データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 特にアフリカにおける飢餓に対する行動:G8行動計画(第29回主要国首脳会議)

[場所] エビアン
[年月日] 2003年6月3日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/evian_paris03/af_kigah_z.html
[備考] 仮訳
[全文]

我々は、食糧安全保障が世界的な関心事であることを認識する。世界中の多くの人々が飢餓の危機に瀕しており、そのうちの4000万人がアフリカの人々である。このような状況は、気候条件や自然災害によってのみ生じるのではなく、むしろ、例えば、慢性的な貧困、農業に適した環境及び農業への適切な支援の欠如、HIV/エイズの蔓延、増加する紛争、統治や経済運営が上手くゆかないこと、貿易に関連する問題等の、より構造的な理由により生じるのである。これらの要因は、特にアフリカにおいて、繰り返す食糧危機の原因となり、長期に亘る食糧安全保障の欠如を悪化させる傾向がある。我々は、今日の人道的危機を回避するための措置を直ちにとる一方、食糧安全保障の欠如を長期的視点から解決する方法が強く必要とされていることを認識し、また、これらの問題に対処するために開発途上国とともに作業を進めることを約束している。これらの問題に対処するために、我々は、国際連合事務総長や関連する国際機関とともに飢餓を防止し及び軽減するために作業を進めている。アフリカにおける飢餓に対処するG8の行動は、「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)の支援の下、G8アフリカ行動計画の枠組みにおいてとられることとなる。

飢餓は、防止することのできる悲劇であり、これに対応するためには、短期的には緊急の食糧援助に対するニーズに柔軟かつ迅速に対応し、予見される危機の影響を緩和するための正しい政策手段が必要である。長期的には、影響を受けやすい国が、農業への投資に特に焦点を合わせるなど、飢餓につながる事態の防止に役立つような経済政策、統治政策及び機構改革を採用することにより、飢餓を防止することができる。我々は、おのおのの分野における解決に向けて積極的に貢献していくことを約束する。

影響を受ける国々と国際社会の双方が飢餓を予見して防止するための能力を大きく改善するために、我々は、次のことを行う。

1.緊急の食糧援助に対するニーズに対応すること

1.1 我々は、緊急の食糧不足に、迅速な方法を通じて取り組むことを決意する。アフリカにおける現在の不足量は、世界食糧計画の推計によると、120万トン程度である。我々は、我々自身が食糧援助や食糧以外の資金及び物品等を貢献する際の効率、タイミング及び反応の良さを改善し、緊急のニーズに応えるために、従来の及び新規の供与国による貢献を奨励し及び促進する。我々は、政府、国連機関、非政府機関、市民社会及び国際社会のその他の人々と、援助とプログラムのタイプを実際のニーズにとって最適な組合せで供与するために作業を進めていく。

1.2 カナナスキス以来、我々は、これらの人道的なニーズに対処するために、サブサハラ・アフリカに対する17億米ドルを含め、全世界で33億米ドルの緊急援助を行った。

我々は、新たなニーズが確定したときには、適切な支援への約束をもってこれに対処する。

2.評価能力、警戒・予防制度を改善すること

2.1 我々は、国、地域及び国際社会がニーズの正確な評価を発展する能力を強化すること、また、脆弱性及びその食糧安全保障の欠如との関連についてのより広く共有された分析及び理解が得られることを支援する。この支援には、共通の基準並びに食糧生産量、食糧入手可能性及び摂取栄養量を組み合わせる指標であって飢餓を予測するためのものを適切に使用することを含む。

2.2 我々は、緊急事態への準備及び対応を増進するために、早期警戒システム、収穫高予測予想システム及び非常時対応計画を国及び地域レベルで見直し、改善することを支持する。国の意思決定者は、時宜を得て提供される情報に基づき行動し、これらの制度に十分な資金的及び人的資源を充当することを約束する必要がある。

3.援助効果を促進すること

3.1 我々は、特定の食糧危機の状況において援助を利用するためのより柔軟で効率的な取組方法を約束する。援助は、受益者のニーズによりよく対応し、地域の生産を歪めず、地域の市場を損なわないものでなくてはならない。我々は、地域における食糧入手可能性、脆弱な人々の食糧購買力、その他の関連する地域の市場状況を考慮して、食糧援助と資金を、飢餓の影響を防止しまた緩和するために利用する。

3.2 貢献は、必要に応じて、食糧以外の物資(種子、道具、ワクチン、医薬品、学校用品、テント等)を含み、食糧以外の緊急のニーズ(水や衛生)に適切に対処することを確保することに資するものでなくてはならない。

3.3 特に脆弱な人々に対する資金援助や「現金収入のための労働」のプログラムといった代替手段は、食糧が入手できる場合に用いることができる。

3.4 我々は、関連のあるフォーラムや機関において行われる食糧援助の任務に取り組むための議論に積極的に参加し、地域の市場を歪めることなく、柔軟で、持続的で、効率的で、対応力のある援助方法を促進する。このことは、新たな援助国や飢餓に効果的に対処する新たな取組方法をもたらすための作業を進めることを含む。

4.食糧安全保障の欠如に対応するために長期的なイニシアティブをとること

4.1 我々は、飢えや栄養不足の根本的な原因を特定し及びこれに取り組むための統一された取組方法及び計画を支持する。

4.2 食糧安全保障、農村及び農業の開発は、国の開発及び貧困対策の文脈において、また、多数国間の及び二国間の援助戦略において、適切に議論されなくてはならない。この目的のため、我々は、恒久的な食糧安全保障を達成するために農村及び農業の開発に対する生産的な投資を増加することが必要であると考える。我々は、農業に対する政府開発援助の減少を反転させ、開発途上国の貿易機会を増加するための作業を実施する。

4.3 我々は、国の及び地域的なレベルでの健全な農業政策、農業従事者機関の発展、農業インフラ及び投入資機材に対する生産的な投資、食糧穀物の増進並びに輸出穀物の競争力に対する支援等を通じて、開発途上国の政府がこれらの目的を実施する努力を支持する準備がある。我々は、改良された科学的な資源及び試験済みのバイオテクノロジーの利用を含む新たな改良された農業技術の開発途上国における適用を奨励する。

4.4 カナナスキス以来、我々は、長期的な農業及び食糧安全保障の支援に対して、サブサハラ・アフリカに対する14億米ドルを含め、32億米ドルを供与することを約束してきた。

4.5 我々は、特に食糧生産及び食糧安全保障上の他の側面においてHIV/エイズが中でもアフリカの国々に及ぼす甚大な影響に鑑み、特にこの疾病との闘いを強化する決意である。食糧援助及び関連する緊急援助の分配は、感染者及び蔓延により最も影響を受ける脆弱な人々の栄養上のニーズを優先すべきである。家族構造や社会構造を保持すること又はそれらの崩壊に対して補償を行うことは、食糧安全保障を確保するための鍵である。

4.6 良い統治は、貧困削減、食糧安全保障及び経済成長の恒久的な進展にとって、非常に重要である。我々は、開発途上国が健全な政治的及び経済的な統治の枠組みを構築する努力を支援する。

飢餓に関するG8コンタクト・グループによる作業を土台として、我々は、この行動計画を全ての関連する国際的なフォーラムにおいて促進するために能動的に作業を進める。