データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第12回主要国首脳会議における東京宣言:より良き未来を期して

[場所] 東京
[年月日] 1986年5月5日
[出典] 外交青書30号,458−459頁.
[備考] 外務省仮訳
[全文]

1.我々,欧州とアジアの文明に深い源を持つ主要先進7ヶ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は,我々の東京での会合の機会をとらえ,残りの今世紀のみならず次の世紀をも展望した。我々は,共通の原則と目標を分かち合い,かつ自らの力強さを心に置きつつ,自信と決意を以て未来に臨むものである。

2.これまでのサミットで確認されてきた我々が分ち合う原則と目標は今や実を結びつつある。太平洋を取り巻く諸国は,その豊かで多様な遺産の基盤の上に立って,自由な交流を通じて力強く繁栄しつつある。西欧諸国,就中,欧州共同体諸国は,その協力を新たな水準にまで高めることによって繁栄しつつある。欧州及びアジアの双方の文化によって豊かさを増してきた北米諸国は,自由の中で人間の潜在的能力を実現していくことを堅く決意している。世界中を通じて,民主主義の訴える力は強く,個性的発意,個人の創造性及び社会的正義が進歩の主要な源泉であるとの認識が高まりつつある。我々全ては,これまでにも増して持てる精力を結集し,より安全かつ健全な,また,より文明度が高く繁栄した,自由で平和な世界の実現を追求して行かなければならない。我々は,日本,北米及び

欧州の緊密なパートナーシップが,この目的に向かって意義深い貢献をなすであろうことを確信する。

3.我々は,平和の維持と強化に向けて,またこの努力の一環として,より安定的かつ建設的な東西関係の構築に向けて,我々が共に貢献していくことを再確認する。我々のいずれも,共通の関心を有する分野において,協力する用意がある。現在ある諸々の同盟関係の枠内において,我々のいずれも,他国の安全を脅かすこと無く,自由を守り侵略を抑止しうる強力で信頼性ある防衛力を維持することを決意している。我々は,平和が軍事力のみでは守られ得ないことを承知している。我々のいずれも,ハイレベルでの対話交渉を通じ,東西間の相違に取り組んでいく決意である。その目的のため,我々のいずれも,均衡がとれ,実質的かつ検証可能な軍備水準の削減,信頼を増進させ衝突の危険を減じるための措置,及び紛争の平和的解決を支持する。我々は,ジュネーブにおける作業の進捗を早め

るとの米国とソ連との間の合意を想起し,米国の交渉努力を評価するとともに,ソ連もまた積極的に交渉するよう呼びかける。これらの努力に加え,我々は,世界中を通じて個人の権利がよりよく尊重されることを目指して努力する。

4.我々は,相互依存関係の一層の深まりに特徴づけられた今日の世界においては,開発途上世界の安定と繁栄なくして,また,そのような開発途上世界の安定と繁栄を可能ならしめる我々の強力なくして,我々諸国は永続的安定と繁栄を享受しえないとの確信を表明する。我々は,開発途上国もまた共通の明るい未来の建設に十分な役割を果たしうるよう,飢餓,病疫及び貧困と戦うことを改めて誓う。

5.我々は,健全な環境と精神的,物質的両様の価値において豊かな文化を将来の世代に伝える責務を負っている。我々は,麻薬の濫用を排除するための効果的な国際的行動を追求する決意である。我々は,人間をその才能,信条,文化及び伝統の多様性において尊重する世界を目指して協力する決意を宣言する。平和,自由及び民主主義を基盤としたこのような世界において,社会的主義の理想は実現され,雇用機会は全ての人々に提供され得ることとなる。我々は,科学技術の潜在力を賢明に利用し,強力と交流を通じてその便益を増進しなければならない。我々は,次の世代に,21世紀に相応しい創造性を賦与し,かつ彼らに自由と尊厳の中で生きることの価値を伝えるような教育を与える厳粛な責任を有するものである。