保障措置(核不拡散)、原子力安全、核セキュリティ(3S)が、原子力エネルギーの平和的利用のための根本原則であることを改めて表明する。このような背景の下、日本の提案により3Sに立脚した原子力エネルギー基盤整備に関する国際イニシアティブが開始される。我々は、このプロセスにおいて、国際原子力機関(IAEA)が役割を果たすことを確認する。

29.気候変動の潜在的影響と開発の関連性を認識し、緩和及び適応の戦略は、開発と貧困削減努力の一部として追求されるべきである。気候変動への国際的対応の成功は、開発途上国と先進国の間のパートナーシップを必要とする。低炭素かつ気候に対する回復力を有する経済を構築するために、開発途上国が適切な国別緩和・適応計画を導入しようとする努力は、先進国からの援助規模の拡大によって支援されるべきである。

30.より貧しい国々が気候変動の悪影響に対して最も脆弱であることを認識し、我々は、開発途上国、特に後発開発途上国(LDCs)及び小島嶼開発途上国が災害リスクの低減を含め、気候変動への適応のため行う努力に対する協力を継続し、強化する。この問題に取り組むため、我々は、適応をより広範な開発戦略の中で主流化するための緊急の行動を支援することにコミットするととともに、開発途上国自身が適応を自らの開発政策の中に統合するよう奨励する。UNFCCCの適応基金の下での活動の早期開始は、この面における重要な貢献となるはずである。我々は、国際開発金融機関及び他の開発機関がこうした努力を行う国々を支援することを呼びかける。

31.我々は、IEAの支援を受け、炭素回収・貯留(CCS)及び先進的なエネルギー技術を含む、革新的技術のためのロードマップを策定する国際的イニシアティブを立ち上げ、既存及び新しいパートナーシップに基づいて協力する。クリーン・エネルギー技術を緊急に開発、展開、促進するという、ハイリゲンダムのコミットメントを再確認しつつ、我々は新技術に対する民間部門の投資を促進するための、透明性のある規制の枠組、経済的・財政的インセンティブ、官民協調といった幅広い政策手段を認識するとともに、奨励する。我々は、2020年までにCCSの広範な展開を始めるために、各国毎の様々な事情を考慮しつつ、2010年までに世界的に20の大規模なCCSの実証プロジェクトが開始されることを、強く支持する。

 これら及びその他の努力を加速するために、我々は、環境及びクリーン・エネルギーに関する基礎的及び応用技術の研究開発への投資の増大、及び政府の直接投資や民間部門の投資を促進する財政手段などを通じた商業化の促進にコミットしている。この観点から、G8メンバーはこれまでに、今後数年間にわたって毎年100億米ドル超を政府の直接投資による研究開発に対して拠出することをプレッジしている。我々はまた、これらの技術を商業化するためのインセンティブを提供するために、様々な政策や規制措置を実施することに合意している。

 我々は、安定した気候の維持に資するかもしれない補完的技術アプローチの研究を促進する機会について留意する。

 地球観測データに対する需要の増大に応えるため、我々は、優先分野、とりわけ気候変動及び水資源管理に関し、観測、予測及びデータ共有を強化することにより、国連専門機関の事業を基礎とした全球地球観測システム(GEOSS)の枠内の努力を加速化する。 我々はまた、地球観測における開発途上国のキャパシティ・ビルディングを支援するとともに、相互運用性及び他のパートナーとの連携を促進する。

32.開発途上国における、緩和、適応、クリーン・エネルギーへのアクセスという緊急の課題に応じるためには、相当の資金と投資が必要となる。主要な資金源は民間部門となるが、公的資金は、最貧困層を援助するとともに、特に増加費用を賄うことにより、民間投資を促進するために不可欠である。公的資金は、国の政策が低炭素投資のためにインセンティブを提供する場合には、排出量削減に誘導する上で非常に効果的たり得る。この観点から、我々は世界銀行が管理するクリーン・テクノロジー基金(CTF)や戦略気候基金(SCF)を含む気候投資基金(CIF)の設立を歓迎し、支持する。G8メンバーは、これまで約60億米ドルをODAとしてこれらの基金に拠出することをプレッジしており、他のドナーからのコミットメントを歓迎する。CIFは官民の資金供給規模を増大させるであろう。これらの基金は、広範かつ包含的なガバナンス・メカニズムを持ち、2013年以降の体制の下での新しい資金的枠組が有効になるまで、暫定措置として、緊急の行動のための差し迫った資金ギャップを埋めることになる。CTFは、低炭素目的を含む信頼性のある国別緩和計画を支援するための投資を通じて、開発途上国が、商業的に入手可能なよりクリーンなエネルギー技術を国内において展開することを資金的に支援することにより、低炭素経済を促進することを目指す。SCFはより脆弱な国々が経済の気候に対する回復力を高め、また森林減少を防止する行動をとることを助けるとともに、2013年以降の資金の仕組みの協議という文脈において有益な教訓を提供し得る。これらの基金は、UNFCCCの主要な資金的手段として重要な役割を果たし、かつ我々が強化することをコミットしている地球環境ファシリティ(GEF)を含む、既存の多国間の努力を補完するものである。我々はまた、追加的投資を生み出すことができる官民協調を含む、G8メンバーによる様々な二国間の資金的イニシアティブを歓迎する。我々は、このような資金的支援が調整された形で行われ、実効的な2013年以降の枠組への開発途上国の積極的関与を奨励することを期待する。

