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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約に附属する千九百九十六年五月三日に改正された地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(千九百九十六年五月三日に改正された議定書II)(特定通常兵器使用禁止制限条約の改正議定書II)

[場所] ジュネーヴ
[年月日] 1996年5月3日採択,1998年12月3日効力発生,1997年5月16日国会承認
[出典] 外務省条約局,主要条約集(平成10年度)下巻,151−172頁.
[備考] 
[全文]

過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約に附属する千九百九十六年五月三日に改正された地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(千九百九十六年五月三日に改正された議定書II)

平成八年五月三日 ジュネーヴで採択
平成十年十二月三日 効力発生
平成九年五月十六日 国会承認
平成九年六月十日 通告の閣議決定
平成九年六月十日 通告書寄託
平成十年十二月二日 公布(条約第十七号)
平成十年十二月二日 告示(外務省告示第五四〇号)
平成十年十二月三日 我が国についての効力発生

第一条 改正された議定書

過度に傷害を与え又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる通常兵器の使用の禁止又は制限に関する条約(以下「条約」という。)に附属する地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書II)をここに改正する。改正された議定書は、次のとおりとする。

千九百九十六年五月三日に改正された地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止又は制限に関する議定書(千九百九十六年五月三日に改正された議定書II)

第一条 適用範囲

この議定書は、この議定書に定義する地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の陸上における使用(海岸上陸、水路横断又は渡河を阻止するための地雷の敷設を含む。)に関するものであり、海又は内水航路における対艦船用の機雷の使用については、適用しない。

この議定書は、条約第一条に規定する事態に加え、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約のそれぞれの第三条に共通して規定する事態について適用する。この議定書は暴動、独立の又は散発的な暴力行為その他これらに類する性質の行為等国内における騒乱及び緊張の事態については、武力紛争に当たらないものとして適用しない。

締結国の一の領域内に生ずる国際的性質を有しない武力紛争の場合には、各紛争当事者は、この議定書に規定する禁止及び制限を適用しなければならない。

この議定書のいかなる規定も、国の主権又は、あらゆる正当な手段によつて、国の法律及び秩序を維持し若しくは回復し若しくは国の統一を維持し及び領土を保全するための政府の責任に影響を及ぼすことを目的として援用してはならない。

この議定書のいかなる規定も、武力紛争が生じている締結国の領域内における当該武力紛争又は武力紛争が生じている締結国の国内問題若しくは対外的な問題に直接又は間接に介入することを、その介入の理由のいかんを問わず、正当化するために援用してはならない。

この議定書を受諾した締結国でない紛争当事者に対するこの議定書の規定の適用は当該紛争当事者の法的地位又は紛争中の領域の法的地位を明示的又は黙示的に変更するものではない。

第二条 定義 この議定書の適用上、

「地雷」とは、土地若しくは他の物の表面に又は土地若しくは他の物の下方若しくは周辺に敷設され、人又は車両の存在、接近又は接触によつて爆発するように設計された弾薬類をいう。

「遠隔散布地雷」とは、直接敷設されず、大砲、ミサイル、ロケット、迫撃砲若しくはこれらと類似の手段で投射される地雷又は航空機から投下される地雷をいう。ただし陸上における設備から五百メートル未満の範囲内に投射される地雷については、第五条及びこの議定書の他の関連する規定に従つて使用される場合は、遠隔散布地雷とみなさない。

「対人地雷」とは、人の存在、接近又は接触によつて爆発することを第一義的な目的として設計された地雷であつて、一人若しくは二人以上の者の機能を著しく害し又はこれらの者を殺傷するものをいう。

「ブービートラップ」とは、外見上無害な物を何人かが動かし若しくはこれに接近し又は一見安全と思われる行為を行つたとき突然に機能する装置又は物質で、殺傷を目的として設計され、組み立てられ又は用いられるものをいう。

「他の類似の装置」とは、殺傷し又は損害を与えることを目的として設計され、取り付けられた弾薬類及び装置(現場において作製された爆発装置を含む。)であつて、手動操作若しくは遠隔操作により又は一定時間の経過後自動的に作動するものをいう。

