データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 貿易に関するG8協調行動(第29回主要国首脳会議)

[場所] エビアン
[年月日] 2003年6月3日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/evian_paris03/boueki_z.html
[備考] 仮訳
[全文]

1.我々は、50年以上にわたり国際的な成長、安定、持続可能な開発にかくも多大に貢献をしてきた多角的貿易体制への信頼と誓約を強調する。継続的な貿易自由化はより強固な国際貿易ルール及び規律と組み合わされることで、G8諸国及びその他特に開発途上国の双方において、世界経済の成長への最適な途を示していると考える。このように、世界貿易機関(WTO)に体現される多角的体制及び現在のドーハ開発アジェンダは、世界経済を活性化し、雇用を増大させ、持続可能な開発を加速し、国際的な統治を改善し、貧困を撲滅するためのG8の取組にとり中心的なものである。

2.我々は、全てのWTO加盟国にとり、特に最貧国については多角的体制への統合と開発をより広範に確保するために、市場アクセスの改善を実現し、市現在進行中の交渉においてリーダーシップを発揮することにより多角的体制を推進する。我々はそれゆえに、予定通り2004年末までにドーハ開発アジェンダに掲げられた目標を実現し、9月のカンクン閣僚会議がこの目標達成に資する必要な全ての決定を行うことを確保することを約束する。

3.これらの目標に向け、我々は、我々の閣僚及び事務当局に対して概要以下のような行動をWTOのパートナーと共に至急追及するよう指示する。

3.1 経済成長、貿易、雇用に役立つように、農産品、非農産品、及びサービスを含む全ての分野における貿易の更なる実質的な自由化を達成する交渉を終結させるための合意された枠組みに向けて取り組む。その中で、我々は開発途上国の関心分野に特に注意を払う。

3.2 世界貿易のための、より公正で、より歪曲的でなく、より透明性が高く、より予測可能な条件を与えるために、及び、改善された国際的な統治のための貢献として、WTOの既存のルール及び規律の強化と更なる多角的ルールの策定に向けて取り組む。

3.3 製薬分野の生産能力が不十分ないし生産能力がない開発途上国が直面する現実の問題に対処するためのWTOにおける多角的な解決策を、カンクン閣僚会議の前に、この問題に関与する全ての当事者の信頼を再構築しつつ確立する。WTOの解決が得られるまでの間、これら諸国が直面する現実の問題に対処するため、我々は、我々の多くがモラトリアムを開始したことに留意する。そのモラトリアムは、HIV/エイズ、結核、マラリア及び他の流行病に関するものを含む公衆衛生の危機に対処するため、強制実施権の下で生産された医薬品を、それぞれのモラトリアムに定められた範囲と方式に従って、必要とする国に輸出することを欲するいかなるWTO加盟国に対しても異議申し立てをしないというものである。

3.4 ドーハの交渉権限に沿って、投資、競争、政府調達における透明性及び貿易円滑化という4つのシンガポール・イシューのそれぞれの交渉方式に関する合意を追及する。

3.5 他の二国間及び多数国間の援助国・機関と協力して、開発途上国がWTO交渉に十分に参加し、貿易協定を実施し、及び創出される貿易機会に対応することを支援するために、支援を必要とする開発途上国に対してキャパシティー・ビルディングのための技術支援を実施する。2001年の16%増となる、17億米ドルが2002年に供与された。

3.6 貿易、金融、開発政策をよりよく統合し、また、関連機関を活用することによって貿易を経済成長のための動力とし、開発途上国が世界経済への完全な参加者へと移行することを支援する。

3.7 貧困国のための特恵プログラムがこれら諸国を世界貿易体制に参加させる上で重要な過渡的役割を有している事実を認識し、開発途上国との我々の特恵的な貿易協定またはプログラムを、市場機会増大の観点から改善し、開発途上国間の地域統合及び貿易を促し、プログラムまたは貿易協定を支えるルール及び手続きが特恵利益の享受の障害とならずドーハ・アジェンダの一部として想定される多角的貿易自由化を妨げないことを確保する。我々はそれぞれ、ルール(特に原産地規則の規定及び書類提出要求)が、適格の開発途上国による特恵プログラムの利用を意図しない形で排除することのないよう確保すべく取り組む。