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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 化学兵器禁止条約,実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)第四部(A)

[場所] パリ
[年月日] 1993年1月13日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成9年,258−274頁.
[備考] 
[全文]

実施及び検証に関する附属書(「検証附属書」)

第四部(A) 第四条の規定に基づく化学兵器の廃棄及びその検証
申告
化学兵器

第三条1(a)(ii)の規定に従って締約国が行う化学兵器の申告には、次の事項を含める。

(a) 申告する各化学物質の総量

(b) 次の事項によって明示する化学兵器の貯蔵施設の正確な所在地

(i) 名称

(ii) 地理上の座標

(iii) 化学兵器の貯蔵施設の詳細な図面(境界地図並びに施設内の掩蔽壕{えんぺいごうとルビ}及び貯蔵場所の位置を含む。)

(c) 化学兵器の各貯蔵施設についての次の事項を含む詳細な目録

(i) 第二条の規定に従って化学兵器として定義される化学物質

(ii) 化学兵器として定義される弾薬類、子爆弾弾薬類及び装置であって充填{てんとルビ}されていないもの

(iii) (ii)に規定する弾薬類、子爆弾弾薬類又は装置の使用に直接関連して使用するように特別に設計された装置

(iv) (ii)に規定する弾薬類、子爆弾弾薬類又は装置の使用に直接関連して使用するように特別に設計された化学物質

1(c)(i)の化学物質の申告については、次の規定を適用する。

(a) 化学物質については、化学物質に関する附属書の表に従って申告する。

(b) 化学物質に関する附属書の表に掲げていない化学物質については、当該化学物質を適当な表に掲げるために必要となる情報(純粋な化合物の毒性を含む。)を提供する。前駆物質については、主要な最終反応生成物の毒性及びその識別についての情報を提供する。

(c) 化学物質は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)の最新の命名法に基づく化学名、構造式及びCAS登録番号が付されている場合には当該番号によって識別する。前駆物質については、主要な最終反応生成物の毒性及びその識別についての情報を提供する。

(d) 二以上の化学物質の混合物である場合には、各化学物質を識別し、各化学物質の百分率を提供し、及び当該混合物を各化学物質のうち最も毒性の強い化学物質の種類に応じて申告する。二成分型化学兵器の一の成分が二以上の化学物質の混合物から成る場合には、各化学物質を識別し、及び各化学物質の百分率を提供する。

(e) 二成分型化学兵器は、16に規定する化学兵器の種類に応じて、関連する最終生成物に基づいて申告する。二成分型弾薬類及び装置のそれぞれにつき、次の補足的な情報を提供する。

(i) 毒性最終生成物の化学名

(ii) 成分の化学的組成及び各成分の量

(iii) 各成分の実際の重量比

(iv) 必須成分と認められる成分

(v) 百パーセントの収率を仮定した場合に必須成分から化学量論的に計算される毒性最終生成物の予定量。個別の毒性最終生成物の必須成分の申告量(トン)は、百パーセントの収率を仮定した場合に化学量論的に計算される当該毒性最終生成物の量(トン)に相当するものとみなす。

(f) 多成分型化学兵器の申告は、二成分型化学兵器について定める申告と同様に行う。

(g) 化学物質の貯蔵の形態(例えば、弾薬類、子爆弾弾薬類、装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器)を申告する。その申告には、次の事項に関する情報を含める。

(i) 種類

(ii) 大きさ又は口径

(iii) 数量

(iv) 量容器ごとの充填化学物質の名目重{填にてんとルビ}

(h) 貯蔵施設において現存する化学物質ごとの総重量を申告する。

(i) 更に、ばらの状態で貯蔵される化学物質については、判明している場合には、百分率による純度を申告する。

1(c)(ii)に規定する充填{てんとルビ}されていない弾薬類、子爆弾弾薬類又は装置のそれぞれの種類についての申告には、次の事項に関する情報を含める。

(a) 数量

(b) 個別の名目充填量{填にてんとルビ}

(c) 充填予定の化学物質{填にてんとルビ}

第三条1(a)(iii)の規定に基づく化学兵器の申告

第三条1(a)(iii)の規定に基づく化学兵器の申告には、1から3までに規定するすべての情報を含める。自国の領域内に当該化学兵器が存在する締約国は、申告が行われることを確保するために他の国と適当な措置をとる責任を有する。自国の領域内に当該化学兵器が存在する締約国は、この4の規定に基づく義務を履行することができない場合には、その理由を表明する。

