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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第25回主要国首脳会議におけるG8ケルン・サミット,コミュニケ

[場所] ケルン
[年月日] 1999年6月20日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々8か国の主要な民主主義国の元首及び首相並びに欧州委員会委員長は、第25回経済サミットのためにケルンで会合した。新しい千年期を間近に控えて、我々は、増大しつつある機会について、そして、我々の諸国及び国際社会が直面している課題に対する先を見通した解決策について議論した。

2.グローバリゼーション、すなわち世界的なアイデア、資本、技術、財及びサービスの急速かつ加速しつつある流れを伴う複雑なプロセスは、我々の社会に既に大きな変化をもたらした。それは、我々をかつてない程に結びつけた。一層の開放及びダイナミズムは、生活水準の広範な改善及び貧困の大幅な減少に貢献してきた。統合は、効率、機会及び成長を刺激することにより、雇用の創出に役立ってきた。情報革命並びに文化及び価値観の更なる相互交流は、創造と革新に拍車をかけつつ、民主化への刺激、人権及び基本的な自由のための闘いを強化してきた。しかし同時に、グローバリゼーションは、世界中のある程度の労働者、家庭及びコミュニティーにとって、混乱及び金融面での不確実性のリスクの増大を伴ってきた。

3.課題は、グローバリゼーションの影響を制御できないことに対する懸念に応えるために、グローバリゼーションのリスクに対応しつつ、グローバリゼーションが提供する機会を活かすことである。我々は、グローバリゼーションの利益を維持しかつ増大させるとともに、そのプラスの効果が世界中の人々に広く共有されることを確保するために努力しなければならない。我々は、したがって、政府及び国際機関、企業及び労働者、市民社会及び個人に対して、この課題に取り組むとともに、環境を保護しつつ、繁栄をもたらし社会的前進を促進するためのグローバリゼーションの十分な潜在能力を実現するために、ともに努力することを要請する。

I.世界経済を持続的成長に向ける対処

4.昨年のバーミンガムでの会合以来、世界経済は大きな課題に直面してきた。危機への対応と回復のための基盤作りの面で進展が達成された。主要な工業国における成長の支援を目指す政策措置及びいくつかの新興市場国におけるより強力なパフォーマンスにつながる重要な政策対応が、経済の見通しを改善した。多くの重要な課題が、依然として残っている。我々は、したがって、適切なマクロ経済政策及び構造改革を追求するとのコミットメントを新たにする。これらは世界経済のよりバランスのとれた成長に貢献し、それにより対外不均衡を減少させることとなろう。

5.世界経済は、依然として、2年前にアジアで始まった金融危機の影響を受けている。開放的でルールに基づく世界貿易体制及び同体制により促進される財及びサービスの有益な流れがなければ、危機の影響を受けた国々は、危機からの回復及び自国経済の安定化を実現する上で、より一層の困難に直面していたであろう。

6.我々は、ロシアとIMF及び世界銀行との間で最近達成された基本合意を歓迎するとともに、ロシアの改革プログラムにおける更なる重要な一歩として、合意が速やかに実施されることを期待する。IMFとの合意が成立した場合には、我々は、パリ・クラブに対し、ロシアと債務繰延べに関する合意を交渉するために迅速に行動するよう奨励する。我々は、マクロ経済の安定及び持続的成長に向けたロシアの努力を支持するため、より野心的な経済改革プログラムの実施を可能とする条件をロシアが実現した場合には、より後の段階における包括的解決を目指し、パリ・クラブに対して、ソ連時代の債務に由来するロシアの債務の問題への対処を継続するよう奨励する。

7.我々は、ロシアにおけるより長期的な観点からの社会的、構造的、経済的改革についてのG8の枠組みの中での対話を強化することに合意した。この目的のため、我々は、我々の個人代表に対し、この問題についてのG8間の作業の全体としての継続性と一体性を確保するよう指示した。小規模事業の促進、地方との協力の強化、保健、経済移行の社会的影響等の具体的協力分野が特に重視されるべきである。我々は、資本逃避との関連を含めて、組織犯罪及び資金洗浄と闘う法執行に関する我々の協力を深めることに合意した。

