データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 交通保安に関するG8協調行動

[場所] カナナスキス
[年月日] 2002年6月26日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/kananaskis02/index.html
[備考] 仮訳
[全文]

 2001年9月11日のテロ攻撃は、国際交通システムが極めて重要でありながら脆弱であることを明らかにした。世界経済が繁栄するためには、このシステムは、世界のあらゆる場所において、旅行者及び顧客に対し、安全で安定した、効率的で信頼のできるサービスを引き続き提供しなければならない。

したがって、我々は、正当な経済的、社会的目的のための人、貨物及び輸送手段の費用効果的かつ効率的な流れを促進しつつ、陸上、海上及び航空輸送の保安の向上を推進する一連の協調行動について合意した。G8は、以下を実施する。

人員

●事前旅客情報(API)の収集及び伝達のためのUN/EDIFACT(行政・商業・運輸のための電子データ交換)に基づく世界共通標準を可能な限り迅速に実施する。

●出発及び乗り継ぎラウンジへのアクセスを二国間で相互に自主的に与えることに向けて作業する。試験的プロジェクトの時宜を得た実施を含む。

●ICAO(国際民間航空機関)における採択に向けて、渡航文書及び身分証明書の発給に関する最低基準について2002年10月までに合意すること、並びに、ILO(国際労働機関)における採択に向けて、船員の身分証明書の発給に関する最低基準について2003年6月までに合意することに向けて作業する。

●手続及び文書における生体情報の活用に関する最低基準についての勧告を、基準設定機関に提出することを目指して、2003年の春までに策定することに向けて作業する。

●紛失・盗難旅券及び入国拒否に関するデータを共有するための手続面及び実施面の改善を行い、2002年9月までに具体的試行を実施する。

コンテナの安全

●世界貿易の安定確保の緊急性を認識し、関係国際機関と協力しつつ、危険性の高いコンテナの特定及び検査を行い輸送中の保全を確保するために、改善された国際的コンテナ安全体制の構築及び実施に向けて迅速に作業する。

●関心のある非G8諸国と協力しつつ、統合されたコンテナ安全体制のモデルとなる試験的プロジェクトを形成する。

●可能な場合には2005年までに、電子的な税関申告のための共通標準を迅速に実施し、非G8諸国が同じ共通標準を実施することを奨励するためにWCO(世界税関機構)において作業する。

●所在及び輸送に関する情報を含むコンテナに関する事前の電子情報を、貿易行程の可能な限り早い段階で要求するための作業を、G8及びWCOにおいて速やかに開始する。

航空保安

●G8諸国の全ての旅客用航空機の操縦室扉の強化に関する標準の履行を早め、可能な場合には2003年4月までに実施する。

●全てのICAO締約国に対する義務的な航空保安監査の迅速な実施をICAOにおいて支持する。

●航空保安に関する他国との協力を、キャパシティ・ビルディング支援の精神に基づき、促進する。G8は、また、保安上の弱点に関する情報及び評価を共有していく。

●非G8諸国に対し、我々が行ってきたように、ICAOの航空保安メカニズムへの応分の貢献を行うよう奨励し、多国間開発銀行に対し、この分野における開発途上国への支援要請を考慮するよう促す。

海事保安

●一定の船舶に自動識別装置(AIS)を設置する期日を2004年12月に前倒しするため、海上人命安全条約(SOLAS)の改正をIMO(国際海事機関)において支持する。(*)

●船舶保安計画及び船舶保安要員の乗船を2004年7月までに義務化するため、海上人命安全条約(SOLAS)の改正をIMOにおいて支持する。

●国際航海に従事する船舶を取り扱う港湾のうち適切なものについて港湾施設保安計画及び港湾施設保安評価を2004年7月までに義務化するため、海上人命安全条約(SOLAS)の改正をIMOにおいて支持する。(*)

陸上輸送

●国連及び他の関係国際機関において、潜在的に重大な保安上のリスクを有する危険貨物の陸上の輸送及び配送に関し、効果的かつ釣り合いのとれた保安体制の構築に取り組み、本年中に最初の協議を行う。

実施

●このイニシアティブの時宜を得た実施を確保するために、我々は、G8諸国の専門家に必要な指示を与えつつ、6ヶ月毎に進捗を検討する。G8諸国の専門家は、産業界とのパートナーシップの下、これらの優先事項に取り組むとともに、全ての関係国際機関(ICO,IMO,WCO,ILO)における政策の一貫性及び協調を推進する。

(*)ロシア連邦政府は、一定の船舶に2004年12月までにAIS(自動識別装置)を設置することに関する提案、並びに、国際航海に従事する船舶を取り扱う港湾のうち適切なものについて、2004年7月までに港湾施設保安計画及び港湾施設保安評価の体制を整えることに関する提案を支持する。しかしながら、これらの提案の技術的実施可能性を理由として、ロシア連邦は、それらの実施期限を2006年まで延長する権利を自ら留保する。