過去における移譲及び受領の申告

千九百四十六年一月一日以降に化学兵器を移譲し又は受領した締約国は、移譲し又は受領した各化学物質の量がばらの状態又は弾薬の形態で一年当たり一トンを超える場合には、第三条1(a)(iv)の規定に従ってその移譲又は受領について申告する。この申告は、1及び2に規定する目録の様式に従って行う。この申告は、また、供給国及び受領国、移譲又は受領の日並びに移譲された化学兵器のできる限り正確な最新の所在地を示す。締約国は、千九百四十六年一月一日から千九百七十年一月一日までの間における化学兵器の移譲又は受領について求められる情報が必ずしもすべて入手可能でない場合には、入手可能なすべての情報を申告し、及び完全な申告を行うことができない理由についての説明を行う。

化学兵器の廃棄のための全般的な計画の提出

第三条1(a)(v)の規定に従って提出される化学兵器の廃棄のための全般的な計画は、化学兵器の廃棄のための締約国の計画の全体の概要及びこの条約に規定する廃棄に関する義務を履行するために締約国が払う努力に関する情報を提供する。その計画は、次の事項を明示する。

(a) 廃棄の全般的な日程(既存の及び可能な場合には計画されている化学兵器の廃棄施設について、各年の廃棄期間中に廃棄する予定の化学兵器の種類及びおよその量を含む。)

(b) 既存の又は廃棄のための期間中に操業する予定の化学兵器の廃棄施設の数

(c) 既存の又は計画されている化学兵器の廃棄施設について、

(i) 名称及び所在地

(ii) 廃棄する化学兵器の種類及びおよその量並びに廃棄する充填化学物質の種類(例えば、神経剤、びらん剤)及びおよその量{填にてんとルビ}

(d) 化学兵器の廃棄施設の操業のための要員を訓練するための計画

(e) 化学兵器の廃棄施設が満たさなければならない安全及び排出に関する自国の基準

(f) 化学兵器を廃棄するための新たな方法の開発及び既存の方法の改善に関する情報

(g) 化学兵器を廃棄するための費用の見積り

(h) 廃棄のための計画に悪影響を及ぼすおそれのある問題

貯蔵施設を保全するための措置及び貯蔵施設における準備

締約国は、化学兵器の申告を行う時までに、自国の貯蔵施設を保全するために適当と認める措置をとるものとし、廃棄のために移動する場合を除くほか、自国の化学兵器の当該貯蔵施設外への移動を防止する。

締約国は、37から49までの規定に基づく検証のために速やかなアクセスが可能となるように自国の貯蔵施設において化学兵器が配置されることを確保する。

化学兵器の貯蔵施設外への移動(廃棄のための移動を除く。)を防止するために当該貯蔵施設が閉鎖されている間、締約国は、当該貯蔵施設において標準的な保守活動(化学兵器の標準的な保守、安全の監視及び警備活動並びに化学兵器の廃棄のための準備を含む。)を継統することができる。

10 化学兵器の保守活動には、次の事項を含めない。

(a) 化学物質又は弾殻の取替え

(b) 弾薬類又はその部品若しくは構成物質の当初の性質の変更

11 すべての保守活動は、技術事務局による監視の対象とする。

廃棄
化学兵器の廃棄のための原則及び方法

12 「化学兵器の廃棄」とは、化学物質を実質的に不可逆的に化学兵器の生産に適しないものに転換する過程並びに弾薬類及び他の装置を不可逆的に使用することができないようにする過程をいう。

