データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 保健:G8行動計画(第29回主要国首脳会議)

[場所] エビアン
[年月日] 2003年6月3日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/evian_paris03/hoken_z.html
[備考] 仮訳
[全文]

 地球規模の保健の危機は、政策と手段における緊密な国際協力を必要とする。我々は、ミレニアム・サミット及び持続可能な開発に関する世界首脳会議において設定された開発目標を達成することに対する約束を確認する。我々は、開発途上国、民間セクター、多数国間機関及び非政府機関(NGO)とのパートナーシップの下、これら保健目標の達成を支援するべく取り組む。多数国間及び二国間の政府開発援助(ODA)、並びに企業及びNGOからの民間の努力は、保健の成果を改善する既存の努力と合致し、これを補完すべきである。

1.HIV/エイズ、結核、マラリアとの闘い

1.1 我々は、地球規模のHIV/エイズの感染の拡がりの増加に対し、引き続き懸念を表明する。我々は、相当の量の追加的資金が必要であることを認識しつつ、HIV/エイズに対する二国間の約束の増加を歓迎する。我々は、被援助国とともに、2001年の国連エイズ特別総会のための「政治宣言」に含まれた我々が共有する義務を果たすことを約束する。

1.2 我々は、制度構築、官民の連携(パートナーシップ)、人材育成、研究活動、コミュニティ・レベルでの公衆衛生の促進などの分野におけるさらなる行動を通じ、沖縄で合意したエイズ、結核及びマラリアに対する闘いへの約束を再確認する。我々は、二国間及び多数国間の双方で、この闘いにおける努力を強化する。

1.3 世界エイズ・結核・マラリア対策基金に対する支援を再確認する。

1.4 我々は、この7月にパリにおいて、政府、国際機関、NGO及びこの分野で積極的な民間部門のメンバーを一同に集め、世界基金と協力し、援助国・機関及び支援者の国際会議を開催するとの提案を歓迎し、支持する。会議の目的は、基金の持続可能な長期的資金供給及びその他の補完的努力を確保するための資源を動員する戦略を策定すること、並びに世界基金の費用効果的かつ成果重視の管理を達成することになろう。

1.5 我々は、世界基金及びこれらの感染症と闘うためのその他の多数国間及び二国間の努力に対する支援の増加を検討していない者に対し、増加を検討するよう求める。

2.保健システムの強化

2.1 我々は、途上国の最貧困層の人々の保健医療、医薬品、治療に対する利用可能性を増加する枠組みとして、保健システムの強化の重要性を強調する。我々は、これらの国に対し、彼ら自身の保健戦略及び政策を策定し、優先順位をつけることを求める。多数国間及び二国間の開発援助並びに企業及びNGOからの民間部門の努力は、これらの保健システムを改善するために必要不可欠である。保健医療のための適切な支援と資金供給は、従事者数を増加及び維持し、医薬品の合理的な利用を促進し、医薬品配給システムを強化するために必要である。これらの努力は、貧しい国において保健医療の利用可能性とその質を改善するために必要不可欠である。

2.2 我々は、適当な場合には、治療のための情報通信技術の利用を奨励し支持する。

3.医薬品の入手可能性

3.1 強化された保健システムを基礎にして、官民の連携(パートナーシップ)を含む関係者とのパートナーシップの下、最貧者による割引価格の医薬品の公正、効率的、持続可能な方法による利用及び服用を促進するような統合されたアプローチを策定すべく取り組む。我々は、特に負担可能な価格に依存する、開発途上国における医薬品の入手可能性の増加の複雑さを認識する。我々は、必要不可欠な医薬品を持続可能な割引価格で途上国に提供することに対する製薬企業による自発的な長期的約束を歓迎し、供給競争を含む更なる努力を強く求める。また、我々は、開発途上国とともに、現在なされているような無料又は割引価格の薬品の提供の更なる取り込みを求めるべく取り組む。我々は、途上国が、割引価格の及び贈与された製品の関税及び費用を削減することにより、負担可能な医薬品という目標に貢献することを支持し奨励する。

3.2 我々は、これらの医薬品が、目的地となった国及び地域以外に送られることを防止するために必要な手段をとる。我々は、受益国に同じ手段をとることを求め、これを支援するため、技術支援を提供すべく取り組む。我々は、開発途上国に対して提供された差別価格を、我々の市場における医薬製品の基準として利用しないこととする。

3.3 生産能力が無い又は不十分な開発途上国が直面する現実の問題に対処するため、我々は、WTOの解決が得られるまでの間、我々の多くが、モラトリアムを開始したことを留意する。このモラトリアムは、HIV/エイズ、結核、マラリア及びその他の流行病に関連するものを含む公衆衛生の危機に対処するために、強制実施権の下で生産された医薬品について、それぞれのモラトリアムに定められた範囲と方式に従って、必要とする国に輸出を欲するいかなるWTO加盟国に対しても、異議を申し立てないというものである。我々は、WTOのパートナーと緊急に協力しながら、閣僚及び事務当局に対し、カンクン閣僚会議までに、この問題に関与する全ての当事者からの信頼を再構築しつつ、WTOにおける多国間の解決策を確立するよう指示する。

4.主に開発途上国に影響を与える疾病との闘い

 我々は、主に開発途上国に影響を与える疾病に関する研究を奨励することとする。

4.1 我々は、主に開発途上国に影響を与える疾病(顧みられない疾病)のための効果的かつ安全で購入可能な薬品の開発を拡大するため、これらの疾病の予防(ワクチンを含む)、対策、治療、ケアのための保健技術に関する研究の発展を世界規模で支援するための方法を追求することを約束する。特に、我々は、

−開発途上国とともに、開発途上国がこれらの疾病に関する研究開発に貢献する能力を増進すべく取り組む。これは、倫理的かつ安全な臨床試験の支援のためにインセンティブ及び必要な法制度を作り出すことを含む。

−我々の国内においても、適切なインセンティブを与えること等により、これらの疾病に関する研究を奨励する。

−非政府部門で既に着手されている作業への支援を継続する。

4.2 我々は、適切な国際機関が、状況を積極的にレビューを行なうことを奨励する

5.ポリオ根絶

 我々は、ポリオを完全に根絶するために作業する。

5.1 ポリオ根絶に向けた努力はよい進捗を示してきた。しかし、数カ国で依然として症例を記録している。

5.2 2005年までにポリオを根絶するため、公正かつ衡平な基準の上に十分な資源を供給するとのカナナスキスにおける誓約に従って、我々は、追加的に5億米ドルを約束しており、さらに、残る資金ギャップを埋めることが確保できるよう、引き続き十分な役割を果たすことを約束する。

6.重症急性呼吸器症候群(SARS)の脅威との対決

 我々は、SARSを制圧するために共同して、また他国とともに行動する。

6.1 SARSの蔓延は、世界規模の疾病監視、研究、診断、及び研究における努力、また予防、ケア、治療を含む世界規模の協力の重要性を実証する。

6.2 国際協力の強化は、この疾病を制圧し、治療し、最終的には根絶する上で鍵となる。共同での取組は、国内レベルで効果的にSARSを取り扱うために我々がとる措置にも有益であろう。

6.3 我々は引き続き世界保健機関と緊密に協力し、高いレベルで研究と調査に取り組み、国際協力の適切な手段を策定する。