データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第24回主要国首脳会議におけるコミュニケ

[場所] バーミンガム
[年月日] 1998年5月17日
[出典] 外務省
[備考] 外務省仮訳
[全文]

はじめに

1.我々8ヵ国の主要な民主主義工業国の元首及び首相並びに欧州委員会委員長は,バーミンガムで会合し,我々自身及び他の諸国において人々に影響を与えている問題について議論した。グローバリゼーションがますます高まる世界において,我々は,より一層相互依存的になっている。我々の課題は,グローバリゼーションのプロセスを進めかつ持続させ,あらゆる地域において人々の生活の質が向上するように,より広範にその恩恵が行き渡ることを確保することである。我々はまた,我々の制度及び構造が世界で進行しつつある急速な技術的及び経済的変化に対応するものであることを確保しなければならない。

2.21世紀の始まりを控えた世界が直面する主要な課題の中で,このサミットは,以下の3点に焦点を当てた。

 ・環境を保護し良い統治を促進しつつ,開発途上国がより急速に成長し貧困を削減することを可能にし,新興アジア経済の成長を回復させ,安定した国際経済において物とサービスの貿易及び投資の自由化を維持するような持続可能な経済成長及び開発の世界的な達成,

 ・すべての人が参加できる我々自身の経済における継続的な成長の達成,雇用の創出及び社会的疎外との闘い,

 ・世界のすべての国において,この成長を弱め,法の支配を損ない,個人の生命を害するおそれがある薬物及び国際犯罪との闘い。

 それぞれのケースにおける我々の目標は,これらの課題に取り組むための具体的な行動について合意することであった。

世界経済における持続可能な成長の促進

3.相互依存の世界においては,我々は,すべての国において持続可能な経済成長を達成すべく努力しなければならない。世界的な統合は,我々が慫慂し形作ってきたプロセスであり,かつ,世界中の人々にとって明確な利益を生み出すプロセスである。我々は,5月2日になされた欧州経済通貨統合の創設に関する歴史的決定を歓迎した。我々は,世界経済の健全性に寄与する成功裡のEMUに期待する。健全な財政政策及び構造改革の継続に対する欧州連合諸国のコミットメントは,EMUの長期的成功並びに成長及び雇用に関する見通しの改善にとっての鍵である。

4.全体として世界の見通しは,依然として良好である。しかしながら,我々が前回会合して以来,この見通しは,アジアにおける金融危機によって一時的に後退している。我々は,この地域の安定と成長を再建するための努力及び国際金融機関の果たす重要な役割に対する我々の力強い支持を確認する。アジアの成功裡の回復は,我々すべてにとって重要な利益をもたらす。したがって,

 ・我々は,影響を受けた諸国において進められている諸改革を強く支持し,これまでに達成された進捗を歓迎する。IMFと合意したプログラムの完全な実施により,安定が回復され得るものと我々は確信する。アジアが過去目覚ましい成長を達成するのに役立った基礎的要素は,依然として有効である。合意された政策の実施は,波及効果を避けるために我々自身及び他の諸国においてとられる措置とあいまって,この地域の確固たる回復及び新たな世界の安定のための基礎をもたらす。

 ・我々は,アジアの出来事の1つの重要な教訓は,健全な経済政策,透明性及び良い統治の重要性であると信じる。これらは,金融市場の機能,経済政策決定の質及び健全な政策に対する一般の理解と支持を改善し,これにより信頼を高める。また,危機の解決に当たっては,民間セクターが時宜を得た,適切な役割を果たすことを確保することも重要である。

 ・我々は,この地域の危機が貧困者及び最も脆弱な人々に与える深刻な影響を認識する。経済及び金融改革は,これらの人々をこの危機のもたらす最悪の影響から守るための関係諸国による行動及び政策と調和したものである必要がある。我々は,このため世界銀行,アジア開発銀行の支援及びドナーの二国間支援並びにIMFと合意したプログラムにおいて社会的支出がますます重視されていることを歓迎する。

 ・我々は,今回の困難がこの地域及び我々自身の国の双方において短期的な保護主義的な勢力に弾みを与えかねないことを懸念する。このようなアプローチは,回復の見通しを大きく傷つけるものとなろう。我々は,自らの市場を開かれたものとし続ける決意であり,他の諸国に対しても同様のことを要請する。我々は,影響を受けた諸国が投資及び貿易に対してその市場を開放し続けることの重要性を強調する。