13 締約国は、化学兵器の廃棄の方法を決定する。ただし、水中に投棄する方法、地中に埋める方法又は野外において焼却する方法を用いてはならない。締約国は、特別に指定され、適切に設計され及び設備が適切に整えられた施設においてのみ化学兵器を廃棄する。

14 締約国は、自国の化学兵器の廃棄施設が化学兵器を確実に廃棄することができるように建設され及び操業していること並びに廃棄の過程がこの条約に基づいて検証されることを確保する。

廃棄の規律

15 化学兵器の廃棄の規律は、第一条及び他の条に定める義務(体系的な現地検証に関する義務を含む。)を基礎とするものである。廃棄の規律は、廃棄のための期間中に安全保障が損なわれないことについての締約国の利害、廃棄の初期の段階における信頼の醸成及び化学兵器を廃棄する過程において漸進的に得られる経験を考慮し、並びに貯蔵されている化学兵器の実際の構成及び化学兵器の廃棄のために選択される方法のいかんにかかわらず当該廃棄の規律を適用することを考慮したものである。廃棄の規律は、平準化の原則を基礎とするものである。

16 締約国が申告する化学兵器は、廃棄のため次の三の種類に分類する。

種類1 表1の化学物質を基礎とする化学兵器並びにその部品及び構成物質

種類2 他のすべての化学物質を基礎とする化学兵器並びにその部品及び構成物質

種類3 充填{てんとルビ}されていない弾薬類及び装置並びに化学兵器の使用に直接関連して使用するように特別に設計された装置

17 締約国は、

(a) この条約が自国について効力を生じた後二年以内に種類1の化学兵器の廃棄を開始し、この条約が効力を生じた後十年以内に廃棄を完了する。締約国は、次の廃棄の期限に従い化学兵器を廃棄する。

(i) 第一段階 この条約が効力を生じた後二年以内に、最初の廃棄施設の試験を完了する。この条約が効力を生じた後三年以内に、種類1の化学兵器の一パーセント以上を廃棄する。

(ii) 第二段階 この条約が効力を生じた後五年以内に、種類1の化学兵器の二十パーセント以上を廃棄する。

(iii) 第三段階 この条約が効力を生じた後七年以内に、種類1の化学兵器の四十五パーセント以上を廃棄する。

(iv) 第四段階 この条約が効力を生じた後十年以内に、種類1の化学兵器のすべてを廃棄する。

(b) この条約が自国について効力を生じた後一年以内に種類2の化学兵器の廃棄を開始し、この条約が効力を生じた後五年以内に廃棄を完了する。種類2の化学兵器は、廃棄のための期間を通じて毎年均等の割合で廃棄する。この場合において、種類2の化学兵器の比較の基礎は、当該化学兵器に含まれる化学物質の重量とする。

(c) この条約が自国について効力を生じた後一年以内に種類3の化学兵器の廃棄を開始し、この条約が効力を生じた後五年以内に廃棄を完了する。種類3の化学兵器は、廃棄のための期間を通じて毎年均等の割合で廃棄する。充填{てんとルビ}されていない弾薬類及び装置の比較の基礎は名目充填量(立方メートル)とし、設備の比較の基礎はその数とする。{填にてんとルビ}

18 二成分型化学兵器の廃棄については、次の規定を適用する。

(a) 廃棄の規律の適用上、個別の毒性最終生成物の必須成分の申告量(トン)は、百パーセントの収率を仮定した場合に化学量論的に計算される当該毒性最終生成物の量(トン)に相当するものとみなす。

(b) 二成分型弾薬類及び装置において必須成分の一定の量を廃棄するに当たっては、他方の成分について、当該二成分型弾薬類及び装置の種類についての成分の実際の重量比に対応する量を廃棄する義務を伴う。

(c) 成分の実際の重量比に基づいて(b)の他方の成分が必要とされる量を超えて申告される場合には、超過量は、廃棄作業の開始の後の最初の二年間に廃棄する。

(d) その後は、廃棄のための期間中の各年の終了の時に、締約国は、申告した他方の成分につき、二成分型弾薬類及び装置の種類についての成分の実際の重量比に基づいて決定される量を保有することができる。

