データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 民間・公的金融機関の関与を強化するための気候変動G8アクションプランのポイント(G8財務大臣会合)

[場所] 大阪
[年月日] 2008年6月14日
[出典] 財務省
[備考] 
[全文]

気候変動は、世界が最も緊急に取り組まなければならない課題の一つ。多くの報告が、気候変動が及ぼす経済的リスクや悪影響について警告し、温室効果ガス排出量を現在の水準から大きく削減するために、全ての国が協調した行動をとることの必要性を強調。我々は、緊急で協調した行動が必要であると確信し、気候変動の取組において、指導的役割を示すべき我々の責任を受け入れる。

気候変動のための投資促進

G8財務大臣は、バリ行動計画に基づき、2013年以降の枠組みについて全ての主要経済国が実効的に関与する形で、成功裡の終結を得ることに貢献することを再確認。

途上国を支援する二国間の取組を強化することを決意。

G8財務大臣は、国際開発金融機関(MDBs)との協力の下、既存の二国間や多国間の努力を補完する、新たな気候投資基金の立ち上げを歓迎し、支持。この基金はクリーン・テクノロジー基金と戦略気候基金を含み、途上国におけるクリーン・テクノロジーの普及、森林減少の防止、経済の気候変動に対する耐性力の向上のために官民の投資をスケールアップする。

主要な環境関連物品やサービスに対する貿易障壁の削減あるいは撤廃に関するWTO交渉を通じ、クリーン・テクノロジーの普及を促進することに同意。

グレンイーグルズにおいて、気候変動に関する活動を強化するよう、世銀及び他のMDBsに要請した。緩和、適応、及びクリーンエネルギーアクセスに関するMDBs共同報告を歓迎。MDBsが気候変動問題を活動の中に組み込むことを要請。

途上国における気候変動を重視した開発戦略

途上国は、エネルギー需要の増大を通じて気候変動に大きな影響を与えるとともに、気候変動から大きな影響を受ける。特に貧困国は脆弱。

途上国は、開発戦略全般に気候変動を組み込むことが重要。MDBsがこうした途上国の取組を支援することを奨励。二国間の支援においても積極的に関与することをコミット。

より良い気候変動政策を策定するために必要とされる分析ツールの開発の取組を強化すべき。MDBsに対し、支援プロジェクトから生じる炭素排出量を測定する共通の方法論等の開発、策定を要請。

気候変動に対処するための官民パートナーシップ

低炭素経済への移行を実現し、気候変動のリスクを管理するために必要な民間資金を動員するために、民間金融機関は重要な役割を果たす。民間金融機関による、環境貸付、環境ボンド、排出権の証券化、天候デリバティブ等、新たな金融ツールの開発を歓迎し、奨励。多くの金融機関が「赤道原則」等の環境ガイドラインを採用し、それを強化することを歓迎し、支持。

環境ガイドラインの策定や民間セクターの関与の触媒となる金融ツールの開発においてMDBsは指導的役割を果たすべき。世銀における森林カーボンパートナーシップ(FCPF)の成功裡の立上げを歓迎。

金融商品の更なる開発促進のため、世銀に対し、MDBsや民間金融機関等と共同でシンポジウムを開催し、来年のG8サミット財務大臣会議で進捗を報告することを要請。

市場メカニズム

排出量取引、税制上のインセンティブ等の市場メカニズムは、気候変動への対応にとって鍵の役割を果たす。市場メカニズムは、コストを最小化し、既存の低炭素技術を利用、及び革新的な技術の開発に投資するインセンティブを与える上で重要な役割を担う。

こうしたメカニズムは価格シグナルを提供することができるが、異なる手法がそれぞれ異なる機能や優位性を有している。いずれにせよ、予測可能性、一貫性が重要。国際競争への影響にも留意。

排出量取引:キャップ・アンド・トレード制度は、総排出量を確実にする利点があるが、投資家にとって排出権価格の変動による不確実性があり、排出枠の初期割当の方式も課題。

税制上のインセンティブ:炭素税制度は、排出コストの予見性を高めるとともに、制度が簡便である利点がある一方、排出量取引制度と比較して、総排出量の不確実性がある。税体系における一貫性、税収の利用の仕方も課題。税制上の優遇措置もクリーン・テクノロジーへの投資を促進。

市場メカニズムの手法の検討に当たっては、効率性、実施の容易さ、国際的なインプリケーションを考慮すべき。統合された市場の可能性にも留意しつつ、各国の個別事情に対応して実効的に設計されるべき。