5.来週のGATT創設50周年に関するWTOの祝賀行事に目を向けて,我々は,

 ・WTOの多角的枠組みにおける継続的な貿易及び投資の自由化への我々の力強いコミットメントを再確認し,

 ・すべての国に対し,市場をより一層開放し,保護主義に抵抗するよう要請し,

 ・確立されたWTOの規則及び慣行に従ったWTOのメンバーシップの拡大を強く支持し,

 ・他の国際機関においてと同様,WTOにおいて一層の透明性を慫慂することによって,多角的システムに対する一般の支持を促進することに合意し,

 ・既存の多数国間のコミットメントを履行し,合意済み課題を推進し,かつ広範な多角的自由化を追求するに当たり新たな分野に取り組むための努力に対する我々の支持を再確認し,

 ・新興経済及び開発途上経済が十分かつ効果的に多角的貿易システムに参画することに対する我々の希望を確認し,これらの諸国において成長をもたらし,貧困を軽減することに役立つよう,かかる参画から早期の目に見える利益が得られることをコミットし,また,以下により後発開発途上国への支援を実施する。

 ○その物品に対する追加的な無税のアクセスを,必要な場合には自主的に,提供すること,

 ○原産地規則が透明であることを確保すること,

 ○地域統合を促進する努力を支援すること,

 ○その市場が,投資及び資本フローにとってより魅力的かつアクセスしやすいものとなるよう支援すること。

6.最後の点は,世界が直面する最も困難な課題の1つを際立たせている。すなわち,より貧しい途上国,特にアフリカにおいて,その能力を開発し,世界経済により良く統合され,それによってグローバリゼーションのもたらす機会から利益を得ることを可能にすることである。我々は,アフリカにおける希望と進歩という新たな精神に勇気付けられる。課題は厳しいが,克服できるとの自信が高まりつつある。我々は,OECDの21世紀開発戦略に示されているとおり,改革し,発展し,経済的・社会的開発のための国際的に合意された目標を達成するための,これらの諸国の努力を支援する真のかつ効果的なパートナーシップにコミットする。したがって,我々は,いずれの場所においても児童のために少なくとも初等教育を実現し,母子死亡率と世界人口のうちの極貧人口の割合を大幅に減少させるために,これらの諸国と協力しなければならない。

7.我々は,これらの目標を達成するために,我々がリヨン及びデンヴァーにおいて策定したヴィジョンを完全に履行する意図を有する。したがって,我々は,以下について国際的な努力を共に行うことを誓う。

 ・これらの諸国が,民主主義と良い統治,より強力な市民社会とより高い透明性を確立し,腐敗に対する行動をとるための努力に対して,例えば,OECD贈賄防止条約を1998年末までに批准するためのあらゆる努力を傾注することによって,効果的な支援を提供すること,

 ・実質的な水準の開発援助の重要性を認識すると共に,世界銀行のソフト・ローン部門の迅速かつ適切な増資について交渉すること(IDA12)並びにIMFの拡大構造調整ファシリティー及びアフリカ開発基金のための適切な資金を提供することを含め,我々の責任を履行しつつかつバードン・シェアリングの精神に基づき,改革プログラムを支援するために開発のための資金を動員すること,

 ・既存の二国間援助や投資機関による支援が,基本的な社会インフラの開発や貿易及び投資を改善するための措置を含め,健全な改革の支援に焦点を当てるよう努力すること,

 ・OECDにおいて,1999年に案文を提案することを目的として,後発開発途上国向け援助のアンタイド化に関する勧告につき作業すること,

 ・国際金融機関(IFIs)及びパリ・クラブにおいて合意された重債務貧困国(HIPC)イニシアティヴの条件に従った,より多くの国への債務救済の迅速かつ断固たる拡大を支持すること。我々は,既に6ヵ国がHIPC債務救済の適格性を認められたこと及び更に2ヵ国が近く認められる見込みであるとの進展が達成されたことを歓迎する。我々は,すべての適格な国が,2000年までにこのプロセスに入ることができるように,可及的速やかにプロセスを開始するために必要な政策措置をとることを慫慂する。我々は,各国が条件を満たす場合に,債務問題からの永続的な脱却を保証するために,必要な場合にはいつでも暫定的救済措置を含め,必要な救済を得ることを確保すべく,国際機関及び他の債権者と協力する。我々は,アフリカ開発銀行がHIPCイニシアティヴに対する貢献を行うための資金を確保できるよう,将来の資金調達努力に世界銀行が参加することを期待する。