「軍事目標」とは、物については、その性質、位置、用途又は使用が軍事活動に効果的に貢献するもので、その全面的又は部分的な破壊、奪取又は無効化がその時点における状況の下において明確な軍事的利益をもたらすものをいう。

「民用物」とは、6に定義する軍事目標以外のすべてのものをいう。

「地雷原」とは、地雷が敷設された特定の地域をいい、「地雷敷設地域」とは、地雷の存在により危険な地域をいう。「疑似地雷原」とは、地雷原を模した地雷のない地域をいう。「地雷原」には、疑似地雷原が含まれる。

「記録」とは、公式の記録に登録することを目的として、地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の位置の確認を容易にするすべての入手可能な情報を取得するための物理的、行政的及び技術的作業を行うことをいう。

10 「自己破壊のための装置」とは、弾薬類に内蔵され又は外部から取り付けられた自動的に機能する装置であつて、当該弾薬類の破壊を確保するためのものをいう。

11 「自己無力化のための装置」とは、弾薬類に内蔵された自動的に機能する装置であつて、当該弾薬類の機能を失わせることをいう。

12 「自己不活性化」とは、弾薬類が機能するために不可欠な構成要素(例えば、電池)を不可逆的に消耗させる方法によつて、当該弾薬類の機能を自動的に失わせることをいう。

13 「遠隔操作」とは、遠くからの指令によつて制御することをいう。

14 「処理防止のための装置」とは、地雷の一部を成し、地雷を保護することを目的とする地雷に連接され若しくは取り付けられ又は地雷の下に設置されている装置であつて地雷を処理しようとすると作動するものをいう。

15 「移譲」とは、地雷が領域へ又は領域から物理的に移動し、かつ、当該地雷にたいする権原及び管理が移転することをいう。ただし、地雷の敷設された領域の移転に伴つて生ずるものを除く。

第三条 地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の使用に関する一般的制限

この条の規定は、次の兵器に適用する。

(a) 地雷

(b) ブービートラップ

(c) 他の類似の装置

いずれの締結国又は紛争当事者も、自らが使用したすべての地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置についてこの議定書の規定に従つて責任を有するものとし第十条の定めるところによつて、それらを除去し、破壊し又は維持することを約束する。

過度の傷害若しくは無用の苦痛を与えるように設計された又はその性質上過度の傷害若しくは無用の苦痛を与える地雷、ブービートラップ又は他の類似の装置の使用は、いかなる状況下においても、禁止する。

この条の規定の適用を受ける兵器については、技術的事項に関する附属書においてそれぞれの特定された種類について定める基準及び制限に厳格に適合させなければならない。

一般に入手可能な地雷探知機の存在が、その磁気の影響その他の接触によらない影響により、探知活動における通常の使用中に弾薬類を起爆させるよう特に設計された装置を用いる地雷、ブービートラップ又は他の類似の装置の使用は、禁止する。

自己不可性地雷については、地雷としての機能が失われた後においても機能するように設計された処理防止のための装置を備えたものの使用は、禁止する。

この条の規定の適用をうける兵器については、いかなる状況の下においても、文民たる住民全体若しくは個々の文民又は民用物に対して攻撃若しくは防御のため又は復仇{きゆうとルビ}の手段として使用することを禁止する。

この条の規定の適用を受ける兵器については、無差別に使用することを禁止する。
「無差別に使用する」とは、当該兵器に係る次の設置をいう。

(a) 軍事目標でないものへの設置又は軍事目標を対象としない設置。礼拝所、家屋その他の住居、学校等通常民生の目的のために供される物が、軍事活動に効果的に貢献するものとして使用されているか否かについて疑義がある場合には、そのようなものとして使用されてないと推定される。

(b) 特定の軍事目標のみを対象とすることのできない投射の方法及び手段による設置

(c) 予期される具体的かつ直接的な軍事的利益との比較において、巻き添えによる文民の死亡、文民の傷害、民用物の損傷又はこれらの複合した事態を過度に引き起こすことが予測される場合における設置