19 多成分型化学兵器の廃棄の規律は、二成分型化学兵器について定める廃棄の規律と同様のものとする。

廃棄の中間の期限の変更

20 執行理事会は、特に15から19までに定める廃棄の規律との適合性を評価するため、第三条1(a)(v)の規定及び6の規定に従って提出される化学兵器の廃棄のための全般的な計画を検討する。執行理事会は、自国の計画が廃棄の規律に適合しない締約国と、当該計画を廃棄の規律に適合したものとすることを目的として協議する。

21 締約国は、やむを得ない例外的な事情により、種類1の化学兵器の廃棄の規律の第一段階、第二段階又は第三段階に定める廃棄の水準を達成することができないと認める場合には、当該水準の変更を提案することができる。その提案については、この条約が効力を生じた後百二十日以内に行わなければならず、かつ、提案理由についての詳細な説明を含める。

22 締約国は、21の規定に基づいて変更された17(a)に定める廃棄の期限による種類1の化学兵器の廃棄を確保するため、すべての必要な措置をとる。ただし、当該締約国は、廃棄の中間の期限までに廃棄することが求められている割合の種類1の化学兵器の廃棄を確保することができないと認める場合には、その期限を遵守する義務の猶予を与えることを会議に対して勧告するよう執行理事会に要請することができる。その要請については、廃棄の中間の期限の少なくとも百八十日前までに行わなければならず、かつ、当該要請の理由についての詳細な説明及び次の廃棄の中間の期限を遵守する義務の履行を確保するための計画を含める。

23 期限の延期が認められる場合においても、締約国は、次の廃棄の期限までに累積される廃棄の義務を履行する。20からこの23までの規定に基づいて認められる期限の延期は、この条約が効力を生じた後十年以内に種類1の化学兵器のすべてを廃棄する締約国の義務を何ら変更するものではない。

廃棄の完了の期限の延期

24 締約国は、この条約が効力を生じた後十年以内に種類1の化学兵器のすべての廃棄を確保することができないと認める場合には、当該化学兵器の廃棄の完了の期限の延期について執行理事会に対し要請を行うことができる。当該要請については、この条約が効力を生じた後九年以内に行わなければならない。

25 24の要請には、次の事項を含める。

(a) 延長しようとする期間

(b) 延期の理由についての詳細な説明

(c) 延長期間及び当初の十年の廃棄のための期間の残余の期間における廃棄のための詳細な計画

26 会議は、次の会期において、執行理事会の勧告に基づいて24の要請に関する決定を行う。期限の延期は、必要な最小限度とし、締約国がすべての化学兵器の廃棄を完了する期限については、いかなる場合にも、この条約が効力を生じた後十五年を超えて延期してはならない。執行理事会は、期限の延期を認めるための条件(必要と認められる具体的な検証措置及び自国の廃棄のための計画における問題を克服するために締約国がとるべき具体的な措置を含む。)を定める。延長期間中の検証の費用については、第四条16の規定に従って割り当てる。

27 期限の延期が認められた場合には、締約国は、その後のすべての期限を遵守するために適当な措置をとる。

28 締約国は、種類1の化学兵器のすべてを廃棄するまでの間、29の規定に従って廃棄のための詳細な年次計画及び36の規定に従って種類1の化学兵器の廃棄に関する年次報告を引き続き提出する。更に、締約国は、延長期間中の各九十日における自国の廃棄活動についての報告を当該九十日が経過する日までに執行理事会に提出する。執行理事会は、廃棄の完了に向けての進捗状況{捗にちょくとルビ}を検討し、この進捗状況{捗にちょくとルビ}を文書により記録するために必要な措置をとる。延長期間中の廃棄活動に関するすべての情報については、要請に応じ、執行理事会が締約国に提供する。

