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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 腐敗との戦いと透明性の向上:G8宣言(第29回主要国首脳会議)

[場所] エビアン
[年月日] 2003年6月3日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/evian_paris03/fttk_z.html
[備考] 仮訳
[全文]

 我々は、歳入増と歳出の双方において、腐敗及び公的資源の不適切な管理と戦う決意を強調する。透明性は、腐敗を抑制し、良い統治を促進する。政府収支の流れの透明性を高めることは、贈収賄と腐敗に立ち向かうための措置をとる努力を強化することと同様に、これらの目標を達成し、政府の意思決定の健全性を高め、もって開発援助を含む資源が本来の目的を確実に達成することに貢献する。

 我々は、昨年の開発資金に関するモンテレイ会議において行った国際的な開発援助を増進するとの重要な決定を想起する。我々は、各国の透明性、良い統治及び関連する行動に対する誓約に関する我々の判断を踏まえてどのように資金が使用されるかについて決定することを再確認する。

1. 公的資金と供与資金が効率的かつ効果的に利用されることを確保するために、公的財政管理と説明責任(PFMA)の改善が直ちに進展しなくてはならない。このためには、開発途上国の能力を構築するためのより一層首尾一貫した持続的な努力によって透明性を更に高めるなど、被援助国、援助国及び国際金融機関が行動することが必要である。我々は、

1.1 透明性、良い統治及び法の支配の履行を改善することへの誓約を表明している国々に、二国間支援の焦点を合わせる。

1.2 我々は、各国が(世界銀行の貧困削減支援貸付計画において既に行われているような)予算面での支援を利用できるようになる前に信用評価を義務づけ、信用及び統治に係る全ての分析を確実に公表し並びに我々の行政手続の協調と調和を改善する。

1.3 全ての開発途上国が、貧困削減戦略の一環として、公的財政管理と説明責任について、測定可能で期限付きの目標を設定した具体的な行動計画を策定することを奨励し、また、国際通貨基金及び世界銀行が、それぞれの援助の実施に当たり開発途上国の努力を強く支援することを要請する。

1.4 援助国・機関や政府とともに、重債務貧困国の追跡調査に基づき、公的財政管理と説明責任の履行に係る評価を策定する。

1.5 国際開発金融機関の援助効果に応じた資金配分の制度(パフォーマンス・アロケーション・システム)の完全な情報開示を達成し、全ての国際開発金融機関による国家支援計画の公表を要求し、国際通貨基金4条協議レポートの推定的公開を要請し、全ての例外的な資金利用の事例についての報告(それぞれの事例について関連事由を明示した報告を含むもの)の公表を要求するために、関係者とともに作業を進める。

1.6. 国際通貨基金の全ての加盟国が、財政政策の透明性についての国際基準の遵守状況に関する報告書に参加し及びこれを公表することを、また、これを例外的な資金利用の事例に係る標準的な慣行とすることを奨励する。

1.7 開発途上国が、貧困削減戦略計画を補強しつつ、腐敗に関する地域的な及び国際的な条約を腐敗対策の行動計画を通じて実施することを要請する。これらの行動計画は、国際通貨基金、世界銀行及び他の援助国・機関により支持されるべきである。我々は、これらの機関等がこのような支持と支援を我々とともに更に増進することを要請する。

2. 我々は、贈収賄対策のための法律の実施を強化し、民間セクターが関連する遵守計画を策定することを奨励する。我々は、

2.1 経済協力開発機構(OECD)の(国際商取引における)外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約の各国による実施についてのピア・レビューの一巡目が2007年までに完了するように、このレビューを加速し、また、その結果を公表する。我々は、このレビューのための安定した長期的な資金調達を確保するためにOECDのパートナーと共に作業を進める。

2.2 民間セクターが、外国人との間での贈収賄を処罰するための国内法に関して、企業遵守プログラムを策定し、実施し及び強化することを要請する。

3. 我々は、国際連合の腐敗対策条約の完成に積極的に貢献することを誓約する。この条約は、効果的な防止措置や、犯罪に係る事項や財産の没収についての国際的な協力のための効果的な制度を含むものであり、また、条約の実施を監視するための効果的なフォロー・アップ制度を提供するものであるべきである。我々は、この目的のための技術的な支援を奨励する。

我々は、それぞれ、自国の法令に基づき、適当な場合には入国を拒否すること並びに犯罪人引渡し及び法律上の相互援助に関する既存の法律及び制度をより効果的に利用することにより、腐敗の罪を犯した公務員に逃避先を与えないように努める。

4. 我々は、資金の不正使用と戦うこと、また、次のことを実施することを誓約していることを再確認する。

4.1 資金洗浄、腐敗及び他の関連する犯罪が普遍的に犯罪とされ、また、全ての国がこれらの犯罪により生じた収益を特定し、追跡し、凍結し、保全し及び最終的に没収する権限を有するように、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約により多くの国が加入し又はこれを批准することを奨励すること。

4.2 我々自身の金融機関が、重要な公的任務に就いている者の口座について強化された顧客管理を行い、もって外国公務員の腐敗行為によって生じた収益に関与する可能性のある取引を発見し及び報告するための手続及び管理を確立することを要請する。

4.3 金融活動作業部会が、厳格な顧客管理についての規定、重要な公的任務についている者に対する厳重な監視並びに腐敗及び贈収賄罪を資金洗浄の前提犯罪とするとの要請を含む、改訂された40の勧告を6月に発出することを支持する。

4.4 全ての国が、改訂された金融活動作業部会の勧告を遵守し、また、それぞれの銀行部門に顧客管理に関するバーゼル委員会の指針を適用するように、作業をすすめることを奨励する。

5. 我々は、政府調達及びコンセッションの付与における透明性を促進することの重要性を認識する。この目的のため、我々は、

5.1 地域的な及び二国間の貿易協定に、政府調達及びコンセッションの付与における透明性を要求する規定並びに貿易円滑化に関する規定を含めるよう、作業を進める。

5.2 カンクンにおける閣僚会議において、ドーハ開発アジェンダに従って、政府調達における透明性に関する包括的な多数国間協定を達成することを目標とした協議を開始する。政府調達における透明性に関する協定は、特に、法令、調達機会、資格要件、技術仕様及び評価基準の公表に関する規則を含むべきである。

5.3 透明性が、また、確固とした貿易円滑化に関する協定の中核的な要素を構成することを確保する。

6. これらの原則と一致して、また、採取産業(石油、ガス及び鉱業)から得られる収入の重要性を認識し、我々は、自発的に透明性への集中的な取組方法を試行することについて意見の一致をみた。この目的のため、我々は、

6.1 政府並びに民間及び国営の企業が、国際通貨基金に対して又は合意された独立の第三者、例えば、国際通貨基金、世界銀行、国際開発金融機関に対して、一貫した方法及び共通の形式で採取産業部門からの収入の流れ及び支払いを開示することを奨励する。この情報は、所有権に関する情報を保護し、契約の不可侵性を維持しつつ、集計されたレベルで、利用可能かつ理解可能な方法で、公表されるべきである。

6.2 参加政府とともに、全ての予算の流れ(歳入及び歳出)並びに政府の契約及びコンセッションの付与に関し、透明性の高い基準を設定するための合意された行動計画を策定して実施するための作業を進める。

6.3 このイニシアティブを実施しようとする政府を能力構築において支援する。

6.4 国際通貨基金及び世銀が、このイニシアティブに参加する政府に技術的な支援を行い、この行動計画の他の要素との関連を深めることを奨励する。