データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8京都外相会合,議長声明

[場所] 京都
[年月日] 2008年6月27日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々G8の外務大臣は、世界及び地域の幅広い問題を議論するため、6月26日・27日の両日、京都において会合した。会合では、別途の声明を発出したアフガニスタン及びジンバブエに加え、パキスタン、中東、イラン、北朝鮮、ミャンマー、スーダンその他の状況について意見交換を行った。

【中東和平】

 G8外相は、西岸及びガザ地域における存続可能なパレスチナ国家の設立並びに紛争の終結につき2008年末までに合意に達することを目指して、イスラエル・パレスチナ間で現在行われている交渉に対するG8の完全な支持を改めて表明した。我々は、すべての関係者に対し、交渉を阻害する行動を差し控えるよう、また、すべての入植活動の停止やすべての暴力、テロリズム及び扇動の行為の終了などのロードマップ上の義務を履行するよう求める。また、我々は、人道状況の改善の重要性を強調し、そのため、移動とアクセスを促進する措置を含め、関係者が前向きな行動をとるよう求める。我々は、最近効力を生じたガザにおける停戦を歓迎し、その遵守を求める。我々は、ガザを含むパレスチナの人々を援助し、また、パレスチナの機関の強化を助けることに引き続きコミットし、他のドナーに対し同様の行動するよう求める。我々は、イスラエルとその近隣国との間での包括的和平を期待し、その関連で、トルコの仲介によって現在行われているイスラエル・シリア間の間接的な交渉を歓迎する。我々は、アナポリスで開始されたプロセスに支持を与えることが期待される国際会議をモスクワで開催することについて、ベルリンでカルテットが行った声明を支持する。また、G8外相は、レバノンにおける最近の政治的進展を歓迎し、主権を有し、独立した、民主的なレバノンに対する支持を再確認した。我々は、すべての関係者に対し、関連する安保理決議を遵守するよう求め、また、暴力に訴えることなく新政府の形成に早急に取り組むことを奨励する。

【イラン】

 G8外相は、イランの核計画による拡散上の危険及び2008年3月3日に採択された国連安保理決議1803を含む累次の安保理決議の下での国際的な義務にイランが従っていないことに対して、また、イランが濃縮計画を拡大していることに対し、深刻な懸念を表明した。我々は、イランに対し、特にIAEAのすべての質問に更なる遅滞なく回答することによってIAEAと完全に協力するよう、また、国際的な義務に従うよう、特にすべての濃縮関連活動を停止するよう強く要請する。我々は、デュアル・トラック・アプローチを通じた問題の外交的解決に引き続きコミットしており、イランに対し、国際社会による交渉への参加の呼びかけに応ずるよう要請する。この点で、我々は、イランの核問題の平和的解決に向けて交渉を前進させるための中国、フランス、ドイツ、ロシア、英国及び米国の努力並びに議長国によるイラン側とのハイレベルでの対話を支持する。我々は、イランが改訂された包括的提案に建設的に対応するよう求める。また、我々は、イランに対し、地域において、特に中東和平プロセス並びにイラク及びアフガニスタンの安定の文脈で、より責任ある建設的な形で行動することを要請する。

【イラク】

 G8外相は、イラクの独立、主権及び領土の一体性並びにイラクによる治安の回復、国民和解及び人権の促進、経済復興・外国投資の推進に向けた努力を支持するG8としての強固なコミットメントを改めて表明した。我々は、4月に開催されたイラク周辺国拡大外相会合及び5月に開催されたイラク・コンパクト年次レビュー会合の結果を評価する。我々は、すべてのテロリズム及び宗派間の暴力を非難し、これらの脅威と闘うイラク政府を支持する。我々は、すべての国、特にイラクの周辺国に対し、外交代表の強化、債務の削減、国民和解に向けた協力といった手段を通じ、イラクの安定と復興の実現のために建設的な役割を果たすことを奨励する。

【パキスタン】

 G8外相は、パキスタンの状況について議論し、パキスタンの安定が地域及び世界の安定にとって重要であるとの認識を共有した。我々は、パキスタンの安定と経済発展のため、アフガニスタン・パキスタン国境地域に対するものを含め、民主的に選出された政府への支援を強化する。我々は、パキスタン政府が効果的な対テロ戦略と民主的な制度の強化のための努力を推進するよう求め、これに協力する。

【北朝鮮】

 G8外相は、朝鮮半島の検証可能な非核化実現に引き続きコミットしている。我々は、北朝鮮に対し、2005年9月19日の共同声明並びに国連安保理決議1695及び1718に従い、すべての核兵器及び既存の核計画並びに弾道ミサイル計画を放棄するよう、また、NPT上の義務の完全な履行に復帰するよう要請する。我々は、六者会合を引き続き支持し、北朝鮮が遅ればせながら申告を提出したことを、これらの目標の達成に向けた重要なステップとして歓迎する。我々は、申告の検証の重要性を強調し、申告の検証に関する原則についての早期の合意を期待し、また、北朝鮮に対し、検証に完全に協力するとともに、すべての既存の核施設を迅速に無能力化するよう要請する。この点で、我々は、北朝鮮によるすべての核兵器及び既存の核計画の放棄を含む2005年9月19日の共同声明の完全な実施に向けて、六者会合を加速化させることの重要性を強調する。また、我々は、北朝鮮に対し、拉致問題の早期解決を含むその他の安全保障並びに人権及び人道に関する懸念に対処するために速やかに行動するよう強く要請する。

