データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] G8森林行動プログラム最終報告書

[場所] ウィスラー
[年月日] 2002年6月14日
[出典] http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/kananaskis02/g8gai_forest_01.html
[備考] 仮訳
[全文]

序 論

 各国が自国の森林をどのように経営し、保全し、開発するかは、地球全体の経済的・社会的発展と環境保全に大きく影響する。このためG8メンバーは、1997年米国デンバーで開催されたサミットにおいて、同時期に新たに公表された森林に関する政府間パネル(IPF)1の報告書に盛り込まれた行動提案の地球的規模の実施を加速させるため、森林に関する行動プログラムを立ち上げることに合意した。1998年に始まった「G8森林行動プログラム」は、当時国際社会によって行われていた広範な行動を補完することに努めると共に、自らが承認を与え強い関心を示した様々な地域的及び国際的プロセスと歩調を合わせて発展してきた。本行動プログラムは特に重要な次の5つの項目により構成される。

●モニタリングと評価

●国家森林プログラム

●保護地域

●民間セクター

●違法伐採

 最初の「G8森林行動プログラム実施進捗状況報告書」は、2000年7月13日の日本国宮崎で開催されたG8外相会合に向けて作成された。この会議中、G8外相は、自らの森林専門家に、本行動プログラムに関する最終報告書を作成するよう指示した。この指示は沖縄における首脳会談でG8のリーダー達によっても取り上げられ、以下のように首脳コミュニケに盛り込まれた。

「我々は、持続可能な森林経営に関する我々の外務大臣の結論を全面的に支持する。これに関連して、我々は、先住民や地域社会が持続可能な森林経営を実施することを支援するプロジェクトを特に重視する。我々は、輸出及び調達に関する慣行を含め、違法伐採に対処する最善の方法についても検討する。」

 この指示に応えてG8各国は、二国間援助、セミナー及び専門家会合の主催、政府間会合への参加を含め、国内外で単独及び共同でこれらの5分野での活動を行った。本報告書はこれらの事項につき行われた活動を記録し、成果を取り上げ、将来への課題を提示するものである。

 本報告書及び附属の「G8森林行動プログラム−背景文書」に記載されている情報は、2002年8

月〜9月に南アフリカのヨハネスブルグで開催予定の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(WSSD)に向けた準備に際してG8各国やその他関心を有する者にとって有用なものとなろう。

1 この森林に関する政府間パネルや、その後続いて開催された森林に関する政府間フォーラムは、広範な森林問題に関する地球的規模の世論を形成すると共に、森林の経営、保全及び持続可能な開発に向けた提案を明確に示し前進させるために、国連持続可能開発委員会の支援の下に設立された。

G8森林行動プログラムの成果

モニタリングと評価

 G8森林行動プログラムが成立して以来、重要な進展が見られた分野の一つは、森林の状態や森林経営の傾向をモニタリング・評価する能力の向上である。持続可能な森林経営の進捗状況を客観的に測定できる基準・指標など、モニタリング・評価のための手段の開発と実施は、森林を持続的に経営するための国レベルの及び国際的な取組を進めるに当たって重要な基礎となる。基準・指標に関する各国の国内活動に加えて、G8各国は、持続可能な森林経営に向けた進捗状況を評価するための相互に合意された枠組みを開発するため、欧州森林保護閣僚会合の持続可能な森林経営のための汎ヨーロッパ基準・指標や、温帯林等の保全と持続可能な経営の基準・指標に関するモントリオール・プロセスを通じて協力した。最も広範な政府間レベルの活動では、G8各国は、国連食糧農業機関(FAO)、国際熱帯木材機構(ITTO)、新設された国連森林フォーラム(UNFF)および生物多様性条約(CBD)がそれぞれ有するモニタリング・評価に関する活動に積極的に貢献した。

 G8各国は、また、関心を有するパートナー国の能力を強化するため、それらの国々の地域のニーズに見合った基準・指標を開発・適用し、二国間協力や様々な地域的・国際的プロセスを通じて開発途上国への資金・技術援助を行った。国から個々の森林経営単位に至るまで、このような取組及び投入は、持続可能な森林経営の向上に寄与している。

