データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8科学技術大臣会合における岸田文雄科学技術政策担当大臣の開会挨拶

[場所] 沖縄
[年月日] 2008年6月15日
[出典] 内閣府
[備考] 
[全文]

 各国代表団の皆様、2000年サミットの会場となったこの沖縄の地にようこそお越しくださいました。ホスト国を代表し、皆様にご挨拶できますことは、私にとってこのうえない喜びであり日本国政府を代表して、皆様を心から歓迎したいと思います。

 ご案内のとおり、7月の北海道・洞爺湖サミットにおいては、地球温暖化問題、開発問題などが主要テーマとして取り上げられます。私がG8としては初めての科学技術大臣会合の開催を提唱したのは、これらの課題の解決の鍵をにぎるのは科学技術であり、科学技術政策を担当する各国の大臣が一同に会して突っ込んだ議論を行うことにより、サミットにおける首脳レベルの議論に科学技術の面からインプットを提供することにより、サミットの成果を一層高めたいという思いによるものです。

 科学技術は、世界の公共財としての「知」の創出を目指した科学技術そのものの発展にとどまらず、その成果の活用による社会への還元を通じた経済社会の発展など、現在だけでなく将来をも含めた、人類全体の幸福や豊かな生活の実現に貢献できるものであります。特に、地球温暖化、自然災害の多発、感染症、水や食料、エネルギーの安定的な確保等の多くの世界的課題への早急な対応が迫られている中、今日ほど、科学技術の役割への期待が高まっている時期はなく、この期待に応えることは、我々、科学技術政策を担う我々に課せられた大きな責務であると考えます。

 また、アフリカをはじめとする開発途上国の持続的な可能な開発は、世界にとって非常に重要な課題の一つです。資源エネルギー、食料そして地球の環境等の制約の下で持続的発展を実現していくためには、枯渇や偏在のない人類の英知の賜である「知」すなわち優れた科学技術を駆使していくことが不可欠であります。この観点からも、今日、我々が解決を求められているあらゆる課題に対して、科学技術の発展が横串として共通に重要なテーマになるものと考えています。

 これらの課題に対しては、各国が取り組むことに加え、世界が協力して取り組んでいくことにより、成果を何倍にもできるものではないでしょうか。

 言うまでもなく、世界がグローバル化する中で、特に世界の諸課題の解決に資する科学技術を作り上げ、具体的な課題の解決に多くの国々が問題意識を共有し、各々が解決に向けた科学技術力を強化することに努めるとともに、国際的な協力により、相乗効果を発揮していくことが極めて重要であります。このようなことから、今回のG8科学技術大臣会合では、G8国に加え、ブラジル、中国、インド、メキシコ、フィリピン、韓国及び南アフリカの7ヶ国の招待国の大臣をお招きして、議論に加わっていただくことにいたしました。

 ここで、我が国の経験に触れてみたいと思います。ご案内のとおり、我が国は明治以後、欧米の先進国に学び、経済の発展を遂げてきました。また、エネルギーを海外に依存している我が国では、1970年代後半の石油危機を契機として、国をあげて省エネルギーの技術開発と普及に取り組んできたところであります。その結果、製造業のエネルギー消費原単位が1970年代後半の石油危機当時のおよそ半分になったことに象徴されるように、科学技術によって社会経済の発展を実現いたしました。これらを実現できたのも、科学技術の発展によるものが大きいことは言うまでもありません。私としては、これらの経験、即ち、科学技術により困難な状況を打破することができるという経験を世界で共有し、現在、世界が抱える様々な課題の解決に向け、G8国を含めた世界の国々とともに人類全体の発展に取り組んでいきたいと考えています。

 本会合においては、議題として、(1)地球規模課題、特に低炭素社会の実現に向けた国際協力による取組、(2)アフリカ等の開発途上国との科学技術協力、(3)大規模研究施設や人材などの研究開発リソースに関する協力の3つを取り上げました。これらについて、ご参加いただいた各国代表の皆様と忌憚のない意見交換を行い、今後協同で取り組むべき示す必要がある事項について、共通認識を見出せることを期待しています。

 最後になりますが、本日はじめて開催されるG8科学技術大臣会合が、新たな知の創出、共通の課題の解決に向けた協調、協同による取組の飛躍的な拡充の契機となること、そして科学技術を通じた友好関係が一層強固なものとなり、明るい未来が築かれることを祈念し、また今回の会合を実り多きものとするようご参加の代表団の方々の協力をお願い申し上げまして、私の開会のご挨拶とさせていただきます。

 ご静聴ありがとうございました。

{(1)は原文ではマル1}