【ミャンマー】

 G8外相は、サイクロンの被災者に支援が届くよう確保することに引き続きコミットしており、このため、ミャンマー当局に対し、援助の流れに対するすべての残存している制限を撤廃するとともに、被害地域への外国援助要員のアクセスを改善するよう求める。同時に、G8外相は、ミャンマーの現在の政治状況について懸念を表明した。我々は、ミャンマーが正統性を有し民主的な文民政府への平和的な移行を助長するよう求める。我々は、ミャンマー当局がすべての関係者を包括的で透明性をもった政治プロセスに参加させるよう奨励する。この文脈で、我々は、ミャンマーがアウン・サン・スー・チー女史を含むすべての政治的抑留者を直ちに解放するよう求める。我々は、国連事務総長による周旋ミッションを強く支持し、ミャンマーがガンバリ特別顧問と完全に協力するよう要請する。我々は、ミャンマーが実施する実質的な政治的進展に対して前向きに対応する用意がある。

【スーダン】

 G8外相は、ダルフールにおいて悪化している治安及び人道上の状況並びにスーダン全土における人権侵害に対する深刻な懸念を改めて表明した。我々は、すべての当事者に対し、即時休戦にコミットし、和平プロセスを再開するよう要請する。我々は、引き続きUNAMIDを支持し、諸国がUNAMIDに対し支援を提供するよう奨励し、また、スーダン政府がUNAMIDの完全展開の促進を支援するよう要請する。ダルフールに関し、我々は、すべての関係者が関連国連安保理決議の下での義務を遵守するよう求め、そうでない場合には国連安保理での更なる適当な措置を支持する。この点で、我々は、スーダン政府及びその他のすべての関係者に対し、ダルフールにおいて行われた犯罪の不処罰を終わらせるため、国際刑事裁判所と完全に協力することを要請する。我々は、スーダン及びチャドに対し、特にダカール合意の実施によって既存の和平合意を遵守し、関係正常化に向けた行動をとるよう求める。我々は、チャド及び中央アフリカに展開しているEUミッションの重要な貢献を認識する。また、我々は、関係者に対し、2005年の包括和平合意(CPA)を誠実に完全に実施するよう求め、UNMISへの支持を改めて表明する。我々は、引き続き人道・復興支援を提供することにコミットする。

【ナゴルノ・カラバフ】

 G8外相は、OSCEミンスク・グループ共同議長による努力に対するG8としての支持を再確認し、アルメニアとアゼルバイジャンに対し、自制をもって行動し、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争の平和的解決のための基本原則に合意すべく真剣な努力を行うよう求める。

【BMENA】

 G8外相は、G8諸国、BMENA諸国や他の関係諸国、経済界、市民社会の協力に基づいて、地域の社会経済開発に貢献している「拡大中東・北アフリカ」構想の着実な進展を歓迎した。我々は、日本とアラブ首長国連邦の共同議長の下で本年秋に開催が予定されている「第5回未来のためのフォーラム」を楽しみにしている。

【不拡散・軍縮】

 G8外相は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散という現実の危険に対する懸念を改めて表明した。我々は、すべての不拡散及び軍縮に関連する多数国間の仕組みを強化し、特に2010年NPT運用検討会議を成功させるため、あらゆる努力を行う決意である。我々は、すべての核軍縮努力、特にG8諸国の核兵器国がこれまでに行っている核兵器の削減を歓迎し、すべての核兵器国に対し、透明性をもってそのような削減を行うよう求める。

【原子力の平和利用と3S】

 G8外相は、原子力の平和利用の持続可能な発展のための不可欠な基盤として、3S(核不拡散(Safeguards)、原子力安全(Safety)、核セキュリティ(Security))を確保することの重要性を強調するとともに、この分野におけるIAEAの中心的な役割を強調した。我々は、原子力インフラにおける3Sの確保のための努力を強化する必要性について合意する。

【テロ対策】

 G8外相は、すべてのテロ行為を最も強い調子で非難するとともに、「国連グローバル対テロ戦略」及び関連する国連安保理決議の実施を含む国連の枠組みでの努力の重要性を強調しつつ、テロ対策に関するコミットメントを再確認した。我々は、国連及び関連機関と協調しつつ、対テロに関する国際的なコミットメントを実施するために支援を必要とする諸国に対する能力強化の支援を強化する。

【国際組織犯罪】

 G8外相は、特に、関係する国際約束の締結及び効果的な実施により、また、国連薬物犯罪事務所(UNODC)を始めとする関係機関と協力し、ますます多様化する国際組織犯罪と闘うG8としてのコミットメントを再確認した。また、我々は、刑事司法システムを強化するための諸国の能力強化の努力を引き続き支援する。

【平和構築】

 G8外相は、平和構築の分野において、G8が個別の、また、共同の努力を強化する特別の能力を有しているとの認識を共有した。我々は、包括的な取組の重要性を認識し、軍、警察、文民の3分野において世界的に能力を強化する必要性について合意する。