データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海洋環境とタンカーの安全: G8行動計画(第29回主要国首脳会議)

[場所] エビアン
[年月日] 2003年6月3日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/evian_paris03/kaiyo_z.html
[備考] 仮訳
[全文]

世界的な持続可能な開発と貧困削減には、より健全でより持続可能な方法で海洋を管理することが必要である。漁業セクターだけが、10億の人々のタンパク質の主な供給源であると同時に生計の主要な源となっている。漁業セクターは、世界の食料のおよそ5−10%を供給している。海洋環境に対する圧迫は、増大しつつある。海洋における生物多様性の減少と漁業資源の枯渇は、次第に大きな懸念となっており、特に漁船が管理保全措置を回避するための方法として便宜置籍制度を利用することについても同様の懸念がある。最近の「プレステージ号」の沈没は、タンカーの安全と汚染防止が更に改善されなくてはならないことを改めて示したといえる。

1.関連する国際連合の条約に従って行動することにより、我々は、持続可能な漁業と海洋保全に向けた作業を進める。

特に、我々は、次のことを誓約する。

1.1 海洋についての全般的な法的枠組みである国際連合海洋法条約を締結し、これを実施すること。

1.2 国際連合の生物の多様性に関する条約や食糧農業機関(FAO)において行われている作業を活用しつつ、海洋と海洋資源を保護するために、生態系アプローチを含む人類の活動を管理するための様々な取組方法や手段の利用を発展させ、これを促進すること。

1.3 公海を含む重要で影響を受けやすい海洋地域及び海岸地域の生産性と生物多様性を維持すること。

1.4 漁業資源を直ちに回復し、これを維持すること。

1.5 特に国際連合公海漁業協定に留意し、関連する国際連合の、及び適当な場合には関連のある地域的な、漁業協定又は取極を批准し、これを実施すること。

1.6 特に違法・無報告・無規制漁業を廃絶するために、食糧農業機関の下での国際的な行動計画を直ちに発展させ、これを実施すること。

1.7 情報収集の改善や参加国による措置の遵守等を通じて、地域的な漁業機関を強化すること。

1.8 漁業補助金について規定する補助金及び相殺措置に関する協定の下で行われた交渉の文脈において、規律を明確にし、改善するというドーハでの誓約、及び、環境に悪影響を与え、持続的な開発と両立しない補助金を改革するというヨハネスブルグにおける誓約を再確認すること。

1.9 旗国が、漁船を、特に便宜置籍制度により規制を免れるものを、効果的に管理していないことに対処すること。

1.10 特に、海岸や海洋の環境と生物資源・無生物資源に悪影響を与える可能性のある計画や活動に係る環境影響評価と環境評価報告技術の利用の促進を通じて、海洋の科学、情報及び管理の分野における能力を構築すること。

1.11 世界的な評価及び報告を改善し、科学的根拠に基づいた意思決定を促進することにより、国の機関及び特に国際海事機関(IMO)、FAO、政府間海洋学委員会、国際連合環境計画といった国際的な機関の間の調整及び協調を改善すること。

1.12 1995年の(陸上活動からの)海洋環境の保護に関する世界行動計画以来の優先事項を、国の、地域の及び国際的な政策及びイニシアティブに組み込むこと。

1.13 2012年までに、国際法と整合的に、かつ、科学的な情報に基づいて、海洋保全地域の生態系網を我々自身の水域及び地域において確立すること。また、他の国々とともに、それらの国の水域及び地域において同様のことを達成するために作業を進めること。

1.14 我々の中で1995年の食糧農業機関の責任ある漁業の行動規範に参加する者は、この規範に規定する責任ある漁業を促進すること。

2.我々は、国際的な海洋の安全を強化するために必要かつ適切な全ての措置をとることについて意見の一致をみた。

我々は、国際海事機関による努力を支持し、次のことを同機関において率先して行う。

2.1 一重船体(シングル・ハル)タンカーの使用の段階的廃止を更に加速するために作業を進めること。

2.2 適切な手段を通じて、一重船体タンカーで最も重い区分の重油を運ぶことにより生じる特別の危険に対処すること。

2.3 特に旗国による規範の導入を加速すること。第一段階として、旗国が責任をもって国際海事機関の文書を効果的に実施し及び管理することを強化し、旗国により権限を与えられた認められた機関に対する監督を強化するために、監査制度を導入する。

2.4 狭く、規制され、混雑した水域における国際海事機関の規則及び手続に合致した水先案内の乗船の強制化を確立すること。関係のある沿岸国は、それらの水域において、水先案内人が関連する当局に明らかな欠陥について直ちに報告することを導入すること及びその他の措置をとることを考慮すべきである。

2.5 遭難した船舶の避難水域に関する指針の採択を加速すること。

2.6 油汚事故の被害者に給付する補償のための基金を強化し、国際的な賠償制度を見直すこと。

2.7 最低限の資格を義務付けることを含む船員の訓練を改善する努力を支援すること。

我々は、また、寄港国の監督検査を集中的に行うこと、これを効果的に実施すること、寄港した船舶の詳細について公開することについて意見の一致をみた。これらの目的のため、我々は、適当な場合には、パリ・メモランダムや東京メモランダム等の関連のある地域的な機関に対して可能な限り速やかにこの分野における既存の手続や指針を最新のものにすることを要請することについても意見の一致をみた。

我々は、国際海事機関の技術協力委員会及び旗国小委員会の枠組みの中で、効果的な旗国による義務の実施と寄港国による適切な管理措置の適用等、海洋の安全及び汚染の防止の増進に努力している国々を支援するための技術的協力プログラムに係る既存の可能性を拡張することを考慮する。

我々は、タンカーの安全体制の改善に努力することに加え、大型貨物船及びその燃料油による重大な環境に対する脅威について行動すること、したがって、適当な場合には、関連のある国際的な責任に関する条約、特に2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約及び1996年の危険物質及び有害物質の海上輸送に伴う損害についての責任及び補償に関する国際条約を締結すること等を通じて、責任に関する規定の適用を奨励することを誓約している。

我々は、また、海事労働基準に関する新たな統合条約を決定する国際労働機関における努力を支援し、この条約が採択されたときにはその批准を真剣に考慮する。