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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8環境大臣会合2008年,生物多様性のための行動の呼びかけ

[場所] 神戸
[年月日] 2008年5月26日
[出典] 環境省
[備考] 仮訳
[全文]

我々、G8環境大臣は、2008年5月24日‐26日の神戸における生物多様性に関する議論に基づいて、

生物多様性は、我々の生命と世界の経済開発の不可欠な基礎を構成するものであることを強調し、

 生物多様性が、人類の生計、貧困の撲滅、及びミレニアム開発目標の達成にとって、欠くことのできない重要なものであることを認識し、

 広範な利害関係者による多くの取組にも係わらず、生物多様性の損失が依然として続いていることを深く懸念し、また、2010年までに生物多様性の損失速度の顕著な減少を達成するためには今まで以上の努力が必要であることを認識し、

 ミレニアム生態系評価のフォローアップの重要性を認識し、

 生物多様性の保全、その構成要素の持続可能な利用及び遺伝資源の取得の機会と利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分という、生物多様性条約の3つの目的に対する我々の支持を再確認し、

 生物多様性条約の枠組みの下、遺伝子資源の取得と利益の配分(ABS)の継続した取組みを留意し、

バランスの取れた方法で条約の3つの目的に取り組むための枠組としての、エコシステム・アプローチの重要性を認識し、

 生物多様性と気候変動は密接に関連しており、生物多様性と気候変動の課題に対処する上でのこの重要な関連を検討するための努力が緊急に必要とされていることを強調し、

 2010年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという世界的に合意された目標を達成するための我々の取組を増加するコミットメントを改めて表明し、

以下の「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ」を採択し、全ての国に以下の行動を促進するために協調するよう呼びかける:

2010年目標の達成とフォローアップ行動{前20文字下線あり}

1.「ポツダム・イニシアティブ−生物多様性2010」に含まれる10の活動の実施を更に奨励する。

2.生物多様性2010年目標を達成するため、各国の状況や能力に応じて、生物多様性国家戦略・行動計画(NBSAP)の策定、改善、実施において不可欠な技術及び知識の共有に向けた国際的な協調を推進する{ママ}

3.地球規模生物多様性概況第3版(GBO3)の作成と発行のための、国際的な協調を推進する。

4.UNEPのもとで行われる議論からもたらされる、生物多様性と生態系サービスに関する科学的な情報を、国民や政策決定者に提供することを促進する。

5.生物多様性条約の枠組の下、例えば、ポスト2010年目標の策定と採択を含め、2010年目標をフォローアップするためのオプションを検討するための対話プロセスを開始する。

生物多様性の持続可能な利用{前13文字下線あり}

6.この分野における国際的な進展を考慮し、日本の里山において認められるような自然共生型の生活の利益に基づき、持続可能な自然資源管理のモデルを検討することにより、生物多様性の保全と持続可能な利用を促進する。(SATOYAMAイニシアティブ)

7.G8森林専門家の違法伐採報告書に記載されているように、協調しつつ、あるいは個別に森林のガバナンスを改善し、違法伐採及び関連の貿易に対処することにより、森林の生物多様性の保全を含む持続可能な森林経営を推進し、途上国の森林減少・劣化に由来する温室効果ガスの排出を削減する(REDD)。

生物多様性と保護地域{前10文字下線あり}

8.UNESCO人間と生物圏(MAB)計画、ラムサール条約、世界遺産条約を含む既存の取組や、各国の状況に配慮しつつ、保護地域に関するギャップ分析、指定、管理の推進のための協調を強化し、森林、湿地、サンゴ礁のような海洋及び沿岸地域を含む、生物多様性の保全の上で世界的に重要な生態系のネットワークに統合する。

9.ドイツによる自主的な「ライフウェブ・イニシアティブ」のようなイニシアティブを、適切な場合には、支持することにより、生物多様性条約における保護地域作業計画の実施を促進する。

10.この文脈において、サンゴ礁生態系の、環境的、経済的な重要性に関する世界中の人々の意識向上と、保全推進のための手段として行われている国際サンゴ礁年:2008を歓迎する。

民間参画{前4文字下線あり}

11.持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)や世界生物多様性フォーラム(GBF)のような、ビジネス・セクター、NGO、研究者を含む様々な利害関係者の間の対話、協力、共同活動を推進する世界的なイニシアティブや対話の場を強化する。

12.適切な場合には、民間セクターとのパートナーシップの形成や成功事例に関する情報交換の拡大を通じて、社会において、生物多様性の概念を主流化するために作業する。

13.生物多様性の保全において民間セクターの十分な協力を得る観点から、企業の社会的責任(CSR)を奨励し、生物多様性の持続可能な管理への民間投資のための環境作りを促進する。

生物多様性のモニタリングのための科学の強化{前21文字下線あり}

14.気候変動の影響も観測できるよう、リモートセンシングや現地探査の活用を含め、特に生態系に関する研究とモニタリングに焦点をあてた既存の組織間の協力を強化することにより、生物多様性のモニタリング、評価、情報共有に関する世界的な協力を更に推進する。