II.すべての人々に役立つ世界貿易体制の構築

8.世界貿易機関(WTO)のもとに一体化された多角的貿易体制は、国際貿易及び投資を促進するとともに、経済成長、雇用及び社会的発展を増進する鍵となってきた。我々は、したがって、WTOに対する我々の強力な支持及び開かれた貿易及び投資環境に対するコミットメントを新たにする。我々は、すべての国々に対して、保護主義の圧力に抵抗するとともに、市場をより一層開放することを求める。我々は、WTOにまだ加盟していない国々が、WTOの原則を受け入れ、WTOに加盟することを奨励する。

9.WTOの極めて重大な役割にかんがみて、我々は、WTOが政府対政府の機関であるという性格を維持しつつ、市民社会にさらに対応し得るようにWTOの透明性の向上をはかることの重要性について合意した。我々は、新ラウンドを立ち上げるために、シアトルにおける閣僚会議の成功に向けて努力することを約束する。我々はまた、貿易と環境の関係に取り組むとともに、持続可能な開発及び社会的及び経済的福祉を世界規模で促進するための、より効果的な方法をWTOの中で追求する。

10.我々は、したがって、すべての国々に対して、1999年12月のシアトルにおけるWTO閣僚会議において、実質的かつ実施可能な結果を実現することを目指す、広範かつ野心的な新ラウンド交渉を立ち上げることを要請する。全加盟国がそのプロセスに利害関係を有する。我々は、全加盟国が、開発途上国及び特に後発開発途上国が確固たる実質的な利益を得ることのできる分野での進展のための提案を行うよう奨励する。すべての国々が、新ラウンドに貢献するとともに、そこから利益を受けるべきである。効果的な新ラウンド貿易交渉は、開発途上国を更に世界経済に統合していくための道を拓くことを支援するであろう。こうした意味から我々は、市場アクセスの改善について昨年バーミンガムで行った後発開発途上国に対する我々のコミットメントを再確認する。我々はまた、金融、経済、労働及び環境に関する国際機関における更なる協力と政策の一貫性を強く求める。

11.貿易がますますグローバルになることから、バイオテクノロジーにおける発展の成果は国家及び国際レベルのすべての適切な場で扱われなければならない。我々は、これらの問題に取り組むために、科学に基づき、ルールに基づいたアプローチについてコミットする。

III.雇用促進のための政策の形成

12.最も緊急な経済問題の一つは、多くの国々における高い水準の失業である。我々は、雇用拡大のための適切な政策を形成するための強化された国際協力及び増進された国家レベルでの努力の重要性を再確認する。持続可能な成長及び雇用創出のための基礎を強化するために、我々は2段階の取組を特に強調する。

 ・我々の経済の適応性と競争力を強化するとともに、長期失業者が労働市場に戻ることを支援するための構造改革の促進

 ・安定と成長に向けたマクロ経済政策の追求及び金融政策と財政政策の適切なバランスの確保

13.我々の経済の適応性が増大するにつれ、経済成長がより多くの雇用をもたらす蓋然性が増大する。我々は、したがって、労働、資本及び製品市場における構造的硬直性の排除、起業家精神及びイノベーションの促進、人的資本への投資、経済的インセンティブを強化し雇用を促進するための税制及び給付制度改革並びに革新的で知識に立脚した社会の開発を強く支持する。

14.我々はまた、本年2月にワシントンで開かれたG8労働大臣会議の結論を支持する。すなわち、雇用を支える社会的セーフティー・ネットを提供し、早期の対応により長期失業を防ぎ、労働市場情報及び雇用サービスを提供することにより求職活動を容易にし、生涯学習と新形態の労働組織を促進し、新規参入労働者及び高齢労働者を含むすべての労働者に対して労働市場への平等なアクセスを確保し、社会的な対話を進めることである。

IV.人々への投資

15.基礎教育、職業訓練、学位、労働市場に合った技能や知識の生涯を通じた向上及び革新的思考の開発への支援は、知識重視社会に向かいつつある今日、経済・技術進歩を実現する上で重要である。これらはまた、個人を豊かにし、社会的な責任感と参加意識を醸成する。

