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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大陸棚に関する条約(大陸棚条約)

[場所] ジュネーヴ
[年月日] 1958年4月29日作成,1964年6月10日効力発生
[出典] 外務省条約局,主要条約集(昭和52年版),1055−1064頁.
[備考] 仮訳文
[全文]

大陸棚に関する条約

昭和三十三年四月二十九日 ジュネーヴで作成
昭和三十九年六月十日 効力発生

この条約の締約国は、次のとおり協定した。

第一条

この条約の適用上、「大陸棚{前1文字だなとルビ}」とは、次の海底をいう。

(a) 海岸に隣接しているが領海の外にある海底区域であつて、水深が二百メートルまでであるもの又は水深がこの限度をこえているがその天然資源の開発を可能にする限度までであるものの海底

(b) 島の海岸に隣接している同様の海底区域の海底

第二条

沿岸国は、大陸棚{前1文字だなとルビ}に対し、これを探査し及びその天然資源を開発するための主権的な権利を行使する。

1の権利は、沿岸国が大陸棚{前1文字だなとルビ}を探査しておらず又はその天然資源を開発していない場合においても、当該沿岸国の明示的な同意を得ることなしにこれらの活動を行ない又は当該大陸棚{前1文字だなとルビ}に対して権利を主張することができないという意昧において、排他的である。

大陸棚{前1文字だなとルビ}に対する沿岸国の権利は、実効的な若しくは名目上の先占又は明示的な宣言に依存するものではない。

この条約にいう天然資源は、海底の鉱物その他の非生物資源並びに定着性の種族に属する生物、すなわち、採捕に適した段階において海底面若しくはその下で静止しており又は絶えず海底に接触していなければ動くことができない生物から成る。

第三条

大陸棚{前1文字だなとルビ}に対する沿岸国の権利は、その上部水域の公海としての法的地位又はその上部水域の上空の法的地位に影響を及ぼすものではない。

第四条

沿岸国は、大陸棚{前1文字だなとルビ}における海底電線又は海底パイプラインの敷設又は維持を妨げることができない。もつとも、大陸棚{前1文字だなとルビ}の探査及びその天然資源の開発のために適当な措置をとる沿岸国の権利は、害されない。

第五条

大陸棚{前1文字だなとルビ}の探査及びその天然資源の開発は、航行、漁業若しくは海洋生物資源の保存を不当に妨害することとなるもの又は結果を公表する意図をもつて行なわれる基礎的な海洋学的調査その他の科学的調査を妨害することとなるものであつてはならない。

沿岸国は、1及び6の規定に従うことを条件として、大陸棚{前1文字だなとルビ}においてその探査及びその天然資源の開発に必要な設備その他の装置を建設し及び維持し又は操作し、それらの設備及び装置の周囲に安全地帯を設定し、並びにこの安全地帯においてそれらの設備及び装置の保護に必要な措置をとる権利を有する。

2にいう安全地帯は、建設された設備その他の装置の周囲に、それらの設備及び装置の外縁の各点から測定して五百メートルの範囲内で設定することができる。いずれの国籍を有する船舶も、安全地帯を尊重しなければならない。

2に規定する設備及び装置は、沿岸国の管轄下にあるが、島の地位を有しない。それらの設備及び装置は、それ自体の領海を有せず、また、その存在は、沿岸国の領海の限界の画定に影響を及ぼすものではない。

2の設備の建設については、妥当な通告を行なわなければならず、また、その設備の存在について警告を与えるための恒久的手段を維持しなければならない。放棄され又は使用されなくなつた設備は、全面的に撤去しなければならない。

設備及び装置並びにその周囲の安全地帯は、国際航行に不可欠な通常の航路の使用を妨害するような場所に設けることができない。

沿岸国は、安全地帯において、有害な物質から海洋生物資源を保護するためのすべての適当な措置をとらなければならない。

大陸棚{前1文字だなとルビ}に関する実地調査については、沿岸国の同意を得なければならない。沿岸国は、資格のある機関が大陸棚{前1文字だなとルビ}の物理的又は生物学的性質について純枠に科学的な調査を行なう目的で要請する場合には、通常、同意を拒絶することができない。もつとも、沿岸国は、希望するときは、その調査に参加し又は代表者を派遣する権利を有するものとし、また、その調査の結果は、いかなる場合にも公表される。

第六条

向かい合つている海岸を有する二以上の国の領域に同一の大陸棚{前1文字だなとルビ}が隣接している場合には、それらの国の間における大陸棚{前1文字だなとルビ}の境界は、それらの国の間の合意によつて決定する。合意がないときは、特別の事情により他の境界線が正当と認められない限り、その境界は、いずれの点をとつてもそれらの国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にある中間線とする。

隣接している二国の領域に同一の大陸棚{前1文字だなとルビ}が隣接している場合には、その大陸棚{前1文字だなとルビ}の境界は、それらの国の間の合意によつて決定する。合意がないときは、特別の事情により他の境界線が正当と認められない限り、その境界は、それらの国の領海の幅を測定するための基線上の最も近い点から等しい距離にあるという原則を適用して決定する。

大陸棚{前1文字だなとルビ}の境界を画定するにあたり、1及び2に定める原則に従つて引く線は、特定の日に存在する海図及び地形に照らして定めなければならず、また、陸上の固定した恒久的な標点との関連を明らかにしたものでなければならない。

第七条

この条約は、トンネルの掘削により海底面(水深のいかんを問わない。)の下で開発を行なう沿岸国の権利を害するものではない。

第八条

この条約は、国際連合及びいずれかの専門機関の加盟国並びに国際連合の総会がこの条約の締約国となるように招請したその他の国による署名のため、千九百五十八年十月三十一日まで開放しておく。

第九条

この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。

第十条

この条約は、第八条に規定するいずれかの種類に属する国による加入のため、開放しておく。加入書は、国際連合事務総長に寄託する。

第十一条

この条約は、二十二番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。

この条約は、二十二番目の批准書又は加入書が寄託された後にこの条約を批准し又はこれに加入する国については、その国がその批准書又は加入書を寄託した後三十日目の日に効力を生ずる。

第十二条

いずれの国も、署名、批准又は加入の時に、この条約の規定(第一条から第三条までの規定を除く。)について留保を行なうことができる。

1の規定に基づいて留保を行なつたいずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもその留保を撤回することができる。

第十三条

いずれの締約国も、この条約が効カを生じた日から五年が満了した後は、国際連合事務総長にあてた書面による通告により、いつでもこの条約の改正を要請することができる。

国際連合の総会は、1の要請に関連してとるべき措置がある場合には、その措置について決定を行なうものとする。

第十四条

国際連合事務総長は、国際連合のすべての加盟国その他第八条に規定する国に対して次の事項を通報するものとする。

(a) 第八条から第十条までの規定に従つて行なわれるこの条約の署名及び批准書又は加入書の寄託

(b) この条約が第十一条の規定に従つて効力を生ずる日

(c) 前条の規定に従つて行なわれる改正の要請

(d) 第十二条の規定に従つて行なわれるこの条約に対する留保

第十五条

この条約は、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、その原本は、国際連合事務総長に寄託するものとし、同事務総長は、第八条に規定するすべての国にその認証謄本を送付するものとする。

以上の証拠として、下名の全権委員は、それぞれの政府から正当に委任を受け、この条約に署名した。

千九百五十八年四月二十九日ジュネーヴで作成した。