データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第13回主要国首脳会議におけるエイズに関する議長声明

[場所] ヴェネチア
[年月日] 1987年6月10日
[出典] 外交青書31号,397−398頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

7ケ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,保健問題に関してこれまでに示された懸念に基づき(ロンドン・サミットにおけるガンに関する議長の口頭声明及びボン・サミットにおける麻薬に関する議長の口頭声明),エイズが世界で潜在的に最も大きな保険問題の一つであることを確認する。エイズがこれ以上広まるのを防ぐため,国際協力及び共同キャンペーンにより国家的努力を強化しかつ一層効果的なものとすることが必要であり,また,とられる措置が人権に関する諸原則に沿ったものとなるよう確保しなければならない。この関連で,首脳は以下に合意する。

ー国際協力は努力のの重複によって改善されるものではない。既存の機関に対して十分な政治的支持を与え,かつ必要な財政的,人的及び管理的資源を提供することにより,これらの機関を強化することを優先すべきである。世界的レベルでエイズと闘うための国際的努力を結集するためには世界保健機構(WHO)が最適の場であり,全ての国はWHOと十分協力し,そのエイズ関連活動の特別プログラムを支援するよう奨励されるべきである。

ーワクチンや治療法がない状況においては,エイズとの闘い及びその予防のための最善の望みは,エイズの深刻さ,エイズウイルスの伝染経路,及び感染又は伝染の回避のため個人がとりうる実際的な手段について一般国民を教育することを基本とする戦略にかかっている。国民教育キャンペーン及び国内政策に関する情報交換のために適切な機会が利用されるべきである。首脳は,エイズに関する国民教育についての閣僚レベルの国際会議をWHOと共催するとの英国政府の提案を歓迎する。

ー予防,治療及び情報交換に関する基礎的及び臨床的研究ための協力が一層促進されるべきである(例えばECのプログラム)。首脳は,7ケ国の研究者(例えば現在拡大されつつあるフランスと米国の研究者による共同プログラム等)及び世界中の研究者によるエイズの治療方法,エイズウイルスの構成要素に関する臨床試験及び有効なワクチンの開発のための共同行動を歓迎し,支持する。首脳は,エイズが提起する倫理的な問題に関する国際委員会の設置に向けたフランス大統領の提案を歓迎する。