16.これらの目標の達成を支援するため、我々は、ケルン憲章に規定されている目的及び希望を追求することに合意する。

17.適応性、雇用可能性、変化への対応は、来るべき新世紀における我々の社会の主たる課題となるだろう。職業間、文化間、コミュニティー間での流動性が重要となろう。また、すべての人々にとって、流動性に対応するためのパスポートとなるのが、教育及び生涯学習であろう。

18.この目的のため、我々は、G8各国及びその他の国々の間での教員、管理者、学生それぞれの間での交流の増加を支援するとともに、我々の専門家に対して交流増加にとっての主要な障害を明らかにし、次回サミットまでに適切な提案を提起するよう要請する。我々は、経済協力開発機構(OECD)及び国連教育科学文化機関(UNESCO)に対し、教員の採用、訓練、報酬、責任についての国際的な最良の慣行についての調査を行うことなどにより、異なる国々がどのように教育の水準を向上しようとしているかについての研究を行うよう要請する。我々は、協力するための方法を共同で模索するとともに、国際機関を通じてG8各国や開発途上国において、遠隔地教育等を通じ、学習及び開発ニーズに対応するための技術の利用を支援することにコミットする。

V.社会的セーフガードの強化

19.グローバリゼーションのプロセスに勢いがつくに従って、重要な社会的及び経済的進歩がもたらされてきた。同時に、急速な変化と統合は、ついて行けないと感じる個人や集団も生み、発展途上国を中心に、ある程度の混乱をもたらす結果となった。我々は、したがって、グローバリゼーションに「人間の顔」を与え、豊かさが拡大するとともに広く分かち合われるような制度的及び社会的基盤を強化するための措置をとる必要がある。

20.社会的セーフティー・ネットを含む社会保障政策は、社会的一体性を強化する一方で、個人がグローバルな変化と自由化を受け入れるとともに、労働市場における各自の機会を改善することを奨励して実現するほどに強力でなければならない。我々は、財政的制約に直面しており、社会的な支援のプログラムとより大きな個人的責任及びイニシアティブとの間に持続可能なバランスを保つことが極めて重要であることを認識する。

21.我々は、最近の経済及び金融危機によって最も深刻な影響を受けた国々が、必要な社会的基盤を創造し、改善するならば、より迅速な回復を継続するであろうことを確信している。したがって、危機の期間中に基礎的な社会サービスへの投資を継続することが、特に重要である。予算上の優先順位及び柔軟性は、社会的基盤及び投資の質を強化すべきである。

22.民主主義、法の支配、良い統治並びに人権及びコア労働基準の尊重は、社会的安定にとって更に必要不可欠な前提条件である。費用対効果が高く、透明性が高く、民意を反映し、よく機能している腐敗のない制度の発展は、自由化のプロセスを補完しなければならない。

23.我々は、国際金融機関(IFIs)に、発展途上国における健全な社会政策及びインフラの開発を援助し監視するよう要請する。我々は、これに関し、すでに取られつつある行動を賞賛する。我々は、国際通貨基金(IMF)に対し、経済プログラムを策定する際に、この問題により注意を払うとともに、財政再建の期間中でさえも、可能な範囲で、基本的な健康、教育及び訓練というコア予算に対して特別な優先順位を与えるよう強く求める。我々は、国連と協力して世界銀行が行っている社会政策における良い慣行の原則の開発のための努力及び包括的な開発ネットワークを通じた債務国とのパートナーシップの強化という世界銀行の作業を歓迎する。我々は、世界銀行及びIMFに対して、最も脆弱な層の保護を確保する調整プログラムの策定において、援助国及び債務国によって利用されうる一連の政策及び慣行の発展に、ともに取り組むよう促す。

24.我々は、国連、OECD並びに社会改革の策定及び実施に関する他の適切な場の中で、社会的セーフティー・ネットの費用及び効果の分析を含む、情報交換の改善を支援する。

