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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 議長総括(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] グレンイーグルズ
[年月日] 2005年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

 我々は、グレンイーグルズにおいて、2005年7月6‐8日に、我々の年次サミットの会合を行った。

ロンドンに対するテロ攻撃

 昨日及び本日グレンイーグルズに会合したすべての世界の指導者は、ロンドンに対する野蛮な攻撃を非難し、犠牲者と家族に対し、心からの哀悼の意を表した。我々は、貧困との闘い、人命の救済、生活の改善に取り組むためにグレンイーグルズに来た。我々は、暴力が、このサミットの取組を妨害することを認めなかった。テロリストは成功していないし、これからも成功しない。我々の貧困及び気候変動への取組に加え、我々は、テロ対策への取組を強化することを決意する。

気候変動

 我々の気候変動及び世界経済の議論には、ブラジル、中国、インド、メキシコ及び南アフリカの指導者、並びに国際エネルギー機関、国際通貨基金、国際連合、世界銀行及び世界貿易機関の長が参加した。

 我々は、気候変動への対応、クリーン・エネルギーの促進、及び持続可能な開発の達成における我々の共通の目的を設定した声明を発出した。

 我々はすべて、気候変動は現在起きており、人間の活動がその原因になっていること、地球のあらゆる場所に影響を及ぼす可能性があることにつき、合意した。

 我々は、低炭素経済に移行しつつ、世界的に、排出を減速し、ピークに達し、そして減少させなければならないことを理解する。これには、先進世界におけるリーダーシップを必要とする。

 我々は、我々が直面する課題に対処するために、緊急の行動をとることを決意した。我々が合意したグレンイーグルズ行動計画は、我々のコミットメントを示している。我々は、クリーン・エネルギー技術のために市場を発展させ、開発途上国におけるその入手可能性を高め、脆弱なコミュニティが気候変動の影響へ適応するのを助ける措置をとる。

 我々は、新興経済諸国の指導者の我々の議論への関与、及び、先進世界と開発途上世界の間の、クリーン・エネルギー技術に関する国際協力への新しいアプローチのための同指導者の考えを温かく歓迎した。

 我々の議論は、国連気候変動枠組条約の目的及び原則と一致した、G8諸国と大きなエネルギー需要を有するその他の国との間の新しい対話の始まりを示すものである。これは、行動計画を実施しそれを基に取り組んでいく中で、技術を交換し、排出を削減し、そして持続可能な方法で我々のエネルギー需要に応える最善の方法について、探求するものである。

 我々は、今年後半にモントリオールで開催される国連気候変動会議において、気候変動と取り組むグローバルな努力を前進させる。我々のうち、京都議定書を批准した国は、同議定書へ引き続きコミットし、また、引き続きその成功に向け取り組む。

アフリカと開発

 我々のアフリカ及び開発の議論には、アルジェリア、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ及びタンザニアの指導者、並びにアフリカ連合委員会、国際通貨基金、国際連合及び世界銀行の長が参加した。

 我々は、特に、2015年までにミレニアム目標の到達に最も遠いアフリカにおいて同目標に向けた進捗を加速する方法を議論した。

 我々は、近年アフリカが達成してきた実質的な進展を歓迎した。より多くの国々が民主的な選挙を実施してきた。経済成長は加速している。長く続いてきた紛争は、終結に向かいつつある。

 我々は、我々とアフリカのパートナーは、強く、平和で、繁栄したアフリカを作りあげるために、その進捗を基礎とすることに共通の利益を有していることで合意した。我々は、これが達成されるべきであるとの道徳的確信を共有し、また我々がとる行動に合意した。

 今週のアフリカ連合首脳会議で強く再確認されたように、アフリカの指導者は、貧困削減及び経済成長の促進のための計画を推進し、透明性及び良い統治を深化させ、民主的制度及びプロセスを強化し、汚職に対して完全に不寛容であることを示し、アフリカ内の貿易へのすべての障害を除去し、また、大陸全体に永続的な平和と安全を実現することに自らの個人的コミットメントを示した。

 G8は、これに呼応してアフリカの進展を支援する包括的な計画に合意した。これは、本日の我々の別途の声明に示されている。我々は、以下に合意した。

●アフリカの平和維持部隊がアフリカにおける紛争をより良く抑止、予防及び解決することができるよう、それら部隊に対して追加的な資金等を供与。

●より強い民主主義、効果的な統治及び透明性に対して拡充した支援を供与し、汚職と闘い、奪われた資産を返還することに貢献。

●保健及び教育への投資を促進し、HIVエイズ、マラリア、結核その他の致死性の疾病と闘うために行動する。

●アフリカの貿易のための能力の構築の支援及びビジネスに必要なインフラへの追加的な投資の結集等により、成長を促進し、投資環境を改善し、また、アフリカにとって貿易が役に立つようにする。