33.国内及び国家間の排出量取引、税制上のインセンティブ、パフォーマンスに基づいた規制、料金あるいは税金、及び消費者ラベル等の市場メカニズムは、価格シグナルを提供することが可能であるとともに、民間部門に対する経済的インセンティブを与える潜在力を有する。我々はまた、これらが費用対効果の高い方法で排出量削減を実現すること及び長期的な技術革新に刺激を与えるのに役立つことを認識している。我々は、こうした手段をそれぞれの各国の事情に従って促進するとともに、異なる手段の効果について経験を共有する考えである。この観点から、我々は、財務大臣によって採択された民間・公的金融機関の関与を強化するための気候変動G8アクションプランを歓迎する。

34.WTO交渉における環境関連物品及びサービスに対する関税及び非関税障壁を撤廃しようとする努力は、クリーン・テクノロジーと技能の普及のために強化されるべきである。加えて、気候変動への取組に直接関係する物品・サービスに関しては、自主的な貿易障壁の削減または撤廃について考慮されるべきである。我々はまた、低炭素排出に貢献し得るよりクリーンで効率的な製品とサービスを促進及び支援するような、購入及び投資に関する政策や慣行をはじめとする、気候変動の緩和に貢献するイニシアティブを奨励することで合意した。

35.我々は、気候変動、クリーン・エネルギー及び持続可能な開発に関するグレンイーグルズ対話の最終報告書を歓迎する。我々はまた、IEAと世界銀行によって提出された、グレンイーグルズ行動計画に関連する作業に関する報告書を歓迎するとともに、これらの機関との協力を継続する。我々は、メンバー国間及び経済界と市民社会との間の有益な意見交換を評価するとともに、この種の意見交換が更に行われることが、気候変動に関する活動やUNFCCCプロセスを支援する上で果たし得る役割を認識する。

 我々は、国際開発金融機関による、グレンイーグルズで合意されたクリーン・エネルギー投資枠組(CEIF)に関する大きな進展と、既存の資金源から2010年までの間に公的な及び民間の投資を1000米億ドル以上の水準とするというこれら金融機関による共同の野心的目標を歓迎する 我々は、これらの金融機関に対し、CEIFを基礎として、気候変動を開発の取組に統合していく指針となるとともに、再生可能なエネルギーのような低炭素投資のために具体的な目標を設定する、包括的戦略を策定することを呼びかける。

森林

36.我々は、既存のイニシアティブを基礎とし国際的な森林監視ネットワークを発展させることを含む、「森林減少・劣化に由来する排出の削減(REDD)」のための行動を奨励する。我々は、違法伐採及び関連取引を抑制することの緊急の必要性を認識し、G8森林専門家違法伐採報告書を歓迎する。我々は、適当な場合には、予備的な選択肢のリストをフォローアップする。我々は、効果的な森林法の執行、森林のガバナンス、持続可能な森林経営を世界的に促進するため、様々なフォーラムやイニシアティブの間の緊密な連携を確保することにより、できる努力をすべて行う。我々はまた、森林火災と闘うための協力を強化する方策を検討する。

生物多様性

37.我々は、ボンで開催された生物の多様性に関する条約第9回締約国会議において強調されたように、生物多様性の保全と持続可能な利用の決定的な重要性について認識し、生物多様性の脆弱性についての懸念を共有する。我々は「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ」を支持し、世界的に合意された2010年の生物多様性目標を達成するため、野生動物の違法取引による脅威の削減も含め、生物多様性の損失速度比率を顕著に減少させるための努力を増大させるというコミットメントを改めて表明する。我々は、温室効果ガス排出量の削減とともに生物多様性の保全及び持続可能な利用につながるコベネフィットアプローチを推進する。我々は、研究活動と国民、政策立案者の間の交流を向上させることの重要性に留意する。

3R

38.我々は、3R(廃棄物の発生抑制(リデュース)、資源や製品の再使用(リユース)、再生利用(リサイクル))原則の実施に当たって、繁栄する世界経済と環境に向けて、資源をそのライフサイクルを通じて使用する方途の重要性を認識する。この目的のため、我々は、神戸3R行動計画を支持する。我々は、資源循環を最適化するための努力を更に進めるためのOECDの作業に基づき、資源生産性を考慮しつつ、適切な場合には、目標を設定する。我々は、情報共有、利害関係者間のパートナーシップ及びプロジェクトの策定と投資において3Rの観点を包含することの重要性を認識する。我々は、再製造品の貿易における障壁を削減することの重要性と、WTOに加盟しているG8メンバーが、WTOドーハ・ラウンドの下で再製造品の貿易を自由化するとの最近提出された提案を支持することの重要性を認識する。我々は、バーゼル条約と整合的であり環境上適正な方法により、再使用または再生利用可能な原材料と資源の国際循環を支持する。