都市、町村その他の文民又は民用物の集中している地域に位置する複数の軍事目標で相互に明確に分離された別個のものについては、単一の軍事目標とみなしてはならない。

10 この条の規定の適用を受ける兵器の及ぼす効果から文民を保護するため、すべての実行可能な予防措置をとる。「実行可能な予防措置」とは、人道上及び軍事上の考慮を含むその時点におけるすべての事情を勘案して実施し得る又は実際に可能と認められる予防措置をいう。これらの事情には、少なくとも次のものが含まれる。

(a) 地雷原の存在する期間を通じて地雷が地域の文民たる住民に対して短期的及び長期的に及ぼす効果

(b) 文民を保護するための可能な措置(例えば、囲い、標識、警告及び監視)

(c) 代替措置の利用可能性及び実行可能性

(d) 地雷原の短期的及び長期的な軍事上の必要性

11 文民たる住民に影響を及ぼす地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の設置にについては、状況の許す限り、効果的な事前の警告を与える。

第四条 対人地雷の使用に関する制限 技術的事項に関する附属書2に定める探知不可能な対人地雷の使用は、禁止する。

第五条 遠隔散布地雷ではない対人地雷の使用に関する制限

この条の規定は、遠隔散布地雷ではない対人地雷に適用する。

この条の規定が適用される兵器であつて技術的事項に関する附属書の自己破壊及び自己不活性化に関する規定に適合しないものの使用は、禁止する。ただし、次の(a)及び(b)の条件が満たされる場合を除く。

(a) 当該兵器が、その地域から文民を効果的に排除することを確保するため、軍事上の要員によつて監視されかつ囲いその他の方法によつて保護されている地域であつて外縁が明示されたものの中に敷設されていること。ただし、その外縁の表示は、明瞭で耐久性のあるものであり、かつ、当該地域に立ち入ろうとする者にとつて少なくとも識別し得るものでなければならない。

(b) 当該兵器が、(a)の地域が放棄される前に除去されること。ただし、当該地域が、この条の規定によつて必要とされる保護措置を維持すること及びこれらの兵器を後に除去することについての責任を受け入れる他の国の軍隊に引き渡される場合は、この限りではない。

紛争当事者は、敵の軍事活動の結果、当該地域の支配権が強制的に失われたことによつて、2の(a)及び(b)の規定を遵守することが実行可能でなくなつた場合(敵の直接の軍事活動によつて遵守することが不可能となつた場合を含む。)に限り、当該規定を遵守する義務を免除される。当該紛争当事者は、当該地域の支配権を回復した場合には、当該規定を遵守する義務を再び負う。

紛争当事者の軍隊が、この条の規定の適用を受ける兵器が敷設された地域の支配権を得た場合には、当該軍隊は、当該兵器が除去されるまでの間、実行可能な最大限度までこの条の規定によつて必要とされる保護措置を維持するものとし、必要な場合には、当該保護措置を新たにとる。

外縁が明示された地或の外縁を設置するために使用された装置、設備又は資材が許可なく除去され、破損され、破壊され又は隠蔽{ぺいとルビ}されることを防止するため、すべての実行可能な措置がとられなければならない。

この条の規定の適用を受ける兵器であつて、破片を九十度未満の水平角にまき、かつ、土地の表面又はその上方に設置されるものについては、次の(a)及び(b)の条件が満たされる場合には、2(a)に規定する措置をとることなく最長七十二時間使用することができる。

(a) 当該兵器を設置した部隊に極めて近接して位置していること。

(b) 文民を効果的に排除することを確保するため、軍事上の要員によつて監視されている地域であること。

第六条 遠隔散布地雷の使用に関する制限

遠隔散布地雷については、技術的事項に関する附属書1(b)の規定に従つて記録されるものを除くほか、その使用を禁止する。

技術的事項に関する附属書の自己破壊及び自己不活性化に関する規定に適合しない遠隔散布地雷である対人地雷の使用は、禁止する。

対人地雷ではない遠隔散布地雷の使用については、当該遠隔散布地雷が、実行可能な限度において、効果的な自己破壊のための装置又は自己無力化のための装置及び地雷がその敷設の所期の軍事目的に役立たなくなつた時に地雷として機能しなくなるように設計された予備の自己不活性化のための機能を備えているものでない限り、禁止する。