25.我々は、国際労働機関(ILO)による労働における基本的原則及び権利に関する宣言並びにそのフォローアップの効果的な実施の促進にコミットする。我々はまた、現在ILOの児童労働の最悪の形態の根絶に関する条約の採択を歓迎する。我々は、更に、開発途上国の義務履行能力を向上するために、開発途上国との作業を進める意向である。我々は、各国がコア労働基準を実施することを支援するために、ILOの能力の強化を支援する。

26.我々はまた、適切な社会的保護及びコア労働基準を促進する上での、ILOと国際金融機関との間の協力の増進を歓迎する。我々は、国際金融機関に対して、これらの基準を加盟国との政策対話に織り込むことを強く求める。加えて我々は、グローバリゼーション及び貿易自由化の社会的側面に関して、WTOとILOとの間の効果的な協力の重要性を強調する。

VI.開発パートナーシップの深化

27.開発途上国はグローバル化した世界において重要なパートナーである。我々は、貧困を根絶し、持続可能な開発に向けた効果的な政策へ着手するとともに、グローバリゼーションがもたらす機会から利益を得るようにグローバルな経済によりよく統合されるための能力を開発するために、開発途上国、特に最貧国と協力することにコミットしている。

 ・我々は、開発途上国や移行期にある国に対し、経済の開放及び多様化、民主化及び統治の改善、人権の擁護に対する各国自身の努力を支援するために、実質的な支援及び援助の提供を継続する。

 ・我々は、政府開発援助(ODA)の規模を増大させるように漸次努力するとともに、ODAを最も効果的に活用し得る国々へ特別な力点を置くように漸次努力する。

 ・将来の債務負担を軽減し、持続可能な開発を促進するために、我々は、後発開発途上国に提供するODAのうち無償資金協力ベースのものの比率を増加させることに合意する。

 ・非政府機関も重要な役割を担っている。

 ・国際援助と債務救済は明らかに重要であるが、それらがプラスの効果を示すかどうかは、民間部門及び市民社会が生産的な役割を果たすことができるような経済的及び構造的改革や良い統治に向けた健全な国内的努力次第である。

 ・我々は、開発途上国が貿易の自由化から十分な利益を得て、グローバルな経済成長に貢献することを確保する上で、グローバルな貿易体制において権利を行使し義務を果たすための開発途上国の能力を改善するために、開発途上国や多数国間機関との作業促進していく。

 ・我々は、国連と国際金融機関に対して、開発途上国が社会サービスと基礎的インフラ整備のための十分な手段を動員することを支援するとともに、引き続き民主化、良い統治及び法の支配を支持して国別の開発戦略に組み入れることを要請する。

 ・我々は、後発開発途上国に対する援助のアンタイド化に関する勧告をまとめるとのOECDへの付託事項への支持を再確認する。我々は、OECD加盟国に対してこの努力をできるだけ早期に成功裡に結論に導くよう要請する。

28.我々は、アフリカ、アジア及びラテン・アメリカにおける経済的及び社会的発展の達成に貢献するとのコミットメントを再確認する。我々は、国際金融機関及び関連する地域開発銀行による貧困の軽減に関する報告に基づき、この面における状況を毎年改めて検討する。

VII.ケルン債務イニシアティブの開始

29.我々は、開発途上国の債務救済を新たに後押しすることを決定した。近年、国際的な債権国・機関が最貧国に対する多くの債務救済策を導入した。重債務貧困国(HIPC)の枠組みはこの観点での重要な貢献を行ってきた。最近の経験により、持続不可能な債務負担の問題に対しより持続的な解決を達成するためには更なる努力が必要であることが示唆されている。この目的のため我々は、HIPCの枠組みの大きな変更を通じてより深く、より広範で、より早い債務救済を提供するための1999年ケルン債務イニシアティブを歓迎する。このイニシアティブの中心目的は、医療、教育、社会的ニーズへの投資のための資源を利用可能とすることにより貧困削減に一層の焦点をあてることである。この観点から、我々はまた、良い統治と持続可能な開発を支持する。

30.我々は、新しい提案が相当の追加的な資金手当を必要とすることを認識している。いくつかの資金手当の手段が検討されている一方で、追加的な資金供与の可能性を見出す上で信頼に足る前進が必要とされ、我々は、資金手当の問題を解決するために支援する用意がある。この観点から、我々は、債権者間の公正な負担の分担が重要であることを認識する。