持続可能な開発のための教育

39.我々は、より持続可能な低炭素社会の実現につながるような国民の行動を奨励するため、持続可能な開発のための教育(ESD)の分野におけるユネスコ及びその他の機関への支援及び、大学を含む関連機関間の知のネットワークを通じて、ESDを促進する。

開発・アフリカ

開発

40.ミレニアム開発目標(MDGs)に向けた中間年にあたり、これまで前進はあったものの、重要な課題が依然残っている。我々は、我々の取組を再活性化し、また、相互の説明責任に基づき、開発途上国とのパートナーシップを強化するとともに、開発途上国の努力を奨励することにより、これらの目標に向けたコミットメントを新たにする。OECD/開発援助委員会(DAC)は、2010年までの全世界の政府開発援助(ODA)増加を年間約500億米ドルと見積もった。我々は、他のドナーと共に、2004年に比較して、2010年までにアフリカ向けODAを年間250億米ドル増加することを含む、グレンイーグルズでなされ、ハイリンゲンダムで再確認されたODAに関するコミットメントの履行に取り組むことにつき強くコミットしている。我々は、G8諸国がドナーの拠出の75%近くを提供した国際開発協会(IDA)、アフリカ開発基金及びアジア開発基金の増資の成功を賞賛するとともに、G8及び他のドナーからのアフリカに対するODAについて再評価がなされるべきであり、2011年以降の時期について現在のコミットメントを超えて増額される必要があるかもしれないことを認める。我々は、9月に開催される国連MDGsハイレベル会合が、コミットメントを示し、進捗のレビューを行い、残された課題並びにその克服に必要な調整された国際的行動及び各国主導の行動を特定するための、時宜を得た重要な機会を提供することを期待する。我々は、国連事務総長のMDGsアフリカ・ステアリング・グループの勧告を期待する。我々はまた、開発協力に関する我々の焦点は、開発途上国における良い統治及び自立的で民間部門主導の経済成長を促進することに置かれるべきであることを改めて表明する。

41.開発課題に取り組むにあたって、我々は、多面的なアプローチをとり、持続可能な開発の枠組においてMDGsに関連する開発分野間、とりわけ保健、水及び教育分野の間の相乗効果を促進する。この点、我々の取組は、ハイリゲンダムで支持された透明性及び法の支配に基づく良い統治並びに広範で民間部門主導の成長の促進を含む、一連の開発政策の主要原則に基礎を置く。我々は、すべての主要な関係者及び利害関係者を巻き込む「全員参加型のアプローチ」を促進する。我々は、共同で、また、他国と共に、補完的な形で、国際保健分野の優先課題に取り組み、保健に関する既存のコミットメントを実施する。我々はまた、個人及びコミュニティの保護と能力強化を通じて、人間の安全保障の向上に取り組む。加えて、我々は、開発を促進する手段としての教育および科学技術の重要性を強調する。我々は、開発協力における一つの原則として、ジェンダーの平等と女性の能力強化を主流化及び具体的行動を通じて促進する。援助効果向上に関する第3回ハイレベル・フォーラムにおいては、パリ宣言の原則に基づき我々の援助をより効果的なものにするとのコミットメントを再確認する。我々は、国内の公的資金及び政府開発援助と関連する形で民間投資を引き出す革新的なアプローチを引き続き奨励する。

42.我々は、ODA、海外直接投資及びその他の民間資金フロー、貿易、債務救済、革新的な資金調達及び国内資金を含む、開発のためのすべての利用可能な資源を動員することの重要性を強調したモンテレイ開発資金国際会議において合意された、開発アジェンダを支持するとのコミットメントを新たにする。ドーハにおける開発資金国際会議フォローアップ会合の成功に貢献することで、我々はモンテレイ・アジェンダ及び、そこで開始されたグローバルなパートナーシップに新たな弾みを与える。

43.平和と安全は国民のニーズに応えるための国家の能力にとって根本的に重要である。脆弱国家及び紛争後の国家はMDGsの達成から最も遠い位置にとどまっている。脆弱さを克服し、復旧を成功させるには、特定の文脈に応じた包括的、統合的及び持続的な国際支援が必要であり、これには必要な場合には平和維持及び平和構築のための取組も含まれる。G8を含むすべての関係国及び国際機関による一貫し、かつ、補完的な対応が、惨状と絶望の循環を裁ち切り、これらの国々がMDGsの達成への途に乗るための一助となり得る。

44.我々は、開発面の影響を考慮し、送金フローの円滑化の重要性を認識する。2007年11月にベルリンで開催された送金に関するG8会合では、2004年のシーアイランド・サミットで合意された行動のレビューを行った。この文脈において、我々は、データの改善、開発面の影響、送金サービス、資金へのアクセス、革新的なチャンネル及び世界送金作業部会の創設というベルリン会合で採択された7つの勧告のフォローアップを行う。我々は、この点について国際金融機関が行った取組を評価しており、世界銀行に同グループの作業を円滑化し、また、調整を行うよう呼びかける。