廃棄のための詳細な年次計画

29 廃棄のための詳細な年次計画は、第四条7(a)の規定に従って各年の廃棄期間の開始の少なくとも六十日前までに技術事務局に提出するものとし、次の事項を明示する。

(a) 各廃棄施設において廃棄される化学兵器の具体的な種類ごとの量及び化学兵器の具体的な種類ごとの廃棄の完了に係る日程

(b) 化学兵器の各廃棄施設の詳細な図面及び以前に提出した図面に変更がある場合には当該変更

(c) 当該各年における化学兵器の各廃棄施設の活動の詳細な日程(当該廃棄施設の設計、建設又は変更、設備の設置及び点検、要員の訓練並びに化学兵器の具体的な種類ごとの廃棄作業に必要な時間並びに活動を休止する予定の期間を明らかにするもの)

30 締約国は、自国のそれぞれの化学兵器の廃棄施設につき、技術事務局が当該廃棄施設における使用のためにとりあえずの査察手続を作成することを援助するため、施設の詳細な情報を提供する。

31 化学兵器の各廃棄施設の詳細な情報には、次の事項に関する情報を含める。

(a) 名称、住所及び位置

(b) 施設の詳細な図面(注釈が付されたもの)

(c) 施設の設計図、工程図並びに配管及び計器の配置の図面

(d) 弾薬類、装置及び容器からの充填化学物質の除去、取り出された充填化学物質の一時的な貯蔵、化学物質の廃棄並びに弾薬類、装置及び容器の廃棄に必要な設備についての詳細な技術的な説明(設計図及び機器の仕様を含む。){填にてんとルビ}

(e) 廃棄の工程についての詳細な技術的な説明(物質の流量、温度及び圧力並びに設計上の廃棄の効率を含む。)

(f) 化学兵器の具体的な種類ごとの廃棄施設の設計上の能力

(g) 廃棄による生成物及びその最終的な処理方法についての詳細な説明

(h) この条約に基づく査察を容易にするための措置についての詳細な技術的な説明

(i) 廃棄施設における一時的な保管場所であって当該廃棄施設に化学兵器を直接供給するために使用されるものについての詳細な説明(当該保管場所の図面及び当該廃棄施設において廃棄される化学兵器の具体的な種類ごとの貯蔵能力に関する情報を含む。)

(j) 廃棄施設において実施されている安全及び医療のための措置についての詳細な説明

(k) 査察員の住居及び作業場所についての詳細な説明

(l) 国際的な検証のために提案する措置

32 締約国は、自国のそれぞれの化学兵器の廃棄施設につき、工場の操業のための手引書、安全及び医療のための計画、実験施設の活動及び質の管理のための手引書並びに取得された環境基準に係る許可を提出する。ただし、既に提出した場合は、この限りでない。

33 締約国は、自国の化学兵器の廃棄施設における査察活動に影響を及ぼすおそれのある事態について、速やかに技術事務局に通報する。

34 30から32までに規定する情報の提出の期限は、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する。

35 技術事務局は、化学兵器の廃棄施設の詳細な情報を検討した後、必要が生ずる場合には、締約国の化学兵器の廃棄施設が化学兵器を確実に廃棄するように設計されることを確保し、検証措置の実施について事前に計画することを可能にし、及び検証措置の実施が施設の正常な操業に適合しかつ施設の操業が適切な検証を可能にすることを確保するため、関係締約国と協議を行う。

廃棄に関する年次報告

36 化学兵器の廃棄のための計画の実施状況に関する情報は、第四条7(b)の規定に従って各年の廃棄期間の満了の後六十日以内に技術事務局に提出されるものとし、化学兵器の各廃棄施設において当該各年において廃棄された化学兵器の実際の量を明示する。廃棄の目標が達成されなかった場合には、その理由を表明すべきである。

