データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8安全かつ容易な海外渡航イニシアティブ(SAFTI)

[場所] シーアイランド、ジョージア州
[年月日] 2004年6月9日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 交通システムへのテロ攻撃は依然として我々の市民及び世界商取引にとって深刻な脅威である。我々G8首脳は、国境を越えて動く旅行者の移動を容易にするために協力して取り組みつつ、旅行する公衆の更なる安全を確保することにコミットしている。

 2002年6月カナナスキスにおいて、我々は、安全、確実、効率的かつ信頼性のある交通を世界的に確保するため、積み荷を含む陸・海・空の交通の更なる安全を促進する行動計画について合意をした。2003年エビアンにおいて、我々は、携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の管理計画を導入し、テロの脅威に対抗する意思のある国家の対処能力を向上させる支援を行うテロ対策行動グループ(CTAG)を設立した。

 今日、シーアイランドにおいて、我々は旅行をより効率良く、容易にしつつ、旅行する公衆の安全を更に強化するための一連の行動に合意する。これはエビアンのMANPADS計画を実施し、その範囲を更に拡大する行動も含む。

 安全かつ容易な海外渡航イニシアティブ(SAFTI)において、脅威を抑止し、コストを削減し、並びに旅客及び積み荷の安全で効率的な移動の確保に資するべく、G8諸国は、基準の強化、手続きの近代化、及び情報交換を支持するが、これは、安全を確保しつつ国際商取引を利するものである。

 我々は、国境管理に関する国家の主権を十分に尊重し、かつ個人の情報(プライバシー)に関する国内法及び国際的な義務との整合性がとれた枠組み内において、テロリストの脅威に立ち向かうための協力が早急に必要であることを認識する。また、国際民間航空機関(ICAO)や国際海事機関(IMO)のような適切な場において、関連国際標準を促進し及び実施することに対する我々のコミットメントを再確認する。この観点から、我々のイニシアティブの基礎を成す以下の共通の原則に合意する。

 ・国境を守り、貿易及び旅行を容易にするために共同で協力して相互的に作業する。

 ・危険度の分析方法を含む向上した安全手続きに法執行の資源を集中させつつ、旅行者の速やか且つ容易な国境を越える移動を円滑化する。

 ・受け入れ国にとって許容可能である場合に、ビザ無しでの旅行を許可しビザ発給手続きを簡略化及び迅速化する。

 ・国境管理強化の鍵となる要素として、参加国間の効果的な情報交換を最大化する。

 ・認識された、又は出現しつつある脅威に対し、できる限り前倒しで、国家間の旅行者、乗務員及び積み荷を検査する方法を改善するために協力する。

 ・渡航文書が安全で、偽変造に対して強く、且つ地球規模で相互互換性があるものであるよう、できる限りの努力をする。

 ・差し迫った脅威に対し、効果的で、協調のとれた対応を確保する。

 安全上の脆弱性を速やかに克服する決意を示すため、並びに旅行する公衆に、彼らの安全を守るために適当な全ての手段をとっていることを保証するために、我々は今日、安全かつ容易な海外渡航イニシアティブの以下の行動計画を既に実施したことを発表する。

 ・旅券の安全な発行のための強化された国際標準の促進と実施

 ・航空機に対する差し迫った脅威に対応するための24時間体制の航空関連コンタクト・ポイント・ネットワークの設立

 ・G8諸国の空港の携帯式地対空ミサイル(MANPADS)の脅威に対する脆弱度を評価するための情報マニュアルの準備

 以下は合意された安全かつ容易な海外渡航イニシアティブの行動計画であり、28の個別の項目を含む。

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安全かつ容易な海外渡航イニシアティブ

Secure and Facilitated International Travel Initiative (SAFTI)

行動計画

国際標準の構築を通じた文書の相互互換性{前19文字下線有り}

1.既存の、または将来的な安全措置を損なうことなく、特に頻繁な旅行者のために国境を越えた旅行を容易にしつつ、その安全を保障するため、危険度の分析方法を含めたベスト・プラクティス(最善の慣行)を作成し広めていくために協力的な活動を促進する。これらのベスト・プラクティスの公平性、客観性を確保する。

2.国際民間航空機関(ICAO)やその他の機関と協力し、旅券の発行に関する国際的に標準化された慣行を強化し、全ての政府によるその採用及び実施を慫慂する。2005年サミットまでの実効的な実施に向け作業する。

3.政府により発行されたスマートチップを搭載した旅券及び政府により発行されたその他の身分証明書の、相互互換性に関する国際標準の作成を加速する。2005年サミットまでの実施に向け作業する。

国際的な情報交換{前8文字下線有り}

4.適用可能な個人データ保護規則を十分に尊重しつつ、渡航文書の有効性確認、ビザ要注意人物リスト及び事前旅客情報に関するリアルタイムなデータ交換のためのメカニズムを、可能な場合に構築する。2005年中の実施開始を視野に入れ、2004年12月までに暫定的な進展を達成する。

5.安全面における懸念を晴らし、参加各国の個人情報保護に関わる法律やその他の法律に合致した手続きの下、各国のテロリストの要注意リスト又は監視データの実効的で迅速な、相互主義ベースの情報交換に合意する。本年末までに進捗状況を報告し、2005年サミットまでに実施する。

6.紛失及び盗難国際渡航文書に関するリアル・タイムな情報共有を可能にする国際刑事警察機構のデータ・ベースに、2004年12月までに情報提供を開始することに合意する。