保健

45.感染症との闘いに関する政治的及び財政的なコミットメントが強まってきた結果、G8は、国際保健に対する国際的関心を高めるとともに、パートナー諸国における保健の著しい改善に貢献してきた。これにはHIV/エイズの予防、治療、ケアへのアクセス、結核の罹患率の安定化、マラリア対策用の長期残効型殺虫剤含有蚊帳などの革新的な製品の普及拡大、麻疹による死亡の顕著な低下、過去に比べ最も根絶に近づいているポリオ対策の相当の進展などが含まれる。世界エイズ・結核・マラリア対策基金を通じた資金投入は、各国での取組、二国間プログラム及び多国間プログラムと相俟って、今日までに受益国において250万人以上の命を救うことを可能としてきた。2007年にベルリンで開催された第二次任意増資会合では、2008年から2010年までの活動を拡大するために97億米ドルの資金が集まった。しかし、保健関連のMDGsの達成に向けて今なお多くの課題が残っている。G8メンバーは、マラリア、結核、ポリオという感染症との闘いに関して、それぞれ固有のコミットメントを完全に遵守する決意であり、2010年までのHIV/エイズの予防、治療、ケアへのユニバーサル・アクセスという目標に向かって取り組んでいる。これに関し、我々は、G8保健専門家が、説明責任を果たすためにG8の過去のコミットメント履行状況を示す一覧表とともに提出した報告書を歓迎する。同専門家報告書は、感染症との闘いに関するサンクトペテルブルクのコミットメントを踏まえ、「洞爺湖行動指針」を提唱する。この行動指針には、国際機関の専門的知見を活用しつつ、保健分野における行動原則や取るべき行動が盛り込まれている。また、我々は、G8のコミットメント履行の進捗をモニターするためのフォローアップ・メカニズムを設置することにも合意した。

46.持続性の観点にかんがみ、我々は、特定疾病に取り組むアプローチと保健システムのアプローチが相互に補強し合い、すべての保健関連MDGsの達成に資することを確実にしたいと考えており、以下の諸点に焦点を置く。

(a)我々は、社会保健保護を含む保健システムの強化、妊産婦・新生児・小児の健康改善、感染症対策プログラムの拡充、基礎的治療薬・ワクチン・適切な医薬品へのアクセスに対処するための包括的なアプローチの重要性を強調する。我々は、2015年までにすべての子供が基礎保健医療に(これを提供することを選択した国においてはどの国でも無償で)アクセスできることを確実にしようというアフリカのパートナーのコミットメントに対する支持を改めて表明する。我々は、パートナー諸国が保健システムに係る持続的かつ衡平な資金調達に向けて取り組む必要性を強調する。我々はまた、プロバイディング・フォー・ヘルス・イニシアティブ、インターナショナル・ヘルス・パートナーシップ、カタリティック・イニシアティブなどの努力を歓迎する。我々は、感染症との闘い及び保健強化のために努力を継続するとともに、今後5年間で少なくとも見積もられた600億米ドルを供与するとの目標に向けて引き続き取り組むとのコミットメントを改めて表明する。一部の国は、水分野を含む保健システムに対する追加的な資金を提供する。

(b)信頼できる保健システムには信頼できる保健従事者の力が必要である。保健従事者を質的にも量的にも向上させるために、我々は、地域の保健従事者を含めた十分な数の保健従事者の訓練の支援に努め、また、開発途上国において保健従事者が効果的に定着する環境の整備に努めなければならない。この観点から、我々は、保健従事者の倫理的な雇用に関する自発的行動規範についての世界保健機関(WHO)の取組を奨励する。G8メンバーはWHOが示す基準値である1000人あたり2.3人という比率にまで保健従事者が増加するように努力し、まずは、我々が現在活動を行っており、かつ、保健従事者の決定的な不足を経験しているアフリカ諸国と協力する。また、我々は、パートナー諸国及び国際保健従事者同盟(グローバル・ヘルス・ワークフォース・アライアンス)等の関連のある利害関係者が、強固な保健従事者の計画を策定し、明確な国家主導の目標を設定する努力、並びに、特に効果的な保健政策を立案するためのモニタリング・評価を強化するための努力を支援する。この文脈で、我々は、2008年3月の保健人材に関する第1回国際フォーラムにおいて採択されたカンパラ宣言と国際行動のための課題に留意する。

(c)我々は、開発途上国の中には子供の死亡率と母親の健康に関するMDGs達成が大幅に軌道からはずれていることに留意する。したがって、国家主導の計画においては、栄養を含む継続的な予防とケアは、母子、新生児及び小児保健に対しより焦点を当てるべきである。生殖に関する保健は広くアクセス可能でなければならない。G8は、また、母子感染の防止を含むヘルスケアへのアクセスを改善し、さらに、他分野にまたがるアプローチの採用やコミュニティの関与と参加の促進によりMDGsを達成するため、HIV/エイズに関する活動、性と生殖に関する保健及び任意の家族計画の間の連関を改善するべく、具体的な手段をとる。

(d)我々は、マラリアに関する我々の過去のコミットメントの履行の一環として、他の利害関係者と協力し、二国間及び多国間の援助を通じ、2010年末までに1億張の長期残効型殺虫剤含有蚊帳を提供することを目指し、同蚊帳へのアクセスを引き続き拡大する。

