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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第四部(B)

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,274−277頁.
[備考] 
[全文]

実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)

第四部(B) 老朽化した化学兵器及び遺棄化学兵器
総則

老朽化した化学兵器については、Bの規定に従って廃棄する。

遺棄化学兵器(第二条5(b)の定義に該当するものを含む。)については、Cの規定に従って廃棄する。

老朽化した化学兵器のための制度

締約国は、自国の領域内に第二条5(a)に定義する老朽化した化学兵器を有する場合には、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、すべての入手可能な関連する情報(可能な範囲内で、老朽化した化学兵器の所在地、種類、量及び現状に関する情報を含む。)を技術事務局に提出する。
同条5(b)に定義する老朽化した化学兵器については、締約国は、第三条1(b)(i)の規定に基づく申告(可能な範囲内で、第四部(A)の1から3までに規定する情報を含む。)を技術事務局に対して行う。

締約国は、この条約が自国について効力を生じた後に老朽化した化学兵器の存在を知った場合には、その後百八十日以内に、3に規定する情報を技術事務局に提出する。

技術事務局は、3及び4の規定に従って提出される情報を検証し並びに特に化学兵器が第二条5の老朽化した化学兵器の定義に該当するか否かを決定するため、冒頭査察及び必要に応じてその後の査察を行う。千九百二十五年から千九百四十六年までの間に生産された化学兵器について化学兵器として使用することができるか否かを決定するための指針は、第8条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

締約国は、技術事務局が第二条5(a)の定義に該当すると確認した老朽化した化学兵器については毒性廃棄物として取り扱う。当該締約国は、自国の法令に従って、当該老朽化した化学兵器を毒性廃棄物として廃棄し又はその他の方法によって処分するためにとる措置を技術事務局に通報する。

3から5までの規定に従うことを条件として、締約国は、技術事務局が第二条5(b)の定義に該当すると確認した老朽化した化学兵器を第四条及び第四部(A)の規定に従って廃棄する。ただし、執行理事会は、締約国の要請に基づき、この条約の趣旨及び目的に危険をもたらさないと認める場合には、当該老朽化した化学兵器の廃棄の期限及び廃棄の規律に関する規定の適用を変更することができる。当該要請には、規定の適用の変更に関する具体的な提案及び変更を提案する理由についての詳細な説明を含める。

遺棄化学兵器のための制度

自国の領域内に遺棄化学兵器が存在する締約国(以下「領域締約国」という。)は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、遺棄化学兵器に関するすべての入手可能な情報を技術事務局に提出する。この情報には、可能な範囲内で、遺棄化学兵器の所在地、種類、量及び現状並びに遺棄に関する情報を含める。

締約国は、この条約が自国について効力を生じた後に遺棄化学兵器の存在を知った場合には、その後百八十日以内に、当該遺棄化学兵器に関するすべての入手可能な情報を技術事務局に提出する。この情報には、可能な範囲内で、遺棄化学兵器の所在地、種類、量及び現状並びに遺棄に関する情報を含める。

10 他の締約国の領域内に化学兵器を遺棄した締約国(以下「遺棄締約国」という。)は、この条約が自国について効力を生じた後三十日以内に、遺棄化学兵器に関するすべての入手可能な情報を技術事務局に提出する。この情報には、可能な範囲内で、所在地、種類、量、遺棄に関する情報及び遺棄化学兵器の状態を含める。

11 技術事務局は、8から10までの規定に従って提出されるすべての利用可能な情報を検証し及び第四部(A)の41から43までの規定に基づく体系的な検証が必要であるか否かを決定するため、冒頭査察及び必要に応じてその後の査察を行う。技術事務局は、必要な場合には、遺棄化学兵器の出所を検証し、並びに遺棄に関する証拠及び遺棄国を特定する証拠を示す。

12 技術事務局の報告は、執行理事会、領域締約国及び遺棄締約国又は化学兵器を遺棄したことを領域締約国によって申告され若しくは技術事務局によって特定された締約国に提出される。直接関係する締約国のいずれかが当該報告に満足しない場合には、当該締約国は、この条約に従ってこの問題を解決する権利又は速やかに解決するためにこの問題を執行理事会に提起する権利を有する。

13 領域締約国は、第一条3の規定に基づき、8から12までの規定に従って遺棄締約国として特定された締約国に対し、当該領域締約国と協力して遺棄化学兵器を廃棄するために協議を行うよう要請する権利を有する。当該領域締約国は、その要請を直ちに技術事務局に通報する。

14 相互に合意する廃棄のための計画の作成を目的とする領域締約国と遺棄締約国との間の協議については、技術事務局が13に規定する要請について通報を受けた後三十日以内に開始する。相互に合意した廃棄のための計画については、技術事務局が13に規定する要請について通報を受けた後百八十日以内に、技術事務局に送付する。執行理事会は、遺棄締約国及び領域締約国の要請に基づき、相互に合意する廃棄のための計画の送付の期限を延期することができる。

15 遺棄締約国は、遺棄化学兵器の廃棄のため、すべての必要な資金、技術、専門家、施設その他の資源を提供する。領域締約国は、適切な協力を行う。

16 遣棄国を特定することができない場合又は遺棄国が締約国でない場合には、領域締約国は、遺棄化学兵器の廃棄を確保するため、当該遺棄化学兵器の廃棄について援助を提供するよう機間及び他の締約国に要請することができる。

17 8から16までの規定に従うことを条件として、第四条及び第四部(A)の規定は、遺棄化学兵器の廃棄についても適用する。遺棄化学兵器が第二条5(b)の老朽化した化学兵器の定義に該当する場合において、執行理事会がこの条約の趣旨及び目的に危険をもたらさないと認めるときは、執行理事会は、領域締約国の単独の要請又は遺棄締約国との共同の要請に基づき、廃棄に関する規定の適用を変更し又は例外的な状況において停止することができる。遺棄化学兵器が同条5(b)の老朽化した化学兵器の定義に該当しない場合において、執行理事会がこの条約の趣旨及び目的に危険をもたらさないと認めるときは、執行理事会は、領域締約国の単独の要請又は遺棄締約国との共同の要請に基づき、例外的な状況において廃棄の期限及び廃棄の規律に関する規定の適用を変更することができる。この17に規定する要請には、規定の適用の変更に関する具体的な提案及び変更を提案する理由についての詳細な説明を含める。

18 締約国は、締約国間で遺棄化学兵器の廃棄に関する協定又は取決めを締結することができる。執行理事会は、当該協定又は取決めが17に規定する遺棄化学兵器の廃棄を確保するものであると認める場合には、領域締約国の単独の要請又は遺棄締約国との共同の要請に基づき、当該協定又は取決めの特定の規定がこのCの規定に優先することを決定することができる。