検証
化学兵器の申告の現地査察による検証

37 化学兵器の申告の検証は、第三条の規定に従って行われる申告が正確であることを現地査察によって確認することを目的とする。

38 査察員は、申告が行われた後速やかにこの検証を行う。査察員は、特に、化学物質の量及び識別並びに弾薬類及び装置の種類及び数を検証する。

39 査察員は、適当な場合には、各貯蔵施設における化学兵器の在庫を正確に確認することを容易にするため、定められた封印、標識その他の在庫の管理手続を使用する。

40 査察員は、在庫の確認を行うに当たり、貯蔵されていた化学兵器が移動されているか否かを明確に示し及び在庫の確認を行う間貯蔵施設の保全を確保するため、定められた封印を必要に応じて施す。当該封印については、別段の合意がある場合を除くほか、在庫の確認の完了の後撤去する。

貯蔵施設の体系的な検証

41 貯蔵施設の体系的な検証は、当該貯蔵施設からの化学兵器の移動が常に明らかにされていることを確保することを目的とする。

42 体系的な検証は、化学兵器の申告が行われた後できる限り速やかに開始し、すべての化学兵器が貯蔵施設から移動されるまで継続する。体系的な検証は、施設協定に従い、現地査察及び現地に設置する機器による監視を組み合わせたものとする。

43 すべての化学兵器が貯蔵施設から移動された時に、技術事務局は、その旨の締約国の申告を確認する。技術事務局は、その確認の後、貯蔵施設の体系的な検証を終了するものとし、査察員が設置した監視のための機器を速やかに撤去する。

査察及び訪問

44 査察が行われる具体的な貯蔵施設については、査察が行われる正確な時期が予知されることのないように技術事務局が選定する。体系的な現地査察の頻度を決定するための指針については、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する勧告を考慮して、技術事務局が作成する。

45 技術事務局は、体系的な査察又は訪問のための査察団の貯蔵施設への到着予定時刻の四十八時間前に、当該貯蔵施設の査察又は訪問を行う旨の決定を被査察締約国に通告する。緊急の問題を解決するために査察又は訪問が行われる場合には、この期間を短縮することができる。技術事務局は、査察又は訪問の目的を明示する。

46 被査察締約国は、査察員の到着のために必要な準備を行うものとし、査察員の入国地点から貯蔵施設までの速やかな輸送を確保する。施設協定は、査察員のための管理上の措置を明示する。

47 被査察締約国は、査察団が査察を行うために貯蔵施設に到着する時に、当該貯蔵施設に関する次の資料を提供する。

(a) 貯蔵用の建物及び場所の数

(b) 貯蔵用の各建物及び各場所につき種類及び識別番号又は名称を示した貯蔵施設の図面

(c) 貯蔵施設における貯蔵用の各建物及び各場所につき、化学兵器の具体的な種類ごとの数及び二成分型弾薬類の一部を構成しない容器については各容器の充填化学物質の実際の量{填にてんとルビ}

48 査察員は、利用可能な時間内に在庫を確認するに当たり、次のことを行う権利を有する。

(a) 次のいずれかの査察の方法を用いること。

(i) 貯蔵施設において貯蔵されているすべての化学兵器の在庫の確認

(ii) 査察員が選定する貯蔵施設の具体的な建物又は場所において貯蔵されているすべての化学兵器の在庫の確認

(iii) 貯蔵施設において貯蔵されている化学兵器であって査察員が選定する一又は二以上の具体的な種類のもののすべての在庫の確認

(b) 確認した在庫と合意された記録とを照合すること。

49 査察員は、施設協定に基づき、次の権利を有する。

(a) 阻害されることなく貯蔵施設のすべての部分(当該貯蔵施設におけるすべての弾薬類、装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器を含む。)へのアクセスが認められること。査察員は、その活動を行うに当たり、当該貯蔵施設における安全規則を遵守する。
査察を行う物件は、査察員が選定する。

(b) 貯蔵施設の冒頭査察及びその後の査察に際して、試料を採取する弾薬類、装置及び容器を指定し並びに独特の目印(除去され又は変更されようとした場合にそれが明らかになるようなもの)を当該弾薬類、装置及び容器に付すること。試料は、廃棄のための計画に従って実行可能な限り速やかに、いかなる場合にも廃棄作業が終了するまでに、化学兵器の貯蔵施設又は廃棄施設において当該目印が付された物件から採取する。