(e)ポリオ撲滅という歴史的な偉業に向けてのモメンタムを維持するために、我々は国際ポリオ根絶イニシアティブ(GPEI)を支援するための資金的貢献を維持又は増加させるとの我々自身の過去のコミットメントを履行し、他の公的及び民間のドナーにも同様の取組を行うよう奨励する。

(f)「顧みられない熱帯病」(NTD)に関してサンクトペテルブルクでなされたコミットメントを更に進めるために、我々は、研究、診断・治療、予防、啓発、そして安全な水・衛生へのアクセス拡大などの措置を通じて、WHOが掲げる疾病の統制または征圧の支援に取り組む。この観点から、我々は、WHOの計画を念頭に置きつつ、保健システムの普及、貧困と社会的排除の緩和、並びに、集団投薬をはじめとした十分な統合的公衆衛生アプローチの拡大を通じて、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの主要感染国において、特定のNTDに感染した少なくとも75%の人々に対して、支援を届けることができるであろう。3年から5年の間行動を継続することで、現在の負担を大幅に削減することができ、いくつかの疾病の征圧につながるであろう。

(g)我々は、移動を円滑にすることを目的とした、HIV陽性者の移動制限措置を見直すために現在行われている取組を支持し、この問題を引き続き扱うことにコミットしている。

水と衛生

47.良い循環型水資源管理は、分野横断的な性質を有する水の問題に対処するために極めて重要である。この観点から、我々は、水と衛生の問題に関して国際的に合意された目標の達成を加速化する必要性を認識しており、エビアン水行動計画の実施のための努力を再活性化するとともに、次回サミットまでにG8の水専門家によって準備される進捗報告に基づき、これを再検討する。我々は、アフリカのパートナー諸国との間で、より良い実施戦略の策定について協議する。さらに、我々は、サハラ以南のアフリカ及びアジア太平洋に特に焦点を当てつつ、統合水資源管理(IWRM)及び「水の良いガバナンス」の概念を、国境を越える流域管理諸組織の強化、水に関する知見と技術の開発途上国との共有、水関連のイニシアティブを進めるためのキャパシティ・ビルディングの支援、データ収集と活用の促進、気候変動への適応等の必要な行動をとることによって推進する。我々はまた、極端な水文学的変動による影響を最小化しつつ、人類、産業及び環境の用途のために十分な水の供給を確保することが人類の健康を守り、持続可能な経済成長を促進し、平和と安全を確保する上で極めて重要であることを認識する。

(a)国際衛生年である本年、我々は、アジア太平洋とアフリカにおける衛生に関する会議で合意されたイニシアティブを基礎とし、各国の政府に対して衛生へのアクセスを優先課題とするよう呼びかける。この観点から、我々はアフリカ水担当閣僚会議が果たす主導的な役割とアフリカ開発銀行の活動を支持する。

(b)我々は、国際的及び国家的なレベルでモニタリングと報告が改善されること及び水と衛生のサービスの普及に責任を有する機関がより高い能力を有し、更なる説明責任を果たし、利用者のニーズに応えるものとなることを一層確保するために、水と衛生の分野のガバナンスを向上させる取組を支持する。

教育

48.個人、機関、組織及び社会の能力を強化することは持続可能な開発と成長にとって鍵であり、それゆえ、開発途上国における教育はあらゆるレベルで強化されるべきである。したがって、我々は、生涯学習と教育システム全体を俯瞰したアプローチ、すなわち、すべての男児、女児による質の伴った初等教育修了を引き続き優先課題としつつ、各国における制約条件と経済的ニーズを踏まえて、初等教育及び初等教育以降の教育にバランス良く取り組む必要性に応えることを重視する。我々は、アフリカにおける教員の不足、維持及び管理という問題とともに、学習成果の向上という問題への取組にコミットしている。我々は、教員の能力開発とコミュニティの参加を通じて、教育へのアクセスと教育の質を向上させるために更に取り組む。教員の研修は、必要とされる能力と技術の向上を重視して、強化されるべきである。学校保健と学校給食は子供の就学と子供の健康を共に改善させ得ることから、我々は教育と他の開発分野の相乗効果を促進する。

49.我々は、万人のための教育(EFA)及びそれを実施する国際機関に対し引き続きコミットしており、初等教育の完全普及に向けたファスト・トラック・イニシアティブ(FTI)の取組を支持する。我々は、他のドナーとともに、FTI事務局によれば2008年には約10億米ドルと見積もられているFTIに承認された国における資源不足に対処するため、二国間及び多国間の資源を動員する努力を継続する一方で、外部評価を通じてその有効性の改善を支援する。教育の質及びプログラムの効果に重きが置かれるべきである。我々は、紛争や危機に見舞われている国々、女児、その大半が学校から取り残されている疎外された人々に対して特に注意を払う。資源不足への対処を含む、G8によるFTIを支援する取組の進捗は、2009年のサミットにおいて提示される報告書を通じてモニターされる。

