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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議 迎賓館赤坂離宮での晩餐会における岸田総理大臣挨拶 -「信頼」に基づく「共創」により目指す「平和と繁栄」-

[場所] 東京
[年月日] 2023年12月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

○ 御列席の皆様、日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議を明日に控え、皆様をお迎えできることを光栄に思います。

○ ASEANの皆様は、多様性の中での一体性を大切にし、大きく成長し、共同体を構築し、インド太平洋に関する独自のビジョンを作成し、推進してきました。私はこうした努力に深い敬意を表すとともに、ASEANの歴史に日本がアジアの一員として寄り添えた幸運を喜ばしく思います。私は11年前に外務大臣に就任して以来、今までのべ32回ASEAN各国を訪問してきました。そして、50年前から、紆余曲折を経ながらも互いに高め合ってきた先人の積み重ねに感謝し、その賜である今の密接な関係を肌で感じてきました。

○ 本日は、その礎を土台に、次の50年に向け新たなステージに深化させるべく、特に三つの具体的なアクションを示したいと思います。

(1)世代を超えた心と心のパートナー

○ 日ASEAN関係の核心は、何と言ってもお互いの「信頼」です。そしてその信頼を裏打ちするのは、苦難のときも、一貫して共に歩んできた歴史の重みです。こうした「心と心の繋がり」を、次の世代に繋げていきたいと思います。

○ そのため、今後10年で1千万人以上が受益する包括的な人的交流プログラム、「次世代共創パートナーシップ」を新たに立ち上げ、また、若手ビジネスリーダーなどの、双方向の交流を更に推進させます。

(2)未来の経済・社会を共創するパートナー

○ 一か国では解決困難な複合的危機の時代において、日本とASEANが、互いの強みを持ち寄り、強固な信頼関係の下で、解決策を見いだす。互いの活力を相互に環流させて更なる活力を生む強い経済をつくり、幅広い中間層が夢をつかめる社会と経済を、「共創」するパートナーとして、共に成長したい。

○ そのため、連結性強化、アジア・ゼロエミッション共同体構想の実現を含む気候変動対策、中小企業・スタートアップ支援を重点に官民の連携に取り組みます。オファー型協力などのODAの新しい取組も活用し、民間投資を一層後押ししていきます。

○ ASEANが世界の中心的な自動車生産・輸出ハブであり続けるための戦略を協力して策定・実施する、「日ASEAN次世代自動車産業共創イニシアティブ」を立ち上げます。

(3)平和と安定のためのパートナー

○ 日本とASEANが変わらず追い求めてきたものは「平和と繁栄」です。よりよい経済・社会が共創され、広がることで、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序はより確固たるものとなります。インド太平洋地域の平和と繁栄、そして「人間の尊厳」が守られる世界を共に創っていきましょう。

○ そのため、「ヒロシマ・アクション・プラン」に基づく核軍縮・不拡散、法制度整備支援を含む司法分野協力、女性・平和・安全保障、サイバーセキュリティ、防衛交流・協力、政府安全保障能力強化支援を進めたいと思います。

○ 皆様、私は、こういった考えと確信をもって、明日の会議に臨むつもりです。ここに集まった友人同士として、後世に残る未来のビジョンを世の中に示しましょう。

○ さて、お堅い話はここまでです。どうぞ、美味しい料理と共に、楽しいひとときをお過ごし下さい。ここで、皆様のご健康とご多幸、日本とASEANの友情が未来に向けさらに発展していくことを祈念して、共に杯を上げたいと思います。乾杯!