 ・改革を行っている後発開発途上国に対し,援助に関連する二国間債務を免除するか又は同等の措置をとっていない諸国は,これらを実施するよう要請すること,

 ・感染症及び寄生虫症に関する相互協力を強化し,これらの分野における世界保健機関の努力を支援すること。我々は,何億人もの人々が経験している苦しみを除去し,マラリアに起因する死亡率を2010年までに大幅に減少させるための,新たな「ロールバック・マラリア」イニシアティヴを支持する。我々はまた,ワクチン開発,予防プログラム及び適当な治療法を通じ,かつUNAIDS(国連エイズ共同プログラム)に対する支援を継続することによって,世界的なエイズ禍を減少させるための努力を継続する。我々は,エイズの予防と治療のためのフランスによる「国際治療統一基金構想」の提案及びその他の提案を歓迎すると共に,我々の専門家に対し,それらの実施のフィージビリティを迅速に検討するよう要請する。

8.我々は,国連事務総長の最近の報告において特記されたとおり,紛争を予防し緩和するためのアフリカの能力を強化する特別の必要性を認識する。我々は,紛争予防及び平和維持のための訓練を提供するアフリカを本拠とする機関の能力を向上させる方途を探求する。我々はまた,貧しい紛争後の諸国が,自国の政治,経済,社会制度を,民主的な価値と基本的人権の尊重と整合的に再建する場合に,これら諸国の格別の必要に対応するための方途を更に検討する必要がある。即時の人道援助に加え,

 ・我々は,IMF及び世界銀行によって支援される良い統治及びマクロ経済・構造改革プログラムを支援しつつ,強固な民主的・経済的制度を構築するための技術協力及び金融支援の必要性を認識する。我々は,世界銀行がこれらの分野において二国間及び多数国間援助の調整に力強い役割を果たすことを要請する。

 ・我々はまた,適切な場合にはHIPCイニシアティヴを含め,債務救済メカニズムによって,本質的な復興のため,特にIFIsへの支払が延滞している諸国に対して,より多くのかつ早期の資金が利用可能となるための方途を検討する必要性に合意する。

9.持続可能な開発及び世界的な成長を確保するための1つの極めて重要な要素は,効率的なエネルギー市場である。したがって,我々は,4月のモスクワにおけるエネルギー大臣会合の結果を承認する。我々は,G8の枠組みの中で,エネルギー問題に関する協力を継続する。我々は,エネルギー生産地域及び通過地域における健全な基盤の上に立った政治的・経済的安定の重要性を認識する。我々は,信頼性が高く,経済的で,安全かつ環境面で健全なエネルギー供給が,予測される需要の増大を満たすことを確保することを目的として,エネルギー市場の発展を慫慂することにコミットする。効率性と競争的な環境を促進するための自由化及びリストラは,内外の主体の間のみならず政府と民間セクターの間の衡平な取扱いを確立する観点から,透明かつ無差別の国内法制及び規制の枠組みによって下支えされるべきである。これらは,我々のエネルギー・セクターが必要とする新たな投資を引き付けるために不可欠である。我々はまた,経済的に意味のある国際的なエネルギー輸送網を開発するための国際的な協力の重要性を認識する。我々は,この協力を,二国間で,あるいはエネルギー憲章条約の枠組みと原則に従うものを含め多数国間で追求する。

10.我々の電力セクターに対する新たな競争的な圧力にかんがみ,我々は,1996年のモスクワ・サミットにおいて行った,原子力発電所の安全な運転と世界中で高い安全基準を達成するとのコミットメントを再確認し,また,原子力安全勘定贈与取極の完全な履行を最大限重視する。我々は,原子力安全作業グループ(NSWG)の既定の任務に対する我々のコミットメントを再確認する。我々は,適切な状況における完全なメンバーシップを最終的な目標として,NSWGの活動におけるロシアの役割を深めることに意見の一致をみた。我々は,国際核融合実験炉(ITER)の試験的プロジェクトに関して成功裡に協力が行われていることを認識し,民生用の核融合の発展のための国際協力を継続することが望ましいと考える。