元気なアフリカに向けて

50.近年、アフリカは年平均成長率が5%以上という目覚ましい興隆を遂げており、より多くの外国投資や貿易の流れを誘致している。成長と活力の継続に必要な国内外の民間資本の流入を増大させ、発展への前進を不可逆的なものにするために、我々は、アフリカ諸国が自らの投資環境を改善し、経済及びガバナンスの改革のための努力を継続することを奨励する。我々は、民間投資の増大に結びつく状況を創り出すために、アフリカの人々と協力して取り組むことにコミットしており、これを金融市場における制度上の能力を構築する戦略、インフラ整備のための官民協調、資金的・技術的な支援と起業家向けのリスク共有のための保証、投資ファンドの支援といった様々な施策を通じて行う。この観点から、我々はG8財務大臣が採択した民間部門主導の成長のためのG8行動計画を支持する。これは、アフリカ諸国が増大する資本流入という好機を活用し、その課題に取り組む助けとなるものである。

51.我々は、オーナーシップとパートナーシップの原則がアフリカの発展に不可欠であることを再確認し、民間部門主導の経済成長の実現とMDGsの達成の両方にとって、とりわけ次の諸点が極めて重要であることに合意する。

(a)他のドナー及び国際機関と協力して持続可能な成長率を高めるための国家主導の適切な戦略の支援に取り組むこと。

(b)ビジネス環境を改善し、国内貯蓄の増大と中小企業の金融サービスに対するアクセスを含め金融部門を強化すること。

(c)アフリカ諸国の歳入創出能力を向上させ、資源の利用における透明性を高めること。

(d)インフラ、特に道路網及び電力網を整備すること。その際、民間からの資金調達に加え、アフリカ・インフラ・コンソーシアム(ICA)を通じた国境を越えた解決策と調整に焦点を当てる。

(e)エネルギー貧困を克服するために電力へのアクセスを高めること。

(f)主として包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)を通じ、農業並びに持続可能な土地利用及び天然資源管理を支援すること。農業インフラ(灌漑設備等)、ネリカ米などの新たな品種、家畜システム、収穫後処理、研究及び人材の開発を通じて生産性向上を支援すること。小規模農家と市場のリンクを改善するとともに、アフリカ諸国の政府に対してマプト宣言に沿った農業への投資増加を奨励すること。

(g)アフリカの状況に然るべく配慮した上で多角的貿易体制を通じて自由で開かれた貿易を促進すること、WTO香港閣僚会議でなされた貿易関連技術支援を含む「貿易のための援助」への支出に関する財政的なコミットメントを効果的に実施すること。我々は、アフリカ産品のマーケティングの支援を含めて、右支援額が40億米ドルまで増加することを期待する。我々は、香港閣僚会議で合意されたとおり、後発開発途上国(LDCs)を原産地とする産品に無税無枠の市場アクセスを供与することに完全にコミットしている。

(h)大陸及び地域的な統合と協力を支援することは、統合された市場を拡大し、更なる投資を誘致し、国家を超えた広がりを持つ課題に取り組む上で、鍵となる要素である。

(i)企業に対し、ビジネスの目的を追求する中で貧困削減に如何に貢献できるかにつき検討するよう奨励すること。

(j)アフリカ相互審査メカニズムを通じて、腐敗対策の促進を含め、良い統治を支援すること。

52.我々は横浜宣言を採択した第4回アフリカ開発会議(TICAD IV)の重要な貢献を歓迎する。我々の関係を特徴づけているパートナーシップの精神の下、我々はアフリカのパートナーの意見を今後の協力に反映する。

53.我々はアフリカ問題首脳個人代表(APRs)によって提出されたアフリカの開発のための協調的な努力に関する進捗報告を支持する。我々は、APRsがG8とアフリカのパートナーシップを強化し、他の参加者とともにアフリカ・パートナーシップ・フォーラム(APF)の可能な進展について議論することを奨励する。我々はG8メンバーのコミットメントに係る行動と進捗の報告を強化するようAPRsに要請した。

アフリカにおける平和と安全

54.アフリカにおける平和と安全はアフリカの持続可能な開発にとって根本的に重要である。それゆえ、我々は、アフリカ連合(AU)と地域経済共同体(RECs)がアフリカの平和維持能力、とりわけ訓練面及び装備面を含むアフリカ待機軍(ASF)をはじめとするアフリカ平和安全保障アーキテクチャー(APSA)の能力を拡充することに対し、支援を行うこと、アフリカ主導の平和支援活動に持続可能で柔軟な資金を確保するためにAUと協力すること、さらには、人道的な努力、和解、安定化、復旧、復興のための努力などへの支援及び展開可能な市民の知見の能力向上への支援を含め、平和構築に関する継ぎ目のない支援を可能とすることを通じ、平和と安全を促進する。この文脈で、我々は、AUに対する支援を強化する方策を検討する国連・AUハイレベル・パネルの提言に期待する。