 G8行動プログラムの開始以来、G8各国は、衛星画像、全地球的情報システム、汎地球測位システム及び航空写真を含め、森林資源管理におけるリモートセンシング技術のより幅広く効果的な活用を強く支持し強調してきた。二国間および多国間で活動しながら、G8各国は、開発途上国によるリモートセンシングデータ及び地理情報データベースへのアクセスとその利用を大きく向上させてきた。G8各国は、多くの開発途上国と協力して森林植生を地図化し、地理空間データを分析して森林経営に取り入れていった。さらに政府、先住民や地域社会、NGOによる現場でのモニタリングに必要な能力向上にも寄与した。G8の支援は、これらの国々の多くで、森林火災の予測・モニタリング・制御及び違法伐採の検出をも促進した。

国家森林プログラム

 国家森林プログラムの概念は、ほぼ20年に渡り、様々な名称や政府間プロセスの下で発展してきた。今日では、国家森林プログラムという用語は、国家主権を尊重し各国固有の条件に調和した方法で持続可能な森林経営を達成するという広い視野を伴いながら、世界的に受け入れられた重要な概念となっている。国家森林プログラムは、国際的に合意された行動の実施状況をレビューするための基礎となると共に、国際的合意と実際の森林経営との間に生じる隔たりをふさいでいる。国家森林プログラムの目的は、持続可能な森林経営のために実際に機能する社会的・政治的な枠組みを作り上げることである。こうした枠組みは、援助供与のための調整を改善し、開発援助と民間投資を呼び込み、ひいては官民資金の効果を高めるための足がかりとして機能している。

 国家森林プログラムには、政策立案の段階から、戦略的な計画作成・実施・評価に至るあらゆる段階で幅広い分野横断的かつ参加型アプローチが必要である。国家森林プログラムは、各国の社会経済的、文化的、政治的及び環境的状況に合致し、同時に、その国のより幅広い経済開発計画及び土地利用政策に統合されていなければならない。

 国家森林プログラムは、現在G8諸国においては充分に推進されている。国家森林プログラムは、他の経済部門との対話のための安定した基盤になったばかりでなく、利害関係者による参加のための調整手段としても上手く確立されてきた。国家森林プログラムは、連続して繰り返されることによって、G8諸国においてその信頼性を獲得した。このような前向きな経験から、G8各国は、国家森林プログラムそのものと、他の国々における同プログラムのできるだけ多くの採用と実施をを呼びかける主導者となった。

 G8各国は、一貫して、開発途上国における数多くの国家森林プログラムの取組を支援してきた。G8各国による森林関係の開発援助は、ますます国家森林プログラムの策定と実施に焦点を当てるようになってきている。4年間に渡る森林行動プログラムの実施中、G8各国は、世界中で国家森林プログラムを支援する多数の活動に資金提供を行った。G8各国は、戦略的パートナーシップと政府開発援助(ODA)を通じて、森林経営を貧困削減と一体化させる地域の能力を育成し、各国固有の持続可能な森林経営へのアプローチを促進しながら、開発途上国における改革プロセスの加速に力を貸してきた。

 国家森林プログラムの目に見える具体的な成果には次のようなものがある。

●新たな森林政策と法制度の改善

●制度改革

●援助供与の調整促進

●国際的に合意された行動の円滑な実施

●林業開発における国家の役割の再定義

●森林経営責任の地方分権化

●地域社会および地元グループへの権限の移譲

●政策決定プロセスの透明性の向上とより広い参加

●取組に関する調整・調和の改善

保護地域

 G8各国は、生態学的・地理学的に代表的な森林保護地域のネットワークが持続可能な森林経営の重要な一部をなすと認識している。G8各国は、G8森林行動プログラムを通じて、国内外における森林保護地域の指定が単なる数合わせにならないようにするために、分類方式を含め、保護地域の管理方法がよりよく理解されるよう貢献してきた。

 G8森林行動プログラムの立ち上げから4年を経て、保護地域の考え方は発展・成熟してきた。G8各国は、保護地域という位置付けによって、何が達成でき何が達成できないかという点や、保護地域政策が、生態系保全活動や森林居住民及び地域社会の持続可能な生活様式への支援といった他の重要な価値に役立つよういかに改善されうるのかという点についての理解向上に貢献する多数の取組を支援した。

