データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 経済協力開発機構条約(OECD条約)

[場所] パリ
[年月日] 1960年12月14日作成,1961年9月30日効力発生,1964年4月27日国会承認
[出典] 外務省条約局,主要条約集(昭和52年版),1375−1394頁.
[備考] 
[全文]

経済協力開発機構条約

昭和三十五年十二月十四日 パリで作成
昭和三十六年九月三十日 効力発生
昭和三十九年四月二十七日 国会承認
昭和三十九年四月二十八日 加入の閣議決定
昭和三十九年四月二十八日 加入書寄託
昭和三十九年四月二十八日 公布及び効力発生の告示(昭和三十九年条約第七号)
昭和三十九年四月二十八日 我が国について効力発生

オーストリア共和国、ベルギー王国、カナダ、デンマーク王国、フランス共和国、ドイツ連邦共和国、ギリシャ王国、アイスランド共和国、アイルランド、イタリア共和国、ルクセンブルグ大公国、オランダ王国、ノールウェー王国、ポルトガル共和国、スペイン、スウェーデン王国、スイス連邦、トルコ共和国、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国の政府は、

経済的な力及び繁栄が国際連合の目的の達成、個人の自由の擁護及び一般的福祉の増進のため不可欠なものであることを考慮し、

これらの国が、相互の間で発展した協力関係の伝統を強化することにより、最も効果的に前記の目標に向かつて前進することができることを信じ、

欧州経済協力機構へのこれらの国の参加が大きく貢献した欧州の経済的な復興及び進歩により、前記の伝統の強化並びに新たな任務及び一層広い目的のための前記の伝統の活用が可能であるという新たな見とおしが開かれたことを認め、

一層広い協力が世界の諸国民の間の平和的かつ協調的な関係に重要な貢献をすることを確信し、

これらの国の経済の相互依存関係が増大していることを認め、

これらの国の経済のできる限り高度の成長を促進するため、並びにその国民の経済的及び社会的な福祉を向上するためにこれらの国の能力及び潜在力を一層効果的に利用することを協議及び協力を通じて決意し、

経済的先進国が経済的発展の途上にある国を全力を尽して援助するために協力しなければならないことを信じ、

世界の貿易の今後の拡大が諸国の経済的発展及び国際的経済関係の改善を助ける最も重要な要素の一つであることを認め、

これらの国が参加している他の国際的な機関若しくは制度におけるこれらの国の義務又はこれらの国が当事国になつている協定に基づくこれらの国の義務に適合する方法によつて前記の目的を達成することを決意して、

欧州経済協力機構を経済協力開発機構に改組するため、次のとおり協定した。

第一条

経済協力開発機構(以下「機構」という。)の目的は、次のことを意図した政策を推進することにある。

(a) 加盟国において、財政金融上の安定を維持しつつ、できる限り高度の経済成長及び雇用並びに生活水準の向上を達成し、もつて世界の経済の発展に貢献すること。

(b) 経済的発展の途上にある加盟国及び非加盟国の経済の健全な拡大に貢献すること。

(c) 国際的義務に従つて、世界の貿易の多角的かつ無差別的な拡大に貢献すること。

第二条

加盟国は、第一条の諸目的を達成するため、次のことに同意する。

(a) 個個に、及び共同して、自国の経済的資源の効果的利用を促進すること。

(b) 科学及び技術の分野において、個個に、及び共同して、自国の資源の開発を促進し、研究を奨励し、かつ、職業訓練を促進すること。

(c) 経済の成長並びに国内的及び対外的な財政金融上の安定を達成し、かつ、自国又は他国の経済を危うくするおそれがある事態を回避することを意図した政策を、個個に、及び共同して実施すること。

(d) 貨物及び役務の交換並びに経常的支払に対する障害を軽減し又は除去し、かつ、資本移動の自由化を維持拡大するための努力を、個個に、及び共同して続けること。

(e) 技術援助の受入れ及び輸出市場の拡大が経済的発展の途上にある加盟国及び非加盟国の経済にとつて重要であることを考慮して、適当な方法により、特に、これらの国への資本の導入により、個個に、及び共同して、これらの国の経済的発展に貢献すること。

第三条

加盟国は、第一条の諸目的を達成し、かつ、第二条の約束を履行するため、次のことに同意する。

(a) 相互の間で常に情報を交換し、また、機構に対し、その任務の遂行に必要な情報を提供すること。

(b) 継続的に協議を行ない、研究を行ない、また、合意された計画に参加すること。

(c) 緊密に協力し、適当な場合には協調した行動をとること。

第四条

この条約の締約国をもつて機構の加盟国とする。

第五条

機構は、その目的を達成するため、次のことを行なうことができる。

(a) 別段の規定がある場合を除きすべての加盟国を拘束する決定

(b) 加盟国に対する勧告

(c) 加盟国、非加盟国又は国際機関との協定の締結

第六条

決定及び勧告は、機構が特別の場合につき全会一致で別段の定めをしない限り、すべての加盟国の間の合意によつて行なわれる。

各加盟国は、一個の投票権を有する。いずれかの加盟国が決定又は勧告について棄権した場合には、その棄権は、当該決定又は勧告の成立を妨げるものではなく、当該決定又は勧告は、棄権した加盟国以外の加盟国に適用される。