開発のためのパートナーシップの拡大

55.多様なパートナー間の調整、特に民間部門並びに新興ドナー及び非政府組織(NGO)との調整をより良く行うことは、新しい援助の源という意味において、より効果的な援助にとって決定的に重要である。それゆえに、G8は援助対話を深めることでこれらのパートナーとの関係を強化する。新興ドナーとの対話において、我々は、特に、ハイリゲンダム・プロセスを通じ、G8のメンバーとして、良い統治、パリ宣言に沿った援助効果、援助の透明性及び債務持続性といった問題に適切に対処していく。G8による債務免除のイニシアティブは多くのアフリカ諸国を持続不可能な債務負担から広く救済してきた。開発途上国の対外債務の長期的な持続可能性は、貸し手と借り手が持続可能な貸付慣行を追求するよう奨励することによって支えられるべきである。開発途上国間の協力、並びに開発途上国、新興国及び先進国を一つのパートナーシップにまとめる共同の努力が促進されるべきである。

国際機関

56.21世紀において、我々は、今回のサミットにおいて取り組んだものを含め、世界的な影響を伴う新たな課題に直面している。これらの課題に対応する中で、国際機関は鍵となる役割を負っており、我々は同機関を支援することへのコミットメントを再確認する。我々は、国際機関が効果的に対応できるよう、継続中の開かれた対話を奨励し、国際機関の改革及び適応に取り組む。

政治問題

不拡散

57.我々は、すべての関連する多国間の不拡散・軍縮文書を堅持、強化、普遍化することによって、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散の危険を克服し、テロリストによる大量破壊兵器の取得を防止するため、すべての努力を行う決意を有する。

58.我々は、外交的手段によって地域的な拡散上の挑戦を解決することにコミットしている。我々は、拉致問題等の未解決の懸案事項の解決を含む2005年9月19日の共同声明の完全な実施を通じた、朝鮮半島の検証可能な非核化及び関連する六者会合参加者間の将来の国交正常化に向けた六者会合プロセスに対し、引き続き支持を表明する。

 昨年来六者会合プロセスを通じ得られた進展に留意しつつ、我々は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が期限を大幅に過ぎながらも申告を提出したことを、共同声明の完全な実施に向けたステップとして歓迎する。申告の包括的な検証が何よりも重要であり、我々は、検証に関する原則・体制についての早期の合意を期待する。我々は、北朝鮮に対し、効果的な実施を含め、検証プロセスに完全に協力するよう求める。我々はまた、北朝鮮によるすべての既存の核施設の迅速な無能力化並びにすべての核兵器及び既存の核計画の放棄の重要性を強調する。我々はまた、北朝鮮に対し、すべての核兵器及び既存の核計画並びにその他すべての既存の大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法での放棄を含め、国際連合安全保障理事会決議1695及び1718を完全に遵守するよう、また核兵器不拡散条約(NPT)及びIAEA保障措置の完全な遵守に早期に復帰するよう求める。

59.我々は、イランの核計画及びイランが引き続き国際的な義務を遵守していないことにより引き起こされる拡散上のリスクに対し深刻な懸念を表明する。我々はイランに対し、国連安保理決議1696、1737、1747及び1803を更なる遅滞なく完全に遵守するよう、特にすべての濃縮関連活動を停止するよう求める。我々はまた、イランに対し、最新のIAEA事務局長報告に含まれる問題について回答することを含め、IAEAと完全に協力するよう求める。我々は、交渉を通じ革新的にこの問題を解決しようとする、EU上級代表の支持を受けた中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国及び米国の努力を強く支持し、これに協力するとともに、イランに対し、2008年6月14日に提示された提案に前向きに対応するよう求める。我々はまた、この問題の平和的かつ外交的な解決に向けたその他のG8参加国の努力、特に日本によるハイレベルでの対話を評価する。我々は、関連する安保理決議の下での金融面の義務の履行につき各国を支援するための金融活動作業部会の取組を歓迎する。

60.我々は、2010年NPT運用検討会議の成功の達成のために共に取り組む。この文脈において、我々は、NPTの三本柱(不拡散、原子力の平和的利用及び軍縮)すべてに対する完全なコミットを再確認し、NPTを堅持し、強化するための努力を倍加させることを誓約する。我々は、すべての核軍縮の努力、特にG8メンバーである核兵器国がこれまでに行った現在、進展中の核兵器の削減を歓迎し、すべての核兵器国にそのような削減を透明性のある方法で実施することを呼びかける。

61.我々は、すべての関係国に対し、核兵器の実験的爆発又は他のあらゆる核爆発に関するモラトリアムを遵守するよう求める。我々は、軍縮会議における兵器用核分裂性物質生産禁止条約の交渉の即時開始及び早期妥結を強く支持する。我々は、すべての関係国に対し、兵器用核分裂性物質生産モラトリアムを遅滞なく宣言し、維持するよう求める。

62.我々は、生物・毒素兵器禁止条約及び化学兵器禁止条約(CWC)の現在の進展、すなわち第2回CWC運用検討会議の成功を歓迎し、両条約の完全かつ効果的な実施が極めて重要であることを改めて表明する。我々は、弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範の重要性を強調し、同規範に引き続きコミットするとともに、すべての国に対して、遅滞なく同規範に参加するよう求める。

63.拡散を防止し、またこれに対抗するには、すべての国が効果的な措置を実施することが必要である。我々は、この目的に向けて、より調和的かつ調整された形により共同で取り組むための努力を一層強化する。この文脈において、我々は1540委員会のマンデート延長を歓迎し、国連安保理決議1540の完全な実施の重要性を強調する。

