データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 2016年G7伊勢志摩サミットに向けた世界人口開発議員会議開会式 安倍総理基調演説

[場所] 
[年月日] 2016年4月26日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

 皆様、おはようございます。安倍晋三でございます。世界各国で人口保健問題に取り組む国会議員の皆様を心から歓迎いたします。

 世界人口開発議員会議の開会にあたり、発言の機会をいただいたことを大変光栄に思いますとともに、武見敬三議長を始め御列席の皆様に心から敬意を表したいと思います。

 昨年9月、国際社会は歴史的なアジェンダを採択しました。持続可能な開発のための2030アジェンダであります。人類社会の持続可能な発展のためには、支援する側、支援される側ではなく、全ての国が同じ立場で参加することが必要です。世界中の国々が共に未来を切り拓いていく新しい時代の幕開けです。「誰も置き去りにしない(leaving no one left behind)」。私たちはこの高い理念を掲げました。あらゆる場所のあらゆる形の貧困を終わらせること。あらゆる年齢の全ての人々の健康的な生活を確保すること。2030アジェンダは、あらゆる政策は全ての人々を対象とするものでなければ持続可能な社会は実現しないことを宣言しました。私は、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、より一層世界の平和と繁栄に貢献していこうと考えています。一人一人に焦点を当てた人間の安全保障の考え方に対し、保健を始めとする世界規模の課題の解決に貢献していく決意です。

 2030アジェンダは、この日本の考え方が明確に盛り込まれました。全ての人々を対象とするユニバーサル・ヘルス・カバレッジであります。この達成に向けた目標が設定されたことは大きな成果です。この2日間の会議では、女性や若者の活躍、人口問題と持続可能な社会づくりなど、様々な課題が議論されています。その前提となるのが全ての人々が健康で暮らすこと。飢餓や貧困の解消は、保健医療水準の向上と共に実現するものであり、格差や不平等の克服は保健医療の確保なくして成り立ちません。今や保健をめぐる問題は、一つの国にとどまらず、地球規模で取り組むものとなりました。世界の保健医療水準を向上させることが、すなわち自らの国の社会経済的発展や社会の平和安定につながります。

 私たちが共有するのは、国際保健の課題であります。課題は大きく2つあります。保健医療水準を向上させるための生涯を通じた保健サービスの確保と国境を越えた感染症に立ち向かうための公衆衛生危機に対する対応の強化です。各国が対応しなければならない課題は多種多様です。社会全体の衛生水準を向上し、その向上を急がなければならない国があります。生活習慣病の予防といった個人の対応が重要な国があります。世界規模で人が移動する状況の中、21世紀はエボラやジカ熱といった国境を越える感染症の脅威に立ち向かう必要があります。私たちは自らの国の課題を解決するだけではなく、他の国が直面している課題にも目を配らなければなりません。

 日本はこの70年間、保健衛生水準の向上に取り組み、乳幼児死亡率や平均寿命などの諸指標で世界最高の水準を達成しました。また全ての人が医療に負担可能な費用でアクセスできる国民皆保険を達成して50年が経ちました。その経験を諸外国と共有し、新たな課題に共に立ち向かっていきたいと考えています。我が国は保健分野のODA等を通じ、世界の保健医療水準の向上への貢献を行っています。世界エイズ・結核・マラリア対策基金や国連人口基金など、保健分野の国際機関を通じた協力に加え、2国間のODAを通じて、保健分野において年間1,000億円の協力を行ってきました。例えば、2013年からケニアに専門家を派遣し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けた政策立案の支援を行っています。フィリピン・ルソン島で緊急時の産科医療の整備を支援し、妊産婦を中心に国民健康保険制度への加入を促進し、医療へのアクセスを改善する取組を進めています。セネガルでは、トイレといった基礎的な衛生施設へのアクセスの改善を支援しています。また、我が国は今年2月、WHO緊急対応基金に対する拠出を行いました。この一部は、既にジカ熱対策にも活用されました。全ての人々が適切な保健衛生サービスを受けられ、医療へのアクセスが保障されること。これまで我が国が推進してきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成は、各国の保健分野の課題に包括的に取り組む上で重要な基盤となるものです。今後も、我が国は国際保健分野をめぐる課題に対応した貢献を行っていきます。

 情報発信も重要です。私は2013年と昨年の2回にわたり、ランセット誌へ寄稿し、我が国の取組と今後の展望を語りました。昨年9月の国連総会サイドイベントや12月のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ国際会議など様々な機会を通じ、国際保健を重視する立場を発信してまいりました。来月、日本は、伝統の地・伊勢志摩でG7サミットを開催します。これまでを振り返ると我が国は、日本で開催されるサミットの機会を捉えて国際保健の議論を主導してきました。2000年の九州・沖縄サミットでは、エイズ、結核、マラリアについて国連が設定した目標を達成するため、G8各国が国際機関などとの連携強化に責任を持って取り組むこととしました。2008年の北海道洞爺湖サミットにおいては、ここにおられる福田元首相が当時首相として、保健システム強化、母子保健など、5つの分野での取るべき行動を提示しました。来る伊勢志摩サミットにおいても、国際保健を議題に取り上げます。さらに、初のアフリカ開催となるTICADⅥ、9月にはG7神戸保健大臣会合を開催します。これらの一連の機会を通じ、保健医療に関する先駆者としての日本に対する期待に応えるべく、積極的に貢献していきます。

 今回東京に集われて、皆様は政治家として、それぞれの国のリーダーとして、そのリーダーシップの発揮が期待されます。また、世界中の国々との横のつながりにより、共に目標を達成し、飢餓や貧困、格差や不平等を克服していく先頭に立たなければなりません。この会議が大きな契機となり、参加各国が情報と経験を共有し、地球規模での課題解決に更に取り組んでいかれますことを期待し、私のスピーチとさせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。