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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8テロ対策声明(第31回グレンイーグルズ主要国首脳会議‐G8サミット)

[場所] グレンイーグルズ
[年月日] 2005年7月8日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々G8首脳は結束して、ロンドンにおけるテロ攻撃を断固として非難する。我々は、このテロの犠牲者及びその家族に対して心から哀悼の意を表する。我々は、英国民とともにテロとの闘いを継続していくことを確約する。我々は、すべてのテロ行為を犯罪として非難し、このような殺戮行為にはいかなる弁解及び弁明もあり得ないことを再確認する。昨日、我々や同僚の首脳が述べたように、我々は貧困と闘い、人命を救い、生活を改善するために努力している。昨日の攻撃の犯人たちは、人の命を奪うことを意図していた。我々は、共同して及び個別にこの地球的規模の挑戦に断固として対処し、テロリストがどこにいようと裁きにかけるべく取り組む。

2.我々は、テロリストや他の犯罪者への大量破壊兵器の拡散を防止し、テロと闘うための国際的な政治的意思の強化し、放射線源を防護し、そしてシーアイランドで発表したように、安全かつ容易な渡航の確保のためのイニシアティブを推進してきた。今日、我々は新たな共同の取組にコミットする。我々は、国境を越えるテロリストの移動に関する情報共有の改善、交通インフラに対する脅威の評価及び対応、鉄道及び地下鉄の安全確保のためのベスト・プラクティスの促進に取り組む。我々は、国連や他の重要な国際的及び地域的枠組みにおけるパートナーと取組むことに再度コミットし、グレンイーグルズを後にする。今回の悲劇により、我々は包括テロ防止条約に関し、早期に合意に達するとの決意を強めた。

テロリストの活動阻止

3.喫緊の課題は既にテロを決心した者たちによる脅威を削減することである。我々は、すでに大きな成功を収めているが、こうした取組を強化し続けなければならない。我々は、既知の及び容疑がかけられているテロリスト並びにその協力者を探しだし、彼らの資金を断ち、計画を妨害し、ネットワークを崩壊させ、彼らに安住の地を与えないため、そして彼らを裁きにかけるために不断の取組を行っている。我々は共同して、脅威についての共通の理解を深め、テロと犯罪の関係を精査し、テロリストがいかに攻撃を準備するのかを分析している。

4.テロリストは柔軟かつ国際的に活動しているため、我々も同様に活動を行わなければならない。政府、警察及び情報機関による対応は、国内及び国家間においてより効果的に調整されなければならない。国内を担当する情報機関、海外を担当する情報機関及び治安機関間の協力は更に改善されなければならない。法執行担当者、情報収集者及び情報分析者、政策形成担当者、並びに実務担当者は協力し、情報を共有しなければならない。G8において、我々はインテリジェンスの成果物に関する共通用語を作成し、特にテロリストの渡航を防止するために、テロリストに関する情報共有を促進し、並びに文書及び他の形態の情報からテロ対策情報を抽出するための方策を特定してきた。

新たな世代のテロリストの出現の予防

5.しかし、長期的に成功するためには、我々は現在のテロリストの活動を阻止するだけでは十分でない。より多くの人々が新たにテロリズムへ身を投じることを防止することが同様に重要である。テロリスト及びそのネットワークに関する知識は、なぜ、どのように個人がこれらのネットワークに参加したのかを理解する上で役立つ。我々は一丸となって、なぜ個人が暴力の道を選択したのか、そして例えばテロリストが過激化の促進や勧誘の実施のために、インターネットをどのように使うのかについて分析している。

6.紛争、圧政及び貧困はテロリズムを許容したり正当化しない。これらの災禍を被っている人々の大部分は暴力の道を選択していない。テロリズムはそれ自体により、しばしば故意に、テロリズムが解決すべきと主張する問題を悪化させている。紛争の解決、圧政への対処、貧困の削減及び良い統治の促進のために、実施可能なすべてのことを遂行することが我々の責務である。我々は、社会的及び政治的権利並びに民主的な改革を促進し、不寛容に対処し、公における議論及び寛容な教育を奨励し、文化間の相互理解を増進させなければならない。これらはその取組自体において重要であるが、テロリストによるプロパガンダを崩すためにも役立つ。我々の重要な職務の一つは、人々全体によってテロリズムが完全に拒絶されることを支援するために、市民社会と共に取り組んでいくことである。

テロ攻撃からの共同体の防護

7.テロリストの脅威を減少させるとともに、我々は攻撃に対する脆弱性を削減しなければならない。我々は、より良い防御的な保安体制を通じて、国内外においてより堅固な標的とならなければならない。

