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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 富士山会合レセプション 安倍晋三総理の挨拶

[場所] 東京
[年月日] 2016年6月3日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

第3回の富士山会合がこうして米国からもたくさんの優秀な皆様が御出席をされまして盛大に開催されましたことを心からお喜びを申し上げたいと思います。1回、2回、3回と回を重ね日米関係の未来について大変充実した議論が行われていることに対しまして、敬意を表したいと思います。

 一昨年は、第1回には出席させていただきまして、昨年はどうしても日程上出席がかなわなかったわけでございまして、今回が第3回になったのでございますが、昨年が実は、大変日米関係にとっては重要な年だったと思っております。と申しますのも、昨年は米国を訪問いたしまして、日本の総理大臣としては初めて上下両院の合同会議でスピーチを行うことができました。これも、本日出席していただいた米国の関係者の皆様を始め、多くの皆様の御協力のおかげであったと思います。そのスピーチにおいて、日米は世界の様々な課題に共に取り組んでいく『希望の同盟』でなければならないと訴えたところであります。

 そしてその後、戦後70年に際して70年談話を発出いたしました。そしてその後、平和安全法制が制定されたわけでございます。これはなかなか困難があったわけでございますが、現在の世論調査によりますと『平和安全法制を廃止すべきだ』に対して『廃止すべきではない』という方がだいたい世論調査上増えているところでございます。ここにいる長島昭久議員も党としては法案に反対をされましたが、しかし世論調査の電話に対してはおそらくひそかに『廃止すべきではない』と答えておられたと思います。

 この法制によって、いわば日本を守るためには日米がお互いに助け合うことができる同盟となったわけであります。今年、北朝鮮によって行われた弾道ミサイル発射に対して、日米は今まで以上に連携して対応することができました。ハリス太平洋軍の司令長官も、今までよりもしっかりと日米は連携して緊密に対応することができたと述べています。これは正に、お互いに助け合うことのできる同盟はその絆を強めたことの証ではないかと、このように確信をしております。

 また、先般行われた伊勢志摩G7サミットにおいても、日米は共に様々な課題について協力しながら成功に導くことができたと思っております。経済においては、新たな危機に陥ることを回避するため、適時あらゆる政策対応を行うことでG7は一致をし、そして宣言文に明記されたわけであります。日本はこの議論を主導した責任ある立場であります。しっかりと構造改革を加速させ、そして財政出動等あらゆる手段をとっていく考えであります。そのために、来年の4月に予定されていた消費税の引上げは2年半延期することとしたところでございます。

 また南シナ海の現状について、日本で開催されたサミットでございますから、この現状について、安全保障環境あるいは一方的な現状変更の試みについて、詳しく私から説明をいたしました。そこでは、主張する時には国際法に基づいて主張をすべきこと、そして武力や威嚇を用いてはならないということ、そして国際法に基づいて平和的に解決をする、この三原則について合意ができたわけであります。この三原則に則って日米が協力をして海の航行の自由、あるいは上空の航行の自由を守り、法の支配を貫徹させることによって地域の平和と安定と繁栄につなげていきたいと考えています。

 そしてこのサミット後、オバマ大統領と共に広島を訪問いたしました。そして原子爆弾によって尊い命を落とされた被爆者の方々に対して、オバマ大統領と共に哀悼の誠を捧げたところでございます。世界で唯一原子爆弾を使用した国の指導者と世界で唯一の戦争被爆国である日本の総理大臣が共に哀悼の誠を捧げ、そして同時に核のない世界の実現のために力を合わせていくことを誓い合ったわけであります。71年前に苛烈に戦火を交えた敵同士であった日米は、今や心の紐帯で結ばれた同盟国となりました。

 そしてこれからも、世界の様々な課題を解決していくために、地域の繁栄や世界の平和のために共に手を携えて貢献していきたいと思います。日米同盟が『希望の同盟』としてその輝きを増すために、富士山会合が更なる役割を果たしていただくことを期待をいたしまして、私の御挨拶とさせていただきたいと思います。