文民たる住民に影響を及ぼす遠隔散布地雷の投射又は投下については、状況の許す限り、効果的な事前の警告を与える。

第七条 ブービートラップ及び他の類似の装置の使用の禁止

武力紛争における背信に関する国際法の規則の適用を妨げることなく、方法のいかんを問わず、次のものに取り付け又は次のものを利用するブービートラップ及び他の類似の装置の使用は、いかなる状況の下においても、禁止する。

(a) 国際的に認められた保護標章、保護標識又は保護信号

(b) 病者、傷者又は死者

(c) 埋葬地、火葬地又は墓

(d) 医療施設、医療機器、医療用品又は医療用輸送手段

(e) 児童のがん具又は児童の食事、健康、衛生、被服若しくは教育に役立つように考案された製品若しくは持運び可能な物

(f) 食料又は飲料

(g) 厨房用品又は厨房器具(軍事施設、軍隊所在地又は軍の補給所内にあるものを除く){厨にちゆうとルビ}

(h) 宗教的性質を有することの明らかな物

(i) 国民の文化的又は精神的遺産を構成する歴史的建造物、芸術品又は礼拝所

(j) 動物又はその死体

外見上無害で持運び可能な物の形態をしたブービートラップ又は他の類似の装置で爆発性の物質を含むよう特別に設計され、組み立てられたものの使用は、禁止する。

この条の規定の適用を受ける兵器については、次に掲げる場合を除くほか、地上兵力による戦闘が発生していない又は地上兵力による戦闘が急迫していると認められない都市、町村その他の文民の集中している地域において使用することを禁止する。ただし、第三条の規定の適用を妨げない。

(a) 当該兵器が、軍事目標に設置され又はこれに極めて近接して設置される場合

(b) 当該兵器の及ぼす効果から文民を保護するための措置、例えば、警告のための歩哨{しようとルビ}の配置、警告の発出又は囲いの設置の措置がとられる場合

第八条 移譲

締結国は、この議定書の目的を推進するため、次のことを約束する。

(a) この議定書によつて使用が禁止されているいかなる地雷の移譲も行わないこと。

(b) いかなる地雷の移譲も、国又は受領することを認められている国の機関に対するものを除くほか、行わないこと。

(c) この議定書によつて使用が制限されているいかなる地雷の移譲も抑制すること。
特に、締結国は、この議定書に拘束されない国に対するいかなる対人地雷の移譲も、受領する国がこの議定書を適用することに合意しない限り、行わないこと。

(d) この条の規定に従つて行われるいかなる移譲も、移譲する国及び受領する国によりこの議定書の関連する規定及び適用のある国際人道法の規範が完全に遵守されることを確保して行うこと。

技術的事項に関する附属書の定めるところにより、一定の地雷の使用に関する特定の規定を遵守することを延期する旨を締結国が宣言した場合であつても、1(a)の規定は、当該地雷に適用する。

すべての締結国は、この議定書が効力を生ずるまでの間、1(a)の規定と両立しないいかなる行為も慎むものとする。

第九条 地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置に関する情報の記録及び利用

地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置に関するすべての情報については、技術的事項に関する附属書の規定に従つて記録する。

1に規定するすべての記録については、紛争当事者が保持するものとし、当該紛争当事者は、現実の敵対行為の停止の後遅滞なく、その支配下にある地域において地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の及ぼす効果から文民を保護するため、すべての必要かつ適切な措置(当該情報を利用することを含む。)をとる。
当該紛争当事者は、同時に、その支配下になくなつた地域に自らが設置した地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置に関し自己の保有するすべての情報を、他の紛争当事者及び国際連合事務総長に対して利用可能にする。ただし、紛争当事者の兵力が敵対する紛争当事者の領域内に存在する場合には、いずれの紛争当事者も、いずれかの紛争当事者が他の紛争当事者の領域内に存在する間は、相互主義に従うことを条件として、安全保障上の利益のために必要な限度において国際連合事務総長及び他の紛争当事者に対する当該情報の提供を行わないことができる。その提供を行わない場合には、当該情報については、安全保障上の利益が許す限りできるだけ速やかに開示する。紛争当事者は、可能な場合にはいつでも、相互の合意により、できる限り早期に各紛争当事者の安全保障上の利益に合致するような方法によつて当該情報を公開するよう努めるものとする。

