データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 蘆溝橋事件に關する政府聲明(芦溝橋事件に関する政府声明)

[場所] 
[年月日] 1937年8月15日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻、外務省、369-370頁。
[備考] 昭和12年8月15日
[全文]

(昭和十二年八月十五日午前一時十分發表)

帝國夙ニ東亞永遠ノ平和ヲ冀念シ、日支兩国ノ親善提携ニ力ヲ致セルコト久シキニ及ヘリ。然ルニ南京政府ハ排日抗日ヲ以テ國論昻揚ト政權强化ノ具ニ供シ、自國國力ノ過信ト帝國ノ實力輕視ノ風潮ト相俟チ、更ニ赤化勢力ト苟合シテ反日侮日愈々甚シク以テ帝國ニ敵對セントスルノ氣運ヲ釀成セリ。近年幾度カ惹起セル不詳事件何レモ之ニ因由セサルナシ。今次事變ノ発端モ亦此ノ如キ氣勢カ其ノ爆發點ヲ偶々永定河畔ニ選ヒタルニ過キス、通州ニ於ケル神人共ニ許ササル殘虐事件ノ因由亦茲ニ發ス。更ニ中南支ニ於テハ支那側ノ挑戰的行動ニ起因シ帝國臣民ノ生命財產旣ニ危殆ニ瀕シ、我居留民ハ多年營々トシテ建設セル安住ノ地ヲ淚ヲ呑ンテ遂ニ一時撤退スルノ已ムナキニ至レリ。

顧ミレハ事變發生以來屢々聲明シタル如ク、帝國ハ隱忍ニ隱忍ヲ重ネ事件ノ不擴大ヲ方針トシ、努メテ平和的且局地的ニ處理センコトヲ企圖シ、平津地方ニ於ケル支那軍屢次ノ挑戰及不法行爲ニ對シテモ、我カ支那駐屯軍ハ交通線ノ確保及我カ居留民保護ノ爲眞ニ已ムヲ得サル自衞行動ニ出テタルニ過キス。而モ帝國政府ハ夙ニ南京政府ニ對シテ挑戰的言動ノ卽時停止ト現地解決ヲ妨害セサル樣注意ヲ喚起シタルニモ拘ラス、南京政府ハ我カ勸吿ヲ聽カサルノミナラス、却テ益々我方ニ對シ戰備ヲ整ヘ、嚴存ノ軍事協定ヲ破リテ顧ミルコトナク、軍ヲ北上セシメテ我カ支那駐屯軍ヲ脅威シ又漢口上海其他ニ於テハ兵ヲ集メテ愈々挑戰的態度ヲ露骨ニシ、上海ニ於テハ遂ニ我ニ向ツテ砲火ヲ開キ帝國軍艦ニ對シテ爆撃ヲ加フルニ至レリ。

此ノ如ク支那側カ帝國ヲ輕侮シ不法暴虐至ラサルナク全支ニ亙ル我カ居留民ノ生命財產危殆ニ陷ルニ及ンテハ、帝國トシテハ最早隱忍其ノ限度ニ達シ、支那軍ノ暴戾ヲ膺懲シ以テ南京政府ノ反省ヲ促ス爲今ヤ斷乎タル措置ヲトルノ已ムナキニ至レリ。

此ノ如キハ東洋平和ヲ念願シ日支ノ共存共榮ヲ翹望スル帝國トシテ衷心ヨリ遺憾トスル所ナリ。然レトモ帝國ノ庶幾スル所ハ日支ノ提携ニ在リ。之カ爲支那ニ於ケル排外抗日運動ヲ根絕シ今次事變ノ如キ不祥事發生ノ根因ヲ芟徐スルト共ニ日滿支三國間ノ融和提携ノ實ヲ擧ケントスルノ外他意ナシ、固ヨリ毫末モ領土的意圖ヲ有スルモノニアラス。又支那國民ヲシテ抗日ニ踊ラシメツツアル南京政府及國民黨ノ覺醒ヲ促サントスルモ、無辜ノ一般大衆ニ對シテハ何等敵意ヲ有スルモノニアラス且列國權益ノ尊重ニハ最善ノ努力ヲ惜マサルヘキハ言ヲ俟タサル所ナリ。