 G8の指導者は、強固な国家開発計画を有し、良い統治、民主主義及び透明性にコミットしている国々のための大きな追加的資金により、この計画を支援することに合意した。我々は、貧困国が、自らの開発戦略及び経済政策を決定し、また主導する必要があることで合意した。

 我々は、2010年までに対アフリカ支援を倍増することで合意した。OECDによると、すべての開発途上国向けの援助は、2010年までには年間の総額で約500億ドル増加し、そのうち少なくとも年間の総額で250億ドルが追加的にアフリカ向けとなる。G8及びその他の国々のうちいくつかの国々は、その資金を調達し、また前倒しでもたらすために、予防接種のための国際金融ファシリティー(IFF)、航空券への連帯徴収及びIFFを含む革新的資金調達メカニズムをも進展させる。作業部会は、これらのメカニズムの実施について検討する。我々は、世界銀行が、G8、その他のドナー及びアフリカの間のパートナーシップを支援することに主導的役割を果たし、追加的な支援が効果的に調整されることを確保することに貢献することに合意した。

 G8は、また、6月11日の我々の財務大臣間の合意で述べられているとおり、重債務貧困国が国際開発協会(IDA)、国際通貨基金及びアフリカ開発基金に対して抱える債務のすべてを削減することに合意した。我々は、また、ナイジェリアの約170億ドルの債務を帳消しにするとのパリクラブの決定を歓迎した。

 G8及びアフリカの指導者は、これらの措置及び我々の包括的計画に規定されたその他の措置が実施された場合には、以下を実現しうることに合意した。

●2015年までにアフリカの経済及び貿易の規模を倍増

●国内及び海外投資の増加

●毎年何千万人もの人々の貧困からの脱却

●毎年何百万もの人々の生命を救済

●すべての子供の初等教育機関への入学

●すべての人々に対する基礎的ヘルス・ケア及び初等教育の提供

●2010年までに、エイズの治療への可能な限り普遍的なアクセス提供

●若者に対する雇用及びその他の機会の創出

●アフリカにおける紛争の終結

 これらの実現を確保するため、我々は、アフリカ・パートナーシップ・フォーラムを強化し、同フォーラムが共同行動計画を策定すべきことに合意した。

 しかし、我々は、これがほんの始まりに過ぎないと理解する。我々は、今日達成された前進を基にしなければならない。我々は、この精神に基づき9月にニューヨークで開催される国連ミレニアム宣言に関する首脳会合に向け前進するとともに、ドーハ開発アジェンダの成功裡の妥結を確保しなければならない。

世界経済、石油及び貿易

 我々は、引き続き堅調と期待されている世界経済の成長の見通しについて議論した。我々は、この成長を維持することが課題であることを認識し、我々のそれぞれの国が、長期的で持続可能な成長を支援するために役割を果たさなければならないことを確認した。高くより不安定な石油価格が、我々と脆弱な開発途上国の双方にとって特別に懸念すべき課題である。我々は、透明かつ適時のより包括的なデータを通じ、市場の不安定性を削減するための具体的な行動の必要性を説明する。

 我々は、ドーハ開発アジェンダ全体を通した成功裡の妥結を達成するための我々の努力を倍加することに合意した。我々は、これが、世界中の成長を促し所得を高めるために極めて重要なものであり、世界の貧困削減のための我々の作業に必要な要素とみなす。我々と新興経済パートナーは、12月のWTO香港閣僚会議までの概要合意及び2006年の最終合意を確保するための議論に、必要な政治的モメンタムを注入することに合意した。

 我々は、農産品、工業品及びサービス分野の貿易に対するより広い市場開放、並びに、農業分野における貿易歪曲的な国内補助金の削減及び確固とした期限までのすべての形態の輸出補助金を撤廃に対するコミットメントを確認した。我々は、また、交渉において後発開発途上国にとって重要な産品に対処し、後発開発途上国が自国の経済戦略を決定する柔軟性を持つことを確保することにコミットする。

 我々は、世界経済と石油、貿易、知的財産権海賊行為・模倣行為の削減のための行動に関する声明を発表した。

地域情勢及び不拡散

 我々は、カルテットの撤退担当特使である、ジェイムズ・ウォルフェンソン氏と会合し、将来のパレスチナ国家の自立可能性の礎となる、ガザ地区及び西岸の一部からの成功裡の撤退の確保を支援する同氏の取組、並びに、そのプロセスを長期的にフォローアップする同氏の提案について報告を受けた。我々は、同氏の努力を歓迎し、これを強く支持し、将来に向けて同氏の提案をどのようにすれば最も良く支援できるかについて検討する。