11.我々の将来の繁栄に対する環境面での最大の脅威は,引き続き気候変動である。我々は,それに取り組むとの我々の決意を確認し,リーズ城における環境大臣会合の結果を承認する。法的拘束力を有する目標を含む議定書の京都における採択は,温室効果ガスの排出を削減するための我々の努力における歴史的な転換点である。我々は,我々の数ヵ国が議定書に最近署名したことを歓迎し,来年中にこれに署名するとのその他の国の意図を確認し,これを批准し京都の合意を現実のものとするために必要な更なる作業を早急に開始することを決意する。この目的のため,

 ・我々はそれぞれ,温室効果ガスの排出を大幅に削減するために必要な措置を国内でとる。

 ・京都議定書が言及するように,我々は,国内的な措置を補完するために,市場ベースの国際的な排出量取引,共同実施及びクリーンな開発の制度といった柔軟なメカニズムや吸収源につき更に作業する。我々は,実施可能,説明可能,検証可能で,開かれたかつ透明性のある取引制度及び効果的な履行確保制度を確保するためのルール及び原則を策定することを目指す。

 ・今秋のCOP4のブエノス・アイレス会議への準備のために,我々は共に,また他の諸国と協力する。我々はまた,温室効果ガスの排出を制限又は削減するための目標を設定することへの世界的な参加を増大させるために,すべての国と協力する方途を検討する。我々は,クリーンな開発の制度が如何に機能し得るか,例えば,地球環境ファシリティを含む既存の機関の経験と専門的知見を如何にして最も良く利用し得るかにつき,可及的速やかに合意に達することを企図する。我々は,気候変動の影響を最も受けやすく,その排出の全体に占める割合が増大しつつある途上国からの参加の増加を期待する。我々は,その国内の状況と開発の必要にとって適当な,自主的な努力とコミットメントを達成するために,途上国と協力する。我々はまた,技術の開発と普及を促進するために,途上国と共に我々の努力を増大させる。

12.東南アジア及びアマゾン地域における最近の悲惨な森林火災は,我々の環境のみならず経済成長及び政治的安定に対して脅威を与えており,森林を持続可能に管理し保全するための世界的な協力,より良くかつより効果的な枠組み及び実際の協力が極めて重要であることを示している。我々は,2000年に,先週発表されたG8行動プログラムの実施の進捗を評価する。我々は,国際連合の下で進行中の森林に関する作業を強く支持し,この努力が継続することを期待する。

成長,雇用可能性及び社会的一体性

13.すべての我々の国民は,男性であれ女性であれ,就労と相応の生活水準を通じて,国家の繁栄に貢献しこれを共有する機会を享受するに値する。課題は,すべての我々の市民が,成長と雇用創出を増大させることによって,急速な技術的変化と経済のグローバリゼーションの利益を共有することを確保し,一体的な社会を構築しつつ,このような利益を如何にして獲得するかである。我々は,このことを達成するためには,健全なマクロ経済の枠組みの中で,国内の経済的・社会的構造を近代化することが重要であることを認識する。これらの目的のために,我々は,G8財政・経済・労働及び雇用担当大臣が,「成長,雇用可能性及び社会的一体性」に関する2月のロンドン会議で合意した7つの原則を強く承認する。我々はまた,活力ある高齢化に特別の焦点を当てた,1997年11月の神戸雇用会議の結論を歓迎する。

14.我々は,各国それぞれがロンドン会議の7つの原則が如何にして実施されつつあるかを示すために作成した行動計画を議論し歓迎した。この分野における各国の経験と最良の実践を共有することによって,我々は,我々の政策と対応振りを改善することができる。我々は,これらの計画を成功裡に実施することを確保するに際して雇用者と労働組合の関与が重要であることを強調した。

15.行動計画は,我々すべてが,個別に,我々の国において雇用可能性と雇用創出を改善するための新たなコミットメントを行っていることを示している。特に,我々は以下をコミットする。

 ・若年の長期失業者と失業により深刻な影響を受けている他のグループが就労先を見いだすことを支援するための措置,

 ・起業家が会社を設立することを支援するための措置,

 ・税制及び給付制度を雇用に優しいものとすること及び生産物市場の自由化を含む構造改革の実施,

 ・生涯学習を促進する措置。

16.各国は,それぞれの行動計画に示された措置を導入し,活力ある高齢化の概念を追求するとの決意を確認した。活力ある高齢化に関する措置は,高齢労働者の必要に適した職業形態を探求し,それに応じて職業を彼らにふさわしいものに適合させるべきである。