7.安全で容易な海外渡航イニシアティブを実行に移すに当たって、インテリジェンス機関と法執行機関の職員間の効果的な協力に関するベスト・プラクティスを共有する。

携帯式地対空ミサイル(MANPADS)による脅威の削減{前27文字下線有り}

8.余剰及び、若しくは旧式のMANPADSを廃棄する努力を加速し、必要な場合にはその努力のための支援を行う。

9.ワッセナー・アレンジメント「MANPADS輸出管理に際しての原則文書」の2003年改訂版を国際的な標準として速やかに採用するための作業を進める。

10.輸出管理の厳格な基準を維持していない国家によるMANPADSの売り込みを抑止するため、MANPADS製造技術の移転に対する管理をより一層強化する。

11.国際基準として採用可能な、MANPADSを厳重に保管する最善の方法に関するベスト・プラクティス文書を策定する。

12.国際民間航空機関(ICAO)による調査を参考に、G8諸国がMANPADSの脅威に対する空港の脆弱度及び効果的な対策を評価する際に利用する方法を作成する。

13.MANPADSの発見技術を高め、密輸対策を強化するための方法を改善する。

キャパシティ・ビルディング及びその協力{前19文字下線有り}

14.旅行の事前に、乗客、乗務員、及び積み荷のデータを分析する方法、技術、並びにシステムの改善の分野で協力する。2004年12月までに進捗状況を報告し、改善のためのアプローチが合意された分野において、2005年サミットまでにこれらの実施を開始するよう努力する。

15.国際民間航空機関(ICAO)と協力し、航空会社及び空港が国際標準を遵守するよう、全ての国が適切な監査と実施体制を有することを確保するための手続きを構築する。

16.民間航空輸送に対する差し迫った脅威及び緊急の保安確保要求に関するコミュニケーションのためのコンタクト・ポイント・ネットワーク、及びその対応ガイドラインを作成する。

17.保安要員及びスカイ・マーシャルの訓練、選抜、使用を含む、航空並びに陸上保安措置のベスト・プラクティス及び手続きを作成するための努力を適切に加速し、国際民間航空機関(ICAO)とテロ対策行動グループ(CTAG)において、専門知識と情報を他国と共有するためにどのように取り組むか検討する。2004年12月までにこれらの合意されたベスト・プラクティス及び手続きの実施を開始し、2005年中に完成させる。

18.航空保安に実効的に寄与し、相互に受け入れ可能な二国間のアレンジメントが策定されている場合において、文書鑑識指導者(ドキュメント・アドバイザー)の前進配置に関する協力を行う方法及び手段を、相互主義に基づいて検討する。

19.従業員のバック・グラウンド・チェック、物理的アクセスの厳格なコントール、検査済みの旅客及び手荷物へのアクセスを適切なセキュリティ・システムによる検査を受けた者に制限すること、の三点から成る重層的な保安措置体制の展開を通じて、一度検査された旅客並びに彼らの手荷物及び預け荷物の不法な干渉からの保護を確保する方法を開発する。この体制の実施のため、2005年までに計画を完成させるよう努力する。

20.費用対効果が高く、強化されたコックピットの開発及び促進に向けて取り組む。先ず、重量45.5メートルトン、又は客席数60席を超える航空機は強化コックピット・ドアを装備しなければならないことを要求する国際民間航空機関(ICAO)標準を、全ての国が2004年10月までに完全に遵守するよう働きかける。次いで、コックピット周囲の安全仕切の補強を含め、コックピットの保安を強化する方法を検討する。G8の領空を航行する上記の航空機は、2004年10月までに強化コックピット・ドアに関する保安標準を遵守するべきである。コックピット周囲の安全仕切については2005年サミットまでに進捗状況を報告する。

21.トランジット旅客に関する適切な情報が、直前の出発国からトランジットが行われる国に提供されることを確保するために、G8内でベスト・プラクティスを特定して採用し、そのプラクティスを国際的に促進する。

22.保安規制の強化のために、ゼネアビ及び社用航空の運行への適用可能性の検討を目的として、国際民間航空機関(ICAO)航空保安標準に類似したガイドラインの開発の必要性及びその実現可能性を研究及び評価する。

23.公共及び民間交通の安全に関わる利害関係者と頻繁に協議を行うためのメカニズムを支持し、促進する。

24.次世代の国境管理コンセプトの実際的な実施に向けた開発のため、国際民間航空機関(ICAO)と協力し、生体情報認識技術(バイオメトリクス)に関する研究を拡大すると共に協力を強化する。2005年までに進展を確保する。

25.受け入れ国にとって許容可能である場合において、安全性を向上させ、合法的な移動を容易にするために、ビザを必要とする旅行者の手続きを更に改善し、簡素化及び迅速化するための方法並びに手段を検討する。

26.焦点を絞った協力を通じて、海上交通網へのテロリズムの脅威を評価し、低減させる。まずG8諸国において、国際民間航空機関(ICAO)における航空保安監査の概念を参考としつつ、港湾施設の保安に関する自己監査を実施するとともに、監査手法及びチェックリストをG8共同で開発する。そして、国際海事機関(IMO)において同様の作業を進める。

27.渡航文書認可及び発行システム、並びに国境管理を強化するために、テロ対策行動グループ(CTAG)を通じ、意思のある国に対するキャパシティ・ビルディング支援の強化を支持する。

28.これらの新しい安全上の要請を満たし維持するために、G8及びその他の国や機関が、テロ対策行動グループ(CTAG)を通じてどのように各国を支援していけるかを検証することを確認する。