化学兵器の廃棄の体系的な検証

50 化学兵器の廃棄の検証は、次のことを目的とする。

(a) 廃棄されることとなる貯蔵されている化学兵器の識別及び量を確認すること。

(b) (a)の化学兵器が廃棄されたことを確認すること

51 この条約が効力を生じた後の三百九十日の間の化学兵器の廃棄作業については、検証の経過措置によって規律する。この経過措置(経過的な施設協定、現地査察及び現地に設置する機器による監視を通じた検証のための措置並びに経過措置の実施のための時間的な枠組みを含む。)は、機関と被査察締約国との間で合意する。この経過措置については、31の規定に従って提供される廃棄施設の詳細な情報の評価及び当該廃棄施設への訪問に基づいて技術事務局が行う勧告を考慮して、この条約が当該被査察締約国について効力を生じた後六十日以内に執行理事会が承認する。執行理事会は、その第一回会期において、第八条21(i)の規定に従って会議が検討し及び承認する勧告に基づき、この経過措置のための指針を定める。検証の経過措置は、全経過期間を通じて、50に規定する目的に従って化学兵器の廃棄の検証が行われるように、かつ、実施中の廃棄作業が阻害されないように作成する。

52 53から61までの規定は、この条約が効力を生じた後三百九十日を経過した後に開始する化学兵器の廃棄作業について適用する。

53 技術事務局は、この条約、廃棄施設の詳細な情報及び場合に応じ従前の査察の経験に基づき、各廃棄施設における化学兵器の廃棄の査察のための計画案を作成する。当該計画案については、この条約に従って廃棄施設が廃棄作業を開始する少なくとも二百七十日前までにその作成を完了するものとし、意見を求めるために被査察締約国に提出する。技術事務局と被査察締約国との間の意見の相違は、協議によって解決されるべきである。解決されない間題は、この条約の完全な実施を促進することを目的として、適切な措置のために執行理事会に送付される。

54 技術事務局は、化学兵器の廃棄施設に精通し及び査察のための計画の妥当性を評価するため、被査察締約国の各廃棄施設がこの条約に従って廃棄作業を開始する少なくとも二百四十日前までに当該各廃棄施設に対して冒頭訪問を行う。

55 化学兵器の廃棄作業が既に開始されている既存の施設については、被査察締約国は、技術事務局が冒頭訪問を行う前に当該施設の除染を行うことを必要としない。冒頭訪問の期間は、五日を超えてはならず、また、訪問の要員数は、十五人を超えてはならない。

56 合意された検証のための詳細な計画は、技術事務局による適当な勧告を付して、執行理事会に対し検討のために送付される。執行理事会は、この条約に基づく検証の目的及び義務に従って承認することを目的として、当該計画を検討する。執行理事会は、また、廃棄の検証のための計画が検証の目的に合致すること及び効果的かつ実際的であることを確認すべきである。この検討は、廃棄期間の開始の少なくとも百八十日前までに完了すべきである。

57 執行理事会の理事国は、検証のための計画の妥当性に関する問題について技術事務局と協議することができる。執行理事会のいずれの理事国も異議を申し立てない場合には、当該計画は、実施に移される。

58 問題がある場合には、執行理事会は、当該問題について調整するために締約国と協議を開始する。問題が解決されない場合には、当該問題は、会議に提起される。

59 化学兵器の廃棄施設に関する詳細な施設協定は、その廃棄施設の具体的な特性及びその操業の方式を考慮して、次の事項を明示する。

(a) 現地査察の詳細な手続

(b) 現地に設置する機器による継続的な監視を通じた検証及び査察員自身による検証のための措置

60 査察員は、この条約に基づく化学兵器の廃棄施設における廃棄の開始の少なくとも六十日前までに各廃棄施設へのアクセスを認められる。当該アクセスは、査察のための装置の設置を監督し、その装置を検査し及びその装置の稼働の試験を行うこと並びに当該廃棄施設についての最終的な工学上の検討を行うことを目的とする。化学兵器の廃棄作業が既に開始されている既存の廃棄施設については、廃棄作業は、査察のための装置の設置及び試験のため、六十日を超えない範囲で必要な最小限度の期間停止する。締約国及び技術事務局は、試験及び検討の結果に基づき、廃棄施設に関する詳細な施設協定への追加又は変更について合意することができる。