いかなる決定も、いずれかの加盟国がその憲法上の手続の要件を満たすまでは、当該加盟国を拘束しない。その他の加盟国は、当該決定が相互の間で暫定的に適用されることを合意することができる。

第七条

すべての加盟国で構成する理事会をもつてすべての機構の文書の源である機関とする。理事会の会議は、大臣の会議又は常駐代表の会議とする。

第八条

理事会は、毎年、大臣会議を主宰する議長一人及び副議長二人を指名する。議長は、最初の任期に続く一年について重ねて指名されることができる。

第九条

理事会は、執行委員会及び機構の目的を達成するため必要な補助機関を設置することができる。

第十条

理事会は、理事会に対して責任を有する事務総長一人を五年の任期で任命する。事務総長は、その勧告に従つて理事会が任命する一人又は二人以上の事務次長又は事務総長補佐によつて補佐される。

事務総長は、常駐代表会議である場合の理事会の会議を主宰する。事務総長は、すべての適当な方法で理事会を補佐するものとし、また、理事会その他の機構の機関に対して提案を行なうことができる。

第十一条

事務総長は、理事会が承認した組織計画に従つて、機構の運営に必要な職員を任命する。職員規則は、理事会の承認を受けるものとする。

機構の国際的性格に照らし、事務総長、事務次長、事務総長補佐及び職員は、いずれの加盟国又は機構外のいかなる政府若しくは当局からの指示をも求め、又は受けてはならない。

第十二条

機構は、理事会が定める条件に従い、次のことをすることができる。

(a) 非加盟国又は諸機関に対する意思の表明

(b) 非加盟国又は諸機関との関係の設定及び維持

(c) 非加盟国政府又は諸機関に対する機構の活動への参加の招請

第十三条

千九百五十一年四月十八日のパリ条約及び千九百五十七年三月二十五日のローマ条約によつてそれぞれ設立された欧州共同体が機構において有する代表権は、この条約に附属する第一補足議定書に定めるとおりとする。

第十四条

この条約は、署名国により、それぞれの憲法上の要件に従つて批准され又は受諾されるものとする。

批准書又は受諾書は、寄託国政府に指定されたフランス共和国政府に寄託されるものとする。

この条約は、次のいずれかの時に効力を生ずる。

(a) 千九百六十一年九月三十日前にすべての署名国が批准書又は受諾書を寄託した場合には、その寄託の時

(b) 千九百六十一年九月三十日までに十五以上の署名国が批准書又は受諾書を寄託した場合には、これらの署名国については同日、その他の署名国についてはその後批准書又は受諾書を寄託した時

(c) 千九百六十一年九月三十日後この条約の署名の時から二年以内に十五以上の署名国が批准書又は受諾書を寄託した場合には、これらの署名国についてはその寄託の時、その他の署名国についてはその後批准書又は受諾書を寄託した時

この条約が効力を生じた時に批准書又は受諾書を寄託していない署名国は、機構とその署名国との間の合意によつて定められる条件に従つて機構の活動に参加することができる。

第十五条

欧州経済協力機構の改組は、この条約が効力を生じた時に効力を生じ、欧州経済協力機構の目的、機関、権能及び名称は、その時からこの条約に定めるとおりのものとなるものとする。欧州経済協力機構が有する法人格は、機構に引き継がれる。ただし、欧州経済協力機構の決定、勧告及び決議は、この条約が効力を生じた後も有効であるためには、理事会の承認を受けるものとする。

第十六条

理事会は、加盟国の義務を受諾する用意があるいかなる政府に対してもこの条約に加入するよう招請することを決定することができる。その決定は、全会一致で行なうものとする。ただし、理事会は、特定の場合に、全会一致で、棄権を認めることを決定することができる。その場合には、その決定は、第六条の規定にかかわらず、すべての加盟国に適用される。加入は、寄託国政府への加入書の寄託の時に効力を生ずる。

第十七条

いずれの締約国も、寄託国政府に対して十二箇月前の通知を行なうことにより、自国に対するこの条約の適用を終止させることができる。

第十八条

機構の本部は、理事会が別段の定めをしない限り、パリに置く。

第十九条

機構の法律上の能力並びに機構、機構の職員及び機構における加盟国の代表者の特権及び免除は、この条約に附属する第二補足議定書に定めるとおりとする。

第二十条

事務総長は、理事会が採択した財政規則に従つて、毎年、理事会に対し、その承認を求めるため、年度予算、収支計算書及び理事会が要求する追加予算を提出する。

理事会が承認した機構の一般経費は、理事会が決定する基準に従つて分担される。その他の経費は、理事会が決定するところに従つてまかなわれる。

第二十一条

寄託国政府は、批准書、受諾書若しくは加入書を受領し、又は終止の通知を受けたときは、すべての加盟国及び事務総長に対してその旨を通知するものとする。

以上の証拠として、下名の全権委員は、正当に委任を受け、この条約に署名した。

千九百六十年十二月十四日にパリで、ひとしく正文である英語及びフランス語によつて、本書一通を作成した。本書は、寄託国政府に寄託されるものとし、寄託国政府は、すべての署名国に対して認証謄本を送付するものとする。