データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 対日投資セミナー 安倍総理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2016年9月19日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 ニューヨークの皆様おはようございます。安倍晋三でございます。

 アベノミクスにより、日本の投資環境は確実に改善いたしました。既にアジアの投資先としての関心度調査では、研究開発拠点、販売拠点として日本が1位となりました。

 再生医療については、承認を迅速化し、実用化までの期間を大幅に短縮いたしました。その結果、新たに日本に拠点を設けた米国企業もあります。

 ここニューヨークで活躍している皆様のような方が、日本でも力を発揮している事例が増えています。プロフェッショナルとして日本に滞在している外国人は、直近の3年間で2割増加しています。こうした動きを加速化するよう、世界最速級の「日本版高度外国人材グリーンカード」を創設します。

 昨年末の対日直接投資残高は過去最高となる24兆円でした。2020年に35兆円という目標に向け、更なる改革を進めてまいります。

 TPPは、このような改革を進めるための起爆剤です。日本のみならず、アジア太平洋の国々にとって、TPPは2つの意味で新たな時代を切り拓くものです。

 第1に、TPPは、この地域に自由で公正な経済圏を広げる基盤となります。

 TPPにより、21世紀型のルールによる「世界の4割経済圏」が生まれます。知的財産が保護され、輸出入の手続が簡素化されます。

 TPPの成立を念頭に、既に、IT、物流、小売などの分野で、日本、米国、アジアの企業が、太平洋を跨ぐバリューチェーン構築へ向けて動き出しています。

 新しいルールの下では、独自の技術や地方の特産品で果敢に海外市場に挑戦する人々が、大いに活躍できます。消費者は、域内の様々な商品を安く、手軽に、安心して手に入れることができるようになります。日本の農家が手間暇かけた、おいしくて安全な果物や和牛、お米やお酒を是非楽しんでください。

 第2に、TPPは、米国の「アジア・リバランス戦略」の柱であり、米国がアジア太平洋地域の発展をリードするとの意思を示すものでもあります。

 今後、TPPに参加したいとの意向を持つ国は、いくつもあります。基本的価値を共有する国々が経済の絆を深め、更にその輪を広げていく。それは、地域の安定に資するものであり、そこにTPPの戦略的意義があります。

 日米それぞれが、できるだけ早く国内で承認を得て、TPPを早期に発効させる。この成否は、世界の自由貿易体制とアジア太平洋地域の戦略環境を大きく左右します。臨時国会でTPPの国会承認と関連法案の成立を図ります。日本は、全力で取り組みます。米国も同じだと信じています。

 米国は、世界の平和と安定を支えてきました。そのおかげで、米国企業はグローバルに活躍してきました。米国の人々が、繁栄の恩恵を実感できるようになり、米国のグローバルなリーダーシップを支持することを期待しています。

 TPPで日米、そしてアジア太平洋の成長する国々が結ばれれば、日本はもっともっと魅力的な投資先になることでしょう。

 日本へ投資をする企業の皆様に、JETRO(日本貿易振興機構)と在外公館が連携し、全面的に支援する体制も整えています。最後に是非皆様に、このメッセージを発信して、この私の御挨拶を終えたいと思います。「是非とも、日本に投資を!」