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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 南滿洲の治安維持に關する內田外相答辯(南満州の治安維持に関する内田外相答弁)

[場所] 
[年月日] 1912年3月7日
[出典] 日本外交年表竝主要文書上巻,外務省,368-369頁.
[備考] 
[全文]

 明治四五年三月七日衆議院ニ於ケル內田外相答辯

(前略)第四問「南滿洲ノ治安維持方策及將來ノ方針如何」本問題ハ甚タ重要ナ問題テアリマシテ、南滿洲ニ於テ帝國カ特殊ノ利權ヲ有シテ居リマスコトハ諸君ノ審ニ御承知ノ事柄ト存シマス、關東租借地ハ申スニ及ハス之ニ四五倍スル程ノ中立地帶ニ對スル関係及七百哩ノ鐵道線路及附屬地、或ハ鴨綠江ニ於ケル木材事業煙臺及撫順ノ炭坑、其他鐵道附屬地ニ沿ヒマシテ我人民カ起シマシタトコロノ各種ノ事業、是等ノ利害關係ハ到底支那ノ本土ニ於テ各國トノ関係ニ於テ見ル能ハサル程ノモノテアリマス、誠ニ特殊ナ利益テアル、加之南滿洲ハ我領土タル朝鮮ト東南ノ境ニ於テ鴨綠江及豆滿江ヲ境ニシテ接近シテ居リマス、故ニ南滿洲ニ於ケル安寧秩序ノ紊亂ハ直ニ我特殊ノ利權ニ影響ヲ及ホスノミナラス、朝鮮ノ治安ニ直ニ影響ヲ及ホス次第テアリマス、ソレ故ニ南滿洲ニ對シマシテハ此事件ノ初メヨリ最モ注意ヲ拂ヒマシテ、先方ニ於ケル我軍部ノ官憲ニ對シテ一定ノ方針ヲ定メテヤリマシタ、卽チ我租借地若クハ鐵道附屬地等ヲ策源地ニシテ何等治安及秩序ヲ紊亂スルヤウナ行動ヲ取ルモノニ對シテハ、嚴重ニ之ヲ取締ル、其我特殊ノ利權ニ關係無キ限リハ是ハ彼等ノ自由ニ任セル、又我臣民ノ生命財產ニ危害ヲ及ホスヤウナコトカアルトキニハ、是非容赦ナク取締ヲイタス、此ノ如キ方針ヲ定メマシテ、ソレヲ今日マテ實行シテ居ル所以テアリマス、故ニ我租借地ナリ、或ハ附屬地帶ニ於テ未タ此治安ヲ妨害セサル程度ニアリマス間ハ、敢テ干涉ヲシマセヌ、苟モ之ヲ紊亂セシムル虞カアルトキニハ、ソレソレノ取締ヲ致シタ次第テアリマス、唯今柴君ノ御話ニモアリマシタ中立地帶ノコトニ関シマシテモ、北伐軍カ中立地帶ニ上陸スルト云フコトヲ聞キマシタニ依リ、再三北伐軍ノ首領ニ對シテ其上陸ノ不可ナルコトヲ警吿シタ、其警吿ニモ拘ハラス彼等ハ中立地帶ニ上陸致シマシテ、遂ニ官軍ト衝突ヲ致シマシタニ依リ、我ハ出兵ヲ致シマシテ−-中立地帶ニ出兵ヲ致シマシテ、雙方ニ向ツテ中立地帶ヨリ退去スルコトヲ命シマシタ、幸ニ彼等ハ兩方トモニ快ク之ヲ承諾シマシテ終ニ中立地帶ヲ退イタヤウナ次第テアリマス、其他鐵道沿線ニ於テ官革ノ間ニ衝突モアツタコトカ、我國民ノ生命財產ニ危害ヲ及ホス虞カアツタモノニ對シテハ直ニ我兵ヲ出シテ雙方ヲ引別レシメタコトモ度々アリマスソレテ南滿洲ノ此治安維持ニ對シマスル處置ハ唯今申シタ通リノコトテアリマシテ今後ト雖モ同シ方針ヲ執ツテ參ル積リテアリマス