17.これらの措置は,健全な基盤に基づく衡平な成長を生み出すことに資する。我々はまた,成長,雇用及び社会的一体性の醸成を,G8のみならず世界中において支援するために,関連する国際機関等,特に,ILO,OECD及びIFIsにおいて,我々の原則と経験を共有したいと考える。我々は,国際的に認識されたコア労働基準に関する,シンガポール会議の結論並びにILO宣言及び実施メカニズムのための提案に従って,ILO及びWTO両事務局間の協力の継続を含め,かかる労働基準の実施に向けた世界的な進展に対する支持を新たにする。

薬物及び国際犯罪との闘い

18.グローバリゼーションは,国際犯罪の劇的な増加を伴ってきた。このことは,薬物及び武器の不正取引,人の密輸,窃盗,詐取及び脱法行為のための新たな技術の悪用並びに犯罪収益の洗浄等の多様な形態で現れている。

19.このような犯罪は,薬物により生活を破滅させ及び社会を組織犯罪の恐怖に置くことを通じ,我々自身の市民及び社会に対する脅威となっているのみならず,国際カルテルによる不法資金の投資,腐敗,制度の弱体化及び法の支配に対する信頼の喪失を通じ,社会の民主的及び経済的な基盤を損ないかねない世界的な脅威となっている。

20.この脅威と闘うためには,国際的な協力が不可欠である。我々自身,特に1996年のリヨン・サミット以来,そのような協力を改善する方途を追求してきた。既に多くのことが達成されてきた。我々は,国連,欧州連合及び他の地域グループにより行われている作業を認識する。我々は,国際組織犯罪に関する40の勧告を実施するためG8リヨン・グループによりとられた措置及び昨年12月のワシントンにおけるG8司法・内務閣僚級会合により発表された提案を歓迎する。我々諸国は,共同して行動することにより,犯罪者を捕らえカルテルを壊滅するためにお互いに支援している。しかしながら,更に多くのことがなされる必要がある。犯罪者にとってもその資金にとっても安全な楽園は存在してはならない。

21.したがって,我々は,この脅威に一層効果的に取り組むため以下の更なる多くの行動をとることに意見の一致をみた。

 ・我々は,我々の法執行機関に対し追加的に必要な手段を提供する実効的な国連国際組織犯罪条約を,今後2年間で交渉するための努力を完全に支持する。

 ・我々は,我々の閣僚により合意されたハイテク犯罪に関する10の原則及び10の行動計画を迅速に実施することに意見の一致をみた。我々は,適切なプライバシーの保護を維持しつつ,証拠として電子データを取得し,提示し,保存するための法的な枠組みについて,及びこれらの犯罪の証拠を国際的なパートナーと共有することについて合意するため,産業界との緊密な協力を呼びかける。これは,インターネット及び他の新たな技術の悪用を含む広範な種類の犯罪と闘うことに資する。

 ・我々は,地域グループと協力して,資金洗浄と闘うための作業を継続し拡充するとのFATF(金融活動作業部会)の決定を歓迎した。我々は,オフショア金融センターによって惹起されている問題を含め,資金洗浄及び金融犯罪の問題に特に重点を置く。我々は,国際犯罪と闘うことに関する閣僚会合を1999年にモスクワで開催するとの提案を歓迎する。我々は,資金洗浄を行っている者に関する情報を収集・分析し,パートナー諸国の関係機関と連携するため,金融情報機関(FIUs)を未だ有しない場合には,我々の憲法及び法制度に従って,当該機関を設置することに意見の一致をみた。我々は,有罪判決を受けた犯罪者からの資産の没収を容易にするための適切な法制(これらの資産を追跡・凍結・没収し,可能な場合には,国内法制に従って,差し押さえた資産を他の諸国と配分するためお互いに支援する方法を含む。)の原則及び必要性について意見の一致をみた。