61 被査察締約国は、化学兵器の貯蔵施設から廃棄施設への化学兵器の輸送につき、その出発の少なくとも四時間前までに、化学兵器の廃棄施設に所在する査察団長に対し書面により通報する。その通報は、貯蔵施設の名称、出発及び到着の予定時刻、輸送される化学兵器の具体的な種類及び量、目印が付された物件が搬出されているか否か並びに輸送の方法を明示する。その通報には、二以上の輸送の通報を含めることができる。この情報について変更がある場合には、査察団長は、当該変更について書面により速やかに通報を受ける。

化学兵器の廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設

62 査察員は、廃棄施設に化学兵器が到着したこと及び当該化学兵器が貯蔵されることを検証する。査察員は、化学兵器の廃棄に先立ち、施設の安全規則に適合する合意された手続を使用して、各輸送についての目録を検証する。査察員は、廃棄に先立ち化学兵器の目録を正確に確認することを容易にするため、適当な場合には、定められた封印、標識その他の目録の管理手続を使用する。

63 化学兵器の廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設は、化学兵器が当該貯蔵施設に搬入された後直ちに及び当該貯蔵施設において貯蔵されている間、施設協定に従って体系的な検証の対象とする。

64 査察員は、実際の廃棄作業の終了のたびごとに、廃棄のために貯蔵施設から搬出された化学兵器の目録を作成する。査察員は、62に規定する目録の管理手続を使用して、残存する化学兵器の目録が正確であることを検証する。

化学兵器の廃棄施設における体系的な現地検証のための措置

65 査察員は、実際の廃棄作業が行われている間を通じて、化学兵器の廃棄施設及び当該廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設において活動を行うためのアクセスを認められる。

66 査察員は、化学兵器の各廃棄施設において、いかなる化学兵器も転用されていないこと及び廃棄の過程が完了したことを確認するため、当該査察員自身により及び現地に設置する機器による監視を通じ、次の事項について検証する権利を有する。

(a) 当該廃棄施設における化学兵器の受領

(b) 化学兵器の一時的な保管場所並びにその保管場所に貯蔵される化学兵器の具体的な種類及び量

(c) 廃棄される化学兵器の具体的な種類及び量

(d) 廃棄の工程

(e) 廃棄の最終生成物

(f) 金属の部分の切断

(g) 廃棄の過程及び当該廃棄施設全体の保全

67 査察員は、試料の採取のため、化学兵器の廃棄施設内の一時的な保管場所に存在する弾薬類、装置又は容器に目印を付する権利を有する。

68 廃棄施設の日常的な操業に際して得られる情報については、適当な資料の裏付けがある場合には、査察の要請を満たす範囲内で査察の目的のために使用する。

69 技術事務局は、各廃棄期間の満了の後、定められた量の化学兵器の廃棄が完了したことを報告する締約国の申告を確認する。

70 査察員は、施設協定に基づき、

(a) 阻害されることなく化学兵器の廃棄施設及び廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設のすべての部分(これらの施設におけるすべての弾薬類、装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器を含む。)へのアクセスが認められる権利を有する。査察を行う物件は、被査察締約国が合意し、かつ、執行理事会が承認した検証のための計画に従って査察員が選定する。

(b) 廃棄の過程において、現地における試料の体系的な分析を監視する。

(c) 必要な場合には、化学兵器の廃棄施設又は廃棄施設内の化学兵器の貯蔵施設に存在する装置、ばらの状態で貯蔵するための容器その他の容器から当該査察員の要請によって採取された試料を受領する。