VIII.環境保護努力の更なる強化

31.持続可能な開発に対する我々のコミットメントを強調するために、我々は、多数国間条約及び国際的制度について、グローバルで環境的見地への配慮が行われる整合性のとれた枠組みを構築するとの我々の努力を更に押し進める。我々は、シュヴェリーンにおけるG8環境大臣会合の成果を支持し、今後、環境上の基準及び規範の確立、周知及び継続的な改善に関する国際協力を促進する。我々は、WTO交渉の次期ラウンドにおいては、環境に対して十分な配慮が払われるべきであることにつき合意する。このことには、環境に関する多数国間条約及び主要な環境上の原則とWTOのルールとの間の関係の明確化が含まれるべきである。

32.我々は、国際開発金融機関が環境上の配慮を活動の不可分の一部とすることを引き続き支持することに合意しており、我々も自ら支援を行う場合には同様の配慮を行う。我々は、OECDの枠組みの中で、輸出金融機関のための共通の環境上の指針の作成に向けて作業を行う。我々は、この作業を2001年のG8サミットまでに完了することを目指す。

33.我々は、気候変動が持続可能な開発に対する極めて深刻な脅威であるとの認識を再確認する。そのため、我々は、京都議定書の早期発効を目指して、ブエノス・アイレス行動計画の実施において時宜を得た進展が得られるよう、作業を進める。特に、我々は、京都メカニズムの運用及び強固で効果的な遵守確保のための体制に関する諸決定を奨励する。我々は、合理的で効率のよいエネルギー使用及びその他の費用対効果の高い手段を通じて、温室効果ガスの排出量の削減のために行動をとることの重要性を強調する。この目的のために、我々は、国連気候変動枠組条約に基づくものを含む国内措置の策定及び実施にコミットする。我々は、また、最良の慣行に関する経験を共有することに合意した。更に、我々は、世界中で温室効果ガスの排出量の制限に参画する開発途上国の数が増加するよう促進する。我々は、開発途上国が既にとった行動を歓迎し、これらの国々の努力を、資金供与制度、技術の開発及び移転並びに能力の形成を通じて支援することの必要性を強調する。我々は、クリーンな開発の制度(CDM)がこれらの分野において果たしうる重要な役割に留意する。我々は、また、ブエノス・アイレスにおいていくつかの開発途上国が行った、温室効果ガスの排出量の削減のために更なるコミットメントを行う旨の意図表明を歓迎する。

IX.不拡散、軍備管理及び軍縮の促進

34.国際的な不拡散のための制度と軍縮のための措置の強化は、我々にとって最も重要な国際的な優先課題のひとつである。我々は、環境へのリスクを削減しつつ、安全保障、軍備管理、(核関連兵器の)退役及び不拡散の分野からの要請に対処するために、拡大脅威削減に関する広範な国際的パートナーシップを構築する意向である。これは、G8諸国及びその他の国々によって現在行われ、また計画されている努力を更に発展させるものである。我々は、これらの目的のための資金の増額に対してコミットしており、関心を有する他のすべての国々に対して、我々と行動をともにするよう奨励する。

35.我々は、兵器級の核分裂性物質、特にプルトニウムの防護及び管理が引き続き必要であることを認識する。過去数年間にわたって、G8諸国は、防衛目的としては最早必要がなくなった兵器級の核物質の管理の問題について作業を行ってきた。我々は、そのような核分裂性物質の安全な管理のためのアレンジメントを確立する意図を確認する。我々は、将来の大規模な廃棄計画を支援する上で必要な科学技術上の協力のためにG8諸国及びその他の国々が着手しつつある具体的なイニシアティブを強く支持する。我々は、関心を有するすべての国々に対して、大規模な計画の早期実施のためのプロジェクトを支援するよう呼びかけるとともに、共同戦略の確立を強く求める。我々は、公的資金及び民間資金の双方を含む、資金調達のための国際的なアプローチが必要となることを認識しており、また、我々は、我々自身の資金上のコミットメントにおける増額の可能性につき、次回のG8サミットまでに改めて検討する。

