データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第九部

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,316−320頁.
[備考] 
[全文]

実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)

第九部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(他の化学物質を生産する施設のための制度)
申告
他の化学物質を生産する施設の一覧表

第六条7の規定に従って締約国が行う冒頭申告には、次のいずれかに該当するすべての事業所の一覧表を含める。

(a) 化学物質に関する附属書の表に掲げていない識別可能な有機化学物質を前暦年において二百トンを超えて合成により生産した事業所

(b) 化学物質に関する附属書の表に掲げていない識別可能な有機化学物質であって、りん、硫黄又はふっ素の元素を含むもの(以下「PSF化学物質」という。)を前暦年において三十トンを超えて合成により生産した一又は二以上の工場(以下「PSF工場」という。)を有する事業所

1の規定に従って提出する他の化学物質を生産する施設の一覧表には、火薬類又は炭化水素類のみを生産する事業所を含めない。

締約国は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、他の化学物質を生産する施設の一覧表を1の規定に従って自国の冒頭申告の一部として提出するものとし、翌暦年の及びその後の各暦年の開始の後九十日以内に、当該一覧表を改定するために必要な情報を毎年提供する。

1の規定に従って提出する他の化学物質を生産する施設の一覧表には、各事業所についての次の事項に関する情報を含める。

(a) 当該事業所の名称、その所有者の名称及び当該事業所を運営する会社又は企業の名称

(b) 当該事業所の正確な所在地(住所を含む。)

(c) 当該事業所の主要な活動

(d) 当該事業所において1に規定する化学物質を生産する工場のおよその数

1(a)の規定に従って掲げる事業所の一覧表には、当該事業所についての化学物質に関る附属書の表に掲げていない識別可能な有機化学物質の前暦年におけるおよその総生産量を次の範囲で明示する情報を含める。千トン未満、千トン以上一万トン以下及び一万トン超

1(b)の規定に従って掲げる事業所の一覧表には、当該事業所内のPSF工場の数を明示し、及び各PSF工場が前暦年において生産したPSF化学物質のおよその総量を次の範囲で明示する情報を含める。二百トン未満、二百トン以上千トン未満、千トン以上一万トン以下及び一万トン超

技術事務局の援助

締約国は、1の規定に従って化学物質を生産する施設の一覧表を作成するに当たり、事務的な理由により援助を要請することが必要であると認める場合には、援助を提供するよう技術事務局に要請することができる。当該一覧表を完全なものとすることに関する問題については、その後、当該締約国と技術事務局との間の協議により解決する。

締約国に対する情報

1の規定に従って提出された他の化学物質を生産する施設の一覧表については、4の規定に従って提供された情報と共に、要請に応じ、締約国に対し技術事務局が送付する。

検証
総則

第六条6に規定する検証については、Cの規定に従って次に掲げる事業所において現地査察を通じて行う。

(a) 1(a)の規定に従って一覧表に掲げられた事業所

(b) 1(b)の規定に従って一覧表に掲げられた事業所であって、PSF化学物質を前暦年において二百トンを超えて生産した一又は二以上のPSF工場を有するもの

10 第八条21(a)の規定に従って会議が採択する機関の計画及び予算には、このBの規定に基づく検証のための計画及び予算をその検証の実施が開始された後別個の項目として含める。

11 技術事務局は、このBの規定に基づく査察については、次の考慮すべき要素を基礎として、適当な仕組み(例えば、特別に設計されるコンピュータ・ソフトウェアの利用)により、査察を行う事業所を無作為に選定する。

(a) 査察の衡平な地理的配分

(b) 他の化学物質を生産する施設の一覧表に掲げられた事業所に関する技術事務局が入手可能な情報であって、当該事業所の性質及び当該事業所において行われる活動に関係するもの

(c) 25の規定に従って合意する基準に基づいて締約国が行う提案

12 いかなる事業所も、このBの規定による査察を年二回を超えて受けない。ただし、このことは、第九条の規定に基づく査察を制限するものではない。

13 技術事務局は、このBの規定に基づく査察を行う事業所を選定するに当たり、第八部及びこの部の規定に従って締約国が一暦年において受ける査察の合計の回数に関する次の制限を遵守する。当該回数は、第八部及びこの部の規定に従って締約国が申告する事業所の総数の五パーセントに三を加えた数又は二十のうちいずれか低い方の数を超えてはならない。

査察の目的

14 Aの規定に従って他の化学物質を生産する施設の一覧表に掲げられた事業所においては、査察は、活動が申告において提供された情報に合致していることを検証することを一般的な目的とする。当該査察は、特に、第六部の規定に従う場合を除くほか表lの化学物質が存在しないこと(特にその生産が行われていないこと)を検証することを目的とする。

査察手続

15 合意される指針、この附属書の他の関連規定及び秘密扱いに関する附属書のほか、16から20までの規定を適用する。

16 施設協定は、被査察締約国が要請する場合を除くほか、締結しない。

17 査察については、査察のために選定された事業所において1に規定する化学物質を生産する工場、特に、1(b)の規定に従って一覧表に掲げられたPSF工場を中心に行う。被査察締約国は、第十部Cに規定する管理されたアクセスの規則に従い、これらの工場へのアクセスを管理する権利を有する。査察団が第二部51の規定に基づいてあいまいな点を解消するため当該事業所の他の部分へのアクセスを認めることを要請する場合には、当該アクセスの範囲は、査察団と被査察締約国との間で合意する。

18 査察団及び被査察締約国が記録へのアクセスが査察の目的を違成するために役立つことを一致して認める場合には、査察団は、当該アクセスを認められる。

19 試料の採取及び現地における分析は、化学物質に関する附属書の表に掲げる化学物質であって申告されていないものが存在しないことを点検するために行うことができる。あいまいな点が解消されない場合には、試料については、被査察締約国との合意に従い、指定された現地外の実験施設において分析することができる。

20 査察期間は、二十四時間を超えてはならない。ただし、査察団と被査察締約国との間の合意により延長することができる。

査察の通告

21 締約国は、技術事務局により、査察が行われる事業所に査察団が到着する少なくとも百二十時間前までに査察の通告を受ける。

Bの規定の実施及び検討
実施

22 Bの規定については、会議がこの条約が効力を生じた後の三番目の年における通常会期において別段の決定を行う場合を除くほか、この条約が効力を生じた後の四番目の年の開始の時から実施する。

23 事務局長は、この条約が効力を生じた後の三番目の年における会議の通常会期のため、第七部、第八部及びこの部のAの規定の実施に当たって得られた技術事務局の経験の概要を記載した報告を作成する。

24 会議は、この条約が効力を生じた後の三番目の年における通常会期において、事務局長の報告に基づき、Bの規定に基づく検証のために利用可能な資金をPSF工場と他の化学物質を生産する施設との間にどのように配分するかについて決定することができる。会議がその決定を行わない場合には、この配分は、技術事務局の専門的意見にゆだねられるものとし、11の考慮すべき要素に加えられる。

25 会議は、この条約が効力を生じた後の三番目の年における通常会期において、執行理事会の助言により、11に規定する選定の過程における考慮すべき要素として締約国がいかなる基準(例えば、地域)に基づいて査察についての提案を行うべきであるかを決定する。

検討

26 この部の規定については、第八条22の規定に従って開催される会議の第一回特別会期において、得られた経験を基礎として、化学産業の検証制度全般(第六条の規定及び第七部からこの部までの規定)の広範な検討に照らして再検討する。会議は、その後、検証制度をより効果的なものにするため勧告を行う。