 保護地域として指定される森林の規模と数が地球規模で拡大していることを反映して、G8各国は、自国の森林保護地域の制度を拡大するとともに、国境にまたがる保護地域の設置や、発展しつつある森林関連の「平和公園」の概念など、開発途上国における新たな保護地域の指定を促進してきた。G8各国は、二国間の技術・資金協力を通じて直接的に、あるいはITTOや国際自然保護連合(IUCN)、世界自然保護基金(WWF)、国連環境計画(UNEP)の世界保全モニタリングセンター、世界資源研究所(WRI)といった媒介組織を通じて間接的に、これら保護地域の指定促進を行ってきた。G8各国は、開発途上国による生物学的に重要な地域の保護拡大を奨励するために、二国間の債務救済や債務環境スワップも利用してきた。

民間セクター

 民間の森林所有者、産業組合、金融機関、民間シンクタンク、環境NGO、及び株主は、民間直接投資、モニタリングや認証の取組、政策研究や唱道、及び社会的責任のある投資を通じて、持続可能な森林経営の推進者として、公的部門に匹敵するほどの影響を与えるようになってきた。

 G8各国は、産業組合や民間の森林所有者等の民間セクターが持続可能な森林経営の実施に関わることを推進し、奨励し、歓迎してきた。民間セクターによる活動事例は次のとおり。

●森林経営及び木製品取引に関する自主的行動規範の採択

●違法伐採を根絶するための世界規模の行動

●環境効率性向上への確約

●企業の社会的責任を発展・促進することの奨励

 G8各国は、国内的にも国際的にも、持続可能な森林経営の取組に先住民や地域社会が関わることを支援してきた。近年、この分野での進展は急速であり、今や開発途上国の森林のほぼ4分の1において、地域社会が現地の森林経営に積極的に関与している。

 環境NGO、金融機関、産業組合、及び民間森林所有者の間の新たな連携が、持続可能な森林経営を促進する新たな動きを生み出しつつある。例えば、これらの連携によって、第三者による監査や、いくつかの例としては、持続可能な生産元からの産品に対するラベリングを提供する国内的、地域的、国際的な自主的認証制度が確立された。G8各国は、このような取組を奨励するとともに、自主的認証制度の相互認証に関する議論を支援している。

 G8各国は、官民両セクター間のパートナーシップの可能性を認識しつつ、広範に民間セクターの諸団体との共同関係を築いてきた。G8森林行動プログラムの主な活動としては以下のものが含まれる。

●官民両セクターによるジョイントベンチャー

●官民両セクター共同の資金の活用

●新たな投資基金のオプション

●社会的、経済的目標達成のための国有林の再編

 これらの民間セクターの活動に応えて、G8各国は、自主的認証制度を奨励し、産業界による行動規範の策定と促進を支援し、また、先住民による事業展開活動や地方における新たな意思決定モデルに対し資金的・技術的資源の提供を行ってきた。G8各国は、また、協同組合を含む林産物の小規模生産者組合や主要産業団体との協力を行ってきた。

 その一方で、G8各国は、持続可能な森林経営への投資を導く、多様な金融商品の発達にも励まされてきた。資本のグローバル化は、企業による商業活動の社会的・倫理的・環境的慣行に関する情報に対する投資家からの需要の高まりと相俟って、グリーン貯蓄プラン、グリーン信用金庫・銀行、持続可能な森林経営の相互基金やベンチャー基金などの市場を創出してきた。

違法伐採

 G8森林行動プログラムは、違法伐採とそれに係る森林法規の実行と行政という重要な問題に取り組むための理解と政治的意思を前進させてきた。1990年代初めにはほとんど認知されていなかったこれらの問題は、急速に国際的な脚光を浴びるようになった。森林法規の実行と行政は、二国間援助供与国や、世界銀行、ITTO及びその他の森林に関する協調パートナーシップ(CPF)メンバー機関にとって資金供与のための新たな対象項目となってきた。更に、違法伐採に取り組むための活動は国際機関の事業計画に盛り込まれつつある。