この条の規定は、次条及び第十二条の規定の適用を妨げるものではない。

第十条 地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の除去並びに国際協力

すべての地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置については、現実の敵対行為の停止の後遅滞なく、第三条及び第五条2の規定に従つて、除去し、破壊し又は維持する。

締結国及び紛争当事者は、その支配下にある地域にある地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置に関し、1に規定する責任を負う。

紛争当事者は、地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置を自らが設置した地域が支配下になくなつた場合には、当該地域を支配する2に定める紛争当事者に対し、その紛争当事者の容認する範囲内で、1に規定する責任を果たすために必要な技術的及び物的援助を提供する。

紛争当事者は、必要な場合にはいつでも、技術的及び物的援助の提供(適当な状況の下においては、1に規定する責任を果たすために必要な共同作業を行うことを含む。)に関し、紛争当事者間の合意の達成並びに適当な場合には他の国及び国際機関との合意の達成に努める。

第十一条 技術に関する協力及び援助

締結国は、この議定書の実施及び地雷の除去の方法に関連する装置、資材並びに科学的な及び技術に関する情報を可能な最大限度まで交換することを容易にすることを約束するものとし、また、その交換に参加する権利を有する。締結国は、特に、地雷の除去のための装置及び関連する技術に関する情報の人道的目的のための提供に関して不当な制限を課してはならない。

締結国は、国際連合及びその関連機関に設置される地雷の除去に関するデータベースに対し情報(特に、地雷の除去のための各種の方法及び技術に関するもの並びに地雷の除去に関する専門家、専門的な機関又は国内の連絡先の名簿)を提供することを約束する。

締結国は、可能な場合には、国際連合及びその関連機関若しくは他の国際機関を通じ若しくは二国間で地雷の除去のための援助を提供し、又は「地雷の除去を援助するための任意の国際連合信託基金」に拠出する。

援助を求める締結国の要請については、当該要請を裏付ける関連する情報を付して国際連合その他適当な機関又は他の国に対して提出することができる。当該要請については、国際連合事務総長に対して提出することができるものとし、同事務総長は、当該要請をすべての締結国及び関係国際機関に送付する。

国際連合に対して要請が行われた場合には、国際連合事務総長は、同事務総長の利用可能な資源の範囲内で、状況を評価するための適当な措置をとり、及び地雷の除去又はこの議定書の実施に関する適当な援助の提供について、要請した締結国と協力して決定することができる。同事務総長は、また、その評価並びに必要な援助の種類及び範囲について締結国に報告することができる。

締結国は、憲法その他法令の範囲内で、この議定書に規定する禁止及び制限の実施を容易にするために、協力し及び技術を移転することを約束する。

締結国は、技術的事項に関する附属書による延期の機関を短縮するため、兵器に関する技術以外の特定の関連する技術に関する技術的援助であつて必要かつ実現可能なものについて、適当な場合には、他の締結国に求め及び他の締結国より受領する権利を有する。

第十二条 地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の及ぼす効果からの保護

適用

(a) この条の規定は、2(a)(i)に規定する軍隊及び使節団を除くほか、関係地域において任務を遂行している使節団であつて、当該任務がその領域内において遂行されている締結国の同意を得ているものについてのみ適用する。

(b) 締結国でない紛争当事者に対するこの条の規定の適用は、当該紛争当事者の法的地位又は紛争中の領域の法的地位を明示的又は黙示的に変更するものでない。

(c) この条の規定は、現存の国際人道法、適用のある他の国際文書又は国際連合安全保障理事会の決定であつて、この条の規定に従つて任務を遂行している要員に対してより高い水準の保護を与えるものを害するものではない。