36.我々は、北朝鮮による行動のような最近のミサイル発射実験及びミサイル拡散の動向を深く憂慮している。我々は、この問題に対処するための個別及び共同の追加的手段を検討することを約束するとともに、ミサイル輸出管理レジーム(MTCR)の目的に対するコミットメントを再確認する。

37.効果的な輸出管理メカニズムは、軍備管理及び不拡散に関する我々の幅広い目的を達成する上で重要である。我々は、引き続き、これらのメカニズムを強化する方法を検討する。同時に、我々は、核拡散の防止における原子力供給国グループの役割を強調する。

38.インド及びパキスタンによる核実験から1年後の時点で、我々は改めて懸念を表明し、バーミンガム・サミットのコミュニケにおける我々の声明を再確認する。最近のミサイル実験は、地域の緊張を更に高めた。我々は、両国に対して、不拡散及び軍縮に関する国際的な努力に参画するとともに、国連安保理決議1172に示された措置をとることにより、実行済みの最初の積極的な措置に続く対応をとることを奨励する。

X.地球規模の課題への対処

39.多くの国においては、暴力的な紛争と内乱は、依然としてグローバリゼーションのもたらす機会を享受する上で障害となっている。効果的な危機の予防及び管理は、これらの紛争の根本的な原因に対処するものでなければならない。これらの原因には、民族間の緊張の政治的操作、経済的または社会的な不平等、極度の貧困の他、更に、民主主義、法の支配、政治または経済上の良い統治の不在が含まれる。また、これらの原因は、人権の侵害、環境の悪化、資源の不足、急速な人口増加及び病気の急激な蔓延により、しばしば悪化する。

40.我々の危機予防の能力を高めるために、国連憲章の原則及び目的に沿って、以下のことを行う必要がある。

 ・紛争発生の潜在的可能性を早い段階で察知し対処する能力を高めること。暴力的な紛争のリスク及び原因は、より効果的に監視されるべきであり、また、暴力的な紛争を回避するために情報は共有されるべきである。

 ・安全保障、経済、環境及び開発に係る我々の政策が適切に協調され、また暴力的紛争の予防に資するものとなるよう確保すること。我々は、今後他の国々や国際機関との対話において、政策協調に取り組む。

 ・危機予防において国連が果たす重要な役割を認識し、この分野におけるその能力の強化に努めること。

 ・軍事支出を、公的支出パターンというより大きな文脈及び成長と開発に係るマクロ経済上の文脈において、体系的に監視すること。

 ・地域的機関及び地域的アレンジメントが当該地域における紛争の管理及び解決を支援するために管轄能力及び行動能力を拡大しようとする努力を国際法に従って奨励し支持すること。

 ・報道の自由を促進し、公正な選挙プロセスを確立し、民主主義に基づく責任能力並びに民主的な立法制度、司法制度及び軍・警察機構の機能を改善し、更には、人権モニタリング及び弁護制度を強化すること。

41.我々は、エイズが依然として世界的に拡がっていることを憂慮する。我々は、各国毎及び国際的なレベルで予防、ワクチン開発及び適当な治療法を組み合わせた対策を通じてエイズと闘う努力を続ける必要性を再確認する。我々は、エイズに対する闘いにおいてUNAIDS(国連エイズ共同プログラム)が調整的かつ触媒的な役割を担っていることを支持する。我々は、ともに資金協力を行う国その他のパートナーに対して、目標、戦略及びイニシアティブを明確に設定することに協力するよう、世界レベルにおいても地域レベルにおいても要請する。

42.我々はまた、マラリア、ポリオ、結核をはじめとし、それらの薬剤耐性をもつ形態を含む感染症及び寄生虫症に対する闘いにおいて、各国毎及び国際的な努力を続けることを約束する。特に、我々は、世界保健機関による努力並びにその「ロールバック・マラリア」及び「ストップ結核」というイニシアティブを今後も引き続き支持する。我々は、各国政府に対してこれらの提言された戦略を採用することを求める。

