データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「ロンドン」海軍條約(ロンドン海軍条約)

[場所] 
[年月日] 1930年4月22日
[出典] 日本外交年表竝主要文書下巻,外務省,159-161頁.
[備考] 
[全文]

一九三〇年(昭和五年)四月二二日署名調印

同年一〇月二日批准

同年同月二七日批准書寄託

同年一二月三一日實施

一九三一年(昭和六年)一月一日公布

亞米利加合衆國大統領、佛蘭西共和國大統領、「グレート、ブリテン」「アイルランド」及「グレート、ブリテン」海外領土皇帝印度皇帝陛下、伊太利國皇帝陛下竝ニ日本國皇帝陛下ハ

競爭的軍備ニ常ニ伴フ危險ヲ防止シ且負擔ヲ輕減センコトヲ希望シ竝ニ

「ワシントン」海軍會議ニ依リ開始セラレタル事業ヲ進展セシメ且軍備ノ一般的ノ制限及縮少ノ漸進的實現ヲ容易ナラシメンコトヲ希望シ

海軍軍備ノ制限及縮少ニ關スル條約ヲ締結スルコトニ決シ依テ左ノ如ク其ノ全權委員ヲ任命セリ(全權委員氏名省略)

右各全權委員ハ互ニ其ノ全權委任狀ヲ示シ之カ良好妥當ナルヲ認メタル後左ノ如ク協定セリ

  第一編

第一條 締約國ハ千九百二十二年二月六日「ワシントン」ニ於テ相互ノ間ニ署名セラレ且本條約ニ於テ「ワシントン」條約ト稱セラルル海軍軍備制限ニ關スル條約ノ第二章第三節ニ規定セラルル主力艦代換トン數ノ龍骨据附ノ自國ノ權利ヲ千九百三十一年乃至千九百三十六年ノ期間中行使セサルコトヲ約ス

右規定ハ不慮ノ事變ニ依リ亡失シ又ハ破壞セラレタル艦船ノ代換ニ關スル前記條約第二章第三節第一款(ハ)ニ揭ケラルル規定ノ適用ヲ妨クルコトナシ

尤モ佛蘭西國及伊太利國ハ前記條約ノ規定ニ依リ千九百二十七年及千九百二十九年ニ自國カ起工スルノ權利ヲ與ヘラレタル代換トン數ヲ建造スルコトヲ得

第二條 合衆國、「グレート、ブリテン」及北部「アイルランド」聯合王國竝ニ日本國ハ左ノ主力艦ヲ本條ニ規定セラルル所ニ從ヒ處分スヘシ

 合衆國

  「フロリダ」「ユター」「アーカンソー」又ハ「ワイオーミング」

 聯合王國

  「ベンボー」「アイアン、デューク」「マーバラ」「タイガー」「エンペラー、オブ、インディア」

 日本國

  比叡

  (以下略)

第四條 口徑六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超ユル砲ヲ搭載スル基準排水量一萬トン(一萬百六十メートル式トン)又ハ之ニ逹セサル航空母艦ハ何レノ締約國モ之ヲ取得シ又ハ之ヲ建造シ若ハ建造セシムルコトヲ得ス

一切ノ締約國ニ付本條約ノ實施セラルル時ヨリ口徑六・一インチ(百五十五ミリメートル)ヲ超ユル砲ヲ搭載スル規準排水量一萬トン(一萬百六十メートル式トン)又ハ之ニ逹セサル航空母艦ハ何レノ締約國ノ法域內ニ於テモ建造セラレサルヘシ

(中略)

第二十三條 左ノ例外ヲ留保シ本條約ハ千九百三十六年十二月三十一日至ル迄引續キ效力ヲ有スベシ

 (一) 第四編ハ無期限ニ引續キ效力ヲ有スベシ

 (二) 第三條、第四條及第五條ノ規定竝ニ航空母艦ニ關スル限リ第十一條及第二編第二附屬書ノ規定ハ「ワシントン」條約ト同一ノ期間內引續キ效力ヲ有スベシ

締約國ハ其ノ全部ガ締約國ト爲ルベキ一層一般的ナル海軍軍備制限協定ニ依リ別段ノ取極ヲ爲サザル限リ本條約ニ代リ且本條約ノ目的ヲ遂行スル新條約ヲ作成スル爲千九百三十五年ニ會議ヲ開催スヘシ但シ本條約ノ何レノ規定モ右會議ニ於ケル何レノ締約國ノ態度ヲモ妨グルコトナカルベキモノトス