平和維持のための軍隊及び使節団並びに他の特定の軍隊及び使節団

(a) この2の規定は、次の軍隊又は使節団に適用する。

(i) 国際連合憲章に従い関係地域において平和維持、監視その他これらに類する任務を遂行している国際連合の軍隊又は使節団

(ii) 国際連合憲章第八章の規定によつて設けられ、紛争地域において任務を遂行している使節団

(b) 締結国又は紛争当事者は、この2の規定が適用される軍隊又は使節団の長が要請する場合には、次のことを行う。

(i) 自己の支配下にある関係地域における地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の及ぼす効果から当該軍隊又は使節団を保護するために、可能な限り、必要な措置をとること。

(ii) 要員を効果的に保護するために必要な場合には、可能な限り、関係地域にあるすべての地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置を除去し又は無害なものにすること。

(iii) 当該軍隊又は使節団の長に対し、当該軍隊又は使節団が任務を遂行している関係地域にあるすべての判明している地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置について、その位置を通報し並びに、実行可能な限り、これらの地雷原、地雷敷設地域並びに地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置に関し自己の保有するすべての情報を利用可能にすること。

国際連合及びその関連機関の人道的使節団及び事実調査使節団

(a) この3の規定は、国際連合及びその関連機関の人道的使節団又は事実調査使節団について適用する。

(b) 締結国又は紛争当事者は、この3の規定が適用される使節団の長が要請する場合には、次のことを行う。

(i) 当該使節団の要員に対して、2(b)(i)に規定する保護のための措置をとること。

(ii) 自己の支配下にある場所への通行又は当該場所の通過が当該使節団の任務の遂行のために必要である場合には、その要員が当該場所へ安全に通行することができるよう又は当該場所を安全に通過することができるようにするため、次のいずれかのことを行うこと。

(aa) 情報が入手可能なときは、進行中の敵対行為によつて妨げられない限り、当該使節団の長に対し当該場所への安全な経路を通報すること。

(bb) 安全な経路を明らかにする情報が(aa)の規定に従つて提供されない場合には、必要かつ実行可能である限り、地雷原を通過する通路を開設すること。

赤十字国際委員会の使節団

(a) この4の規定は、千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約及び、適用がある場合には、同諸条約の追加議定書に規定する受入国の同意を得て任務を遂行している赤十字国際委員会の使節団に適用する。

(b) 締結国又は紛争当事者は、この4の規定が適用される使節団の長が要請する場合には、次のことを行う。

(i) 当該使節団の要員に対して、2(b)(i)に規定する保護のための措置をとること。

(ii) 3(b)(ii)に規定する措置をとること。

他の人道的使節団及び調査使節団

(a) この5の規定は、2から4までの規定が適用される場合を除くほか、紛争地域において又は紛争の犠牲者を援助するため任務を遂行している次の使節団に適用する。

(i) 各国の赤十字社若しくは赤新月社又はそれらの機関の国際連盟の人道的使節団

(ii) 公平な人道的機関の使節団(地雷の除去のための公平な人道的使節団を含む。)

(iii) 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約及び、適用がある場合には、同諸条約の追加議定書の規定によつて設置された調査使節団

(b) 締結国又は紛争当事者は、この5の規定が適用される使節団の長が要請する場合には、実行可能な限り、次のことを行う。

(i) 当該使節団の要員に対して、2(b)(i)に規定する保護のための措置をとること。

(ii) 3(b)(ii)に規定する措置をとること。

秘密の取扱い

この条の規定により秘密のものとして提供されたすべての情報については、当該情報を受領した者は、厳格に秘密のものとして取り扱い、また、当該情報を提供した者の明示の許可なしに関係する軍隊又は使節団以外の者に開示してはならない。

