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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第六部

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,297−303頁.
[備考] 
[全文]

実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)

第六部 第六条に規定するこの条約によって禁止されていない活動(表1の化学物質及びこれに関係する施設のための制度)
一般規定

締約国は、この条約の締約国の領域外で表1の化学物質を生産し、取得し、保有し又は使用してはならない。締約国は、また、他の締約国に対して移譲する場合を除くほか、当該化学物質を自国の領域外に移譲してはならない。

締約国は、次の(a)から(d)までの要件が満たされる場合を除くほか質、表1の化学物生産し、取得し、保有し、移譲し又は使用してはならない。

(a) 化学物質が研究、医療、製薬又は防護の目的に利用されるものであること。

(b) 化学物質の種類及び量が(a)の目的を正当化することのできる種類及び量に厳重に限定されていること。

(c) (a)の目的のための化学物質の総量がいかなる時にも一トン以下であること。

(d) 締約国が生産、貯蔵されている化学兵器からの回収及び移譲によって取得する目(a)の的のための総量がいかなる年にも一トン以下であること。

移譲

締約国は、他の締約国に対してのみ、かつ、2に規定する研究、医療、製薬又は防護の目的に限り、表1の化学物質を自国の領域外に移譲することができる。

移譲された化学物質は、第三国に対して再移譲してはならない。

他の締約国に対する移譲の少なくとも三十日前までに、締約国及び当該他の締約国は、技術事務局に当該移譲について通報する。

締約国は、前年における移譲に関し、詳細な年次申告を行う。当該年次申告については、前年の終了の後九十日以内に行うものとし、移譲された表1の各化学物質についての次の事項に関する情報を含める。

(a) 化学名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(b) 他の国から取得した量又は他の締約国に対して移譲した量。個別の移譲について、量、受領者及び目的を含める。

生産
生産に関する一般原則

締約国は、8から12までの規定に基づく生産に当たっては、人の安全を確保し及び環境を保護することを最も優先させる。締約国は、安全及び排出に関する自国の基準に従って当該生産を行う。

単一の小規模な施設

締約国は、研究、医療、製薬又は防護の目的のために表1の化学物質を生産する場合には、10から12までに規定する場合を除くほか、自国が承認する単一の小規模な施設においてその生産を行う。

単一の小規模な施設における生産は、継続的な稼働のために配置されたものでない生産工程の中の反応器内で行う。各反応器の容量は、百リットルを超えてはならず、五リットルを超える容量を有するすべての反応器の総容量は、五百リットルを超えてはならない。

他の施設

10 防護目的のための表1の化学物質の生産については、単一の小規模な施設以外の1の施設においてその総量が年間十キログラムを超えない範囲内で行うことができる。この施設は、締約国が承認する。

11 研究、医療又は製薬の目的のための施設当たり年間百グラムを超える表1の化学物質の生産については、施設当たりの年間の総量が十キログラムを超えない範囲内で単一の小規模な施設以外の施設において行うことができる。これらの施設は、締約国が承認する。

12 防護目的のためでなく、研究、医療又は製薬の目的のための表1の化学物質の合成であつて施設当たりの年間の総量が百グラム未満のものについては、実験施設において行うことができる。これらの実験施設は、D及びEに規定する申告及び検証に関連する義務の対象とならない。

申告
単一の小規模な施設

13 締約国は、単一の小規模な施設の操業を計画する場合には、当該施設の正確な所在地に関する情報及び詳細な技術的な説明(設備の目録及び詳細な図面を含む。)を技術事務局に提供する。既存の施設については、この条約が当該締約国について効力を生じた後30日以内に冒頭申告を行う。新たな施設に関する冒頭申告については、操業の開始の少なくとも百八十日前までに行う。

14 締約国は、予定される変更であって冒頭申告に関係するものについて技術事務局に事前に通報する。その通報については、当該変更が行われる少なくとも百八十日前までに行う。

15 締約国は、単一の小規模な施設において表1の化学物質を生産する場合には、前年における当該施設の活動に関して詳細な年次申告を行う。当該年次申告については、前年の終了の後九十日以内に行うものとし、次の事項を含める。

(a) 当該施設の特定

(b) 当該施設において生産し、取得し、消費し又は貯蔵した表1の各化学物質については、次の事項に関する情報

(i) 化学名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(ii) 使用された方法及び生産量

(iii) 表1の化学物質の生産のために使用した前駆物質であって化学物質に関する附属書の表1、表2又は表3に掲げるものの名称及び量

(iv) 当該施設における消費量及び消費目的

(v) 自国内で他の施設から受領した量又は他の施設に対して移譲した量。各移譲については、量、受領者及び目的を含めるべきである。

(vi) 前年における最大貯蔵量

(vii) 前年の終了時における貯蔵量

(c) 既に提出した当該施設の詳細な技術的な説明(設備の目録及び詳細な図面を含む。)の変更であって前年中に当該施設において生じたものに関する情報

16 締約国は、単一の小規模な施設において表1の化学物質を生産する場合には、翌年の当該施設の予定される活動及び予想される生産に関して詳細な年次申告を行う。当該年次申告については、翌年の開始の少なくとも九十日前までに行うものとし、次の事項を含める。

