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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定(宇宙救助返還協定)

[場所] ロンドン,モスクワ,ワシントンDC
[年月日] 1968年4月22日作成,1968年12月3日効力発生,1983年5月13日国会承認
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)昭和58年,189−196頁.
[備考] 
[全文]

宇宙飛行士の救助及び送還並びに宇宙空間に打ち上げられた物体の返還に関する協定

昭和四十三年四月二十日 ロンドン、モスクワ、ワシントンで作成
昭和四十三年十二月三日 効力発生
昭和五十八年五月十三日 国会承認
昭和五十八年六月七日 加入の閣議決定
昭和五十八年六月二十日 加入書寄託
昭和五十八年六月二十日 公布及び告示(条約第五号及び外務省告示第一九一号)
昭和五十八年六月二十日 我が国について効力発生

締約国は、

事故、遭難又は緊急着陸の場合における宇宙飛行士に対するすべての可能な援助の提供、宇宙飛行士の迅速かつ安全な送還及び宇宙空間に打ち上げられた物体の返還を定めている月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約の重要性に留意し、

これらの義務の内容を充実させ及び一層具体化することを希望し、

宇宙空間の平和的な探査及び利用における国際協力を促進することを希望し、

人間本来の感情を促されて、

次のとおり協定した。

第一条

締約国は、宇宙船の乗員が、事故に遭遇し若しくは遭難した旨の又は自国の管轄の下にある領域、公海若しくはいずれの国の管轄の下にもないその他の地域において緊急の若しくは意図しない着陸をした旨の情報を入手した場合又はこれらの事実を知つた場合には、直ちに、

(a) 打上げ機関に通報するものとし、又は打上げ機関が不明である場合及び打上げ機関に直ちに連絡をとることができない場合には、利用することができるすべての適当な通信手段により、これらの情報を公表する。

(b) 国際連合事務総長に通報するものとし、また、同事務総長は、利用することができるすべての適当な通信手段により、遅滞なくこれらの情報を公表するものとする。

第二条

事故、遭難又は緊急の若しくは意図しない着陸により宇宙船の乗員がいずれかの締約国の管轄の下にある領域に着陸した場合には、当該締約国は、直ちに、乗員の救助のためにすべての可能な措置をとるものとし、すべての必要な援助を与える。当該締約国は、打上げ機関及び国際連合事務総長に対し、そのとつている措置及びその実施状況を通報する。打上げ機関による援助が迅速な救助を実施する上で役立つ場合又は当該援助が捜索救助活動の効果的な実施に実質的に寄与する場合には、打上げ機関は、捜索救助活動の効果的な実施のため、当該締約国に協力する。当該捜索救助活動は、当該締約国の指揮及び監督の下に実施されるものとし、当該締約国は、打上げ機関との緊密かつ継続的な協議の下に行動する。

第三条

宇宙船の乗員が公海又はいずれの国の管轄の下にもないその他の地域に着陸した旨の情報を入手した場合又はその事実を知つた場合には、迅速に乗員を救助するために捜索救助活動に援助を与えることができる締約国は、必要があるときは、そのための援助を与える。援助を与える締約国は、打上げ機関及び国際連合事務総長に対し、そのとつている措置及びその実施状況を通報する。

第四条

宇宙船の乗員は、事故、遭難又は緊急の若しくは意図しない着陸によりいずれかの締約国の管轄の下にある領域、公海又はいずれの国の管轄の下にもないその他の地域に着陸した場合には、安全かつ迅速に打上げ機関の代表者に引き渡される。

第五条

締約国は、宇宙物体又はその構成部分が自国の管轄の下にある領域、公海又はいずれの国の管轄の下にもないその他の地域に降下した旨の情報を入手した場合又はその事実を知つた場合には、打上げ機関及び国際連合事務総長に対し、その旨を通報する。

宇宙物体又はその構成部分が発見された領域について管轄権を有する締約国は、打上げ機関の要請に応じ、また、必要な場合には打上げ機関の援助を受けて、当該宇宙物体又はその構成部分を回収するため、実行可能と認める措置をとる。

宇宙空間に打ち上げられた物体又はその構成部分であつて打上げ機関の領域外で発見されたものは、打上げ機関の要請に応じ、打上げ機関の代表者に引き渡されるか又はその処理にゆだねられる。打上げ機関は、当該物体又はその構成部分の返還に先立ち、要請に応じ、当該物体又はその構成部分の識別のための資料を提供する。

2及び3の規定にかかわらず、締約国は、自国の管轄の下にある領域において発見し又はその他の場合において回収した宇宙物体又はその構成部分が、危険又は害をもたらすものであると信ずるに足りる理由がある場合には、打上げ機関にその旨を通知することができる。この場合において、打上げ機関は、発生するおそれのある危害を除去するため、当該締約国の指揮及び監督の下に、直ちに、効果的な措置をとる。

2及び3の規定により宇宙物体又はその構成部分を回収し及び返還する義務を履行するために要した費用は、打上げ機関が負担する。

第六条

この協定の適用上、「打上げ機関」とは、打上げについて責任を有する国又は、国際的な政府間機関が打上げについて責任を有する場合には、当該政府間機関をいう。ただし、当該政府間機関がこの協定の定める権利及び義務の受諾を宣言し、かつ、当該政府間機関の加盟国の過半数がこの協定及び月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約の締約国である場合に限る。

第七条

この協定は、署名のためすべての国に開放しておく。3の規定に基づくこの協定の効力発生前にこの協定に署名しなかつた国は、いつでもこの協定に加入することができる。

この協定は、署名国によつて批准されなければならない。批准書及び加入書は、この協定により寄託政府として指定されるグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、ソヴィエト社会主義共和国連邦及びアメリカ合衆国の政府に寄託する。

この協定は、寄託政府として指定される政府を含む五の政府が批准書を寄託した時に効力を生ずる。

この協定は、その効力発生の後に批准書又は加入書を寄託する国については、その批准書又は加入書の寄託の日に効力を生ずる。

寄託政府は、すべての署名国及び加入国に対し、署名の日、この協定の批准書及び加入書の寄託の日、この協定の効力発生の日並びに他の事項を速やかに通報する。

この協定は、寄託政府が国際連合憲章第百二条の規定により登録する。

第八条

いずれの締約国も、この協定の改正を提案することができる。改正は、締約国の過半数が改正を受諾した時に、受諾した締約国について効力を生ずるものとし、その後に改正を受諾する他の締約国については、その受諾の日に効力を生ずる。

第九条

いずれの締約国も、この協定の効力発生の後一年を経過した後は、寄託政府にあてた文書により、この協定からの脱退を通告することができる。脱退は、脱退を通告する文書の受領の日から一年で効力を生ずる。

第十条

この協定は、英語、ロシア語、フランス語、スペイン語及び中国語をひとしく正文とするものとし、寄託政府に寄託する。この協定の認証謄本は、寄託政府が署名国及び加入国の政府に送付する。

以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの協定に署名した。

千九百六十八年四月二十二日にロンドン市、モスクワ市及びワシントン市で本書三通を作成した。