8.シーアイランドにおいて我々は、28項目からなり、その多くはこれまでに完了している行動計画である、「安全かつ容易な海外渡航イニシアティブ(SAFTI)」を発表した。過去12ヶ月間、G8は地対空ミサイルを利用した航空機への攻撃対策、これら地対空ミサイルの拡散及び密輸防止、並びにコックピットの保安改善のための措置に取り組んでいる。我々は、空港における個人や荷物の検査、及び航空保安体制に関する国の措置を改善している。我々は、スカイマーシャルの運用に関するベスト・プラクティス(最善の慣行)の普及を促進している。我々は、G8航空保安連絡網を構築するとともに、国境を越えた渡航文書の偽変造に対する協力を強化している。我々は、港湾保安を評価する方法を作成した。我々は、交通保安に関する国際基準を改善するために、関係国際機関の積極的な関与を奨励しつつ、こうした協力を強化し、拡大していく。

テロ攻撃による被害の最小化

9.我々はまた、テロ攻撃による人的及び経済的な被害を最小限に抑えるべく十分に備えなければならない。各国政府や経済界は、経済及び金融システムの効果的な防護のためのものを含め、継続した計画を準備しておかなければならない。社会は情報提供を受け、また必要なときには、注意喚起や警戒情報の発出を受けるべきである。我々は、テロ攻撃、特に化学兵器、生物兵器及び放射性物質を使った攻撃に対するベスト・プラクティスに共同で取り組んでいる。我々は、危機への対応の原則に合意し、重要施設防護に関するG8の演習を実施し、そしてテロ攻撃の被害を受けた場所の管理に関するベスト・プラクティスの共有を進めている。

テロの脅威と個人の権利

10.多くのテロリストは大規模な暴力の行使を切望しており、その中には大量破壊兵器を使うことを切望している者さえいる。我々の対応はテロ攻撃の程度に相応したものであるべきであり、また我々共通の民主的価値を尊重しなければならない。我々は国際法に従って人権を擁護しつつ、個人を保護しなければならない。我々はテロリストの攻撃によって負傷したあるいは近親者を奪われた全ての人々に対して深甚なる弔意を表明する。

国際的な能力の構築

11.我々は、テロ対策に関する政治的意思や他国の能力向上のために、国連・その他の国際的及び地域的機関との取組を共に推進することにコミットしている。テロ対策行動グループ(CTAG)はエビアンにおける設立以来、テロ対処能力向上支援を必要としているいかなる国でも、かかる支援を調整することによって、我々の資源の効用を最大化させている。CTAGは、テロ資金対策を支援するために、金融活動作業部会(FATF)及び国際金融機関と協力している。本年これまでに、CTAGは特にアフリカ及び中東に関する調整の強化に焦点を当ててきた。本年後半は、東南アジアに焦点を当てる。地域機関の関与は、我々の取組において極めて重要である。地域的なテロ対策のメカニズムやテロ対策センターは、十分な資源を得なければならない。

国際的なパートナーシップの強化

12.我々は、ロシア連邦によって提案された「核によるテロリズム行為等の防止に関する国際条約」の採択を歓迎し、同条約の早期発効を期待する。9月の国連首脳会議において我々は、テロ行為に対する国際社会の明確な非難を再確認するよう、我々のパートナーに呼びかける。我々はパートナーに対して、国連における新たな機運を活かし、包括テロ防止条約案に関する交渉を早急に妥結するよう要請する。これらの条約は、国連安全保障理事会決議及び国連テロ防止関連12条約によって規定される幅広い法的枠組みを補完する。我々は、これらすべての国際的な義務、規範及び標準への普遍的な遵守を要請する。各国がこれらの履行の監視について国連安全保障理事会と共に完全に関与することは、極めて重要である。

結論

13.今日、我々はテロ対策協力を進展させるために新しい共同の取組にコミットする。新しい共同の取組は、国境を越えるテロリストの移動に関する情報共有の改善、交通インフラに対する脅威の評価及び対応、鉄道及び地下鉄の安全確保のためのベスト・プラクティスの促進を含む。我々は、こうした協力を強化・拡大させ、2006年、サンクトペテルブルクにおいて我々の進捗状況を報告する。

14.G8首脳として、我々はテロリストの脅威を特定し削減し、自由と安全を促進し、民主主義を擁護し、法の支配を確保するために必要な、持続可能な関与を約束する。我々は、全ての国々にこの重要な取組に参加するよう要請する。