 我々はさらに以下の重要性について強調する:

  ・効果的な輸出管理、

  ・IAEA保障措置の強化及びIAEA追加議定書の普遍化、

  ・放射線源の安全とセキュリティに関するIAEA行動規範、

  ・核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブの活動、

   及び5周年を迎えたばかりの拡散に対する安全保障構想への支持。

64.我々は、2002年のカナナスキス・サミットにおいて開始された大量破壊兵器及び関連物質の拡散に対するグローバル・パートナーシップの下での優先的なプロジェクトを達成する決意を有する。大量破壊兵器及び関連物質の拡散のリスクが世界的に存在することを受け、我々は、特にテロリズム及び拡散のリスクが最も大きい分野において、このパートナーシップがこれらの世界的な試練に取り組んでいくことに合意する。

65.我々は、NPTのすべての義務に従った原子力の平和的利用に関する、すべての同条約締約国の奪い得ない権利を再確認する。我々は、IAEA追加議定書を含む核不拡散、保障措置、安全及びセキュリティ(3S)の可能な限り最も高い基準にコミットし、これを促進する。この文脈において、我々は、核燃料サイクルに関する多国間アプローチ及び核燃料供給保証の分野における様々なイニシアティブを評価し、それらを更に発展させるためのすべての努力を奨励する。原子力安全に関連して、我々は、チェルノブイリに関するこれまでのサミットのコミットメントを再確認し、この目的のためのプレッジング会合を2008年に共同で開催することを決定した。

66.我々は、濃縮・再処理関連の機材、施設及び技術の移転の制限を強化するためのクライテリア・ベースド・アプローチに関するコンセンサスに向け、原子力供給国グループ(NSG)が達成した重要な進展を歓迎する。我々は、この重要な問題につきコンセンサスに達するためのNSGの取組を支持する。さらに、我々は、今後1年間は、いかなる追加的な国に対する濃縮関連の機材、施設及び技術の移転も、少なくとも施設の複製を許したりこれを可能としないとの条件に従うことに合意し、また、技術的に可能な場合には、いかなる追加的な国に対する再処理関連の移転も、同様の条件に従うことに合意する。

国際組織犯罪

67.人、物、資金及び情報の大量の流れに特徴づけられるグローバル化した世界において、犯罪組織がこれらの変化を素早く悪用しており、我々の市民の安全と我々の社会及び制度の安寧を脅かしている。我々は、法の支配及び人権の尊重を確保しつつ、我々が持つあらゆる手段を利用し、国際組織犯罪を防止し、これと闘うとの我々のコミットメントを再確認する。我々は、人身取引、移民の密入国、銃器の不正な製造及び取引、麻薬及び向精神薬の不正取引、サイバー犯罪並びに資金洗浄を含む国際組織犯罪と闘うために、経験の共有を含む、我々の協力を強化する。

68.我々は、国際組織犯罪の脅威及び手段の多様化を認識し、情報・通信技術の乱用並びにID犯罪を含む、幅広い脅威に対処するための我々の取組を強化する。我々は、国連薬物犯罪事務所(UNODC)及び他の多国間機関と協力しつつ、二国間及び多国間で、国際組織犯罪の脅威に取り組むためのキャパシティ・ビルディングの努力を行う国々を引き続き支援する。この関連で、我々は、国際組織犯罪防止条約及びその補足議定書の完全な実施に対する強い支持を改めて表明する。

平和維持/平和構築

69.我々は、国内法に合致した形で、緊急なニーズのある地域に対し、人道、安定化、軍事及び復興のための支援を強化することにコミットする。この目的のため、我々は、平和維持及び平和構築のための、個別及び共同的な努力及び能力を向上させる。

70.我々は、治安部門の改革、良い統治及び現地のオーナーシップの重要性を強調しつつ、特に軍と文民の活動の間のより良い調整を通じた、包括的なアプローチの必要性を強調する。我々はまた、文民の安全を確保するために最大限の努力を行う。我々は、安全保障理事会及び平和支援活動を含む国連の主要な役割を支持し、平和構築委員会をより効果的なものとすべく取り組む。我々は、また、地域機関との協力を強化し、特に、アフリカ連合のキャパシティ・ビルディングを支援する決意である。

71.この文脈において、我々は、シーアイランド・サミット及びその後のコミットメントを達成又は上回るため、軍、警察及び文民という、相互に関連する3つの焦点となる分野における世界的な能力向上にコミットする。我々は、特に、(a)展開のための兵站及び輸送支援を拡充するとともに、アフリカに焦点を当てつつ、2010年までに部隊に対して質の高い訓練及び装備を提供することを含め、平和支援活動のための能力を構築し、(b)安定化・治安警察部隊を含む警察による平和維持の世界的な能力を引き続き向上するとともに、紛争中及び紛争から脱しつつある国の警察に訓練及び装備を施すための支援を、質及び量の両面において強化し、(c)平和構築において中核的な役割を果たす文民の人材育成のための国内的な努力を強化する。

72.我々は、専門家に対し、国連及び地域機関と協力し、上記のイニシアティブの実施を含むG8の努力につき協議し、2009年のサミットまでに進捗報告を提出する任務を与える。