 我々は、G8と地域の政府、ビジネス及び市民社会との誠実な協力に基づく、「拡大中東及び北アフリカとの前進と共通の未来に向けたパートナーシップ」への我々のコミットメントを再確認した。我々は、政治的、経済的、社会的及び教育上の改革を加速化するために地域においてとられた措置を歓迎し、また、地域に現出しつつある変革への機運に対する我々の支持を強調した。我々は、このパートナーシップの取組を更に前進させるための機会として、2005年11月にバーレーンで開催される「未来のためのフォーラム」に期待する。

 2004年12月26日のインド洋災害の甚大な悲劇から6か月が経過し、我々は、津波後の人道援助及び復興に関する国連の活動への支持を強調するとともに、将来の災害からのリスクを削減し、人道システムの改革を奨励するコミットメントを確認した。

 我々は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散が、国際的テロと合わせて、引き続き、国際の平和と安定に対する顕著な脅威であることを再確認した。我々は、我々のコミットメントを確認するとともに、すべての国に対し、不拡散に関する国際的規範を完全な支持し、軍備管理及び軍縮に関する義務を満たすことをを求めた。我々は、国内的及び多国間の双方の努力を通じて、拡散の課題に断固として対処する決意を強調した。我々は、北朝鮮及びイランにおける拡散の脅威に対し特に懸念した。

 イランに関し、我々は、イランの核計画に関する我々の懸念に交渉によって対処するための、欧州連合(EU)と共同のフランス、ドイツ、英国の努力を支持し、また、イランがテロと闘い、中東和平を支援し、人権及び基本的な自由を尊重する重要性を、再度表明した。

 北朝鮮に関し、我々は、六者会合を支持し、北朝鮮に対し、迅速に同会合に復帰することを強く求めた。我々は、北朝鮮に対し、その核兵器関連計画を廃棄することを求める。北朝鮮は、人権並びに拉致問題への国際社会の懸念に対する行動を長期にわたりとってきていない。

 我々は、スーダン及びイラクにおける情勢につき議論し、我々の共通のアプローチを定める宣言を別途発出した。我々はまた、中東和平プロセス、拡大中東・北アフリカ・イニシアティブ、インド洋災害、拡散対策、テロ対策に関する声明、及び安全かつ容易な海外渡航イニシアティブ(SAFTI)進捗状況報告を別途発出した。

 これに加え、我々は以下についても議論した。

●アフガニスタンにつき、我々は、復興、治安、麻薬対策、及び法の支配の回復という長期的な課題に対処するアフガニスタン政府及び国民への支援に対する我々のコミットメントを再確認し、来るべき議会及び地方選挙を歓迎した。

●レバノンにつき、我々は、最近の選挙を歓迎すると共に、改革を支持し、自らの国の主権を擁護することにコミットし、また尊敬される社会の構成員からなる新たなレバンン政府の早期の樹立を期待した。我々は、国連安保理決議1559が全体として実施されなければならないことを再確認した。

●ジンバブエにつき、我々は、最近の事態を嘆いた。ジンバブエでの建物の強制的な取り壊しにより、何十万ものジンバブエの人々が住居や生活の手段を奪われたままとされ、重大な人的苦難をもたらした。我々は、ジンバブエ政権に対し、この行為を今停止し、彼らがもたらした事態に直ちに対処し、また人権と法の支配を尊重することを求める。

我々は、国連事務総長特使の訪問を歓迎する。我々は、この事態についての特使の報告に期待する。我々は、国連及びその他の国際機関が、ジンバブエにおいて救済を必要とするすべての人々に対して、食糧及び人道支援を供与する努力を行うことを引き続き支援する。

●ハイチにつき、我々は、悪化している治安状況について懸念を表明した。我々は、2005年中及びこの国の長期的発展にとって極めて重要な、安全かつ安定した環境を支援する国連ハイチ安定化ミッションの積極的な努力等を通じた、持続的な国際的関与の必要性を強調した。

●国連改革につき、我々は、グレンイーグルズでの進展が9月の国連ミレニアム宣言に関する首脳会合における明確かつ野心的な成果に貢献すべきことに合意した。我々は、同首脳会合において、開発、安全保障、人権、国連の行政改革に関し大きな前進が見られることの重要性につき繰り返し述べた。

 我々は、2006年に次回サミットを主催するとの、ロシア連邦大統領の申し出を歓迎した。