43.食品の安全性に関連する問題の重要性が増大していることにかんがみ、我々は、OECDのバイオテクノロジーの規制的監督の調和に関する作業部会及びOECDの新食品・飼料安全性に関するタスクフォースに対して、バイオテクノロジー及びの安全性に関するその他の側面の影響についての研究を行うように呼びかける。我々は、OECDの専門家に対して、研究の結果につき我々の個人代表と討議することを呼びかける。我々は、個人代表に対し、他のフォーラムで行われている考察を勘案しつつ、次回のサミットまでの間に、これらの問題に対する国際機関及びその他の機関を通じた我々のアプローチを向上させるための可能な対応策について報告するよう要請する。

44.我々は、国際社会においてあらゆる形態の汚職のもたらす有害な影響についての認識が広まっていること及びOECD贈賄防止条約が1999年2月に発効したことを歓迎する。我々は、より多くの国がこの条約を締結することを希望する。汚職防止努力に関しては、1999年2月に米国において、G8を含む80以上の国が参加した国際会議とOECDによる会議が開催されており、我々は両会議の成果及び予定される今後のフォローアップを賞賛する。国連犯罪条約の文脈においては、我々は、公務員の関与する汚職行為が犯罪とされるよう強く求める。

45.我々は、国際組織犯罪並びにそれが世界中の政治、金融及び社会の安定に与える脅威と闘う国際的な努力の勢いを維持する。我々は、国際組織犯罪及びテロリズムに関するそれぞれの上級専門家グループが行っている作業を賞賛し、両専門家グループに対して、特に組織犯罪に関する国連条約及び議定書についての交渉の早期終結に向けて、引き続き作業を行うよう強く求める。我々はまた、テロリズムに対する資金提供に関する国連条約についての交渉のより迅速な促進を要請する。我々は、両専門家グループに対して、来年改めて報告を行うよう要請する。我々は、特に1998年の世界薬物問題に関する国連特別総会における結論の積極的な実施を通じた薬物の問題への取組に対するコミットメントを再確認する。我々は、犯罪に関する閣僚級会合が今秋にモスクワにおいて開催されることを歓迎する。

46.我々は、世界のどこであれ原子力の利用において安全第一の政策をとること及び高い安全基準を達成することに関して、1996年のモスクワでのサミットにおいて表明したコミットメントを新たにする。この点に関して、我々は、原子力安全条約ピア・レビュー会合の成果及び国際原子力機関による東欧における原子力安全の強化に関する会合を極めて重視する。

47.我々は、原子力の安全の分野における協力の強化に対するコミットメントを再確認する。我々は、この分野におけるコンピュータ2000年問題(「ミレニアム・バグ」)に対処するための協調努力を歓迎する。原子力安全基金に関しては、我々は、贈与取極の完全かつ時宜を得た実施を引き続き極めて重視する。

48.バーミンガム・サミット以来、「ミレニアム・バグ」への対策に真に前進が見られた。しかし、依然としてなすべきことは多い。我々は、2000年問題に対応するための我々の準備態勢を確保するとともに、我々各国及び世界全体に対する潜在的影響を最低限のものとするための強力な計画を維持する。他のすべての政府にも同じ対応を強く求める。これらの努力において、エネルギー、電気通信、金融サービス、運輸及び医療という部門、更に、防衛、環境及び公共の安全の部門という主要インフラ部門に高い優先度を与えるべきである。国民の信頼が極めて重要であり、それは、重要な部門における準備状況に関する透明性及び公開性に大いに影響される。各国政府、国際機関、インフラ関係者及び情報技術関係者は、一般国民に対して信頼できる情報の定期的な提供を確保する必要がある。期日が近づくに従い、責任ある機関が、精力的な準備にもかかわらずに極めて機微な分野において発生するかもしれないシステム上の失敗に対処するための非常時対応計画を整えておくことが重要である。第三国にも同じことを強く求める。我々は、我々の間で、そして、他国との間でも、本件に関するこの側面やその他の側面に関して緊密な協力を維持する。今年後半に非常時対応計画に関するG8の特別会議を開催する。

次回サミット

49.我々は、来年の7月21日から23日まで沖縄(九州)で会合を行うとの日本国首相の招待を受諾した。