法令の尊重

この条に規定する軍隊及び使節団に参加する要員は、当該要員が享受することのできる特権及び免除が害されず又は当該要員の任務が妨げられない限り次のことを行う。

(a) 受入国の法令を尊重すること。

(b) 任務の公平かつ国際的な性質と両立しないいかなる行為又は活動も慎むこと。

第十三条 締結国間の協議

締結国は、この議定書の運用に関連するすべての問題に関して、相互に協議し及び協力することを約束する。この目的のために、締結国会議を毎年開催する。

年次締結国会議への参加については、合意された当該会議の手続規則によつて決定する。

締結国会議の活動には、次に掲げる事項に関するものが含まれる。

(a) この議定書の運用及び状況に関する検討

(b) 4に規定する締結国の報告から生ずる問題に関する検討

(c) 検討のための会議の準備

(d) 地雷の及ぼす無差別な効果から文民を保護するための技術の開発に関する検討

締結国は、次に掲げる事項の一部又は全部に関する年次報告を寄託者に提出するものとし、寄託者は、締結国会議の前にすべての締結国に対して当該報告を送付する。

(a) 自国の軍隊及び文民に対するこの議定書に関する情報の周知

(b) 地雷の除去及び復旧計画

(c) この議定書の技術上の要件を満たすためにとられた措置及び当該措置に関連する他の情報

(d) この議定書に関連する法令

(e) 技術に関する情報の国際的な交換、地雷の除去に関する国際協力並びに技術的な協力及び援助に関してとられた措置

(f) その他の関連する事項

締結国会議の費用は、適切に調整された国際連合の分担率に従い、締結国及び締結国会議の活動に参加する締結国でない国が負担する。

第十四条 遵守

締結国は、その管轄若しくは管理の下にある者による又はその管轄若しくは管理の下にある領域におけるこの議定書の違反を防止し及び抑止するため、立法その他の措置を含むあらゆる適当な措置をとる。

1に規定する措置には、武力紛争に関連し、かつ、この議定書の規定に違反して故意に文民を殺害し又は文民に重大な傷害を加えた者に対して刑罰を科することを確保するための適当な措置及びそのような者を司法手続きに付すための適当な措置が含まれる。

締結国は、その軍隊が適切な軍事上の命令を発し及び運用手続を整備するよう義務付けるとともに、軍隊の要員がこの議定書を遵守するためにその任務及び責任に応じた訓練を受けるよう義務付けるものとする。

締結国は、この議定書の解釈及び適用に関して生ずるあらゆる問題を解決するため、二国間で又は国際連合事務総長若しくは他の適当な国際的手続を通じて相互に協議し及び協力することを約束する。

技術的事項に関する附属書

記録

(a) 遠隔散布地雷以外の地雷、地雷原、地雷敷設地域並びにブービートラップ及び他の類似の装置の位置に関する記録については、次の規定に従つて行う。

(i) 地雷原、地雷敷設地域並びにブービートラップ及び他の類似の装置の設置された地域の位置については、少なくとも2の照合点を原点とする座標を用い、当該2の照合点との関係からこれらの兵器の存在する地域の範囲を推定することによつて正確に特定する。

(ii) 地雷原、地雷敷設地域並びにブービートラップ及び他の類似の装置の位置を照合点との関係において示す地図、図表又は他の記録を作成する。これらの記録においては、外縁及び範囲も示すものとする。

(iii) 地雷、ブービートラップ及び他の類似の装置の探知及び除去のため、地図、図表又は他の記録には、型式、番号、設置方法、信管の型式及び寿命、設置の日時並びに、処理防止のための措置がこれらの兵器に備え付けられている場合には、当該装置に関する完全な情報並びに設置されたすべてのこれらの兵器に関する他の関連する情報を含める。地雷原の記録は、地雷の列の位置を示すことで足りる型式地雷原の場合を除くほか、実行可能な限り、すべての地雷の正確な位置を示すものでなければならない。設置されたブービートラップについては、その正確な位置及び機能の仕組みについて個別に記録する。

(b) 遠隔散布地雷の推定される位置及びその存在が推定される地域については、複数の照合点(通常は、角の点として用いられる。)を原点とする座標によつて特定し、確認し及び、実行可能な場合には、最も早い機会に地面に表示する。敷設された地雷の総数及び型式、敷設の日時並びに自己破壊のための装置が作動する時期についても記録する。