 ・我々は,犯罪資金の巨額なフローから生ずる公務員の腐敗と闘う方途を探求する必要性に合意する。

 ・我々は,移民の密入国を含むあらゆる形態の人の密輸に深く憂慮する。我々は,女性と児童の密輸と闘うために,このような犯罪を予防し,犠牲者を保護し,密輸を行う者を訴追する努力を含め,共同行動に合意した。我々は,この問題に取り組むため,我々自身の間並びに送出し国,中継国及び目的国を含む第三国と共に,将来の協力のための原則及び行動計画を含む多面的かつ包括的な戦略を策定することにコミットする。我々は,将来の包括的な国連組織犯罪条約をこのための重要な手段と考える。

 ・我々は,組織犯罪に対する共同法執行活動を支持し,犯罪網と闘うための権限ある機関間の協力を歓迎する。我々は,特に主要な密輸ルートに対処し特定の形態の金融詐欺を取り締まるために一層の行動を追求することに意見の一致をみた。

 ・我々は,銃器の不法な製造及び密輸と闘うためのリヨン・グループの原則及び行動計画を支持する。我々は,同グループが,国連国際組織犯罪条約の一環として法的拘束力のある国際文書の策定に向け作業することに合意したことを歓迎する。

22.我々は,リヨングループに対し,現在進行中の作業を強化するよう求めると共に,ハイテク犯罪に関する行動計画,資金洗浄に対してとられる措置及び人の密輸に関する共同行動についての進捗を次回サミットに報告するよう我々の閣僚に求める。我々はまた,我々の環境大臣の間で4月5日に意見の一致をみた環境犯罪と闘うための措置を歓迎する。

23.薬物と広く国際及び国内犯罪との間には強い連関が存在する。我々は,来る国連麻薬特総を歓迎する。国連麻薬特総は,薬物問題に関するあらゆる側面に取り組むための包括的戦略を支持するとの国際社会の決意を示すべきである。G8としては,麻薬系薬物と闘うための国際社会におけるパートナーシップ及び責任の共有にコミットしている。このことは,薬物及び原料物質の不法な取引を抑止するための協力の強化,我々諸国において薬物依存を減少させるための政策を含む需要削減のための行動及び麻薬系薬物の栽培を根絶するためのグローバルなアプローチに対する支持を含むべきである。我々は,UNDCP(国連薬物統制計画)の,適切な場合には代替開発プログラムを通じて,麻薬系薬物の生産を根絶しあるいは大幅に削減するためのグローバルなアプローチを歓迎する。

不拡散と輸出管理

24.大量破壊兵器とその運搬システムの拡散は,あらゆる国の安全を脅かす。我々諸国は,拡散を防止するための努力の最前線にあり,我々は,国際的な不拡散体制を支援するために緊密に協力してきている。我々は,この協力を継続しかつ強化することを誓約する。この協力の鍵となる要素として,我々は,不拡散体制における我々の約束を遵守し,輸出管理の効果的な執行を確保するとの我々のコミットメントを再確認する。我々は,大量破壊兵器とその運搬手段のための計画に対してはいかなる種類の支援も拒否する。この目的のため,我々は,適切な場合には,法律,規則及び執行メカニズムの強化を図りかつ促進する。我々は同様に,我々自身の間及び他の諸国と共に,例えば情報交換を含む輸出管理に関する協力を強化する。我々は,我々の専門家が輸出管理の執行の強化に焦点を当てるよう求める。また,我々は,輸出管理における要件について我々の産業・ビジネス界の間の意識向上を図る。

2000年問題

25.コンピュータが2000年への変化を如何に処理するかに起因する2000年(あるいは千年期)問題は,国際社会に対して,特に,国防,運輸,電気通信,金融サービス,エネルギー及び環境各セクターにおいて,甚大な影響をもたらす重要な課題となっており,また,我々は,あるセクターは他のセクターに死活的に依存していることに留意した。我々は,更なる緊急の行動をとり,短期的かつより長期的に混乱の予防に資する情報を,我々自身の間で及び他の諸国と共に共有することに合意した。我々は,この問題に取り組む責任の多くを有するビジネス界及びこれらのセクターにおいて活動している諸機関と緊密に協力する。我々は,この極めて重要な技術的問題の解決及び2000年に向けた準備に資するため,途上国を支援する世界銀行やOECD等の国際機関において協力する。

次回サミット

26.我々は,来年6月18日から20日までケルンにおいて再び会合するとのドイツ連邦共和国首相の招請を受諾した。