 G8各国は、違法に生産または輸出された木材の国際取引を排除することを目指す需要面での多くの措置を展開し、国際的取組に貢献してきた。

 需要面で、G8各国は下記の取組を含む一連の措置を進めている。

●公的な調達方針の見直し

●違法な生産元からの輸入品が国内市場に入らないようにするための摘発方法の改善

●木材追跡を通じた合法性の特定・検証を行うための市場ベースの手段・方法の開発

●林産物の産地に係るラベリング・認証の推進

 供給面では、G8各国は、林産物を生産・輸出する国々において政策的・制度的・法的な改革、産業規制及び法執行の改善を支援してきた。これらの活動には以下が含まれる。

●森林犯罪を追跡するための独立した監視・検証プロセスの開発

●森林経営及び伐採規制を行う政府機関の能力強化

●意思決定者及び市民社会が伐採権付与政策を監視できるようにするためのモニタリング・サービス  の提供

●産業が国内の森林法規を遵守するインセンティブを作り出す方法で、政府が森林法規や伐採権・課税政策の改革を可能とするための、政府への技術支援の提供

 政府間の取組では、2001年9月にインドネシアのバリで開催された「森林法の施行と行政に関する東アジア閣僚会議」の閣僚宣言が、違法伐採に対処するための行動へのコミットメントと支援を結集する大きな前進の象徴となった。地方、国、地域及び国際の各レベルでの効果的な協力の必要性を強調している。この歴史的宣言は、違法伐採とそれに関連する貿易及び不正行為に関する、初めてのハイレベルな政治声明であった。違法活動に由来する林産物を輸入する国々は、自らの責任分担を認識しつつ、生産国と共にこの問題に取り組むことに同意した。

 G8各国は、これまでの森林法規の実行及び統治に関する進展が、まだ始まりに過ぎないことを認識している。違法伐採とそれに関連する貿易及び不正行為は、様々な国際協議の場において引き続き優先事項として取り組まれるべき問題である。

今後の課題

 G8森林行動プログラムは、森林に関する政治的コミットメントを増大すると共に、モニタリングと評価、国家森林プログラム、保護地域、民間セクターにおける取組、及び違法伐採を抑制するための戦略といった分野における、個別及び共同の取組を前進させてきた。

 本行動プログラムは公式には終わりを迎えるが、G8森林専門家は、森林問題の中でも重要な課題に取り組むため、非公式に会合したり共同して活動を継続することが有益であると考えている。更に、G8森林専門家は、様々な政府間組織における森林関連活動への自らの積極的な参加を通じて、世界の森林の持続可能な経営を支援し続ける考えである。G8森林専門家は、持続可能な森林経営に難題を抱える世界の地域で取組を進めるための、新規かつ革新的パートナーシップが必要であることを認識している。

 森林関連問題は、G8各国の国内における優先課題であり続けると共に、G8各国の開発援助プログラムにおいても重要な地位を占めるべきである。

 森林は、貧困削減、持続可能な生活の提供、及び食料安全保障の促進のための戦略に大きく寄与するという観点から、各国政府が強く継続的な注意を払うべきものである。世界の森林の持続可能な経営を現実のものとするために、従来の政治的方法のみならず、市民社会、民間セクター、先住民や地域共同体、及びその他の関係者とも共に活動を続行することが必要である。

 森林の果たす重要な役割を上手く発揮させるため、G8各国が国際的コミットメントを果たすとともに、持続可能な森林経営のために資金的支援を行う必要がある。G8各国は、森林に関する国際的な取決め(国連経済社会理事会決議2000/35に概説される)がなしうる相当な貢献を強調しつつ、国際的な森林関連の合意、機関、及び協議の効率性強化に積極的に取り組み続ける考えである。

 森林法規の実行と行政については、効果的な持続可能な森林経営の基礎の一部をなしうる中心的な課題として取組が開始されたばかりである。違法伐採と関連する貿易及び不正行為は、あらゆる地域におけるあらゆる国々とそのパートナーが優先して取り組まなくてはならない課題である。これらの問題の範囲や性質を更に検討し、国内的・国際的行動を含め、同問題に取り組むための方法を探るとともに、目に見える成果を示すことによって政治的意志を維持する必要がある。

 違法伐採撲滅への取り組み、違法に伐採された木材及び関連製品の輸出入を排除する方法を検討するためには、リーダーシップが極めて重大である。この点で、森林法規の実行と行政に関し、現在、行われているプロセスへの支援が鍵となる。

これらの課題にとって特に重要な事項は次のとおり。

●森林に生計を依存する共同体の関与

●一連の改革(経済、土地保有権、政策及び立法、慣習及び法の施行)