(c) 記録の写しは、その安全を可能な限り保証するのに十分な上級の指揮機関において保管する。

(d) この議定書の効力発生の後生産される地雷の使用については、次に掲げる情報が英語又はそれぞれの国の言語によつて当該地雷に表示されてない限り、禁止する。

(i) 原産国名

(ii) 生産年月

(iii) 一連番号又はロット番号
その表示は、可能な限り、視認及び判読が可能であり、かつ、耐久性及び環境の影響に対する耐性のあるものとすべきである。

探知可能性に関する仕様

(a) 千九百九十七年一月一日以後に生産される対人地雷は、一般に入手可能である地雷探知のための技術的な装置によつて探知することができ、かつ、重量が八グラム以上の一の鉄の塊からの反応信号と同等の反応信号を発する物質又は装置を内蔵しているものでなければならない。

(b) 千九百九十七年一月一日前に生産された対人地雷は、一般に入手可能である地雷探知のための技術的な装置によつて探知することができ、かつ、重量が八グラム以上の一の鉄の塊からの反応信号と同等の反応信号を発する物質若しくは装置を内蔵しているものであるか、又は当該物質若しくは装置が容易に取り外すことのできない方法で当該地雷の敷設前に取り付けられたものでなければならない。

(c) 締結国が(b)の規定を直ちに遵守することができないと決定する場合には、当該締結国は、この議定書に拘束されることに同意する旨を通告するときに、この議定書の効力発生の後九年を超えない期間、(b)の規定を遵守することを延期する旨の宣言をすることができる。当該締結国は、当該期間において、(b)の規定に適合しない対人地雷の使用を実行可能な限り最小限度のものとする。

自己破壊及び自己不活性化に関する仕様

(a) すべての遠隔散布地雷である対人地雷は、安全装置が解除された状態にある地雷のうち敷設後三十日以内に自己破壊しないものが十パーセントを超えないように設計され、組み立てられたものでなければならない。また、すべての遠隔散布地雷である対人地雷は、自己破壊のための装置との組合せにより、安全装置が解除された状態にある地雷のうち敷設後百二十日目の日に地雷として機能するものが千分の一を超えないように設計され、組み立てられた予備の自己不活性化のための機能を有しているものでなければならない。

(b) 第五条に規定する明示された地域以外の地域で使用されるすべての遠隔散布地雷ではない対人地雷は、(a)に規定する自己破壊及び自己不活性化のための要件に適合するものでなければならない。

(c) この議定書の効力発生前に生産された地雷に関し、締結国が(a)又は(b)の規定を直ちに遵守することができないと決定する場合には、当該締結国は、この議定書に拘束されることに同意する旨を通告するときに、この議定書の効力発生の後九年を超えない期間、(a)又は(b)の規定を遵守することを延期する旨の宣言をすることができる。当該締結国は、当該期間において、次のことを行う

(i) (a)又は(b)の規定に適合しない対人地雷の使用を実行可能な限り最小限度のものとすること。

(ii) 遠隔散布地雷である対人地雷については自己破壊又は自己不活性化のための要件に適合するようにし、その他の対人地雷については少なくとも自己不活性化のための要件に適合するようにすること。

地雷原及び地雷敷設地域に関する国際的標識 地雷原及び地雷敷設地域を明示する場合には、文民たる住民が視認しかつ識別することができることを確保するため、付表に掲げる見本と同様の標識で次の要件に適合するものを使用する。

(a) 大きさ及び形状 三角形又は正方形とし、三角形については一辺の長さが二十八センチメートル(十一インチ)でその他の二辺長さが二十センチメートル(七・九インチ)であるものより小さくないものとすること、また、正方形については一辺の長さが十五センチメートル(六インチ)であるものより小さくないものとすること。

(b) 色 赤色又はオレンジ色(ただし、縁取りは、光を反射する黄色とする。)

(c) 表象 付表に掲げる表象又はそれに代わる表象で標識が掲げられる地域において当該地域が危険であることが容易に認識できるもの。

(d) 言語 標識については、条約の六の公用語(アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語)のいずれか一の言語及び当該地域において広く使用されている言語によつて「地雷」という文字を表記すべきである。

(e) 間隔 標識については、当該地域に接近する文民がいずれの地点においても視認し得ることを確保することのできる距離を保つて地雷原又は地雷敷設地域の周囲に配置すべきである。

{図省略}

第二条 効力発生

この改正された議定書は、条約第八条1(b)の規定に従つて効力を生ずる。