(a) 当該施設の特定

(b) 当該施設において生産し、消費し又は貯蔵することが予想される表1の各化学物質については、次の事項に関する情報

(i) 化学名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(ii) 予想される生産量及び生産目的

(c) 既に提出した当該施設の詳細な技術的な説明(設備の目録及び詳細な図面を含む。)の変更であって翌年中に当該施設において生ずることが予想されるものに関する情報

10及び11に規定する他の施設

17 締約国は、10及び11に規定する各施設について、技術事務局の要請に応じ、その名称及び所在地に関する情報並びに当該施設又はその一部の詳細な技術的な説明を技術事務局に提供する。防護目的のための表1の化学物質を生産する施設については、その旨を具体的に明示する。既存の施設については、この条約が当該締約国について効力を生じた後三十日以内に冒頭申告を行う。新たな施設に関する冒頭申告については、操業の開始の少なくとも百八十日前までに行う。

18 締約国は、予定される変更であって冒頭申告に関係するものについて技術事務局に事前に通報する。その通報については、当該変更が行われる少なくとも百八十日前までに行う。

19 締約国は、10及び11に規定する各施設について、前年における当該施設の活動に関して詳細な年次申告を行う。当該年次申告については、前年の終了の後九十日以内に行うものとし、次の事項を含める。

(a) 当該施設の特定

(b) 表1の各化学物質については、次の事項に関する情報

(i) 化学名、構造式及ひCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(ii) 生産量及び防護目的のための生産については使用された方法

(iii) 表1の化学物質の生産のために使用した前駆物質であって化学物質に関する附属書の表1、表2又は表3に掲げるものの名称及び量

(iv) 当該施設における消費量及び消費目的

(v) 自国内で他の施設に移譲した量。各移譲については、量、受領者及び目的を含めるべきである。

(vi) 前年における最大貯蔵量

(vii) 前年の終了時における貯蔵量

(c) 既に提出した当該施設の詳細な技術的な説明の変更であって前年中に当該施設又はその一部において生じたものに関する情報

20 締約国は、10及び11に規定する各施設について、翌年の当該施設の予定される活動及び予想される生産に関して詳細な年次申告を行う。当該年次申告については、翌年の開始の少なくとも九十日前までに行うものとし、次の事項を含める。

(a) 当該施設の特定

(b) 表1の各化学物質については、次の事項に関する情報

(i) 化学名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号

(ii) 予想される生産量、生産が行われることが予想される時期及び生産目的

(c) 既に提出した当該施設の詳細な技術的な説明の変更であって翌年中に当該施設又はその一部において生ずることが予想されるものに関する情報

検証
単一の小規模な施設

21 単一の小規模な施設における検証活動は、表1の化学物質の生産量が正確に申告されていること及び特にその総量が一トンを超えないことを検証することを目的とする。

22 単一の小規模な施設は、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証の対象とする。

23 具体的な施設に対する査察の回数、程度、期間、時期及び方法については、化学物質、当該施設の性質及び当該施設において行われる活動の性質がこの条約の趣旨及び目的に対してもたらす危険に基づいて定める。適当な指針については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

24 冒頭査察は、施設に関して提供された情報を検証すること(9に規定する反応器に関する制限について検証することを含む。)を目的とする。

25 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後百八十日以内に、モデル協定に基づき、施設に関する詳細な査察手続を規定する施設協定を機関との間で締結する。

26 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後に単一の小規模な施設を作ることを計画する場合には、当該施設の操業の開始又は使用の前に、モデル協定に基づき、当該施設に関する詳細な査察手続を規定する施設協定を機関との間で締結する。

27 モデル協定については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

10及び11に規定する他の施設

28 10及び11に規定する施設における検証活動は、次のことを検証することを目的とする。

(a) 当該施設が表1の化学物質(申告された化学物質を除く。)の生産のために使用されていないこと。

(b) 表1の化学物質の生産量、加工量又は消費量が、正確に申告されていること及び申告された目的のために必要なものに合致していること。

(c) 表1の化学物質が他の目的に転用され又は使用されていないこと。

29 10及び11に規定する施設は、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた体系的な検証の対象とする。

30 具体的な施設に対する査察の回数、程度、期間、時期及び方法については、化学物質の生産量、当該施設の性質及び当該施設において行われる活動の性質がこの条約の趣旨及び目的に対してもたらす危険に基づいて定める。適当な指針については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

31 締約国は、この条約が自国について効力を生じた後百八十日以内に、モデル協定に基づき、施設に関する詳細な査察手続を規定する施設協定を機関との間で締結する。

32 締約国は、この条約が効力を生じた後に10及び11に規定する施設を作ることを計画する場合には、当該施設の操業の開始又は使用の前に、機関との間で施設協定を締結する。