●追跡調査及び加工・流通過程の管理

●二国間、地域間、地域内、及び多国間の取決め策定

●人材育成及び技術移転

 公に対する説明責任及び十分な情報を得た上で政策決定をするための大きな障害の一つは、入手可能な公開情報が不足している点である。政府及び民間セクターの関係者は、協力して、世界の森林の現況を正確に評価し報告する必要がある。また、開発途上国における独立した現地でのモニタリングや人材育成への支援を強化すべきである。更に、リモートセンシングや地理情報システムのような技術の活用を、森林政策、資源調査、現場作業、及び法施行を改善するための補足的手段として、継続し拡大すべきである。

 過去10年間に森林保護地域は著しく拡大したものの、生態学的・地理学的代表性の達成、より広い生態系の中でのそれら保護地域の管理の改善、並びに地元経済及び人間福祉への寄与の向上のために、なすべきことはまだ多く残されている。森林保護地域の指定及び管理は、官民連携の機会を提供するが、そのような連携を生み出すとともに資金を引きつけるような革新的な手法を探求すべきである。

 国家森林プログラムについては、FAOによる「国家森林プログラム・ファシリティ」や世界銀行の「森林プログラム(PROFOR)」のような国際的事業への支援増大や2国間のパートナーシップを通じて、また、国内的に、その策定及び実施を強化することが真に必要である。

 民間セクターの直接投資は、より革新的でより持続性のある森林政策・施業にとって鍵となりうる。数ヶ月または数年先には、民間投資や輸出信用の役割に関心を持つ全ての関係者が、持続可能な森林経営に向けられる資金を呼び込み易くするために意見交換し動向を把握し、更なる方法を開発することが必要となるであろう。

結論

 過去4年間にわたって、G8森林専門家は協力して、持続可能な森林経営を目的とするG8以外の地域的・国際的プロセスによる広範な活動を補完してきた。G8各国の森林生態系、土地所有形態、管理・規制制度、及び援助や国際協力に係る条件の程度と性格は多様であり、そのことが、持続可能な森林経営の世界的規模での実施への理解を高めることに大きく貢献してきた。G8森林行動プログラムの5つの優先分野における多くのG8の取組の詳細については、「G8森林行動プログラム−背景文書」と題する附属文書に記載されている。

 G8各国は、持続可能な森林経営があらゆる国において、貧困緩和、土地・資源劣化の低減、食料安全保障の向上、及び安全な飲料水と入手可能なエネルギーへのアクセスのために果たす役割を力説し続けている。持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)は、持続可能な森林経営に対する政治的コミットメントを強化し、そのための国際協力を促進する機会を提供する。

 森林関連の課題は優先事項であり続けるであろう。G8各国は、国際的なコミットメントを果たし、世界の森林が直面する課題に取り組むための手段を追求して行く考えである。

 G8各国は、様々な政府間機関による森林関連の活動への積極的な参加を通じて、関心を有する政府や、民間セクター、先住民や地域の共同体、及びその他の関心を有する関係者を含む利害関係者との間のパートナーシップを引き続き促進させていく考えである。

 公式の行動プログラムは終了したが、今後も、G8森林専門家は森林関連の国際協議において非公式に会合し、森林問題の中でも重要な課題に取り組むために協力し続ける。G8各国は以下の事項について約束する。

●森林関連問題を、国内的にも国際的にもハイレベルの重要課題として維持する。

●森林に関する政府間パネル及びフォーラム(IPF/IFF)行動提案を実施させるための国連森林  フォーラム(UNFF)行動計画や、生物多様性条約における森林の生物多様性に関する拡大作業計画などの、国際的なコミットメントを果たす。

●あらゆる資金源を活用し、持続可能な森林経営に向けられる資金レベルを高める。

●違法伐採や、違法に伐採された木材及び関連製品の使用に対処する。その観点から、

(イ)違法伐採の排除に取り組むための人材育成及び技術移転を増大させる。

(ロ)違法に伐採された木材及び関連製品の輸出入を排除するために様々な行動をとる。

(ハ)森林法規の実行及び行政に関し、現在行われている取組を支援する。

●持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)において森林の重要性を強調する。依然として森林経営に深刻な課題を抱える世界の各地域での取組みのために、新規で革新的なパートナーシップが必要であることを示す。